バリ舞踏中編です。
頑張って書いているのですが、私の筆力が圧倒的に足らない気がします。
難しいですね、踊りを筆で表現するって。
どうでもいい話なんですけど、魔装番外編とかで、休日のマサキの一日みたいなAVGを出してはくれないですかね。彼の考え方ってまだまだわからない部分が多いんですよねえ。特にプライベートな部分。想像する余地があるのは嬉しいのですが、こういうのを書く時に困るのです。笑
拍手有難うございます!励みにしております!!
次回でようやくバリ舞踏編も終了です。その後にはプールとお楽しみだー!笑
といったところで本文へどうぞ!
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頑張って書いているのですが、私の筆力が圧倒的に足らない気がします。
難しいですね、踊りを筆で表現するって。
どうでもいい話なんですけど、魔装番外編とかで、休日のマサキの一日みたいなAVGを出してはくれないですかね。彼の考え方ってまだまだわからない部分が多いんですよねえ。特にプライベートな部分。想像する余地があるのは嬉しいのですが、こういうのを書く時に困るのです。笑
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次回でようやくバリ舞踏編も終了です。その後にはプールとお楽しみだー!笑
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<Lotta Love>
「動きは抑えてるけど、それだけに難しそうな踊りだな」
「指先まで気の抜けない動きをしますね。見た目の華やかさとは裏腹に、筋力を使う踊りであるのは間違いなさそうだ」
彼女らがステージから掃けた後に登場したのは、勇ましさを感じさせる衣装を纏ったひとりの男性だった。
戦士のような風貌。くるりくるりと軽快にステージ上を回っては、足で地を踏み鳴らし飛び跳ねてみせる。ガムランの楽の音も勇猛さを感じさせる曲調へと変化した。パンフレットに目を落とせば、先程の踊りは歓迎の舞で、現在の踊りは戦士の舞であるらしい。
指先を細かく動かしながら、時に身体で、時にその表情で、勇ましさを表現してゆく男性の踊りは迫力に満ちている。華やかさを追求した先程の踊りとは打って変わった激しさに、マサキは言葉を失ってステージ上を見上げ続けた。
それが終わると、今夜のメインプログラムでもある「レゴン・ラッサム」だ。婚約者のいる王女に惚れてしまった王の話という触れ込みだ。ストーリー性があるだけに期待が増す。マサキは門の奥へと去って行った戦士を見送りながら、次の演目が始まるのを待った。
「歌舞伎に似ていると思いませんか」その最中、ふと思い付いた様子でシュウが口にする。
「歌舞伎に? 歌舞伎と比べるとかなりダイナミックな動きに思えるけどな……」
「目力ですよ。バリ舞踏というものは、どうやら表情よりも目の力を重視する踊りであるらしい。ポーズを決めて目で訴える一連の動きは、歌舞伎でいう見得を切っている状態に非常に似ているように思えます」
「そう云われれば、確かに。あの目の力は凄いよな。迫力を感じる」
「足さばきもそうでしょう。地面から高く上げるのは極力控えて、摺り足に近い歩行を繰り返す。そういった意味では日本舞踊にも似ているようにも思えます。手の動きと合わせると、特に」
成程。と、マサキは頷いた。
踊り手たちの休まることないダイナミックな動きに圧倒されていただけのマサキと異なり、芸術にも造詣の深いシュウはまた違った視点から彼らの演目を見ていたようだ。
手の動きに目の表現力。足さばきに全身の関節の使い方……矢継ぎ早に繰り出されるテクニックの数々を、彼は事細かに分析していたらしかった。右指と左指の動きの違いにまで言及してみせると、スマートフォンを弄りながら、音楽についても言及してみせた。
どこか馴染み深さを感じさせるガムランミュージックと日本の鳴り物文化との相似性。リズムの取り方や音の出し方が日本の鳴り物に良く似ている――と、語るシュウに、マサキはそれも確かに。と、再び頷いた。
「似ているようで異なる発展を遂げた日本とバリの文化は、もしかすると土地を近くするからこその共時性があるのかも知れないですね」
そう結論付けるシュウ。飽くなき探求心の赴くがままに、芸術や大衆文化でさえも分析の対象としてしまう彼の性格がマサキには微笑ましく感じられる。
「お前、そういうの本当に好きだよな」マサキは笑みを浮かべた。
「もっと素直に楽しみたくはあるのですがね」
それを揶揄と受け止めたようだ。どこか物憂げに言葉を吐いたシュウに、そうじゃねえよ。マサキはその背中を軽く叩いた。自身の人間性の欠如に自覚があるからだろう。時にシュウはそれをコンプレックスに感じているような態度を取る。
「俺にはない物の見方だしな。有難いよ」
「本当にそう思っていますか」
確かに以前のマサキは、自身の考え方の穴を突くように指摘を繰り出してくるシュウの態度に物を思うことが多かった。素直に言葉を返せばそれを契機にやり込められる。そういったことを繰り返されて面白い筈もない。だからこそやり返すとばかりに、彼の落ち度に付け込むように言葉を吐いたりもしたものだった。
そういったかつてのマサキの反発的な態度の数々を思い起こしたのだろう。揶揄い気味に言葉を吐いてくるシュウに、「思ってなきゃ口にするかよ」マサキは答えた。
そこまで話をしたところで、次の演目の準備が整ったようだ。ステージ中央にひとりの女性が姿を現わしてくる。鳴り始めるガムランミュージックに、ざわついていた観客席が途端に静まり返った。
彼女の一挙手一動も見逃さまいとしているかのような緊張感。マサキもまた再び居ずまいを正した。
彼女の一挙手一動も見逃さまいとしているかのような緊張感。マサキもまた再び居ずまいを正した。
シュウが先んじて舞台について調べてくれたところによると、彼女は物語の進行役である侍女であるらしい。きっと物語の導入部を語っているところを踊りで表現しているのだろう。暫く彼女のひとり舞台が続く。
やがて登場するふたり組の女性。侍女とは異なる華美な揃いの衣装に身を包んだ彼女らが王と王女なのだそうだ。揃いの衣装に身を包んでいるとあれば、どうやって区別を付けたものかとマサキは気になったものだったが、きっとそこは踊りが役を担うのだと思いますよ。というシュウの言葉を信じることにした。
三人の踊りは歓迎の舞にも似た優美なものだった。
時に線対象に、時に左右対称に、向かい合っては離れて踊る三者が何を表しているのか、マサキには良くわからなかったが、この踊りが先程の踊りの延長線上にあるのだとしたら、これは恐らく王と王女という二者の登場人物の紹介であるのだろう。
戯れるように踊りを披露していた三人の女性たちは、ややあってステージ中央に固まった。王役と王女役のふたりの女性がステージの正面を向く中、それぞれに侍女役の女性が扇子を渡す。どうやらこれを用いて次の踊りが展開されるようだ。それを最後に侍女役の女性がステージから姿を消す。
森の中に迷い込んだ隣国の王女を王が見初めるシーン。ステージ前方に立ち、ガムランのリズムに合わせて動き回る王女を、ステージ奥に立つ王が踊りながら遠巻きに眺めている。次いでふたりは鏡合わせのように向き合ってステージの中央に立つと、扇子を広げて同じ踊りを踊り始めた。
所説あるらしいが、シュウによれば、このシーンは愛を表現していものであるらしい。
「ってことは、このふたりはお互いを想いながらも結婚はしないってことか?」
「どうでしょうね。話の流れ的に、王の一方的な愛情を表していると思った方が良さそうですが」
「そしたら同じ動きをしている意味がないだろ。王女は王に惹かれたんじゃないのか?」
「長い物には巻かれろ、ですかね。この王女は王に保護された後に監禁されている状態らしいですから、迂闊に逆らえないと思ってしまったのかも知れません。若しくは王に靡《なび》きかけたものの、婚約者の存在を思い出して踏み止まったか……」
女心って難しいのな。そう続けてマサキはステージを見上げた。
やがて問題の求婚シーンが始まった。王役の女性が王女役の女性の垂れ帯をしきりと引っ張っている。どうやらその動きで王女に求婚していることを表しているようだ。それをその都度、強い表情と動きで拒否する王女。先程の浪漫に溢れた踊りとは異なる態度に、そりゃ王様だって腹を立てるだろうよ。話の筋を知っているからこそマサキが呟けば、シュウはその反応が面白かったようだ。小さく声を上げて笑うと、スマートフォンで件のシーンを何枚か撮影し始めた。
そしてクライマックス。王女の態度に立腹した王が王女の兄の国に攻め入ろうとしたところで、姿を現わす魔鳥ガルーダ。ガルーダ役の女性は侍女役と兼任であるらしい。往く手を阻む魔鳥相手に王は一歩も退かず、戦いを挑む決心をしたようだ。両手に翼を模した飾り物を装着した侍女役の女性と王役の女性が睨み合うようにして舞っては、時に扇子を用いて切り結ぶ様が表現される。
さあ、これからだ――といったところで、レゴン・ラッサムの踊りはこれで終わりらしい。全ての登場人物が掃け、ガムランの音が鳴り止み、静けさに満たされた会場に、マサキは思わず声を上げてしまっていた。
「これで終わりかよ。ここからだろ」
「ダイジェスト版らしいですからね。見所だけを詰め込んだのでしょう」
「続きはどうなるんだ?」
「残念ながら王は命を落としてしまうようですよ」
「何だって? ここまでやっておいてその結末かよ。報われない話だな」
はあ。マサキは盛大に溜息を洩らして、次の演目が始まるのを待った。
いつの間にか動画まで撮っていたようだ。この空き時間を使ってスマートフォンに溜まった画像と動画のチェックをするつもりらしいシュウに、次の演目について尋ねてみる。パンフレットにあったこの演目の部分の英語は、マサキの語学力では読み取れない単語が多かった。シュウの語学力であれば正しく読み取れていることだろう。
彼はスマートフォンを操作しながらもマサキの問いに答えてくれた。それによると次の踊りは『男装した女性の踊り』を男性が踊って表現するものであるらしい。難しくないか? 捻った題材に驚いたマサキは繰り返し尋ねた。
「今日の舞台を務めているのはウブド王宮が所有している歌劇団なのだそうですよ。バリで観光客相手にバリ舞踏を披露し始めたのはこのグループが最初なのだそうです。それだけに魅せ方を知っているベテラン揃いなのだとか。彼らからすればそういった難度の高い踊りほど、闘志が駆り立てられるのかも知れませんね」
「へえ」マサキは感じ入らずにいられなかった。「そういった日に当たるなんて、俺は運が良かったんだな」
「その通りですよ。運が良過ぎて逆に怖いくらいです。明日のあなたが盛大に迷わなければいいのですが」
「まあ、うん、それはな……」
そろそろだとマサキ自身感じているだけに、シュウの言葉が冗談とは受け止められなかった。しかも明日は観光地を巡るのではなく、ショッピングに時間を費やす予定だ。長時間に渡って人気の多い通りを往くことになるだけに不安が募る。
「大丈夫かな、明日」
「私から離れなければ、恐らくは」
「それに自信がないからだって云ってるじゃねえかよ……」
「目を離さないようにはしますよ。あなたは私の服の裾でも掴んでいるのですね」
さんざじゃれ合うような触れ合いを続けてきただけに、当然とシュウが云ってのける。そうだな。マサキは頷いて、シュウのシャツの袖を掴んだ。今まで順調に進んできているだけに、猛烈な不安に襲われる。
まだ早いですよ。と、シュウが微笑んだ。
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