いやー、更年期の仕事って本当に身体に来ますね……私は休むところまでは行かない症状ですが、前の職場では頻繁に休む同僚がおありまして、最近とみに彼女の辛さがわかるようになってきた@kyoさんです。と、いうことでお待たせしました!!!リクエスト二件目です!
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そう、なんと絵ですよ!!!絵で頂いちゃいましたよリクエスト!!!!この絵に見合う話を書かねば!と頑張りましたわたくし。でも……その……何かまた変な話を生み出してしまった気がするんですが……ま、まあその判断は皆様に委ねることにしまして、本文へどうぞ!!
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<あなたにあげたい>
ラングランの城下町で催し物があるとサフィーネたちより聞かされたシュウは、城下町で催し物があると云っても取り立てて珍しいことでもなし――と、まるで興味をそそられることはなかったものだが。その催し物を主催しているのがかの魔装機操者たちであるらしいと続けて耳にして、それでは話が違ってくると思ったものだ。
一体どんな催し物をするつもりなのかと尋ねてみれば、安易と云えば安易、手間がかかっていると云えばかかっているとも取れる屋台祭りなのだと云う。とはいえ中央通りに屋台を並べて終わりではなく、随所に様々な出し物を展開させるのだとか。ラングラン全土の屋台は元より、彼らの国の名物屋台も並べる予定らしい無国籍な祭り。それはさぞ賑やかな催し物となるだろう。シュウはそう思いはしたものの、予想していたよりも順当な結末に、気落ちした感が否めない。
「行きたいのですわ、シュウ様。マサキがいますもの。きっと、日本のお祭りの食べ物が食べられることでしょう。わたくし、食べてみたいものが沢山ありますの。水あめでしょう。わたがしでしょう。チョコバナナにかき氷。それから……」
「僕、射的をやりたいんだよね。あれで一度でいいから、特賞を当ててみたいんだ。くじ引きや型抜きもいいよね。商品があると俄然燃えてくるよ。だから、ねえ行こうよ、シュウ」
モニカとテリウスの姉弟は既に行く気でいるようで、シュウが断る筈がないとばかりに二人がかりで行こう行こうと押してくる。
「手に入れた当日のマップを見ますと、かなり大規模なお祭りになるようですわね。出し物もラングラン全土の有名な伝統芸能や大道芸を集めたようですし、それを見るだけでも楽しめそうではありますわ」
口々に騒ぎ立てる二人を呆れた様子で眺めつつも、口ぶりから察するに、自身も祭りに行くのは吝かではないようだ。「如何いたしましょう」と、シュウの促すように答えを求めてくるサフィーネに、シュウは一旦答えを保留してモニカとテリウス二人の様子を窺った。
余程、祭りを楽しみにしているとみえる。サフィーネが手に入れてきたらしい当日の屋台の配置図を見ては、あれだこれだと声を上げているモニカとテリウスに、騒々しい場所に好んで行きたくはないシュウではあったが、自分に付き合わせてしまった結果、彼らに代わり映えのしない生活を送らせてしまっている現実がある。
――偶にはその我儘を聞いてやってもいいだろう。
思えばシュウは彼らに苦労を強いてばかりで、見返りらしい見返りを与えて来なかった。それは彼らが勝手にシュウの許に押しかけてきている状態だからこそでもあったが、そういった彼らに助けられて様々な困難を乗り越えてきたのだ。それにしては大したことをして来なかったものだと、戦いに明け暮れた日々を振り返ったシュウは己の配慮の行き届かなさを省みずにいられなかった。
そうやって彼らの都合よりも自身の都合を優先してきたシュウであったが、今となっては過去の柵《しがらみ》も真の過去となった。これからの新たな生活をどういったものにずべきなのか、シュウは未だその答えを見付けられてはいなかったが、彼らとの生活がこれからも続くことだけは変わらない。
「わかりました。偶にはこうした催し物に参加するのもいいでしょう」
その生活を少しでも彩りのあるものにするのも、自身の務めであるのかも知れない。そんなことを考えながらシュウが彼らの願いに応じてみせると、モニカやテリウスだけでなく、サフィーネの顔までもがぱあっと輝いた。
「ありがとうございます、シュウ様!」
「やったね、姉さん」
「あんたたち、屋台ばっかじゃなく、出し物もちゃんと見ないさいよ」
そうして祭りのパンフレットに目を通しては、また騒々しくあれこれ口にし出す彼らに、それだったら浴衣ぐらいは買ってやるべきだろうか。シュウはそう考えながら、祭りの当日へと思いを馳せた。
城下町の中央通りを左右に切れ目なく並ぶ多国籍な屋台に、そこかしこで繰り広げられる伝統芸能や大道芸……シュウがそういった華々しい祭りを目にしたのは、どうかすると十年以上昔になるやも知れない。思い出せないほどに過日となってしまった祭りの記憶に、そうした行事に興味や関心が強い方ではなかったからとはいえ、味気ない日々を送ってしまったものだと、シュウは浮足立つ彼らを尻目にひっそりと溜息を洩らさずにいられなかった。
色鮮やかなフラッグや電飾が空を覆う中央通りには、シュウが想像した通りに切れ間なく屋台が並んでいた。街のそこかしこにて披露されている伝統芸能や大道芸。めいめいに色とりどりな衣装に身を包んだ人々が群れをなす|屋台祭り《フェスティバル》は、近年稀に見る人出を城下町に集めていた。
色鮮やかなフラッグや電飾が空を覆う中央通りには、シュウが想像した通りに切れ間なく屋台が並んでいた。街のそこかしこにて披露されている伝統芸能や大道芸。めいめいに色とりどりな衣装に身を包んだ人々が群れをなす|屋台祭り《フェスティバル》は、近年稀に見る人出を城下町に集めていた。
ラングランで有名な祭りと云えば各地で行われている精霊祭だが、宗教祭祀的な側面が強いだけあってエンターティメント性に乏しい。それに対してこの祭りのエンターティメント性はどうだ。ただ純粋に来場者が楽しむ為だけの祭りは、娯楽にあっても全力投球な魔装機操者たちが考えただけはある。老若男女問わずな人出の只中で、サフィーネたちとともに幾つかの出し物を見終えたシュウは、ただただ彼ら魔装機操たちの企画力と行動力に感心せずにいられなかった。
まるで国を挙げてのフェスティバルのような様相を呈している祭り。他の場所ならいざ知らず、城下で三日にも渡って行われる祭りの主催を魔装機操者たちが務める為には、彼らを監督しているセニアの助力が必要不可欠だ。恐らくは賑やかしの好きな彼女のこと。一枚どころか二枚も三枚も噛んでいるに違いない。そう考えたシュウは、この祭りの為に彼女に相当に顎で扱き使われただろう情報局の局員たちの苦労に思いを馳せ、しかしそれも滑稽な光景だとひとり笑った。
「まあ、可愛らしい風船! ハート型に星型もあるのですわ!」
「あんた、そのお子様趣味どうにかしたら?」
「あら、先ほどシュウ様にブレスレットを買って貰って喜んでいたのはどこのどなたでしょう?」
「うっさいわね。可愛いでしょうよ、オープンハートのブレスレット!」
「ひと昔前の趣味なのですわ……」
わたあめだチョコバナナだ焼きそばだお好み焼きだと浮かれ騒いでは片っ端から買い歩く浴衣姿のサフィーネとモニカに、これも屋台の醍醐味と屋台でそれぞれにブレスレットを買い与えたシュウは、次いでそれらの荷物を持たされながら歩いていたテリウスの射的に三十分ほど付き合うことにした。結局、目標としていた特賞には手が届かなかったものの、一等賞の小型デジタル音楽プレイヤーを手に入れたテリウスは、「朝の散歩の時に音楽を聴くのに使おうかな」と思う程度には満足したようだ。
「流行が過ぎた商品は定番になるのよ。そのぐらいのことも知らないなんて、やっぱり王女様よねえ」
「それより二人とも、風船買うの? 買わないの?」
「買いますわ」
「買うわよ」
「買うんだ……なら、早く選びなよ。他の人たちの迷惑だよ」
そこから五分ほど。そう離れていない風船屋の前で足を止めたモニカに絡むサフィーネ、そして二人を嗜めるテリウスと、日常的な光景を繰り広げた彼らがあれでもないこれでもないと風船を選び始めるのを、シュウはその背後で口も挟まずに眺めていた。
シュウ自身はこうした浮かれ騒ぐ空気に馴染めるとは思っていなかったものの、それでも一種独特な雰囲気の中に身を置いていると思うところが出来るものだ。日常のふとした瞬間に感じる幸福もあれば、非日常にあってこそ感じる幸福もある。そもそもこうした大規模な祭りが行えるのも、平和が訪れたからこそ。彼らを伴って何も案じずに城下町を闊歩出来る幸福を、シュウは彼らの騒々しい様子を間近に噛み締めていた。
「見てくださいませ、シュウ様。こんなに沢山の小さなハート型の風船が集まっていると、まるで花束のように見えませんか」
「あんた本当に少女趣味なのよ。あたしは大きなハートがひとつの方がいいわ。その方が愛情が大きく感じられるじゃないの。そうは思いませんか、シュウ様」
互いに趣味が異なるからこそ口々に反意を唱えずにいられないながらも、結局は大きなハート型風船の中に小さなハート形の風船が入っているタイプの風船を、微笑ましくも色違いで買ったサフィーネとモニカに、「何だかんだで気が合うよね、二人とも」テリウスは笑いを堪えきれない様子で、同意を求めるようにシュウを見上げてきた――……。
だから、少なくとも風船屋の前までは一緒にいた筈だったのだ。
サフィーネたちに限らず、誰も彼もが顔を輝かせて屋台や出し物に見入っている。そうした祭りの光景にふとシュウが目を奪われた瞬間だった。どうやらその一瞬でサフィーネたちとの間に距離が出来てしまったようだ。次にシュウが目の前に視線を戻した時には、彼女らの姿は既に人いきれの中にかき消されてしまった後だった。
シュウは仕方なしにポケットに忍ばせていたチカを取り出して、彼らを探すように命じて宙に放つ。少しの間、不自由を強いられていたことに対する愚痴を吐き続けていた彼は、三日間の餌増量キャンペーンをシュウに承諾させたことで手打ちとしたようだ。直ぐに翼を大きく広げると上空で四方八方へと舞い始めた。
やがてその姿が道の奥へと遠のいてゆく。その姿が更に小さくなってゆくのを確認したシュウは、時間がかかりそうな事態に、だったらそれまで人疲れした身体を休めておこうと大通りから一本奥の道へと入る。
中央通りに並びきれずに溢れ出た屋台が並んでいるものの、人気の減った通り。どちらかと云えば日常的な服装の人間が多い辺り、城下町に住まう人々が祭りの見物に励んでいるようだ。日常と非日常が混じり合った裏通り。この通りを左に折れれば公園がある。そこも人で溢れているには違いないだろうが、シュウとしては芝の上でもいいから腰を落ち着けたくあった。
だからといって、急くのも性に合わない。ゆったりとした歩調を崩すことなく歩き続けたシュウは、暫くしてようやく公園に辿り着いたものの、そこにも溢れている屋台を目の当たりにして、これは身体を休めるのは無理そうだと思い直す。そして仕方なしに踵を返そうとしたその瞬間に、
シュウの目を覚まさせるように、世界が色を増した。
天然色に彩られる世界。いつだって彼との出会いは、こうしてシュウの目に一線を画した世界を映し出してくれるのだ……鮮やかな色を放つ世界の真ん中で、自らが集めるのに奔走しただろう屋台の数々を、まるで感慨に耽るかのように眺めているように映るマサキの背中。これだけ人に溢れた広大な城下の街中で、まさか出会えるとは思っていなかった人物との邂逅に、シュウは即座にマサキ――と、その名を口にしていた。
振り返ったマサキの口元に咥えられている真っ赤な林檎飴。どうやら彼はシュウの期待とは裏腹に、自身もまた祭りを楽しんでいる真っ最中だったようだ。今さっき買ったばかりと思しき、齧られた形跡のない林檎飴。それを片手にシュウへと近付いて来る。
「運営はあなたたちの仕事では?」
「何でだよ。俺たちの為でもあるんだぜ。それにこんな規模の祭り、俺たちじゃもう仕切れないだろ」
云いながら飴を舐めるマサキに、それも確かにとシュウは頷いた。
セニアが介入してしまった時点で、予想が付く事態。じゃじゃ馬娘との表現は伊達ではなく、制御不能なまでに暴走することがままある彼女は、彼らの計画を聞いている内に堪えきれなくなったのだろう。でなければ、どうしてここまで祭りの規模が大くなったものか。
「我が従妹ながら傍迷惑な性格をしている」
「お前がそれを云うかよ」
盛大に顔を顰めてみせたマサキは、これまでのシュウの行動の数々に相当に物思うところがありそうだ。
無理もない。地上と地底、ふたつの世界を股にかけて戦いに挑むことになろうとは、かつてのシュウとて思ってもいなかった事態であった。シュウが招いた訳ではないにせよ、自身が介在した厄介事の処理に励まなければならなかったマサキとしては、これだけでは済まないほどに云いたいことが溜まっているに違いない。それをこの程度の愚痴で済ませてくれるのが、彼が彼である所以でもある。
「大体、お前はその従兄だろうよ。血縁関係ってやっぱり似るもんだって、俺はつくづく思うがな」
しかし耳に痛い言葉もあったものだ。何を答えても云い訳にしかならないシュウとしては、マサキの反応《カウンター》を微笑んで遣り過ごしてみせるしかない。けれどもそれを、マサキはシュウの無言の抵抗と捉えたらしい。はあ、と大袈裟に溜息を吐いてみせると、
「まあ、いい。お前ひとりなのか?」
「サフィーネたちと来たのですが、そこではぐれてしまったのですよ。今、チカに探させているところです。その間に少し休もうと思ったのですが、まさか公園までこの有様とはね」
「町外れまで行かなきゃ無理だろ。セニアが滅茶苦茶張り切って集めた屋台だぜ。城下町に収まる程度で済んでよかったって、俺は半分本気で思ってるけどな」
「止めればよかったものを」
「ちょっとのアイデアがこんな騒ぎになるなんて誰が思うかよ。パンフレットが刷り上がって誰が一番驚いたって俺たちだっつうの。あの野郎平和の祭典にするだの何だの云ってやがったが、結局の所、ただお祭り騒ぎがしたかっただけなんじゃないかね」
「とはいえ、ラングランの権勢を内外に誇示するのに、これ以上のイベントもない気はしまずがね。各地から集められた屋台と出し物に人々がこぞって詰めかけているのは、それだけ国民に余裕があるからでしょう。それをアピール出来ただけでも、彼女にとっては実りある祭りになったと思いますが」
「そうなんかね……」
ぱりん、と飴を齧ったマサキが、そこでシュウの空いている両手に目を遣った。
「ところで、お前はちゃんと祭りを楽しんでんのかよ。見たところ何も持ってねえようだが」
「あなたに心配されずとも、ちゃんと楽しんでいますよ。彼女らと行動をともにしていると飽きる暇がありませんのでね」
「そういう意味じゃねえよ。お前自身はどうなんだって話だ」
その言葉の意味を掴みかねているシュウに、ややあってマサキは仕方ねえなと呟くと、そのまま屋台へと駆けて行った。何をするつもりなのか、とシュウはマサキの帰りを待つ。祭りの空気に馴染めないとは感じているシュウではあったものの、だからといって寂しさを感じるような年齢ではもうない。ほどなくして林檎飴をはじめとした屋台食の数々を手に戻って来たマサキに、彼の意図するところを悟ったシュウは、「結構ですよ、マサキ」と声を上げるも、マサキは引く気がないようだ。
ほら、と渡された林檎飴を手にする。次いで空いている手に掴まされるわたがしと、ビニール袋に入っている焼きそばにお好み焼き。「こんなにどうしろと」途惑いながらもそれらを手にしたシュウは続けて、
「サフィーネたちには充分に買い与えましたよ」
「そうじゃねえって云ってるだろ。それはお前の分だ……って、まさか庶民の食いもんには興味がねえとか云うつもりじゃねえだろうな、お前」
「そういうつもりはありませんが、私がこうしたイベントごとに浮かれ騒ぐ性質だとでも?」
「祭りを喜ぶ気持ちに年齢も性格も関係ねえだろ。だから祭りって云うんじゃねえか」
「あなたにしては哲学的なことを云う」苦笑しながらシュウは林檎飴の袋を解いた。
手にしている他の屋台食が荷物となって邪魔ではあったが、口にしなければ減らないものでもあるのだから仕方がない。林檎の上で広がっている飴に、マサキを真似てシュウは噛り付いた。ぱりん、と音を立てて飴が割れる。それを口の中に収めると、砂糖をそのまま溶かしたような甘さが広がった。
今まで目にしながら口にしたことのなかった屋台食の味に、日本人にとってのハレの日の食事とは、こういったものでもあるのだ――と、自身もまたそこに出自《ルーツ》を持つシュウは思いながら、ひとりで口にするのには大き過ぎる林檎飴に噛り付く。
「どうせお前、あいつらが見付かるのを待つんだろ。だったら付き合えよ。そこに型抜きがあるんだ」
「ああいったものは上手く出来ないように出来ているものでしょうに」
「だから挑戦したくなるんだよ……って、お前ちゃんと知ってるのな」
「日本の祭りそのものは何度か目にしたことがありますからね」
地上で日本にいた頃に。そう続けたかった言葉をシュウは飲み込んだ。
様々な柵を清算した今となっても軽々しく口にしていい過去ではない。ささいな切欠で人間の人生は坂を転がり落ちるように堕落してゆく。それがシュウをして、身を以て思い知らされた真理であった。そうしたシュウの精神性に対する不安は、今も他人には残っていることだろう。ましてやその時代のシュウを孤独に追い続けたマサキが相手だ。どうすれば容易く口に出来たものか。
けれども、最早、それがいつどういった形で為されたことであるのかに、マサキは興味が湧かないようだった。もうそれも随分と昔のことになってしまった――と呟いたシュウに、「だったら今日を楽しめよ」そう返してきたマサキはに不敵に笑ってみせると、ほらとシュウの服を引いた。
そのまま型抜き、射的、輪投げにくじ引き、金魚すくいと、立て続けにマサキの遊行に付き合わされたシュウは、それぞれに獲得した景品をマサキに押し付けると、自身はすくえなかった金魚すくいで貰った一匹の金魚だけを祭りの土産とすることにした。
そのまま型抜き、射的、輪投げにくじ引き、金魚すくいと、立て続けにマサキの遊行に付き合わされたシュウは、それぞれに獲得した景品をマサキに押し付けると、自身はすくえなかった金魚すくいで貰った一匹の金魚だけを祭りの土産とすることにした。
「ちゃんと食えよ、それ。お前の為に買ってやったんだからな」
いじましい努力で半分に減らした林檎飴。手にしたままの屋台食が思ったほど減っていないことに気掛かりを感じたのだろう。マサキが釘を刺してくる。
「今日、明日をかけて食べきることにしますよ」
餌増量キャンペーンの分以上に働くこととなったチカは、不満を洩らしながらもシュウの許にサフィーネたちを連れ戻すことに成功していた。シュウとはぐれていた間に屋台を楽しみ切ったらしい彼らは、マサキとの会話を遮るように次は出し物回《めぐ》りだと、シュウの袖を引いて誘いかけてくる。
「では、マサキ。私はこれで失礼しますよ」
「三日間続く祭りなんだから、無理はすんなよ。今日が駄目でも明日があるんだ」
そのマサキの言葉を聞いているのかいないのか。シュウの衣装の袖から手を離す気配のないサフィーネたちの興奮した様子に、まだまだ帰宅の途には就けなさそうだと先行きに不安を感じながらも、手にした屋台食や金魚の重みが自身が獲得した幸福の重みでもある。シュウはそのささやかな重みの意味を深く噛み締めながら、今度は自分自身も彼らとともに祭りに参加すべく、マサキが残る公園を後にした。
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