まあまあ書きたいものを書きたいように書けた気がします。
やっぱりシュウマサは前向きであって欲しい!そういう気持ちで書きました。
もう一回ぐらいはこのテーマで書くと思います。
拍手有難うございます!励みとしております!
風邪はまだ良くなってませんが、シュウマサ断ちをする方が精神的に良くないので……と、いったところで本文へどうぞ!
やっぱりシュウマサは前向きであって欲しい!そういう気持ちで書きました。
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<また巡る>
「お前さ、ホント、良くそういう言葉がすらすらと出てくるよな」
「実際、本当に楽しみにしていますからね」
呆れているのか感心しているのか不明な表情で言葉を吐いたマサキに、シュウは声を立てて笑った。そして、食べますか。と自身の半分に切り分けたオムレツをマサキにプレートごと差し出す。
「そういうことをするから俺が太るんだよ」
云いながらも食べることには吝かではないらしい。オムレツを掬ったマサキが、それを自身のプレートに置く。
朝のシュウの食が細いの知っていても、同じだけの量を用意せずにいられないのだそうだ。そうした食卓が当たり前であるからだろう。全員が同量の食事を公平に。彼と彼の仲間の親しさが窺い知れるエピソードだ。
「お前がちゃんと食べるようになるのが一番なんだけどな」
「食べていない訳ではありませんからね。ただ朝に胃に重い物を入れるとね。頭の働きが鈍くなるように感じられるものですから」
「多少腹が空いてた方が、頭の働きは良くなるって云うもんな」
気心知れた仲だからといって、志向が同じとは限らない。身体を動かすことに喜びを見出すマサキは、食欲旺盛ぐらいで丁度いいほどに良く動いたし、頭脳を働かせることに喜びを見出すシュウは、足りないぐらいが丁度いいほどにひとところで用を済ませがちだ。
それで良くふたりの時間を過ごせたものだとシュウは思うが、そこは程度の差であるのだろう。シュウの許にいる間のマサキはソファから動かないこともままあったし、ベッドでだらだらしていることも珍しくなかった。まるでシュウの家の付属物にでもなってしまったかのように、室内で気ままに過ごすマサキ。彼にとってシュウの家は自宅とは別の意味でリラックス出来る場所であるようだ。
それがシュウには誇らしく感じられた。
気取り屋な面がある彼は、他人の前では自分を大きく見せようとすることがままあった。虚勢を張るほどではないにせよ、見栄を張ってみせる程度には、自分という人間を飾ってみせる。それは彼が自身の望む人物像に近付く為の努力の表れでもあるのだろう。
シュウはマサキが被っているその鎧を脱がせたかった。
それはシュウがありのままのマサキ=アンドーという人間を必要としていたからに他ならない。彼にはシュウにないものが備わっていた。夢物語に近い理想を叶えられると信じている純情さにしてもそうだし、幾度踏みしだかれても立ち直る葦のような逞しさにしてもそうだ。まるで幼児のような素直さ。彼の無垢な精神は運命に疲弊したシュウの心を慰め、奮い立たせてくれるものである。
「ところで、さっきの話なんだけどさ」
「さっきの?」
「10年後の俺たちの話だよ。何をしてるんだろうな、その頃の俺たちは」
「あまり変わっていないと思いますよ」
10年後。不惑を迎えたマサキは、変わらずにラ・ギアス世界の平和と秩序を保つ為に戦い続けていることだろう。シュウはその未来を脳裏に思い描いた。古い仲間と新しい仲間を率いて戦場に立つ彼の姿は、目を背けたくなるぐらいに眩いものであるに違いない。
「それは流石にヤバくないか?」
けれどもそれでは不服なようだ。声を上げたマサキにシュウは訊ね返した・
「ならば逆に聞きますが、あなたは何処を目指しているというのです」
「そりゃあ、ランドールの名に見合うだけの実力だろ」
思いがけず明瞭りと自らの求むるものを口にしてみせたマサキに、これは意外とシュウは目を細めた。
確かにマサキは他の地上人たちと比べて傑出した才能を誇っている。剣術の才能に、魔装機神を手足のように乗りこなしてみせる操縦センス。爆発的な気《プラーナ》の量を誇るマサキは、確かにラングランの剣術指南役といった小さなフィールドに収まるような人間ではない。
有する才能の割には勿体ないことをしている――シュウが常々マサキに感じていたもどかしさを、彼はいつの間にか自らの気付きによって乗り越えてしまっていたようだ。
「でしたら、生身でヴォルクルスを斃せるようにならないとなりませんね」
「難しいもんだよな。やってることは想像付くんだが、それを実践するとなるとな……」
それはマサキがランドールの剣技の極意を理解しているということでもある。自らの力のみでそこに辿り着いたマサキに、けれども最早嫉妬を抱くこともない。シュウはただそれを自分のことのように誇らしく感じながら言葉を継いだ。
「想像が付くだけ流石ですよ。私には到底及べない」
オムレツを半分、マサキに渡したことで呆気なく片付いた朝食のプレート。シュウは残されたスープに手を伸ばした。とうに温くなったインスタントのスープ。味が濃い目に感じられるのは、シュウが薄味を好む性質であるからだろう。
「お前はないのかよ。目標」
「ありますよ」シュウは空になったカップを置いた。
「40歳を超えたら研究を纏めようと思っているのですよ。数多の著名な研究者が代表作を生み出すのは、中年から晩年にかけてと相場が決まってますしね。そのぐらいから始めれば、丁度いい頃合いに私は私の研究の総決算に相応しい著作を出せることでしょう」
「そっか」マサキはどこかほっとしたような表情を浮かべた。「お互いこれからの10年もゆっくりしてる暇はなさそうだな」
そうですね。頷きながらシュウは立ち上がった。そして空になったプレートとカップをシンクに沈める。なあ、シュウ。まだプレートに食事を残しているマサキが、シュウの名を呼ぶ声が背後から聞こえてくる。
「10年後、またこういう話をしようぜ」
シュウは勿論と頷いた。それはこれからもシュウとマサキの付き合いが変わらずに続くという約束でもある。
未来に見たいものが沢山あるシュウは、その日の訪れが今から待ち遠しくてどうしようもない。マサキがどう年齢を重ね、どういった歳月の変化をその顔に刻むのか……そしてどういった栄光を掴み取るのか……その答えをその日の楽しみに取っておくことにしたシュウは、黙々と食事を片付けているマサキを振り返って静かに微笑んだ。
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