あれ?この話もしかしてまだ終わらない???
あと三回ぐらいで終わるって云ったような気がするんですが、この調子だとまだまだ終わらなさそうですね。しかもこの先エロがない?いやいや!こうなったらどうにかしてエロを入れますよ!
だってこの話はそういう話ですから!
拍手、有難うございます。励みとしております!亀の歩みですが頑張ります!
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<インモラルオブザーバー>
「俺の?」
マサキは問い返した。
「この施設はバゴニア領内にある。正規のルートでラングランの要人に連絡を取るとなると、膨大な手間がかかるだろう。我々はあくまで自主的に自治区の治安を守っている自警団でしかない。議会の承認を得るのは勿論のこと、専用の外交官を用意する必要もある。超法規的な存在である魔装機神の操者な君には考え難いことかも知れないが」
男の云う通りだ。マサキは男の顔を真っ直ぐに見据えた。
魔装機操者たちとの距離の近さに勘違いしそうになるが、彼女がラングラン王室の一員であることは揺らぎようのない事実だ。情報局のトップとして内政や外交に深く関わっているのは勿論のこと、ラ・ギアス世界の秩序の守り人たる十六体の正魔装機に対して実効的な監督権を有している。
その立場の強さから、彼女をラングラン帝国の実質的な首魁と見る向きは強い。ラングラン議会からの評価は勿論だったが、諸外国とのトップ会談でも名指しされることが多いと聞く。
紛れもなくラングラン随一の要人。
確かに辺境の地にある自治区――しかも国家に正規に編成された訳でもない自警団では目通りが叶わない相手だ。
「いや、そのぐらいはわかるぜ。と、なると俺が動いた方がいいってことか……だが……」
マサキは宙を睨んだ。
現状、自治区でセニアと直接的に接触を図れるのはマサキしかいない。とはいえ、不安定な状況に置かれている自治区から離れていいものか。サイバスターの足であれば、一日もあれば王都と自治区を往復出来るが、そうしてサイバスターを自治区から引き離すシュウの計略である可能性も否定は出来ない。
「勿論、いつ正体不明な敵が攻めて来ないかもわからぬ状態で、君にこの場を離れられるのは困る」
それを目の前の男も理解しているようだ。ぴしゃりと云い放った男にマサキは安堵した。
流石は自警団の実質的なリーダーだ。見るべきところや、考えるべきポイントはきちんと押さえてくる。それにマサキは安堵した。彼がいれば自警団が自治区の防衛戦で大きく負けることはないだろう。
戦いで大事なのは、組織を率いる人間の能力だ。奢った指揮官に率いられた部隊は呆気なく瓦解する。そういった意味で、マサキの目の前の男は及第点以上であった。
「なら、俺に何をしろって?」マサキは尋ねた。
「ラングラン正規軍の通信回線を一時的に開放してもらいたい」
「回線を――か。確かにバゴニア領内からバゴニアの回線を使ってセニアに連絡を取るのは、セキュリティ的な意味でリスキーだな。今は和平条約が機能しているとはいえ、正体不明の敵のバックにどこの国がいるかなんてわかりゃしねえ」
「その通りだ。いつまたゼツの意思を継ぐ者が現れないとも限らない。それに、元がひとつの国だっただけに、バゴニアとラングランの間には対立要素が多い。今の平和は一時的なもの。そう思っておいた方がいい」
「一時的なもの……か……」
「近い未来か、遠い未来かはわからないが、いつかはまた交戦状態に陥る。それがバゴニアとラングランの歴史だ」
淡々と語る男の台詞に、マサキは自分が目指す平和への道のりの長さを思い知らされた気がした。
たったひとつの自身を縛る枷。世界の存亡の危機においては全てを捨てて戦え。それを裏切るつもりは毛頭ない。マサキは死ぬまでサイバスターとともに、この地底世界を平和に導き続けるのだと決めている。
それでも、一度は平定に導いた世界の姿が、結局は仮初めのものに過ぎないと告げられるのは堪える。
何の為に戦い、何の為に平和を目指すのか。
それは単純なことだった。
力なき民草を守る為。
力に溺れ、驕り、武力で全てが解決出来ると思い込んでしまった為政者から彼らを解放し、慎ましくも平穏で幸福な一生を送らせてやる。それがマサキが胸に秘めた戦いの理由だった。
その為には挫けている暇などない。マサキは口唇を噛んだ。何度打ちのめされようとも、この命がある限り、第二の故郷の平和を守る為に戦い続ける。そう決意を新たにし、顔を上げる。
「けれど、あんたはそれでも自治区をひとつにしたい」
「勿論だ。この街を礎に、バゴニアとラングラン両国が結び付きを強固にする未来を目指す。その気持ちに変わりはない。ただ、前回の件にしてもそうだが、バゴニアは自治区になるべく不干渉でいたいようだ」
それはマサキも感じていることだった。
ラングランとバゴニア。ふたつの国が融和を目指す為に作られた自治区は、そのセンシティブな立ち位置もあり、どちらの国家からも干渉を受けていなかった。
無理もない。片側の国家の支配が強まれば、その時点で、自治区内のバランスは崩れてしまう。自国民を危険に晒さない為にも、両国は静観を保たねばならなかった。だからなのか。自治区そのものが攻められるという事態に陥っていながら、どちらの国も簡単には腰を上げる気はないようだ。
「まあ、いい。サイバスターの通信機能を使うぜ。暗号化もせずに軍と通信をする訳にはいかないからな」
「方法については君に任せる。大事な魔装機神を自治区に留めているんだ。文句を云う者もいないだろう」
「なら早速動くとするか。つうても、セニアに連絡が取れるのは明日か。今日はもう遅いしな」
マサキは椅子から腰を浮かせた。そのついでとちらとモニターを窺う。
独房内のシュウはまだ読書に専念しているようだ。膝に開いた書物の頁が、読書の習慣のないマサキからすれば、驚異的なスピードで捲られてゆく。
「動きがあればいいんだが」
「どうだろうな」
監視モニターに向き直った男の声には、相変わらず抑揚がない。
「ここまで強情に敵方に繋がる情報を吐いてこなかった彼のことだ。もしかすると陽動策のひとつな可能性はある」
「だよな」マサキはモニターに背を向けた。「強情さじゃ俺に勝りやがる」
「だとしても仕方あるまい。前回も仲間の為にあれだけのことをしてのけたぐらいだ。今回もそうでない保障はあるまい」
感情を表すことのない彼は、どういった事態が自治区を襲おうとも、自我を押し殺してその治安維持に当たるのだろう。冷静沈着な姿はシュウにも通ずるところがあるが、彼に関しては、それが頼もしくももの悲しくも感じられる。
自分もいつかはこうなるのだろうか? 凄惨な戦いの現実を目の当たりにし続けてきたマサキは、徐々に麻痺し始めている自分の感情に、そう考えずにいられなかった。
※ ※ ※
夜間の要請を重大事と捉えたようだ。軍部から連絡を受けたセニアは深夜も遅くなってから、バゴニア側と繋いでいる専用通信回線《ホットライン》を使って施設にコンタクトを試みてきた。
「そんな重要な用事じゃねえんだけどな」
管理室にいるのはマサキとあの男のふたりだけだ。流石に|専用通信回線《ホットライン》の使用ともなれば機密性が増す。管理室の扉は固く閉ざされ、扉前には数人の自警団員が見張りに立っている。
「いいじゃないの。あなた、ここのところ王都に滅多に寄り付かなくなっちゃったんだもの。少しは様子を見ておかないと」
ラングランの実質的なトップからの緊急の申し入れに、バゴニア上層部は飛び上がらんばかりに驚いていたという。
「いつ彼らからの連絡がくるか待っていたんだけどねえ」
そう云ってかんからと笑ってみせたセニアに、「どういうことだ?」マサキは尋ねた。
「ラングラン側からの攻撃だったとはいえ、自国領にかかる街が正体不明の敵に攻め込まれてるのよ? これで動かないって、どうなのかしら。確かにこの街には正規軍より頼りになる自警団がいるけれども、装備面や物量では正規軍には敵わないでしょう。それにここは大事な場所。バゴニアとラングランの未来を繋ぐ大事な架け橋であるのよ」
「その割にはお前も動かねえじゃないか」
「それについて話をしたいことがあるんだけど――」
そこで一度言葉を切ったが、管理室内を眺めるように視線を這わす。
何かを考えているようだ。なんだ? マサキはセニアの態度に引っ掛かりを覚えた。明朗快活な女傑は、核心をはぐらかすような真似はしない。それだのにこの歯切れの悪さ。嫌な予感にマサキは眉を顰めて、モニターの一角に映し出されているセニアの様子を見守った。
「その前にあなたの話を聞かないとね。重要な用事じゃないって云っても、軍に要請を出したぐらいでしょ。それなりに緊急の用件だと思っているのだけど」
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