こういったノリで話を始めてしまうと、大半の人が脱落してしまうんじゃないかという恐れがあるので云っておきますが、始まりの文章は雰囲気ですからね!雰囲気!!!!真面目に読まないでくださいね!!!!
私は白河は圧倒的理系だと思っているので、意識という概念すらも数式で表そうとするんじゃないかと思っているんですが、皆様的にはどうですか? 彼に哲学をやらせたらヴィトゲンシュタインが出来上がるというのが私の考えなんですけど。
拍手コメ有難うございます!今日か明日にはコメ返したいと思います!
今回の白河祭りは本当に好き放題させていただいています。それを寛容にも見守ってくださる皆様には頭が上がりません。いやもう趣味全開で申し訳ございません。やぱ博士号持ちだからさー、白河視点は気合い入れて文章書かないとさー……などと云い訳をしつつ、本文へどうぞ!
私は白河は圧倒的理系だと思っているので、意識という概念すらも数式で表そうとするんじゃないかと思っているんですが、皆様的にはどうですか? 彼に哲学をやらせたらヴィトゲンシュタインが出来上がるというのが私の考えなんですけど。
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今回の白河祭りは本当に好き放題させていただいています。それを寛容にも見守ってくださる皆様には頭が上がりません。いやもう趣味全開で申し訳ございません。やぱ博士号持ちだからさー、白河視点は気合い入れて文章書かないとさー……などと云い訳をしつつ、本文へどうぞ!
<汝、求めるものに忠実なれ>
意識。この無限なる思索を誘発する潮流は、人間の魂そのものにして、脳を活動させる流動体エネルギーの一種である。また精神活動においては中核をなしており、五感に渡っては外部から入力される様々な情報を複層的に分析し、出力結果を自己という存在に還流《フィードバック》することで、個人という存在を強固に補強し続けている。
魂|=《即ち》生物の生命そのものであるが故に、その消失は死と同義と捉えられ、肉体的な生命活動よりも優先されがちな性質を備えているが、さりとて肉体のあるなしには関わることがない。意識とはそれそのものが実存であり、生命であり、自己であり、感情であり、理性であるのだ――。
※ ※ ※
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そこまで文章を記したシュウはキーボードを叩いていた手を止めた。
意識についての論文を書こうと思ったのは、ほんの思い付きだった。古今東西の文献より、意識に関しての記述を収集してデータ化する。DCの日本支部を率いているシュウにとって、作業を行う為の時間を捻出するのはタイトなスケジュールを組まないことには為せないことであったが、十指に及ぶ博士号を遊ばせて置くよりかは遥かに有意義な休暇の使い方である。ただ研究を繰り返しているだけでは博士号も持ち腐れ。学者世界には、論文という実績を重ねてこそひとかどの博士として認められるという悪しき慣習が残っていた。
序文を書き上げたシュウはファイルをセーブし、続けて卓上にデータベースを呼び出した。集計されたデータ、分析結果に必要な文献、論文を構成する|枠組み《フレームワーク》と、本文を書くに当たって必要なファイルを次々と開いてゆく。
あっという間に卓上を埋め尽くすホログラフィックディスプレイの数々。シュウはそれらに指を滑らせてそれぞれのデータを確認した。ここからが長い執筆作業の本当の始まりだ。軽く息を吸ったシュウは、再びキーボードを叩き始めた……。
人間の意識に対する認識の分析という自意識側からのアプローチによって、意識に具体的な形を与えようというシュウの試みはようやく形になろうとしていた。
無論、ただの集計作業で終わる論文ではない。哲学、心理学、数学、脳神経学と様々な学問から意識という存在に光を当て、その上で、そのダイナミックな流れを有機的なモデルへと落とし込む予定だ。
当然ながら機械工学の専門家《スペシャリスト》であるシュウの名声はその方面でのみ顕著であったし、そうである以上、この論文が書き上がったところでシュウの名声に響くことは恐らくない。それでもシュウにはこの論文を書き上げたいという強い欲があった。だからこそ、こうして僅かに得た自由時間を執筆に充てているのだ。
門外漢のシュウが記したこの論文は、数多の学者の口の端にも上ることなく消えて行くことだろう。それでもシュウは自らの頭脳をこの論文に懸けすにいられなかった。その執着心がどこから来るものであるのか――シュウはそれを本能的な知的好奇心の為せる業だと思っていた。識《し》ったという快感は悟りに似ている。その瞬間、認識宇宙と外界宇宙はひとつとなって、自己の外側に果てなく展開されるのだ。
しかし本当にそれだけだろうか? シュウは軽い眩暈を覚えた自身に、タイトなスケジュールが祟っているのだろう。そう考えた。そして、いずれにせよそうでなければならないと、心に感じた幾度目の違和感を説き伏せた。
自己の認識に誤謬が生じるなどあってはならないことなのだ。シュウは黙々とキーボードを叩き続けた。
信じるもの、信じているもの、その全て。シュウは自らが本《・》心《・》より帰依している宗教組織、ヴォルクルス教団を思った。その教義、その真理、そしてその実存。それらを疑うことなどあってはならないことだ。ヴォルクルス様。シュウは驚異的な情報処理速度で本文を書き進めながら、自らが信奉する神の名を口にした。自身の功績が、その唯一無二の真理に栄光を与えることなど決してない。わかっていても学問に対する欲求に限りはない。シュウは自身の解脱が容易ならざることに気付いていた。
――それもこれもあの男の所為だ。
全ての計画は、シュウが立てた通りに進行している。滅びの時を迎えたラングラン王都。計画の第一段階が順調に果たされたからこそ、シュウは自らの居場所を地上世界へと移した。後は教団が背後から手を貸し、煽り続けたシュテドニアスが実行してくれることだろう。
そう、ラングランの崩壊は始まりに過ぎない。
地底世界最大国家、神聖ラングラン帝国。豊富な物量と高い技術力を誇り、世界の秩序の維持に多大な影響を及ぼしていた国家の崩壊は、間違いなく世界のパワーバランスに変化を齎すだろう。シュテドニアスの軍勢が活躍の場を広げれば、彼らに続けと蜂起する国家も出る筈だ。それはドミノ倒しのように連鎖を続け、地底世界の果てまで混沌《カオス》を呼び込むに違いない。
最小の効率で最大の効果を。シュウと教団は地底世界が崩壊してゆくのを眺めているだけでいい。手駒を減らすことなく目的を達せる計画を立てたシュウは、その混沌を自らが信ずる神に捧げると決めた。全てはヴォルクルス様の為に。恐怖が吹き荒れる地底世界に、最後にその存在が顕現すると信じて。
――諦めの悪いあの男。
だというのに。シュウは胸が騒ぐのを止められそうになかった。
地底世界よりシュウを追ってきた少年マサキ。シュウが得ることのなかった白亜の大鳳をパートナーとした少年は、どうやら遊撃部隊ロンドベルにその所属を定めたようだった。たったそれだけの報せがシュウの心を何故か騒がせていた。力の差は歴然としている。今のあの少年が自分に敵うことなどない。わかっている筈なのに。
――忌々しい。
意識とは何だ。シュウは目の前のディスプレイの群れに目を遣りながら、騒ぎ立つ心を鎮めるべく自身に問うた。実存であり、生命であり、自己であり、感情であり、理性である流動体エネルギー。答えを諳んじながら、自身が導き出した結論を口唇に乗せる。
「意識とは魂に他ならない」
それを奪われた人間はどうなってしまうのだろう? シュウは既に結論付けた問題に再び向き合ってしまっていた。この研究に着手をしてからシュウはずうっとこうだ。結論の先にある結論。それを探し求めるように、僅かな空き時間を思索に充て続けている。
「意識とは……」
結論とはひとつの壁だ。それを超えた先に更なる世界が広がる仮初めの終端。人間はその壁を突き崩すことで発展を手に入れてきた。それが証拠に、人類の歴史におけるエポックメイキングな発見は既にあらかたされ尽くした後だ。現在の人間は、そこから先にある結論の壁を崩し続けているだけに過ぎない。
――この世界は黄昏を迎えている。
それを理解しながらも、自身の内側から溢れ出してくる本能的な探求心にシュウは逆らえないのだ。
神とは真理である。行動規範を定め、社会的立場を定め、思想と理性を統制する。教義とはそれを言葉にして表しただけのものに他ならない。科学の探求を続けることは、神に背く行為ではないのか? 真理を得ている筈のシュウは、だからこそ幾度となく自問自答を繰り返してきた。
繰り返して、そして、それもまたヴォルクルスに供物を捧げる為には必要な営みであるのだと、自身を強引に納得させていた。
――だからこそ、人類を、この世界を終わりにしなければならない……
時に暴虐に自らの心を煽り立てるその昏い感情がどこから生じているのか、シュウはわからなくなることがあった。自身の考えである筈なのに、他人によって考えさせられているような気分になる。意識とは何か。シュウが論文という形で残そうとしているのは、自らの認識宇宙内――或いは身体内で起こっている不可塑的な精神活動の記録でもあるのかも知れない。
――この“意識”はどこから生じているものであるのか。
論文の|枠組み《フレームワーク》が完成している以上、既に出した結論が揺らぐようなことがあってはならなかった。だのにシュウは、それでも尚、問わずにはいられなかった。意思の疎通が叶わなくなり、自己が崩壊し、やがて真実の無――或いは空《くう》が訪れたとして、命を刻み続ける肉体は何になるのか? それは決して生きてはいない。だが、その身体は確かなる温もりを生み出している。シュウは静かに瞑目して、その答えを探し出すべく、自己の中に内在する世界より知識を浚った。
ややあって、その瞼を開く。
問うまでもないことでしたね。ひとり孤独な作業を続けている室内で誰にともなく言葉を吐いたシュウは、呆気なく辿り着いた唯一無二の答えに嗤いを堪えることが出来なかった。
――それこそがサーヴァ=ヴォルクルス。我が神。
――それこそがサーヴァ=ヴォルクルス。我が神。
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