ちょっと短くはありますが、区切りがいいので本日はここまでにしたいと思います。
私事ではありますが、本日、無事に鉄魄サイバスターが届きました。でもこの値段だし、飾ることはないかな……時々取り出して眺めるだけにしておきます。でも、そもそもこの巨大な箱を置く場所がない笑 なんとか押し入れを片付けなければ!!!
私事ではありますが、本日、無事に鉄魄サイバスターが届きました。でもこの値段だし、飾ることはないかな……時々取り出して眺めるだけにしておきます。でも、そもそもこの巨大な箱を置く場所がない笑 なんとか押し入れを片付けなければ!!!
<記憶の底 ReBirth>
どうぞ――と、中から声がするのを待って部屋の中に足を踏み入れれば、先程よりは残りの頁を少なくした本を膝の上に乗せたシュウがいる。見た目は何も変わらないが、以前の彼と比べると幾分神経質そうに映る。それはきっと彼の切れ長の眦が、その険しさを増しているからであるのだろう。
「マサキ……ですよね。訊いたところによれば、あなたは風の魔装機神サイバスターの操者であるのだとか」
「ああ。って云っても、今回は機体を持ってきてないがな」
「それは残念です」本を畳んだシュウが向かいのソファをマサキに勧めてくる。「魔装機計画がどう成就したのか見たくあったものですから」
マサキはシュウに勧められるがままソファに腰掛けた。彼の眼差しは険しいままだったが、マサキに対して拒否感を抱いているのではなさそうだ。穏やかな声のトーン。マサキが良く知る彼の口振りと比べると、利発さが勝っているように感じられる。
「持って来れるなら持って来たいところだが、ここが何処かわからないしな……」
「ここはラングラン州の南に位置するバオダ州です」
「なら、戻るのに半日以上はかかるな」マサキは眉間に皺を寄せた。
一時間余りの旅路は、機動力に優れるガディフォールだからこその移動時間であったのだ。それを陸路でするとなると、乗り継ぎの手間なども相俟って倍以上の時間が必要となる。参ったな。呟いたマサキに、シュウが言葉を継いだ。
「あなたが何処に住んでいるか僕は知りませんが、テリウスが戻ってくるのにかかった時間からして、それなりの距離を移動してここまで来たのは間違いないでしょう。サイバスターが必要であるというのであれば、僕が付いて行くという手もありますが、果たしてあの機体を僕が操縦出来たものか……」
どうやらシュウは、グランゾンの存在を認知はしているものの、操縦をしたりといったことは経験していないようだ。気弱にもそう言葉を継ぐと、物憂う表情をマサキに向けてきた。
凡そ初めて見る彼の弱気な態度に違和感は拭えなかったが、今の彼は大幅に記憶を失っている状態だ。未来の自分の技術や知識に追い付けというのは無理がある。気にするな。マサキは彼にそう声を掛けて、万が一の事態を脳内でシミュレートした。
サイバスターを欠いた状態で何日も過ごすのは、魔装機神の操者となってからは初めての経験だ。
特殊な状況に不安を感じはしたが、この施設が有している設備が設備である。仮に侵入者を許したとしても、この狭いエリアで迎え撃てば問題はないだろう。陸に上がった戦士が相手ならば、剣聖の称号に与っているマサキに分があるのは明らかだ。シュウひとりぐらいであれば守りながら戦うのに不自由もない。
「サイバスターを見せてやれないのは残念だが、ここに留まっていた方が安全なのには違いない。下手に動き回らずに期限まで過ごすことにするさ」
「彼らから聞きましたが、僕は相当に方々で恨みを買っているようですね」
苦笑いを浮かべたシュウがソファから立ち上がる。何か飲みますか。シュウに尋ねられたマサキは、何があるんだ。訊き返しながらキッチンへと向かう長躯を目で追った。
「紅茶とコーヒーですね。冷たい飲み物はあまり好きではないので」
「なら紅茶にしてくれ」
既に湯は沸かしてあったようだ。ぎこちない手付きでケルトを手にしてポットに湯を注いでいる彼に、俺がやろうか? やり慣れなさを感じ取ったマサキは声を掛けた。
「大丈夫ですよ、マサキ。もし記憶が戻らなかったら、僕はこの僕として生きて行くしかないでしょう。だったら、出来ることを多くしておかなければ」
マサキの知ることのない時間のシュウ=シラカワという人間は、どうも現在の彼とは異なり、聡明な性質が前面に押し出された性格であるようだ。歯切れ良く言葉を紡いでみせる彼は、自らに降りかかった奇禍を運命として受け入れてしまったのだろうか。迷いを感じさせない言葉の数々に、マサキとしては違和感が募る。
マサキはシュウが歩んできた苦難の道のりに思いを馳せた。
三柱神がひとり、破壊神サーヴァ=ヴォルクルスによる支配……死を迎えたことによってその鎖から解き放たれたシュウは、ルオゾールの手によって与えられた再びの生にしがみ付くようにして生きている。
凡そ普通の人間では歩めもしない人生。彼が何を求めて生き続けることを選択したのか、マサキにはわからない。けれども彼は新たに得た人生を――帰るべき場所を持たないその人生を、自らの居場所を獲得する為の戦いに捧げる決心を固めたようだ。邪神教団と対立することとなった彼は、被害者を多数生み出した悪しき組織を殲滅すべく、方々で暗躍を続けている。
打てる手を打ち切るより先に、もしもの未来を案じてみせるなど彼らしくない。マサキは記憶を失ったシュウに感じていた違和感の正体がわかった気がした。マサキの良く知るシュウ=シラカワという人間は、自身の幸福を獲得する為に、真っ向から運命に立ち向かってみせる人間だ。そう、こんな風に聞き分けのいい性格を彼はしていない。
「未来の僕は紅茶といった嗜好品には拘りがあったようですね」
ややあって差し出されたティーカップ。マサキはシュウが淹れた紅茶を受け取ると、それをひと口啜った。きっと上質な茶葉を使用しているのだろう、薫り立つ匂いが口の中にふわりと広がる。
「そうだな。味には煩い奴だったよ」
何気なく放ったひと言だったが、シュウからすればまさに求めていた言葉であったようだ。それが聞けただけでもあなたに会った甲斐はあった。そう呟いた彼は、険しい眼差しから一転、和やかな笑みを口元に湛えてみせると、「あなたに聞きたい話が沢山あるんですよ、マサキ=アンドー」そう云って目を細めてみせた。
PR
コメント