と、いうことで今回のわたくしの作品になります。「DANCE IN THE DARK(R18)」「記憶の底(R18)」とイベントごとに書かれてきたこのシリーズ。ついに三作品目となりました。
果たして今回でふたりの関係は成就するのか?
するかも知れないし、しないかも知れません。とにもかくにもTOPスピードなエロが目的でもあるこのシリーズ。今回も例に洩れず冒頭から飛ばしております。背後にはお気を付けください。
果たして今回でふたりの関係は成就するのか?
するかも知れないし、しないかも知れません。とにもかくにもTOPスピードなエロが目的でもあるこのシリーズ。今回も例に洩れず冒頭から飛ばしております。背後にはお気を付けください。
<記憶の底 ReBirth>
ああ……と、洩れ出た喘ぎ声の甘やかな響きに、意識を向ける余裕などとうになかった。自宅のベッドの上。夜の闇に抱かれながら乳首に指を滑らせていたマサキは、片手を男性器に沿えた。乳首を嬲りながら男性器を扱く。じくりじくりと身体の芯を犯していた快感が、ゆるやかに全身へと広がっていった。
だのに心の片隅に或る満たされなさ。ようやくラングランに帰還を果たしたというのに、マサキはその日常に寂しさを感じてしまっている。それもこれもあの男の所為だ。マサキは自身の男性器から手を離した。そして手を滑らせると、緩く収縮を繰り返している後孔を弄り始めた。
マサキの身体に自身の温もりの記憶を刻み付けた男は、今回、長くともに戦いを続けながらも、マサキに指一本さえも触れてくることがなかった。当たり前だ。マサキはゆるりと指を後孔に差し込んだ。ぞくりと背中に走る快感。あ、ああ。洩れ出た声を押さえることなく、マサキはその感触に溺れた。
彼の不埒な振る舞いに腹を立てたのはマサキの方であったのだ。
一度目は地上での大戦の最中。彼の指と舌に鳴かされた。それだけでもマサキにとっては屈辱的な記憶であるのに、二度目の彼はあろうことか、ラングランとシュテドニアスの戦争終結後、戦闘のダメージで記憶を失ってしまったマサキに手をかけてきた。
彼の男性器に深々と貫かれたマサキは、知ってしまった快感に泣き喘がずにいられなかった。
ただの自慰行為では飽き足らなかった自分が求めていたものは、これだったのだ……深い悦楽の中で、マサキは幾度もの絶頂《オーガズム》を迎えた。肌という肌に紅斑を刻まれながら、より深く、より奥へと、マサキは彼を招き入れた。
確かにそれはマサキが自ら招いた事態であった。記憶がなかったからとはいえ、性行為を彼にねだってしまった。だが、正常な状態にないマサキを目の前にして、理性を保つことをしなかったのは彼の方であるのだ。その日々を連続した記憶として持っているマサキは、だからこそ記憶のない自分がしでかしてしまったことと、記憶のない自分に手を出してきた男のしてしまったことに腹を立てていた。
けれども男は良心を捨てきった訳でも、理性を失いきってしまった訳でもなかったようだ。
戦乱の最中にあっては、ふたりきりになれる好機《チャンス》などそうはなく。ましてや彼には陰に日向に付き従う女性たちがいるのだ。都合のいい偶然が何度も訪れないことぐらい、如何に呑気な性質のマサキとてわかっていた。
マサキはいよいよ切なくわななき始めた口唇に指の動きを速めた。果たして彼は、二度の過ちをどういった考えで犯してみせたのだろう。他人の目がある場となると、途端に一定の距離感を保ってみせる男。彼の見えない本心は、マサキを相応に不安にさせていた。
期待を――してしまっていたのだ。
二度あることは三度ある。男の存在を側にしたマサキは、してはならないと思っていながらも、覚えてしまった快感に心を揺らしていた。彼はいつかロンドベルの艦内でそうしたように、マサキの許に潜んでくるのではないか。だのに男はそういった事実はなかったとばかりにマサキに接してくる! これでマサキが落胆しない筈がない。
――はあ、ああ、ああっ……
仲間と寝食を共にしている間は控えていた自慰行為。戦場で過ごした日々の最中に飢えを感じる機会がそれなりあったマサキは、高まりきった欲望を消化するのを楽しみにさえしていた。それだのに。
どれだけ自らを慰めても、満たされない欲望が胸の奥に燻ぶっている。あの熱い昂ぶりが欲しい。マサキは咥え込んだ指をより深く後孔に収めながら、記憶の底に封印していた彼との一度きりの性行為を脳裏に蘇らせた。
※ ※ ※
お兄ちゃん、おはよ。部屋の中を歩き回る気配と声にマサキが目を覚ますと同時に、カーテンが開かれる。
※ ※ ※
お兄ちゃん、おはよ。部屋の中を歩き回る気配と声にマサキが目を覚ますと同時に、カーテンが開かれる。
とうに光を強めていた太陽は、今日もラ・ギアス世界を燦燦と照らしているようだ。顔に降り注ぐ太陽の光に呻きながら瞼を開いたマサキは、ややあってベッドの上で身体を起こすと、珍しくも自分を起こしに来た義妹にその理由を尋ねた。
「……何だ。何かあったのか」
ラングランへの帰還を果たしてひと月。それまでの激動の日々が嘘のように、マサキは穏やかに過ぎていく毎日を過ごしていた。
プレシアとふたりで街に出ることもあれば、訪ねてきた仲間たちと騒ぐこともあった。時には気紛れにサイバスターを駆って西へ東へ。知り合いを訪ねて回ることもあれば、ただラングランの変わりない自然の景色を眺めて回るだけのこともあった。
誰に気兼ねをするでもない生活。自由に動き回れる時間に限りがないという現実は、戦いに明け暮れた生活で疲弊したマサキの心を徐々に回復へと向かわせていた。ようやく日常生活に戻って来たのだという実感。これまで常にやるべきことに追われていたマサキは、真実の休息を得る機会に恵まれたことで、自身を振り返る余裕が生まれつつあった。
「うん、ちょっと……」
歯切れの悪いプレシアの返事に、マサキは仕方なしにベッドから出た。クローゼットから今日の服を選び出し、着替えを終える。その短い時間の間も部屋の中で待ち続けるプレシアに、「で、誰が尋ねて来たって?」マサキは訊いた。
彼女がこうした態度を見せる時は、マサキにとって厄介な人間が家を訪れた時でもある。
波風立たずに過ぎた日々の終わりはいつだって突然だ。そうでなくともややこしい人間関係もある。騒動の火種は戦争だけに限らない。心構えだけは十全にしておこうと覚悟を決めたマサキはプレシアの次の言葉を待った。
「それが……あの、テリウスさんが……」
「テリウス? 何でだ?」
「お兄ちゃんに用があるって」
「用事の内容くらいちゃんと云えよ。あのお気楽野郎はよ。一体、あの野郎のところで何を学んだんだ」
部屋を出たマサキは、プレシアを従えてリビングへと向かった。応接セットのソファに身体を収めたテリウスが、窓の外をぼんやりと眺めているのを目にして、特に変わった様子のない彼の姿に幾分心を落ち着かせる。
「やあ、マサキ」気配でマサキの登場に気付いたようだ。
マサキに視線を向けてきたテリウスが、テーブルの上に置かれているアイスティーのグラスを取り上げる。マサキはその向かいのソファに腰掛けた。結構待ったよ。云いながらテリウスがグラスに口を付ける。
「お前がひとりで俺を訪ねてくるなんて、珍しいこともあるじゃねえか。明日は雪かよ」
「それだけ僕も成長したってことだよ」
「ひとりで出歩くのに成長もクソもあるか。で、何の用だって?」
キッチンにてマサキの分の飲み物を用意してくれたようだ。リビングに入ってきたプレシアからグラスを受け取ったマサキは、起き抜けの一杯とそれを胃袋に収め、テリウスが本題を口にするのを待った。
自分に用件を明かさなかったことで、深刻な内容だと受け止めたのだろう。直ぐにリビングから姿を消したプレシアに、「そこまで重要な用事じゃないんだけどね。でも……」テリウスが心なしか気まずそうに言葉を継ぐ。
「彼女は気にするんじゃないかってね。まあ、これは僕の個人的な判断だけど」
「いいからさっさと用事を云えよ。あの野郎がどうしたって?」
「よくわかったね」
感心した様子のテリウスに、わからいでか。マサキは溜息を吐いた。
シュウ=シラカワという人間に対して思い含むところのあるプレシアに、シュウ自身もまた思うところがあるようだ。決して慣れ親しむとはいかないふたりは、微妙な空気感の中で会話をすることも珍しくない。そういった雰囲気をシュウの仲間であるテリウスも感じ取っていたのだろう。プレシアの前でその名を出すのを躊躇うぐらいの良心を残しているらしい彼に、「そういう気遣いこそが余計なお世話だって思わねえのかね」マサキは続けた。
周囲が気を遣えば遣った分だけ、彼らが感じている気まずさは増してゆくばかりとなるだろう。だったらいっそ自分たちは何もなかったように振舞えばいい。もしかすると、その空気こそが彼らの関係修復の一助となるやも知れない。
「そうは云ってもね。彼は立派な剣術指南役だっただろう」
面を上げたテリウスの視線が、マサキを通り越した背後に向けられる。マサキはテリウスの視線を追って、リビングのサイドボードの上に飾られている写真立てを見遣った。プレシアとマサキとゼオルート。三人で並んで撮った最初で最後の写真がそこには飾られている。
「お前がおっさんと顔を合わせる機会ってあったっけか?」
「噂に聞くことはあったけどね。顔を合わせる機会はそんなにはなかったかな」
「だったら余計な気を遣うんじゃねえよ。話が進まなくなるのはその所為だろ」
憮然と言葉を継げば、そこでテリウスは話が本題に入っていないことに気付いたようだ。おやといった表情になった彼は、半分ほど減ったグラスをテーブルに戻すと、膝の上で手を組みながら、「そうだった。僕はまだ君にするべき話をしていなかったね、マサキ」
「同じところをループしてるような気分になるな。で、あの野郎がどうしたって?」
「それなんだけどね」声を潜めたテリウスが、思いがけない問いをマサキに投げかけてくる。「君、シュウの世話をする気はないかい?」
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