もうちょっと書きたくもあったのですが、今回はこれまでにしようと思います。
書いててとても楽しかったです。
また何かの折にこの辺の話を詳しく書けたらと思います。
拍手有難うございます。励みになります。
シュウマサリクも受け付けております。白河視点で書けそうな(或いは彼を中心に据えた)ネタがありましたら、遠慮なくお投げください。では、本文へどうぞ!
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<鋭意専心して途ならず>
※ ※ ※
偶然行き合わせたラングラン州のひとつの街。そこで不穏な気配が後を付いてくることに気付いたシュウは、罪のない一般人を巻き添えにしない為にと、マサキとふたりで逃げることにした。
けれども逃げ続けたところで撒くことの出来ない相手に、諦めが勝ったようだ。面倒臭え。そう呟いて、足を止めたマサキが草むらにしゃがみ込んだ。
どうやらシュウにひとりで戦えと云いたいようだ。足を投げ出してひらひらとシュウに手を振ってきた彼は、これから始まる戦闘を高見の見物と洒落込むつもりであるのだろう。戦意がまるで感じられないマサキの態度に、仕方なしとシュウもまた足を止めた。
背後に迫り来る追手との距離は10メートルほど。思ったより離れていない距離に、さて――シュウは次に取るべき手だてを考えた。
先制攻撃を食らわせるべきか。それとも相手が攻撃を加えてくるのを待って、ひとりひとり潰してゆくべきか。シュウは追手に向き直った。黒いフード付きのマントを羽織った一団が、左右に陣を展開したかと思うとじりじりと距離を詰めてくる。
ひところに固まってくれれば魔法で吹き飛ばせたものだが、彼らもそれは織り込み済みなようだ。広く距離を取った彼らは、半円を描きながらシュウに迫って来る。勿論、かつては王位継承権を有していただけの魔力を有するシュウである。彼らを一度に仕留めるだけの魔法を放つのは容易かったが、それには多大なる犠牲が伴う。この豊かで美しいラングランの平原に取り返しの付かないダメージを負わせてしまうのは、シュウとしては避けたかった。
「手伝う気はありませんか、マサキ」
「ねえな」ふああ。と呑気にも欠伸を放ったマサキは平然と云ってのける。「お前の因縁だろ。お前がカタを付けろよ」
邪神教団の残党が相手とあっては、自分で戦う気にはならないようだ。
マサキとしては自尊心の高いシュウを慮っているつもりでもあるのだろうが、シュウとしてはそれこそ余計なお世話だと思わずにいられない。倒しても倒してもしぶとく蘇ってくる教団の信者たち。彼らの相手をし続けるのは、さしものシュウでも骨が折れる。
「どうせ魔法で一発だろ。あんま待たせてやるなよ。実力差を思い知らせてやるのも優しさだぜ」
「それだけの魔法を使うとなると、使用する魔力もそれなりの量になるのですよ」
シュウは視界の端で動いたフードの男を目尻の際で捉えた。男はシュウが隙を晒しているのではないことに気付きたようだ。瞬間、その動きが止まる。そのままつ……と、シュウは平原に広がっている一団を見渡した。魔法で個別に撃破するには数が多い。呪文を詠唱している間に懐に飛び込まれかねない。
「魔力が増えたら何か問題でもあるのか」
「制御出来る自信がないのですよ。その結果、この平原を丸ごと駄目にしてしまうようなことがあってはね」
「どんな魔法を使うつもりだよ」呆れた表情で云い放ったマサキが、仕方がねえな。呟くと自らの腰に下げていた剣を投げて寄越す。「貸しだぜ。大事に使えよ」
わかりました。シュウは鞘から剣を抜き、片手で天へと構えた。
使い勝手の良さから魔法を使用することの多いシュウだったが、だからといって剣術の訓練を怠るような真似はしなかった。あれだけ地を這い蹲って習得した技術である。簡単に腕を錆び付かせてしまっては、過去の自分に申し訳が立たない。
すう、と息を吸う。
肚の底に気《プラーナ》を溜め、それを体内で螺旋状に練り上げる。この極致に至るまで、三年の月日が必要だった。
瞼を閉じて意識を剣先に集中する。
初めて師範に一撃を当てた日のことが脳裏に過ぎった。フェイルロードがクリストフだったシュウを案じてから、二週間後のことだった。倒れ伏す時にだけスローモーションに見えていた世界は、やがて範囲を広げ、師範の動きさえをもゆっくりに瞳に映すようになっていた。
そして再び瞳を開く。
剣を掴む腕に気を《プラーナ》を押し上げ、行きますよ。シュウは距離を取って身構えている標的たちに向けて、剣を振るった。空気がごうと鳴き、かまいたちとなって平原を駆け抜ける。次の瞬間、正面にて構えていた五人ほどの信者の腕が吹き飛んだ。
それが合図だった。
残った信者たちが息を揃えて迫り来るのを眼前に、さあ、始めましょう。シュウはひっそりと口元を歪めてみせた。
すう、と息を吸う。
肚の底に気《プラーナ》を溜め、それを体内で螺旋状に練り上げる。この極致に至るまで、三年の月日が必要だった。
瞼を閉じて意識を剣先に集中する。
初めて師範に一撃を当てた日のことが脳裏に過ぎった。フェイルロードがクリストフだったシュウを案じてから、二週間後のことだった。倒れ伏す時にだけスローモーションに見えていた世界は、やがて範囲を広げ、師範の動きさえをもゆっくりに瞳に映すようになっていた。
そして再び瞳を開く。
剣を掴む腕に気を《プラーナ》を押し上げ、行きますよ。シュウは距離を取って身構えている標的たちに向けて、剣を振るった。空気がごうと鳴き、かまいたちとなって平原を駆け抜ける。次の瞬間、正面にて構えていた五人ほどの信者の腕が吹き飛んだ。
それが合図だった。
残った信者たちが息を揃えて迫り来るのを眼前に、さあ、始めましょう。シュウはひっそりと口元を歪めてみせた。
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