そろそろ折り返しだとは思うのですが、思ったほど波風立つことがないですね。
これから先が怒涛の展開になる予定ではあるのですが、私の中のマサキは所謂「精神的に強い受け」なので、シュウほどじめじめした空気にならないというか……そこまで酷く思い詰めたりもしないというか……そうでなければ魔装機神の操者は務まらないと思っているので、これでいい筈なのですが、物語的には彼のような性格の人間を扱うのは難しいですね!←爽やか
今週は六連勤の予定なので、進みが遅くなる可能性がありますが、なるはやで話を進めていきたいと思っています。宜しくお願いします。
これから先が怒涛の展開になる予定ではあるのですが、私の中のマサキは所謂「精神的に強い受け」なので、シュウほどじめじめした空気にならないというか……そこまで酷く思い詰めたりもしないというか……そうでなければ魔装機神の操者は務まらないと思っているので、これでいい筈なのですが、物語的には彼のような性格の人間を扱うのは難しいですね!←爽やか
今週は六連勤の予定なので、進みが遅くなる可能性がありますが、なるはやで話を進めていきたいと思っています。宜しくお願いします。
<記憶の底 ReBirth>
朝食は目玉焼きと、焼いたベーコン。そしてサラダとチリコンカンにした。
シュウに包丁を持たせて玉葱を微塵切りにさせてみたら、完璧主義者な面があるからだろう。時間はかかったが、それなりにきちんとした微塵切りが出来上がった。本人としては剣のように包丁を使えないことに不満を感じていたようだが、ようやく料理に本格的に参加出来たからだろう。昨日に引き続いて上機嫌な食卓となった。
「今日はこの後、街に出るのですよね」
「ああ。徒歩で出るとなると時間がかかるからな。早目に出たいところだ」
マサキとしては、昨夜、様々な出来事を一度に聞かされたシュウの調子が気に掛かるところだったが、既にテリウスたちから聞いていたこともあってか。思い詰めたりといったことはなさそうだ。
「ついでに食料も買い足そうと思ってるんだが、お前は行きたい場所はあるか。ただ必要な物を買うだけで終わるのもな。面白くないだろ」
「寄れるのでしたら本を買いたいのですが。ここにある本はどれも前提知識が必要なものばかりで、今の僕が読むには少々難しくあるものですから」
「なら書店にでも寄るか。お前が求めるような本があるかどうかはわからないが」
「なければ取り寄せます。いずれまた外に出ることもあるでしょうし」
マサキの話を聞きたがったシュウが特に気にしていたのは、地上での自分の行動であった。
同行していなかったテリウスたちでは詳しい説明が出来なかったからだろう。同じく地上に出たマサキならより詳しい話を知っているだろうと、シュウとしては期待をしていたようだ。
とはいえ、その辺りの詳しい事情に関しては、マサキよりもリューネの方が詳しいのではないだろうか。そう思いながら説明すること暫く。マサキのざっくりとした説明を聞いたシュウは、途中で出てきたリューネの名前に引っ掛かりを感じた様子だった。彼女の話を訊くことは可能ですか。そうマサキに尋ねてきたが、秘密基地の様相を呈しているこの地下施設に勝手にリューネを連れてくる訳にも行かない。テリウスたちが戻って来てもお前の記憶が戻らなかったらな。マサキはそう答えるに留めた。
「記憶が戻るのが一番なんだがな」
「そうですね。でも、今のところは何も……」
「リューネのことなんかは気にしてた様子だったじゃないか」
食べ終わった後の後片付けは、今日もシュウがやるつもりであるようだ。キッチンに立ち皿を洗い始めた背中に、そうマサキが言葉を投げれば、そういった意味ではないのですよ。シュウは困惑した様子で言葉を返してきた。
「彼女はDC総帥であるビアン=ゾルダークの娘であるのですよね。だから、ですよ。僕が何故その組織に属すことになったのか。そして一定の地位を築き上げるに至ったのか。彼女でしたら知っているのではないかと思ったものですから」
シュウが自分よりもリューネの名前に反応したことが、マサキには面白くなかった。そういった態度が言葉に表れてしまっていたのやのも知れない。どこか云い訳めいた風に言葉を継ぐシュウに、「わかってるよ」とマサキは頷く。
「お前にとって、あの男は心を惹かれる存在だったんだろ。そうじゃなきゃ最後まで付き合おうなんて思うかよ。独りで行動してばかりだったお前がさ。だからリューネのことも気に掛かるんだ」
「そうは云ってはいないのですが――」
始まりからマサキに対して距離を取る男ではあった。まるで興味の範疇外。そういった態度を見せることも珍しくなかったシュウが、ようやくマサキの存在を認めるようになったのは、やはり月での決戦の後であるだろう。
歯牙にもかけていなかった少年が、自分を打ち倒すまでに成長した。
その事実を、彼はマサキが思っているよりも深く受け止めているようでもあった。シュテドニアスの侵攻を経て、再美顔を合わせた邪神の神殿で、彼がマサキの呼びかけに応えて正気を取り戻したのも、恐らくは彼の中にマサキとの戦いの記憶が強く刻まれているからであるからだろう。
彼の口から嫌味や皮肉が頻繁に吐いて出るようになったのも、そこからだ。
そう考えると、彼のああいった皮相的な一面は、気を許した相手にこそ向けられるものであるのかも知れない。マサキは自らの肌を辿ったシュウの指の感覚を思い出した。ただ気に入らないだけではああした行動には及べまい。それはマサキがシュウの善性を信じているからこその思い上がりでもあった。
何より記憶を失ったマサキに対して、彼は優しかったのだ。
何を考えているのか読み取れない表情ではあったものの、マサキに必要だと思われることを全てしてくれたシュウ。彼はマサキが自分を求めていることに途惑い、葛藤しているようであった。結果的にマサキに手を出してはきたものの、それはマサキが強く望んだからでもある。そうである以上、彼ばかりを責めるのはお門違いというものだ。
そんなことはわかっている。マサキは宙を睨んだ。
かといってマサキにも意地がある。彼とだけは二度とそういった関係を結んではならない。その決意が揺らぐことはないというのに、シュウがリューネの名前に反応をみせてことが面白くない。自分はどれだけ身勝手なのか。マサキは苛立つ感情の赴くがままに、爪先で小刻みに床を叩いた。
「何か、気に掛かることがあるのですか? そんなに難しい顔をして」
洗い物を終えたシュウがマサキの許へと戻って来る。「いや。少し考え事をしていただけだ」マサキはソファから立ち上がった。
「支度は充分か。だったら街に出るぞ」
彼の記憶がないのは紛れもない事実であるのだ。だのにマサキは、愚かにも自らの感情をぶつけてしまった。これだから、俺は。悔しさと切なさと、後悔が入り混じった胸中を覚られないように、表情を取り繕ったマサキは、特に準備することもないらしいシュウとともに居住エリアを出た。
「ところで、何処から地上に出ればいいんだ? まさかあのカタパルトを使う訳にも行かないだろう」
「格納庫の奥に非常口があります。森の中にある洞窟に出るので、出入りが気付かれ難いのだとか」
「自然にカモフラージュした地下施設か。難攻不落の要塞に思えるな」
「とはいえ、過去の大戦では占拠されてしまったこともあるようです。その際に正面出入口は破壊されてしまったのだとか。そこに続く通路は土と岩盤に埋もれてしまっています」
「成程な」マサキはシュウの後を続いて通路を往った。
格納庫から居住エリアに辿り着くまでニ十分はかかる道のり。この地下施設の全貌がどれだけのものであるのか、マサキは未だ知ることはなかったが、一部であってもこれだけの広さを誇るのだ。もし仮に敵が攻め込んできた際には、無理に戦わず、逃げて遣り過ごすのも一興かも知れない。
「他に非常用の出入り口はあるのか。場合によっては、それらを利用することも考えないとならないが」
「これだけの巨大施設ですから、他にも幾つか非常口があるとは思うのですが、僕が彼らに教えてもらえたのはそこだけです。自分の足で探索することも考えましたが、なにぶん、ひとりで回りきるには広過ぎて……」
ついでにシュウに訊ねてみたところ、この地下施設には指令室や資料室、通信室の他に、研究プラントまで揃えられているらしかった。とんでもない巨大施設だ。マサキが驚いて声を上げると、研究プラントは未来の僕が後から作ったものらしいですが。そう云ってシュウは笑った。
「研究プラントって、個人で作れるのかよ」
「元々は訓練場であったようです。そこを改修して研究用プラントにしたのだとか。覗いてみましたが、結構な設備でしたよ。あれなら僕のやりたい研究が全部出来そうですが、未来の僕はそのくらいとうに叶えているのでしょうね」
格納庫の奥、グランゾンの左手側にひっそりと存在する扉をシュウが開く。
センサーが感知して自動で照明を点灯するらしい。うっすらと明かりが灯った非常階段を見上げたマサキは、湖面からここまでの距離を振り返った。かなり深い筈だが、どのくらい階段を上れば地上に着くのだろうか。
「カタパルトの深さからすると、結構な距離を上がらないとならない気がするんだが」
「そうですね。休みなく階段を上り続けて30分ぐらいといったところでしょうか」
「だろうな。けれど、それだけ時間がかかるとなるといっそグランゾンに乗りたくなるな。行きはともかく、帰りに荷物を持ってここを下るのはキツそうだ」
「なら、グランゾンに乗ってみますか? 僕に操縦は無理ですが、あなただったら出来るでしょう」
「馬鹿云え」マサキはシュウの背中を小突いた。「お前にとって可愛い我が子みたいなもんだろ。幾ら俺でもやっていいことと、悪いことの区別は付く」
訓練場を潰して研究プラントにしてしまったということは、この巨大施設での訓練に使えるのは格納庫しかないということでもある。「まあ、基礎体力の向上の訓練にはいいか」マサキは躊躇うことなく階段を上り始めたシュウに続いて階段を上って行った。
PR
コメント