昨日は失礼しました。風邪で体力がごりごり削られてて、そこに不眠が重なって完全にグロッキーになってしまいました。
もう直ぐクライマックスですので、今日からまた頑張りたいと思います!
拍手有難うございます。励みとしております!そろそろ拍手も刷新したいと思っているので、その折にはまたぽちりとしていただけると幸いです!
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<記憶の底 ReBirth>
「美味しかったです。やはり、自分で作った料理は違いますね。満足感が桁違いです」
ゆっくりと食事を片付けてゆくシュウと同じくらいのスピードで朝食を食べ終えたマサキは、彼とともに後片付けを済ませ、胃を休める為に一時間ほどの自由時間を取ることにした。
シュウは直ぐにでも稽古に入りたい様子だったが、幾ら荒療治を施すとはいえ、守らなければならないことはきちんと守らせなければ効率が落ちる。ハードな稽古に耐える為には、それ相応のコンディションが必要だ。マサキがそう説いて聞かせると、それ自体は納得がいっているようだ。
「わかっているのですが、気が逸ってしまって」
落ち着かない様子の彼にそれならば――と、マサキはシュウに施設の案内をさせることにした。巨大施設の設備をマサキが目にしたところで使いこなせる筈もなかったが、現在のシュウたちの戦力レベルを知る意味でも詳細を知っておいて損はない。
後は迷った時の保険だ。各ブロックの繋がりを知っていたところで迷う時には盛大に迷うのはわかっているが、そうした知識が稀には助けてくれることもある。勿論、シュウには後者の理由と好奇心とだけ伝えてある。余計なことを口にしなくとも、彼はマサキの本心を見抜いていそうではあったが、だからといって明け透けに目的を口にするほどマサキも向こう見ずではない。年齢が幼かろうがシュウはシュウ。油断は禁物である。
「ところで、何処を見ますか? 一時間ぐらいとなると行ける場所は限られますが」
「チカは何処にいるんだ? あいつの様子も見ておきたいんだが」
「それなら研究プラントに行きましょう。ここからそう遠くない区画にあります」
「研究プラントに?」マサキは歩き出したシュウを追った。
「魔法生物ですからそう簡単に衰弱することはないとは思うのですが、万が一ということもありますので」
居住区の奥のドアから、まだ歩いたことのない通路に出る。この施設には至る所にセンサーが設置されているようだ。自動で点いた明かりが、点々と緩くカーブを描いている通路を照らし出している。
「この通路は研究プラントの外周に沿っています。10分ほど歩けば入口に着きますよ」
壁面に浮かぶ発光ダイオードの光。様々な色を放つそれらが幾何学的な模様を浮かび上がらせている。格納庫から飲ん通路もそうであったが、科学時代に作られた地下建造物にしては前時代的な紋様の数々。それはラ・ギアスの歴史が魔術時代を経ていることと無関係ではないのだろう。
「特徴的な模様だ。これに意味はあるのか?」
「魔術的な意味で云うのであれば、多少は。結界的な意味ではありますが」
成程。マサキは頷いて更に先を行った。
「思ったより大きそうだな」
「元は訓練場ですしね。師団が訓練を行えるぐらいの広さはあると思います」
人が四人ほど擦れ違えそうな広々とした通路だが、外の景色を見ることがないからか。四方八方から壁が押し迫ってくるような閉塞感を覚える。その通路を靴音を響かせながら先導してゆくシュウは、それなりにこの施設の探索を済ませているようだ。
「恐らく、僕たちがいる側の居住区は司令官クラスのものであったのでしょう。この訓練場を挟んだ向こう側にはかなり手狭な部屋を擁する居住区があります。大半は土砂に呑まれてしまっていますが、そちらが一兵卒用の居住区であったのではないかと」
「土砂か。それも破壊された跡か?」
「恐らくは。僕は非常用の脱出口を潰した跡ではないかと思っていますが」
「確かにな。非常口を潰して出入り出来る場所を限れば、後はそこで迎え撃つだけで済む」
カタパルトが無傷で残されているのは、出口を塞ぐことで出撃を余儀なくさせるという意図もあったのだろう。そして出てきたところを待ち構えていた部隊で殲滅する。この要塞のような地下施設を潰すのに、先人は最小手順での攻略を目論んだのだ。地獄への片道切符だな。マサキは呟いた。
「趣味のいい遣り方ではありませんね。とはいえ僕が彼らの立場になったら、同じような手を使うに違いないでしょうが」
「そりゃそうだろう。最小手で最大効果を得るのは戦術の基本だ」
ややあって左手側に見るからに頑丈そうな扉が現れた。比較的素材が新しく映るのは、現在のシュウが扉自体を換装したからに違いない。電子錠でロックが掛けられているその扉を9歳のシュウが開く。瞬間、左右にスライドしたドアの向こう側に眩い光が降り注いだ。反応したセンサーが研究プラント内を照らし出したのだ。
高い天井に、広い敷地。野球場に換算すれば四つ分ほどだろうか。広々とした空間には様々な機器や装置が並んでいる。
「何が何だかわからないぐらいに凄いな。これをあいつが作ったのか」
床に走る大量のコードに、配管。マサキが想像していたよりも数倍は規模の大きな研究プラントを、煌々とした光に照らされながらシュウの後に続いて歩んでゆく。ここでシュウがどういった研究をしているのか。機器や装置を見ただけではそれらに無知なマサキでは想像が付かない。何をしてやがるんだ、あいつは。あまりの迫力にマサキは思わずそう口にしていた。
「これだけの設備があれば、一から戦闘ロボットを作れそうでもありますね」
「とんでもないプラントだな」
「そのぐらいの設備を備えなければ、教団を殲滅させるのは難しいのでしょうね」
人の背丈よりも遥かに大きな機器や装置も数多く並ぶ中、マサキはその迫力に気圧されながら、シュウの後に続いて隅にある仕切られたスペースに向かった。
「ここは無菌室です。この中のカプセルにチカがいます」
壁に小さく設えられたガラス窓の向こう側を覗き込んでみれば、縦に立てられたカプセルの中に、見慣れた青い鳥が瞼を閉じた状態で浮かんでいるのが見えた。カプセルの中は液体で満たされているようだ。酸素が送り込まれているのだろう。細かい泡が下方から上方へと循環している。、
「念の為に|魔力で満たした水《エリクサー》に浸けています。モニターはここにありますが、生命活動は行われているようですね」
云われて壁の外にセッティングされているモニター類を覗き込んでみれば、サーモグラフィがオレンジ色に彼の身体を映し出していた。体温は保たれているようだ。マサキはもう一度、ガラス窓を覗き込んだ。今にも瞼を開いてけたたましく喚き出しそうな彼は、けれどもぴくりとも動く気配がなかった。
「多少でしたら、ここの設備の説明は出来ますが、聞きますか? それとも他の場所を見てみますか」
「そうだな……」マサキはどうするか考えた。
戦力レベルの把握はしたいが、これだけの規模の設備を持っているという事実だけでも評価としては充分だ。戦闘ロボットを一から作れるだけの巨大研究プラント……サイバスターの補修や改修をウエンディに任せきりにしているマサキでは、どの道、シュウの説明があろうとも詳細までは把握出来ないのだ。だったらその事実だけで納得するしかない。
「いや、聞いても理解出来る気がしねえ。他を見せて貰えるならそっちを見たい」
「いいですよ。と、云っても後は資料室やデータ分析用のコンピュータールームぐらいですが……」
マサキはシュウに続いて研究プラントを後にした。かなりの規模を誇るだけあって、ただ見て回っただけにも関わらず30分が経過している。腹も大分こなれた感じになった。そこから然程離れていない距離にあった資料室とコンピュータールームを覗いたマサキは、その規模に驚きを感じつつも、あまり長居をする訳にも行かない。通り一遍覗いた程度に留め、シュウとともに居住エリアに戻った。
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