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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

記憶の底 ReBirth(28)
もうちょっとだー!もうちょっとで書きたかったシーンに辿り着きますよ!!!!

そろそろこの話が終わった後の話をしたいと思うんですが、するってぇっと丁度クリスマスになるんじゃないかと思うので、それ用の作品を投下しようと思います。シュウマサデート篇。って、何番煎じだって感じですが、彼らがいちゃいちゃしているのは何度書いてもいいんですよ!

それが終わったら問題作の続編に取りかかろうと思います。エロしかないアレです。

拍手有難うございます!励みになります!もう少しでこの話も終わる所までまいりました!もし良ければ、後少しお付き合いくださいませ!


<記憶の底 ReBirth>

 それぞれ剣の準備を済ませ、格納庫へと向かう。
 余程、待ち望んでいたのだろう。道中のシュウの足取りは軽かった。彼の足取りからは、自身の動きを窮屈にしていた長剣から解放された喜びが伝わってくる。朝の自主訓練での手応えも相当だったに違いない。格納庫に入ったシュウは、広々とした空間の中央で足を止めるとマサキを振り返った。
「場所はこの辺りでいいですか」
「ああ。充分だ」マサキは周囲を見渡した。
 ウィーゾルにノルス、ガディフォールが出払った格納庫は、わざわざ中央に陣取らなくとも充分過ぎるぐらいの広さがある。整備用の足場が組まれてはいるが、サイズがサイズなだけに、足場に用いられている鉄骨同士の隙間はかなりのものだ。その幅、人が十人ほど一団となって通り抜けられるほど。
 これだけの余裕があれば、剣を打ち合いながら駆け抜けるのも訳はない。マサキは少し離れた位置に立っているシュウに目を向けた。前回、長い手足を持て余して喘ぐように動き回っていた彼は、今回はどういった動きを見せてくれるのだろうか。先ずはその力量を測る必要がある。
 荒療治はその後だ。マサキは荷物を収めていた紙袋を、鉄骨の根元に置いた。
「早速、始めるか?」
「そうですね。ですが、その前にひとつお願いがあるのですが」
「お願い、か? 聞けることなら聞いてやるが」
「大したことではありません」シュウはそこで何かを思い出した様子で、ふふと笑った。「僕があなたを一度でも地面に這わせることが出来たら、答えて欲しいことがあるんです」
 無邪気な笑い顔に変わりはなかったが、どこか底知れなさを感じさせる眼差し。薄く開いた瞳が、探るようにマサキの顔を見詰めている。とはいえ、これまで充分過ぎる時間をシュウの疑問に答えることに割いてきているマサキとしては、今更彼が改めて何を訊ねるつもりでいるのか全く予想が付かない。
「俺を地に這わせられたらか。大きく出るじゃねえか」
「そのぐらいに高い条件にしておかないと」シュウは困った風に目を瞬かせた。「フェアではないと、あなたが思いそうなので」
「ふうん……? まあ、いい。何を聞きたいかは知らねえが、そういうことなら手加減はしねえぜ」
 マサキは半身を開いてシュウに向かって立つと、剣に手をかけた。瞬間、すう――と、シュウの顔から表情が抜け落ちた。勿論ですよ、マサキ。剣を抜いた彼はそれを天に掲げながら言葉を続けた。「あなたには本気になってもらわなければ困ります」
「剣が変わった程度で俺に勝とうなんざ、100年早いってな」
 マサキもまた剣を抜いた。
 照明を受けた刀身に冴え冴えとした光が走る。買ったばかりの剣だけあって、切れ味は相当に鋭そうだ。マサキはまだ重みのある剣を片手に握り締めた。
 剣は使い込めば使い込んだだけ、重みを減らしてゆく武器である。人を切れば脂で直ぐに刃が駄目になってしまったし、鎧を打てば圧力で刃こぼれが起きてしまう。こまめな手入れ《メンテナンス》が欠かせない武器。打ち直して、磨き直す。その結果、刀身が痩せてしまうのは良くある話だった。
 この重みを味わえるのは最初の内だけ。いずれ手に馴染む重さになるだろう剣の刃先をシュウに向けるようにして、マサキは正面に構えた。「腕を失う覚悟で来い。お前の気が済むまで相手をしてやる」
「優しいですね。ハンデをくれるなんて」
「余計な口を利いてる余裕があるなら、俺から行くぞ」
 マサキは片手のまま剣を振り被った。どうぞ。と、片手を柄に、片手を刃先に沿えたシュウが、目の高さで剣を平行に構える。
「大した自信だな」マサキは即座に剣を振り下した。
 手首に捻りを加えた一振りは裂いた空気を巻き込んで気流を発生させた。渦を巻いた空気が、床に積もる埃を巻き込みながら、真っ直ぐにシュウに向かってゆく。
 その剣戟を正面から受け止めるかと思われたシュウだったが、彼にも彼なりの策があるようだ。剣を横に払い、気流を裂いた彼は、二手に別れた気流の隙間を縫うようにして跳躍した。そしてマサキの目の前に瞬時にして姿を現わしてみせると、剣を上段から振り下ろしてくる。
 その剣を片手にしたままの剣で頭上で受け止めたマサキは、力任せに剣を斜め上方へと払った。くっ。と声を上げたシュウの身体が、後方へと跳ね飛ばされる。けれども剣を落とさせるまでには至らない。空中で身体を捩じった彼は、片膝を付く形になりながらも着地に成功してみせると、そのまま地を蹴ると再びマサキ目がけて身体を飛び込ませてきた。
 正面に捉えていた身体は、けれどもマサキを目前として姿を消す。マサキは前方へと身体を返しながら跳躍した。それまでマサキが立っていた位置に背後から滑り込んでくるシュウが、構えた剣を振り切れぬまま。またもマサキ目がけて突進してくる。
「その程度か、お前の剣は!」
 マサキは振り下ろされた剣をすいと身体を横にずらして躱すと、空いた手でシュウの手首を打った。剣を離すまいと腕に力を込めているからだろう。シュウの上半身が腰から折れる。がら空きになった背中に、マサキは肘を打ち込んだ。ぐ、と呻いたシュウが膝を地に着けたかと思うと、激しく咽せ始める。
「動きはマシにはなったが、まだまだだな。剣圧で敵を吹き飛ばせるぐらいにならないと、俺とはまともに打ち合えないぞ。小柄だった当時のお前の身体ならまだしも、育ちきったその身体でラッシュを仕掛けるのは無理がある。魔法は使えるんだろ」
 はい。と、咽せながらも頷いたシュウに、なら使え。マサキは忌憚なく云い放った。10年以上の年齢の開きがある現在のシュウと、彼との技量の違いは明らかだ。同年代の少年と比べれば技術力はあるだろうが、彼が相手にしなければならないのは卑劣な手を使うことも厭わない連中なのだ。型に嵌まった剣技だけでは、早晩行き詰るのが目に見えた。
「ですが、それだと魔力のないあなたに怪我を負わせ」
「俺を誰だと思ってるんだ、お前は」
 マサキは身体を折ったままのシュウに手を差し伸べた。腕を引いて立ち上がらせ、背中を軽く摩ってやる。肩甲骨の下、背中線にまともに肘が入ったのだ。
 その先にあるのは鳩尾だ。背面からの衝撃でも、鳩尾へのダメージともなればかなりのものだ。むしろこの程度で済んでいる辺り、日頃鍛えた身体が物を云ったと云うべきだろう。
「ラッシュ一辺倒の戦い方じゃ、直ぐに手の内を読まれるぞ。それを防ぐ為には、攻撃パターンを増やすしかない。とはいえ、剣での戦い方を変えるとなるとそれなりに時間がかかる。だが、既に習得している技術を混ぜるだけなら直ぐだ。先ずは実戦に耐え得る戦い方を身に付けろ。俺なら大丈夫だ。お前とは踏んだ場数が違う」
 僅かに沈黙が生じた。マサキに魔力がないことが、彼には引っ掛かりを覚えさせているようだ。それでも、ややあって、わかりました。顔を上げたシュウが覚悟を決めた表情で頷いた。
「手数を増やすことで、彼らに対抗出来るようになるというのであれば、僕としては躊躇う理由はありませんね。もう一度、手合わせをお願いします」




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