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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

闇に抱かれし魂(前)
今回のリクエストは「EXベースで記憶喪失ネタでマサキに会って記憶が一気に戻る白河」です。
3~5回でさっくりと終わる予定です。

しかし資料を引っ繰り返したんですが、これってイベントマップなので、情報が少ないんですよね。私の記憶だといずれかの攻略本には必要な会話があった筈なんですが、幻を見たんですかね?笑


<闇に抱かれし魂>

 圧倒的な力で以てラ・ギアス世界に君臨する三柱神がひとり、破壊神サーヴァ=ヴォルクルス。その名をルオゾールより聞かされた瞬間、シュウの記憶は僅かに蘇った。
 シュウの人生を弄んだ邪悪なる神は、いつしかシュウの精神に深く潜むようになり、シュウ=シラカワ――或いはクリストフ=マクソードという人間を巧みに操って、神聖帝国ラングランを掌中に堕とす企みを働くようになっていった。
 人々の激しく強い負の感情をエネルギーとして、現世に顕現するヴォルクルス。彼が特に好物とするのは、純粋な魂が裏切りを知った瞬間の底なしの絶望感である。彼の傀儡となって世界に混沌を呼び込み続けたシュウは、その結果、数多の人間の命を無為に奪うことに成功する。調和の結界の破壊、そして王都の壊滅。その後に更なる世界へと手を広げるべく、ヴォルクルスにそそのかされるまま地上世界に向かったシュウは、どうやら宇宙に出たところでその命を終えたようだ。記憶に大きな欠損が生じているのは、その後に蘇生させられたからであるらしい。
 余計なことを――と、魂の安息を求めたからこそ月に死に場所を定めたシュウは思ったものたが、よくよく考えてみれば、記憶に大きな欠損が生じている現状は、シュウが長く抱いてきた希《のぞ》みを叶えるのにこれ以上とない効果を発揮してくれることだろう。サーヴァ=ヴォルクルスという支配からの解放。野望を胸に秘めたシュウは、かつての仲間たちを従えて、自ら作り上げた|最高の鎧《グランゾン》とともに再びラングランの大地に降り立った。
 勿論、表向きはサーヴァ=ヴォルクルスの復活――即ち偉大なる破壊神のこの世への顕現を果たすことを目的としている。
 邪神教団がその先に何を求めているのか。今のシュウにとっては興味も関心も湧かないことではあったが、目的を果たすにはその本体と直接的な対面を果たす必要があった。だったらこの立場を利用しきってみせよう。シュウの能力がどれだけ高かろうとも、長く教団に心と体を拘束された身だ。ひとりで目的を果たしきれるとは思ってはいない。それに……シュウは闇の中で静かに嗤った。ヴォルクルスの顕現には、上質な供物が必要だ。
 あの禍々しい神に信仰を捧げている敬虔な信者以上に、その贄となるのに相応しい存在があったものだろうか?
 彼らは卑しく醜い存在である。彼らの布教活動は、対象の自意識に訴えかけるものでない。それを我が身を持って経験しているシュウは、だからこそ教団に――そしてそこに属する信者という存在に憎しみを抱いているのだ。
 そもそも、ヴォルクルスの本尊を顕現させる活動に熱心な彼らは、その供物に我が身を――或いは他の信者の魂を捧げるという発想がない。それもその筈。サーヴァ=ヴォルクルスは自己犠牲といった崇高なる感情を忌避する神である。そうである以上、彼らがその身をヴォルクルスに捧げたいと望んだ瞬間に、彼らの供物としての価値は消失してしまうだろう。
 長い歴史を誇る教団の始まりは、その矛盾をどう昇華するかといった哲学的な命題に取り組むものであったとも聞く。彼らはヴォルクルスを顕現する神としてではなく、象徴的《シンボリック》な存在として教団の旗印に据えた。我らが思索の原点の象徴。それは理性を重んじるラ・ギアス世界に相応しい神への信仰の在り方でもあった。
 けれども原始的な欲は、いつでも理性を上回る。いつしか世界を滅ぼすといった単純な欲に支配されるようになった教団は、歪んだ精神の持ち主たちの吹き溜まりとなった。彼らが真に求めているものが何であるのか、シュウには決して理解など出来ようもなかったが、現世に干渉を起こせる神たるサーヴァ=ヴォルクルスが、自身を奉る信仰の在り方さえも長い年月をかけて変容させていったのは想像に難くない。
 それは彼の自尊心の表れだ。人間如きに自身が扱い切れる筈がないだろうという。
 ならば彼らには精々役に立って貰わねば。
 グランゾンの操縦席に身体を埋めながら暫しの仮眠を取り終えたシュウは、そうして通信システムを開くと、見張りに立っているサフィーネをその画面に呼び出した――……。


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