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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

名前を呼んで
いつもTwitterで公開してからblogに持ってきている診断メーカーシリーズ。今回のお題は@kyoさん内のレーティングに引っ掛かってしまったので、blogでのみ公開にしようと思います。

って、云ってもただ性行為の最中だって話なんですけど。

拍手、有難うございます。励みになります!ヽ(´ー`)ノ
<名前を呼んで>

 名前を呼んで。そう囁きかけた瞬間、胸の下に組み敷いているマサキの身体がぴくりと震えた。次の瞬間、睨み付けるようにしてシュウの顔を見据えてきた彼は、口唇を真一文字に結んで二度、三度と首を横に振った。
 嫌なの? 額にかかる髪を掻き上げてやりながら、マサキの顔を間近にして尋ねれば、彼はシュウに直視されるのが耐えられなかったようだ。顔を背けると、嫌だ。と、力を込めてひと言。
 不貞腐れたような横顔に、シュウはシュウはマサキを苛む自らの手の動きを強めていった。あ。声を上げたマサキの身体がシーツに深く沈む。自らが晒した痴態の数々を、マサキはもしかすると覚えていないのかも知れない。どうせ感極まれば無意識の内に繰り返し口にするものを……と、その数々を思い起こしたシュウは、だったら呼ばせるまでと、マサキの額に落とした口唇を、耳に、うなじに、首筋にと順繰りに滑らせていった。そうして、ねえ、マサキ。つい口を衝いて出る喘ぎ声を口の中に留めようとしている様子で、口唇を結んでは緩ませるのを繰り返しているマサキに、もう一度、名前を呼んで。と囁きかけた。
「――嫌っ、だ……」
 どうあっても、シュウの名前を口にするのは嫌とみえる。云うなりまた深く口唇を結んだマサキに、それがマサキなりの現在のふたりの関係に対する筋の通し方であるのだろうとシュウは見当を付けたものの、さりとてこうも重ねてこちらから頭を下げているものを無視され続けるのも癪に障る。だからシュウは彼の肌を探る手を、彼が好む場所へと這わせていった。そうして吐息を吐き出しながら、自らの手技に大人しく身を委ねているマサキの姿を見守った。
 シュウの手を跳ね除けることのなくなったマサキは、むしろ自ら進んでその罠にかかろうとしている風ですらある。以前の彼であれば、シュウとふたりきりの空間に身を置くことになろうものなら、秒と待たずに席を立っていたところだ。それが今となってはどうだ? 腰を浮かせてしきりと喘ぐようになったマサキの姿に、|達《い》きたい? シュウは出来るだけ優しく問いかけた。
「イキたくない筈が、ないだろ……ッ」
 時にシュウに物を云いたげな視線を送ってくるマサキの扇情的な表情。ここまで手懐けるのにどれだけの時間を要したことか。シュウはマサキを懐柔するのにかかった時間を思った。だのに彼はそう簡単には自分を乱しはしない。捻くれた性分はこういった時ですら健在なのか、癖のある物言いばかりをしてみせる。
 そんなマサキが素直をさを露わにするのは、|性行為《セックス》に溺れて、溺れて、溺れ尽くした果て。もっともっとと足を絡み付かせてきながら、彼は狂ったようにシュウの名前を呼び、そうしてその声がひときわ高く響いた瞬間に、決して他人には見せない表情を晒してゆく。
 ――名前を呼んで。
 シュウは|三度《みたび》マサキに囁きかけた。もっと、もっと、彼が溺れてゆく姿を見たい。|自尊心《プライド》も、誇りも、立場も、彼に正気を保たせている全ての鎧を取り払って、そうしてただの安藤正樹になった彼の小さな魂を抱き締めたい。けれどもシュウの言葉にマサキは何度だって首を振ってみせるのだ。まるでそれをしてしまっては、自分が取り返せなくなるとでも云うかのように。
 だからシュウは彼を苛んでいる手の動きを緩めた。そうして、じれったさに顔を紅潮させて、シュウを睨み付けてくるマサキの表情を堪能した。ああ、ああ、もう、もういいだろ。喘ぎ声の合間に、誘いかけるような言葉を口にするマサキは、それでもシュウの名前を呼ぶことはしない。
 きっと、彼がその鎧を脱ぎ捨てるまでには、もう暫くの時間が必要なのだ。
 シュウはだらしなく足を開いているマサキの腰を抱え込んだ。今日はこのぐらいにしておきますよ。心の中でそう届かぬ言葉を吐く。そしてゆくっりと、その身体の奥へと自らの昂ぶりを収めていった。

kyoへの今日のワンドロ/ワンライお題は【名前を呼んで】です。
ワンドロ&ワンライお題ったー:https://shindanmaker.com/1068015


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