いやこれ
どう考えても
無理じゃね?
そんな140字チャレンジその2。そろそろ連載中の作品が恋しくなってきました。
今回のリハビリも140字が成功することなく終わりそうです。
拍手有難うございます。励みになります!
ついに虹で7つのお題も完結しましたし、いい加減拍手ネタも刷新したいと思う次第です。
どう考えても
無理じゃね?
そんな140字チャレンジその2。そろそろ連載中の作品が恋しくなってきました。
今回のリハビリも140字が成功することなく終わりそうです。
拍手有難うございます。励みになります!
ついに虹で7つのお題も完結しましたし、いい加減拍手ネタも刷新したいと思う次第です。
念の為にと鏡に自分の姿を映したマサキは、わかってはいたものの、所構わずに付けられたキスマークの数々に閉口せずにいられなかった。しかしそれも少しのこと。即座にベッドに残っているシュウを振り返ると、事後にも関わらず平然と読書に耽っているのだから、声を荒らげたくもなるというもの。
「シュウ、おい! お前、また……!」
「何か不満でも?」
脚にブランケットをかけただけの姿。服を着ることもせずに本を手に取ったらしい。顔を上げることもなくしらと云ってのけたシュウに、大アリだ。マサキは不満も露わにベッドに乗り上がった。
「見える場所は避けろって云っただろ」
「髪で隠れる場所ですよ」
首筋に明瞭《はっき》りと刻み込まれた紅斑は、確かにシュウの云う通り、伸びきった襟足で隠れてしまう位置にある。とはいえ、そう思い通りに事が進まないのが世の常人の常。前回、似たような場所に付けられたキスマークは、色が薄れるより先にテュッティに見付かってしまっている。
髪が風に煽られたのだ。
そのキスマークの色があまりに濃かったことに呆れ果てた様子だったテュッティは、けれどもけじめは求めないとならないと思ったのだろう。身体には良くないのだし――と、話を切り出してくると、義妹であるプレシアの教育に良くないのだから、せめて場所は考えるようにとマサキに告げてきた。
そうは云われたところで、そのキスマークをマサキに付けているのは、涼しい顔で読書に耽っているこの男である。云って止まる男かよ。わかりきっている結末を見る為に行動することほど虚しいものもない。それでもマサキはシュウを説得すべく口を開いた。
このままにしておいていい話でないのは明白だったからだ。
首筋に限らず、襟周り、二の腕、脇腹、腿の内側に、足首。むしろキスマークを付けられていない場所を探した方が早いに違いない。こんな姿を稚い義妹にだけは見せられない。風呂に入るのにも気を遣う生活。シュウと寝た後はいつもこうだ。一週間は不自由を強いられる。
「何でこんなに付けるんだよ」
「マーキングですよ。あなたを他の誰かに取られない為の」
「こんなに付ける必要はねえだろ」
首筋一箇所で足りる話を何十倍にもしてしまう男の情のこわさ。それをマサキは既に思い知ってしまっていた。何せ、マサキの周りには、マサキを恋慕う女性たちが存在しているのだ。間に誰かを挟まずに彼女らと出かけだけでも、何処でその情報を仕入れてきたものか。シュウは即座にそれをマサキに指摘してみせたものだったし、その罰とばかりにマサキを思う存分嗜虐してみせたものだ。
もし、彼女らと間違いを犯そうものならどうなることか。
裏切れる筈があるかよ。げんなりしながらマサキは言葉を続けた。何でお前はそんなに猜疑心が強いかね。
「身近な人間に裏切られることなく生きてこられたのであれば、あなたをそうまで拘束せずとも平気でいられるのでしょうけれどもね」
淡々と、けれどもマサキにはその心境が理解出来てしまう言葉を吐いたシュウが、まだいるの? とその顔を覗き込んでいるマサキの頬に手を置いた。きっと未練を感じているのだ。マサキはその手に、そろそろと自らの手を重ねた。
大きな図体《なり》をして甘えたがりな一面のある男は、時にこうしてマサキを試してくる。それだけ、マサキの態度に不満を感じているのだろう。シュウは自分への愛情が本物であるのかを知りたいのだ。だからこそ、その答えに不足を感じれば、容赦なくマサキを身体で縛り付けようとしてくる……。
どう答えてやるのが正解なのか、マサキにはわからない。
「……お前はどうして欲しいんだよ」
わからないからこそシュウに答えを委ねたマサキに、きっと彼は孤独を埋められないほどの不足を感じたのだろう。マサキの手を引くと、ブランケットの中へと。着替えたばかりの身体を引き入れてきた。
kyoさんは【love bite】をお題にして、140字以内でSSを書いてください。
140字SSお題ったー:https://shindanmaker.com/428246
そこにマサキがいる瞬間にふと思ってしまうことがある。このままこの時間に留まり続けていられたらどれだけ幸福だろうかと。けれどもそれは叶ってはならない望みなのだ。彼には帰るべき場所があり、そこにこそ輝ける人生がある。そう、シュウの見たいマサキ=アンドーという人間の未来は、シュウには与えられないものなのだ。それを妬ましいこととは感じない。ただ、自分も彼の日常の一部であれれば……とは考えてしまうことがある。|烏滸《おこ》がましい。シュウは嗤った。光と闇、表と裏、未来と過去。マサキとシュウがそれぞれ持つ属性は、まるでギリシア神話の|時の神《ヤヌス》のように、決して互いを向き合わないものばかりだ。それがひととき、道を交えた。それだけで充分ではないか。ささやかな幸運。けれども大きな恵み。だのに欲深い人間たるシュウは、微かに胸を疼かせる欲望を、今日もまた捨てきれずにいる。
kyoさんは【閉じ込めていたい】をお題にして、140字以内でSSを書いてください。
140字SSお題ったー:https://shindanmaker.com/428246
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そこにマサキがいる瞬間にふと思ってしまうことがある。このままこの時間に留まり続けていられたらどれだけ幸福だろうかと。けれどもそれは叶ってはならない望みなのだ。彼には帰るべき場所があり、そこにこそ輝ける人生がある。そう、シュウの見たいマサキ=アンドーという人間の未来は、シュウには与えられないものなのだ。それを妬ましいこととは感じない。ただ、自分も彼の日常の一部であれれば……とは考えてしまうことがある。|烏滸《おこ》がましい。シュウは嗤った。光と闇、表と裏、未来と過去。マサキとシュウがそれぞれ持つ属性は、まるでギリシア神話の|時の神《ヤヌス》のように、決して互いを向き合わないものばかりだ。それがひととき、道を交えた。それだけで充分ではないか。ささやかな幸運。けれども大きな恵み。だのに欲深い人間たるシュウは、微かに胸を疼かせる欲望を、今日もまた捨てきれずにいる。
kyoさんは【閉じ込めていたい】をお題にして、140字以内でSSを書いてください。
140字SSお題ったー:https://shindanmaker.com/428246
不意に零れた涙だった。
街の片隅にある小さな公園で、無邪気に遊んでいる子供たちの姿が目に入ったその瞬間。マサキの脳裏に戦時中の光景がフラッシュバックした。
食料の配給を受けるといった最低限の用事でしか市民が出歩くことのない厳戒態勢の街。命懸けで通りを歩く人々の中に、子どもの姿を見かけることはまずなかった。稀に、そう稀に、親代わりに重い荷物を背負って歩くのを見かけたぐらいだ。
当然、遊び回る子どもたちなど目に出来る筈もない。
それが今ではのびのびと、何を気にするでもなく、公園で遊び回るまでになっている。
取り戻されたラングランの秩序。あれから充分に時は過ぎ、その有難みをマサキは何度も噛み締めてきたつもりだ。それなのに、伝い落ちる涙。頬に当たる風がその感触を幾度となく知らせてきても、マサキは自らの涙を拭えずにいた。
それがベンチの隣に座している男の目に、どう映ったのかはわからない。けれども、さして時間も経たぬ内にマサキの異変に気付いたらしい男は、自らの肩にマサキの頭を引き寄せると、ひと言も発することなく。ただ穏やかにマサキの髪を撫でてきた。
――嗚呼。もう、いいのだ。
揺るぎない日常。自らが築き上げた平和が恒久的に続いているのを、マサキはこの目でしかと見た。
マサキにとって守るべき世界とは、国家がひしめき合う巨大な大陸にはないのだ。
それは子どもたちが遊び回る公園であったし、夕餉の匂いが漂う街角であったし、老人たちが早朝の散歩を愉しむ遊歩道でもあった。サーカスがテントを張る広場であったし、威勢のいい主人の声が響く商店街であったし、今は亡き人々との思い出が詰まった王宮でもあった……。
だからマサキは呟いた。幸せだ。そして、涙のおさまった瞳で今一度、溢れんばかりの笑顔を浮かべている子どもたちを見た。
背中に翼が生えているかのような軽やかさで、公園内を駆け抜けてゆく子どもたち。幸せだ。繰り返したマサキに、勿論ですよ。深く頷いてみせた男が、膝の上に開いたままだった本を閉じる。
「あれこそがあなたが守った世界。ありふれた日常ですよ、マサキ」
マサキが見上げた先には、これ以上となく満ち足りた表情がある。ああ。マサキは悟った。自分は大切なものを隣に置けるこの日常こそを守りたかったのだ――と。
マサキは頭を撫でられた時に幸せだなと感じました。
この人しかいないと思っています。
幸せを感じる瞬間:https://shindanmaker.com/778207
幸せを感じる瞬間:https://shindanmaker.com/778207
――いざ立ち上がれ、ラングランの民よ。自らの権利を放棄することなかれ!
そう演説を締めた男に拍手が湧き上がる。熱狂と興奮。けれどもそれはそう長くは続かなかった。
深々と礼をして壇上を下りた男に、次第に引いてゆく人の波。やがて薄くなった人垣の向こう側に見知った長躯があるのを認めたマサキは、苦々しい思いを抱きながらもそこから目を離せずにいた。
程なくして、どうやら彼もまたマサキの存在に気付いたようだ。かち合う視線。目が合ったその瞬間に、互いの思惑が交差した――ような気がした。
だが、だからといって迂闊に近付いてくるような男ではない。次の瞬間には、彼は静かに人垣の奥へと歩み出してゆく。そう、それはまるでマサキが自らの後を付いてくるのを確信しているかのような足取り。選挙間近のラングラン城下町をゆったりと歩んでゆく彼に、仕方ない――と、マサキは付かず離れずの距離を保ちながら付いて行くことにした。
いつもこうだ。
時に堂々とマサキの前に姿を現してみせる彼は、こうして偶然に顔を合わせたその時には、まるでふたりの関係が秘めたるものであるかのように振舞ってみせた。来いとも云わない彼の用事がさしたるものでないのは、マサキとて承知している。それでも付いてゆかずにいられないのは、彼の”用事“にマサキが期待をしてしまっているからなのだろう。
少し離れた遊歩道に身を滑り込ませた彼に、ほらな。そうは思いつつも、足を止めようとは思わない。マサキは彼を追って遊歩道を渡り、街路樹の奥にうっそうと茂っている木々の合間を抜けていった。程なくして、木陰に身を潜めている彼に追い付く。何の用だよ。マサキが尋ねれば、わかっているくせに。彼は陰気にも愚かなマサキの振る舞いを嘲るように微笑《わら》ってみせた。
――選挙絡みの用かと思ったんだよ。
一歩、二歩とマサキは彼に向けて歩んでゆく。変わることのない彼の獲物を招き入れるような振る舞い。この間もそうだった。その前も、そのまた前も。それが憎々しく感じられれば、こうした関係がまだ続くことに対して安堵してしまっている自分もいる。いずれにせよ、マサキは自分が思っているほどに、彼のこうした振る舞いを嫌がってはいなかった。
――今回の選挙は、特に番狂わせもなく、順当に議席を分け合うことでしょうね。
大樹を回り込んで彼の前に立ったマサキにそうとだけ告げると、彼は早速とばかりに腕を開いてみせた。
マサキはその動作を待つことなく、彼の胸へと身体を寄せていった。
そこに合図などといったものは存在しない。ただ、阿吽の呼吸があるだけだ。
長く続いた関係が生み出した信頼。もう、彼が敵に回ることはない。面白味がねえな。マサキはぽつりと呟いた。この身が小さく感じられるまでに長い彼の腕が、余裕を持って背中に回されてゆく。その温もりを感じながら、マサキはそれが当然の行いであるとばかりに面を上げた。
重なり合う顔の合間で、口唇が触れ合う。さしたる情報もなく自分の前に姿を現してみせた男の目的が何であるのか、マサキは考えを及ぼしてみるも、彼との行為に次第に掻き消されてゆく。
何にせよ、まだ続くのだ。
何かを告げることもない曖昧な関係。いつかそれは決定的な破綻を迎えるのだろう。だったら今だけは、この関係を味わい尽くそう。マサキは深く合わせた口唇の中で、絡み合った舌を緩く動かしていった。
kyoへの今日の漢字テーマ【合図[あいず]/あらかじめ決めた方法で相手に意思や事柄を知らせること。また、その方法や信号】
漢字で創作ったー:https://shindanmaker.com/731136
未練がましく縋り付くのは性分ではなかったものの、それでも断ち切れない想いがある。何よりシュウは簡単にマサキの感触を忘れられそうにはなかった。指を通した髪の柔らかさ、手を滑らせた肌の温かさ、重ねた口唇のなめかましさ……|別離《わか》れの瞬間を迎えて尚、まざまざと身体に蘇ってくる記憶の数々。それをこれからひとつひとつ忘却していかなければならないのだ。そんなのは無理だ。シュウは宙を仰いだ。瞳のきわに溜まった涙が零れ落ちないように、一点を見据える。今日も色鮮やかなラングランの空。目の前に広がる景色は、まるで良く出来た書割のようだ。現実味に乏しい世界を、けれどもシュウは生きていかなければならない……そうして黙して暫く。静かに自らの涙を封じ込めたシュウは、これで最後ですから。と、目の前に横たわるその亡骸を抱き締める許可を彼の仲間たちに願い出る。
kyoさんは【これで最後だから】をお題にして、140字以内でSSを書いてください。
140字SSお題ったー:https://shindanmaker.com/428246
以上です。
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kyoへの今日の漢字テーマ【合図[あいず]/あらかじめ決めた方法で相手に意思や事柄を知らせること。また、その方法や信号】
漢字で創作ったー:https://shindanmaker.com/731136
それは旅先から届いたと思しき一枚の手紙だった。
簡単な近況を告げる便箋と名所が収められた写真が何枚か同封されているだけの。
その写真の何処にも差出人たる彼の姿がないのが、旅行だからといって浮かれるでもないその性格を表しているようだ。何であいつはアナクロな手段が好きかねえ。暫くそれらを眺めた後に、呟きながらマサキは写真の表面へと指を這わせていった。
一枚、また一枚。次から次へとそうして写真の“処理”を続けていると、やがて指先が違和感を探り当てた。ここか、とペーパーナイフで切れ目を入れたマサキは、層になっている写真の紙を慎重に捲り上げた。そこには小指の先ほどの大きさのマイクロチップが一枚、さも当然のように挟み込まれている。
久しぶりの休暇も今日で終わりなようだ。
再びマイクロチップを写真に戻したマサキは、その写真を無くさないようにフィルムパックに入れ込んだ。そうして壁に掛かっているジャケットの内ポケットに収めた。中にどういった情報が記されているのか、今の段階ではわかりようがなかったものの、これだけ回りくどい手を使ってみせたのだ。決して穏便に済むような内容ではないだろう。
――ほら、お前ら。出番だぞ。
床に寝そべっている二匹の使い魔を叩き起こし、一日ぶりにベッドから出る。カーテンを閉め切って生活していたからか。着替えを終えて外に足を踏み出せば、外の光が額を暴力的に叩いてきたものだ。ああ、くそ。面倒臭え。マサキはサイバスターに乗り込んだ。そしてマイクロチップの中身の分析を頼むべく、情報局のセニアの許へと|疾《はし》り出して行った。
kyoさんは【手紙】をお題にして、140字以内でSSを書いてください。
140字SSお題ったー2:https://shindanmaker.com/670615kyoさんは【手紙】をお題にして、140字以内でSSを書いてください。
未練がましく縋り付くのは性分ではなかったものの、それでも断ち切れない想いがある。何よりシュウは簡単にマサキの感触を忘れられそうにはなかった。指を通した髪の柔らかさ、手を滑らせた肌の温かさ、重ねた口唇のなめかましさ……|別離《わか》れの瞬間を迎えて尚、まざまざと身体に蘇ってくる記憶の数々。それをこれからひとつひとつ忘却していかなければならないのだ。そんなのは無理だ。シュウは宙を仰いだ。瞳のきわに溜まった涙が零れ落ちないように、一点を見据える。今日も色鮮やかなラングランの空。目の前に広がる景色は、まるで良く出来た書割のようだ。現実味に乏しい世界を、けれどもシュウは生きていかなければならない……そうして黙して暫く。静かに自らの涙を封じ込めたシュウは、これで最後ですから。と、目の前に横たわるその亡骸を抱き締める許可を彼の仲間たちに願い出る。
kyoさんは【これで最後だから】をお題にして、140字以内でSSを書いてください。
140字SSお題ったー:https://shindanmaker.com/428246
以上です。
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