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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

Kiss,Kiss,kiss.(裏)
キスの日でしたね!

思いっきり乗り遅れましたが、明日のことを考えずに頑張ったので、それで勘弁してやってください。お題は「4時間以内に5RTされたらシュウが苦笑気味に腕に恋慕のキスをするところを描き(書き)ます」でした。(裏)ということは(表)があるのですが、それは明日Twitterに投下します。というかこれから書きます!笑 ほら、Twitterは私の中では表通りなので、流石に18Kはね、投下できないっていうかね……

私にしては珍しくもな超SSです。時間がなかったんです、ごめんなさい!
ということで本文へどうぞ!
<Kiss,Kiss,kiss.(裏)>

 最後の吐息が薄明りの中、ベッドの底に沈んでゆく。
 後ろ手に掴まれていた手首を離されたマサキの身体が、糸の切れた人形のようにぐったりと、シーツの海に海に潜ってゆく。ようやくの解放感に詰めていた息を深く吐き出し、その背中の上に身体を伏せたシュウは、暫くの間。何をするでもなくそのままでいた。
 背中を上下に揺らしながら忙しなく息を吐くマサキの横顔が、徐々に覚めてゆくのを眺めながら、限りのない倦怠感と、いずれまた枯渇するだろう充足感に、シュウは静かに身を委ねる。ひとつ得れば次、そしてまた次と、果てのない欲望が行き着いた先にある行為を終えた後はいつもこうだ。何をするのも億劫で仕方がなくなる。そんなシュウの胸の内を見抜いているのだろうか。「……お前さ」と、呟くようにマサキが言葉を吐いた。
「やることやって、疲れました。少し休んだら寝ます。ってのはどうかと思うぜ」
「何を云い出すのかと思えば」
「少しは余韻に浸りてえじゃねえかよ」
 そうは云われても、疲れているのはお互い様だろうに……そう思いながら、不満露わな表情をシーツに埋めているマサキの顔を見詰める。
「あなたを抱き締めて眠るのだけでは不満ですか?」
「そういうことじゃなくてさ」
 マサキが何を求めているのか、うっすらとシュウは察してはいたが、それで焼け木杭《ぼっくい》に火が点いても困る。彼の肢体が反応する様は、どうしようもなくシュウの情欲をそそるのだ。そう、どれだけ身体を重ねても足りないほどに。
 だからこそ、マサキに無理を強いたくないシュウは、余計な事には手を出さず、ただ彼の身体を抱き締めて眠るだけに留めているのだ。それをマサキに理解しろというのは難しいことかも知れない。人肌の温もりに飢えている彼は、ささやかな触れ合いでさえも貪欲に貪ってみせる。
「もう少し、こう、俺に構って欲しいっていうかさ……」
 自らの望みをどう言葉にすればいいか悩んだのだろう。そこで言葉を濁したマサキが、重てえ、とシュウの胸の下で身体を捩らせる。シュウはそのマサキの身体に背後から手を回した。腕に馴染んだ身体を抱き寄せながら横になり、肩をシーツに沈める。
「そろそろ抜けって……」
「物足りなさそうな台詞を吐いた割にはつれない事を。抜いていいの、マサキ?」
「だから、そういうことじゃないんだって」
「具体的に云ってくれなければわからないでしょうに」
 きっと彼のこと、後戯という言葉は知らないに違いない。そう思いながら追い詰めるように言葉を吐く。
 素直に優しさを表せない捻くれた自分のような人間に、よくぞ付き合い続けてくれているものだ。時には跳ねっ返ってみせる事もあったものの、それでも付かず離れず。シュウが望む距離感で側にいるマサキに、恋情は限りなく。けれども、それで長年の習性が簡単に変えられる訳でもない。
 手に入れた先には、別離が待っている。
 優しさを与えれば与えた分だけ、その別離が辛く苦しいものになることをシュウは知っている。知っているからこそ、シュウはマサキの言葉を待った。彼が自分を求める言葉を聞きたい。たったそれだけの我儘な欲の為だけに、シュウにとっては細く感じられる彼の身体を抱き締めながら。
「例えば、さ……髪を撫でるとか、指を絡めるとか、キス、するとか……」
 消え入りそうな声でようやくそうと言葉を吐いたマサキに、シュウは苦笑せずにいられなかった。これでも大分成長した方だ。奪われる事に慣れてしまったマサキは、それが自分の欲望に適っているからだろう。自分の望みを口にするのが苦手なようだ。
 シュウとて人の子。何もかもを見透かしてやれる筈もない。だからこそ時にこうして、マサキに自ら求めるものを口にさせようと試みてきた。その結果がこれだ。かけた時間に見合わない結果を目の当たりにすれば、それは苦笑もしたくもなる。
 マサキが自ら素直に欲を口にするようになるには、まだまだ時間がかかるのだろう。けれども、そんな不器用なマサキがシュウにとっては恋しく感じられるのもまた事実。
 そうっと、その腕に。
 口唇を押し当てて、シュウは滑らかな肌を吸った。その恋慕う気持ちがマサキに伝わる事はないと知りながら、そうして。シュウはいつか消えてしまうだろう紅斑を、自らの想いを表す部位に刻み付けた。


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