忍者ブログ

あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

Twitterワンライまとめ(1)
今度はワンライにチャレンジ!!!!
凄く時間がかかってますけど、いつかは一時間で書けるようになるよ!



<つむじ風>

 わわ。と慌てた声が思わず口を衝いて出た。
 不意に巻き起こったつむじ風に、マサキの近くを歩いていた女性のスカートが派手に吹き上がった。白いドロワーズ。バルーン状に彼女の足を覆う白い布にマサキが気を取られた次の瞬間、何事もなかったかのようにつむじ風が止んだ。
 ふわり、と落ちてくるスカートの布が、ドロワーズを覆い隠す。一瞬の出来事は、夢幻と云われれば信じてしまいそうになるまでに、儚い記憶しかマサキの脳裏に残してはくれなかった。だというのに、彼女は何事もなかった――では済ませられなかったようだ。ぺたりと地べたに座り込んだ彼女に、マサキはどうすべきか悩んだ。妙齢の女性である。スカートの中身を衆目に晒してしまった彼女の胸中は想像するに余りあったものの、見て見ぬ振りをしてやるべきなのか。それともひと声かけてやるべきなのか。思い悩んでその場に留まるマサキとは裏腹に、周囲の人間たちは前者でいようと決断したようだ。誰も彼もが不自然に視線を逸らしては足早に去ってゆく。それが彼女の羞恥心を更に煽ってしまったようだった。耳まで真っ赤に染まった彼女の顔は、今にも泣き出してしまいそうなまでに歪んでしまっている。
 何が出来るかはわからないが、このまま彼女を放置してもおけない。
 そう考えたマサキが覚悟を決めて一歩を踏み出した瞬間だった。ふわりと空気が肩を撫でた。何だ、とマサキが視線を動かせば、どこに潜んでいたものか。すらりとした長躯が印象的な男が、ゆったりと。未だに立ちあがることも出来ずにいる彼女へと迫ってゆく。
 よもや見ず知らずの女性に恥の上塗りをさせることもあるまい――とは思うも、どうかすると余計な口をききかねない男。割って入るべきか。それとも。考える間もなく女性の目の前に立った男が僅かに身を屈める。次いでそうっと差し出される手。立てますか――男が一切の感情を排した声を放つ。
 気障ったらしい。マサキは男に鋭い視線を飛ばさずにいられなかった。
 どちらかと云えば無表情にも映る横顔。決して愛想がいいとは云い難い。けれども彼女にとって、突如として目の前に現れた男は、誰も彼もが白々しく視線を逸らしてゆく中にあったからこそ、そのいたたまれなさを和らげる救世主たり得たようだ。
 はい、大丈夫です。男の言葉に力強く頷いた彼女は、差し出された手を取って静かに立ち上がると、頭三つは差のある長躯に対して深く頭を下げ、つむじ風が引き起こしたハプニングなどものともしない様子で歩き出した。
「あなたはもう少し、女性の扱いを覚えた方がいいのでは?」
 その背中を暫く見送っていた彼が、やおらマサキを振り返って口にする。
「わかってるけど、見えちまったし……」
 気まずさを押し隠すように目を逸らしてマサキが云えば、「そういう態度が善くないのですよ」彼は微かに眉を顰めてみせると、次は上手く立ち回るのですね。そう言葉を残して去って行った。

@kyoへの今日のワンドロ/ワンライお題は【ラッキースケベ】です。
ワンワンお題ったー(https://shindanmaker.com/1068015



<草原にて>

 さわさわと草を撫でて吹き抜ける風が心地よい、うららかな陽気の日だった。
 サイバスターから降りてラングランの草原を眺めていたマサキの膝の上には、日々愛らしさが増す|義妹《プレシア》に持たされたランチボックスが乗っている。どうせまたひとりでどっか行っちゃうんでしょ。口唇を尖らせながらもそれ以上の愚痴を口にすることのなかったプレシア。|義兄《あに》に対する思いやりの詰まったランチボックスの蓋を、そっとマサキが開いてみれば、たっぷりと具材を挟み込んだサンドイッチが並んでいる。
 ひとり分には多く、ふたり分には足りない量。恐らくはまだまだ食欲旺盛な|義兄《あに》を慮ってのことだろう。充分に腹を満たして余りある量に、頭が上がらねえな。苦笑しきりでマサキが呟けば、「妹だからって甘えっ放し。ちゃんとマサキ、お礼しニャいと駄目ニャのよ」草むらの中でじゃれあっていた二匹のファミリアが、耳聡く言葉を捉えて声を上げる。
「今度おっさんの家の草むしりでも手伝うか」
「あれもこれもプレシアに任せきりニャんて、兄として失格ニャんだニャ」
「わーってるよ。わーってる。明日から暫くは大人しくするさ……」
 云って、マサキはサンドイッチを取り上げた。
 温暖な気候が常のラングランで、その陽気が持つ魅力に逆らい切るのは難しい。今日は西へ。明日は東へ。マサキと二匹の使い魔は、戦いの合間を縫ってはラングランの雄大な自然を眺めに方々へと足を運んだ。サイバスターの身の丈をゆうに越える滝、山の裾野に広がる菌糸類の森……地上では決して目にすることの出来ない景色も多いラングランの自然は、マサキの好奇心と探求心、そして冒険心を満遍なく満たしてくれた。
 ――今日は何処に行こうか……
 そんなことを考えながら、柔らかい日差しの下。パンに挟み込まれた具材の全てを零さずに食べきろうと、マサキが大きく口を開いたその瞬間だった。
 唸る大地。身体の芯を突き抜ける程に強烈な振動が生じたかと思うと、どうやら白亜の機神の姿を目にして立ち寄ったらしい。いつの間にやらサイバスターの近くにまで迫っていた鉄騎が、緩やかにその動力炉を停止させた。
 ラングランの抜けるような青空に勝るとも劣らないインディゴブルー。|重戦士《ヘビィアーマー》を想起させる無骨な機体にはある意味似つかわしい。青銅の魔神、グランゾン。鮮やかに飛び込んでくる塗装色に目を細めたマサキは、やがて降り立ってくるだろう操縦者に想いを馳せた。
 ――この間顔を合わせたのは、いつのことだったか……
 とりたてて約束をした訳でもないのに、方々で顔を合わせる男。街中で、草原で、戦場で。決して狭い範囲の世界で生きていない筈のマサキからすれば、彼との邂逅は偶然の巡り合わせでありながらも、必然、或いは運命とでも呼ぶべき導きによって為されたものでもあった。だからといって、はいそうですかと愚直に現実を受け入れられるマサキでもない。自らの往く道は自ら切り拓くものだ。それを知っているからこそ、マサキは腐れ縁になりつつある彼の存在を、時に癇に障るものとして受け止めてしまっていた。
 勿論、男のある種の馴れ馴れしさに辟易しているのもある。辛辣な言葉を吐くことも多い彼は、どういった気紛れか、時に露骨にマサキに甘えてきた。肌に触れる手に、口を塞ぐ口唇。それをどう消化すればいいのかわからないマサキは、男の底の知れない態度に翻弄されてしまっているのだろう。だからこそ、彼の行動の逐一に気を張り巡らさずにいられない……。
 さりとて、この好天の下でそうした男に対する不合理な感情を晒すのも気が引ける。今日のマサキは総じて機嫌がいい。吹き抜ける風に、青く抜ける空。そして視界を埋め尽くす草原。自然の中にひとりでいることを厭わないマサキからすれば、この環境こそが褒美ですらある。その機嫌を自ら損ねるような真似をしたくない――徐々に近付いて来る人影がその輪郭を濃くするのを眺めながら、出来るだけ自然と取れる表情を繕ったマサキは、少しもしない内に目の前に立った男に、食べるか? とサンドイッチを差し出した。
「ピクニックの最中でしたか」
「まさか。何となく足を運んだだけだ。プレシアに持たされたんだよ。どうせひとりでどっかに行っちゃうんでしょ、って」
「偶には兄妹水入らずで過ごせばいいものを」
 サンドイッチを受け取った彼が、マサキの隣に腰を下ろす。マサキは新たにランチボックスからサンドイッチを取り出すと、今度こそそれを味わうべく口を開けて齧り付いた。歯応えのある野菜と肉。それを噛み切って咀嚼すれば、流石は家事に手慣れた義妹の料理だけはあって、そこいらのレストランでは敵わない味がする。
「お前はどういう気紛れだよ。こんな所にまで姿を現すなんて」
「あなたと似たような理由ですよ。この果てのないラングランの平原を気兼ねなく駆けたかっただけの」
「いい天気だしな」
 つらつらと言葉を交わしながら、サンドイッチを消化してゆく。美味い。家で食べるよりも数倍美味しく感じるサンドイッチは、きっと男がそう受け止めたように、ピクニックとも思える状況に身を置いているからなのだろう。
「もうひとつ食うか?」マサキはふたつ目のサンドイッチを男に勧めた。
「もう結構ですよ。大事な昼食でしょう、手作りの」
 無遠慮にマサキのプライバシーを侵してみせる男は、そうした態度からは想像も付かないぐらいに、時に繊細にも謙虚になってみせるのだ。今にしてもそうだ。恐らくは義妹たるプレシアが作ったサンドイッチであるからだろう。血の繋がりのない家族の絆を尊重してみせた彼は、そのサンドイッチを消化してゆくマサキの隣で、涼し気な表情を晒しながら黙って草原を抜ける風を受けている。
「こんな陽気の日には、この風が恋しくなりますね」
 やがてぽつりと言葉を吐いた男が、マサキと名を呼ぶ。何だよ。嫌な予感を覚えながらも、精一杯の虚勢でもってマサキが言葉を返せば、どうやらその予感は当たっていたようだ。
「膝を貸してはもらえませんか」
「またお前はそうやって」
「この風を受けながら、自然の中で本を読みたかったのですよ」
「それと膝枕にどんな関係があるんだよ」
 マサキの返事を待つ気はないようだ。早速とばかりにその膝に頭を置いた男が、裾の長い上着の内ポケットから取り出したペーパーバックを開く。何が書かれているのか読み取れもしない題字。これでは練金学の叡智たる翻訳機能も形無しだ。なんだかなあ。マサキは小さく溜息を洩らしながらも、既に書物の世界に没頭している男を跳ね除けられずに、ただ|凝《じ》っと。吹き抜ける風に揺れる草原に視線を注ぎながら、静かに過ぎゆく時間に身を委ねた。

@kyoへの今日のワンドロ/ワンライお題は【膝枕】です。
ワンワンお題ったー(https://shindanmaker.com/1068015



<白い文庫 minite>

「どうしたの、マサキ。何だか眠そう」
 さも当然と朝食の場に顔を並べているミオが自身の顔を見て放った言葉に、何だかじゃねえよ。短く吐き捨てたマサキは、テーブルの上の水差しを取り上げると先ずは一杯。空いたコップに注いだ水を飲み干した。
「実際に眠いんだよ」
「もう少し寝てれば良かったのに」
「目が冴えちまってな」
 そして自らの定位置に身体を収めたマサキは、既に料理が並びきっているダイニングテーブルに目を遣った。どうやら良く気の回るマサキの義妹は、今日ももののついでと食事を集りに来る魔装機操者たちを頭数に入れた上で朝食を用意したようだ。
 マサキとプレシア、そしてテュッティの三人で食べきるには量の多いメニュー。目玉焼きにスクランブルエッグ、ゆで卵と卵料理だけでも三品もある上に、ウィンナーにベーコン、厚切りのハムと肉料理の数も劣らない。そこに、サラダやスープ、果物に、牛乳やチーズといった副菜までもが潤沢に添えられているのだから、それはこの館の住人でない魔装機操者たちも朝食を済ませに立ち寄ろうというものだ。
「あんまりこいつを付け上がらせるなよ」
「でも、お兄ちゃん。折角こうして来てくれたんだし……」
 食費や生活費といった金銭的な負担をより多く負っているマサキからすれば、サービス精神に溢れた義妹のこうした振る舞いは出来れば謹んで欲しいと望む部類のものであったけれども、地上人たちを家族のように世話してきた彼女からすれば、例え食べ物が目当てであろうとも彼らが足しげくゼオルートの館に通ってくれるのは喜ばしい出来事であるのだろう。ひとつ食べきれば次、そしてまた次と、ミオが慎みに欠ける態度で食事を平らげてゆくのを、微笑まし気に見守っている義妹に、マサキはそれ以上愚痴めいた言葉を吐くのも野暮ったいと口を噤んだ。
 そうして、欠伸をひとつ。
 気が昂って眠れなくなった|昨夜《ゆうべ》。先程までまんじりともせずベッドの中にいたマサキは、襲いくる眠気を振り払うように料理に口を付けた。美味しいものの、濃い味付け。プレートに山と盛られた料理は起き抜けの腹には重くもあったが、今後の予定を考えると食欲を満たせるのは今しかない。やるべきことを控えているマサキは、ミオ同様に貪るように料理を片付けていった。

 〇月×日

 夢の中でも好き放題しやがって。
 久しく〇×△□(判別不能)なもんだから、眠れなくなっちまったじゃねーか。

 既に例の文庫に日記を書いた後のマサキは、急ぎ空きっ腹に朝食を詰め込むと、慌ただしくゼオルートの館を後にした。そして向かった先で、眠れなかった原因たる淫夢の内容以上の目に合うこととなるのだが――、それはまたいつか語られるかも知れない物語。

@kyoへの今日のワンドロ/ワンライお題は【正夢】です。
ワンワンお題ったー(https://shindanmaker.com/1068015



以上です。


.
PR

コメント