今度は中~短編の移設作業に取り掛かってるんですけど、私こんなのよくpixivに上げやがったな、というのが多過ぎて。しかも打ち直すほどの内容でもなくて。
仕方がないのでそういったものはお蔵入りにすることにしてですね、その中でも比較的まともなものは没に突っ込もうと思います。
先ずはOGがアニメ化した時にお祝いで書いたSSです。
当時、白河が動いているのを見て夜中に狂った笑い声を上げていた犯人は私です。ご近所様には大変にご迷惑をおかけいたしました。今でもそうなんですけど、私白河が出て来ると爆笑してしまうんですよね。最推しなのに!!!!!
仕方がないのでそういったものはお蔵入りにすることにしてですね、その中でも比較的まともなものは没に突っ込もうと思います。
先ずはOGがアニメ化した時にお祝いで書いたSSです。
当時、白河が動いているのを見て夜中に狂った笑い声を上げていた犯人は私です。ご近所様には大変にご迷惑をおかけいたしました。今でもそうなんですけど、私白河が出て来ると爆笑してしまうんですよね。最推しなのに!!!!!
<いつもの(略)>
ぼんやりと、ベンチの上のポータブルテレビを見ていた。
ぼんやりと、ベンチの上のポータブルテレビを見ていた。
それは何処かのコテージといった趣の建物で、そのウッドデッキには白いテーブルと二脚の椅子が、まるで喫茶店のテラスを思わせる様子で置かれている。
白いレースのテーブルクロスの上には一輪挿しの花瓶。薔薇の花にローズティと、かなり少女趣味な取り合わせだったからこそ、それらを横目で眺めつつ、マサキはティータイムの準備を終えて、席に着いた男に話し掛けた。
「そういや地上波でアニメ放送始まったんだよな」
地上とも、地底とも、ゲーム内の世界とも、何処とも云えぬ世界に二人は居た。
「そうですね……あなたより先に登場したのは、一重に私の人気のお陰だと」
マサキの言葉に、シュウはいつもと変わらぬ涼しい笑みで答え、紅茶を啜る。
何故こんな所に居るのかマサキは大いに疑問で、その不条理に先程まで頬杖付いて不貞腐れていたのだが、シュウの言葉にそれを解くと身体ごと向き直る。
「自分で言うなよ、自分で」
「何か、不都合でも」
「いや、別に……」今更その自信過剰な態度を諌めるのも馬鹿らしい。マサキは言葉を濁し、「どうでもいいっちゃいいしな」と溜息混じりに呟いた。
「しかしお前、随分と老けてるじゃねえか。あのおっさんの下だと気苦労多いんじゃねえの」
「何を仰いますか。真面目に機体の開発に勤しんでいるというのに」
気を取り直して話題を変えるマサキに、シュウは大仰に眉を顰めてみせる。
「真面目に、ねえ。お前に真面目っつー言葉は似合わない気がするんだよな。いつでも人を食った態度でいて欲しいっつーか。そもそも誰かの下で大人しくしてる奴じゃねえっつーか」
「まるで私からそれを取ったら何も残らないとでもいう風な言葉ですね」
「そういう性格じゃねえかよ」
いつでも本音を語らず、上から見下ろすような物の言い方をする男との付き合いは、長くなればなった分だけ、それが当たり前だと思わせるのに充分で、マサキは呆れて吐き捨てる。
「まあ……真面目と云えば真面目に。そうでないと云えばそうでないかも知れませんね、私のしていることなど」
「何か仕込んでやがるんじゃねえだろうな。てめえの機体は不条理が多過ぎる」
彼の愛機はどうやったものか、通常時の凡庸な性能が、ひとたび窮地に陥ろうものなら、容易に太刀打ち出来ない豪傑さを発揮する。練金学と云えともあまりにも不条理――それは、パーツ別に独立しているロボットが合体すると強力になるのに似ている。
だったら初めからそれで出て来い、と短気なマサキは思ったりするのだが、そうはいかない事情がシュウにもあるのだろう。どういった理論で動いているのか聞いてみたい気もするが、やたらと複雑な理論に専門用語の羅列といった難解な答えが返ってくるか、上手い具合にはぐらかされるかのどちらかになるのは間違いなく、結局聞けないまま。
「そんなことは――ありませんよ」
シュウはまた、紅茶を一口啜ると、突如として真顔になった。
テレビの音がやたらと大きく響いて聞こえる。不意の沈黙にマサキは口を結び、シュウはらしくなく頬杖を付いた。そのままマサキをじっと凝視めると、
「――夜な夜なあなたのことを考えると眠れなくなりまして」
「はあ?」構えていただけに、思いっきり気の抜けた声が洩れる。
「それはもう機体の開発などどこかに行ってしまう程、可愛いあなたのことを考えずにはいられないのですよ。その小生意気な態度や不貞腐れた表情を思い出すととても……ね」
「やめろ馬鹿それ以上何か言いやがったら張っ倒す!」
囁くような、それでいて直接腰に響くような芯の通った低い声に、その内容もさることながら度肝を抜かれたマサキは、勢いよくテーブルに手を付いて立ち上がった。
全く口を吐けていないマサキのカップから紅茶が零れる。
しかしそれには全く構わない様子で――と云うより、完全に面白がっているのだろう。シュウはうっすらと笑みを浮かべて、
「今頃何処で何をしているのか、他の男にたぶらかされているのではないか、などと考えようものなら居ても立ってもいられなく」
「何で男限定っ!? つーかいい加減にしろよお前!」
「その滾る情熱たるや、幾度迸らせようとも飽き足らぬものでして」
「何をだよ! 冗談じゃねえぞ。そ、想像通りだったら今直ぐ表に出ろこの変態!」
段々と物騒さを増すシュウの台詞に、詰めよろうにも距離を詰められず、マサキはその場でひたすら吠え立てる。が、それで思い留まる男でないのは先刻承知。
「早く、あちらの世界でお会いしたいものですね。想像の中のあなたは従順で――いけない」
「だからどんな想ぞ……いや言うなよ! 絶対言うなよ!」
益々雲行きが怪しくなるのを感じ、マサキは最後の抵抗を口にして、柵まであとじさったが、
「勿論、こちらの世界のあなたも」
時既に遅し。
ゆったりと立ち上がったシュウが近付いてくる。
柵を越えて、うっそうと繁る林だか森だかの中に逃げてしまえば話は簡単だが、ここで逃げることに意味はあるのだろうか。マサキは躊躇った。何処かもわからぬ世界に居るのに、そこでこれ以上とないメタな会話を交わしているのに、ただ逃げただけでどうにかなるのだろうか――と。
「ば……っ! どこ触ってやが……っ!」
やんわりと身体に触れる手に、マサキは身を捩じらせるが、
「私の想像は、その躰で経験して貰いましょうか」
囁かれて、喉が鳴る。
何だよ結局こうなるんじゃないか――そう、心の中で毒吐きながらもマサキは身体の力を抜いた。
.
.
PR
コメント