再掲です。Pixivに持っていけない理由はお察しの通り。
色々混ぜ過ぎました。
色々混ぜ過ぎました。
――化学の授業なんて面白くもなんともねぇ。
澄ました表情で教壇に立っている男の顔を見て、マサキは頬杖をついたまま欠伸を洩らす。
理解不能の化学式が書かれた黒板の前に立つ白衣姿の化学教師は、どうやったら崩せるのかマサキには皆目見当が付かない完璧なポーカーフェイスで実験の説明をしていた。眉目秀麗な顔立ちが淡々と表情を変えずに授業を進める様子は威厳を発しているというより、底の知れない不気味さで周囲を威圧していると言った方が正しい。
白衣の下には今日も今日とて葬式ルック。よもや他の服を持っていないとは言わないだろうし、マサキもそれは承知しているのだが、いかんせんその姿を見せないのだからどうにも弁護のしようがない。
端正で隙のない顔立ちは口がさない生徒に言わせれば、その服装も含めて「格好つけ」らしく、否定しきれないのがこの化学教師――白河愁の掴み所のない性格を表している。
とかく、その本性が見えない。
穏やかに微笑んでいた次の瞬間には仏頂面を晒す。不機嫌かと思いきや、次の瞬間には茶目っ気を発揮する。茶目っ気で済めばいいのだが、巻き込まれる側からすれば悪夢以外の何者でもない厄災であったりするそれは八つ当たりが大半を占める。
その理由たるや理不尽極まりないものばかりだ。理由はまだしも、それに付随する行動が不条理極まりない。その餌食になるのは常にマサキであるのだから。
何よりマサキを苛立たせるのは、そういった彼の本性とも思われる変化の凄まじさを一般生徒が知らない事である。
教師としてのシュウは無愛想ではあるが今時珍しい実直な先生として認識されている。他人を寄せ付けない態度は厳しさとして受け止められ、それが生徒に迎合しない教師という他の教師と一線を画した高い格を得ているのだ。
げに他人の評価は恐ろしい。
その影で、理科課の教師達が日々怯えて生活していたり、科学同好会で物騒極まりない実験ばかりが行なわれていたり、マサキが散々な目に合っているなど、彼らは想像つかないだろう。
――畜生、何か腹が立ってきた。
それまで生真面目ではないにせよ、それなりに真面目に取り組んできた化学の授業をマサキが放棄しだしたのも、全てはこの極悪化学教師の所為である。素直に授業を聞くなどどうして出来よう。一対一で向かい合えば強制的に服従させられるのだ。
ならばせめて、その力を揮えない時間ぐらいは反抗を露わにしても罰は当たらないだろう。マサキがそう考えるのも無理はない。
「それでは実験を始めて下さい」
抑揚のない声は有無を言わせぬ迫力がある。その言葉と同時に、それまで生徒が無駄口ひとつ叩かずにいた化学室にようやくざわめきが生じる。他の科目の授業であれば頻繁に目にする光景が化学の授業に限っては珍しい。
――だりぃ、だりぃ、かったりぃ。
澄ました表情で教壇に立っている男の顔を見て、マサキは頬杖をついたまま欠伸を洩らす。
理解不能の化学式が書かれた黒板の前に立つ白衣姿の化学教師は、どうやったら崩せるのかマサキには皆目見当が付かない完璧なポーカーフェイスで実験の説明をしていた。眉目秀麗な顔立ちが淡々と表情を変えずに授業を進める様子は威厳を発しているというより、底の知れない不気味さで周囲を威圧していると言った方が正しい。
白衣の下には今日も今日とて葬式ルック。よもや他の服を持っていないとは言わないだろうし、マサキもそれは承知しているのだが、いかんせんその姿を見せないのだからどうにも弁護のしようがない。
端正で隙のない顔立ちは口がさない生徒に言わせれば、その服装も含めて「格好つけ」らしく、否定しきれないのがこの化学教師――白河愁の掴み所のない性格を表している。
とかく、その本性が見えない。
穏やかに微笑んでいた次の瞬間には仏頂面を晒す。不機嫌かと思いきや、次の瞬間には茶目っ気を発揮する。茶目っ気で済めばいいのだが、巻き込まれる側からすれば悪夢以外の何者でもない厄災であったりするそれは八つ当たりが大半を占める。
その理由たるや理不尽極まりないものばかりだ。理由はまだしも、それに付随する行動が不条理極まりない。その餌食になるのは常にマサキであるのだから。
何よりマサキを苛立たせるのは、そういった彼の本性とも思われる変化の凄まじさを一般生徒が知らない事である。
教師としてのシュウは無愛想ではあるが今時珍しい実直な先生として認識されている。他人を寄せ付けない態度は厳しさとして受け止められ、それが生徒に迎合しない教師という他の教師と一線を画した高い格を得ているのだ。
げに他人の評価は恐ろしい。
その影で、理科課の教師達が日々怯えて生活していたり、科学同好会で物騒極まりない実験ばかりが行なわれていたり、マサキが散々な目に合っているなど、彼らは想像つかないだろう。
――畜生、何か腹が立ってきた。
それまで生真面目ではないにせよ、それなりに真面目に取り組んできた化学の授業をマサキが放棄しだしたのも、全てはこの極悪化学教師の所為である。素直に授業を聞くなどどうして出来よう。一対一で向かい合えば強制的に服従させられるのだ。
ならばせめて、その力を揮えない時間ぐらいは反抗を露わにしても罰は当たらないだろう。マサキがそう考えるのも無理はない。
「それでは実験を始めて下さい」
抑揚のない声は有無を言わせぬ迫力がある。その言葉と同時に、それまで生徒が無駄口ひとつ叩かずにいた化学室にようやくざわめきが生じる。他の科目の授業であれば頻繁に目にする光景が化学の授業に限っては珍しい。
――だりぃ、だりぃ、かったりぃ。
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