ホント、あちこち手を付けてすみません!
大丈夫です気晴らしです!
ちょっと今連載どっちも煮詰まってる状態で、特に「幽けき」に至ってはもう何日もどう展開させるかを悩み続けている状態で、上手い案が振って来ないことには膠着し続けてしまうので、その間皆様をただお待たせするのも何だしなあ、と思って書きました!
前回も申し上げましたが、アレでナニな作品ですので、公式には秘密にしておいてください。
わからない方はそういうものだと思って読んで頂ければ幸いです。
大丈夫です気晴らしです!
ちょっと今連載どっちも煮詰まってる状態で、特に「幽けき」に至ってはもう何日もどう展開させるかを悩み続けている状態で、上手い案が振って来ないことには膠着し続けてしまうので、その間皆様をただお待たせするのも何だしなあ、と思って書きました!
前回も申し上げましたが、アレでナニな作品ですので、公式には秘密にしておいてください。
わからない方はそういうものだと思って読んで頂ければ幸いです。
<10月のone's future course>
落ちた? シュウがそう口にした瞬間、マサキは改めて自分が公務員試験に落ちた現実に直面させられた。
それは目の前に前科十犯ぐらいの犯罪者が現れたかの如き凶相だった。
本来、試験対策の追い込みをするのに相応しい夏休み。それをマサキは任務に明け暮れて過ごさざるを得なくなった。一体、協会はマサキの進路を何だと考えているのか。ひとつ任務を片付ければ、次の任務。その結果が如実に表れることとなった試験結果。それは鉄壁の無表情を誇るシュウとて、これだけの表情をしてみせたものだ。
「まあ、順当な結果だよな。勉強する時間も、そんなに、なかったし……」
ミオやリューネといった同業者以外は知ることのないマサキの裏の顔。学年主任として、或いはクラス担任として、日々生徒の指導に当たっている黒衣の化学教師がそうした事情を知っているのには理由がある。
複数のシステムをその身に抱え、法則を無視した力を揮ってみせるシュウは、世界律では説明が付かない存在だ。何処の組織にも属していない彼は、どうやらエミュレイターに思い含むところがあるらしい。マサキがシュウと初めて顔を合わせた時もそうだった。三月の終わり。任務の最中にあったマサキの獲物を奪ったシュウは、赤子の手を捻るように獲物たるエミュレイターを屠ってみせると、そのままマサキに襲いかかってきた。
命を奪う気はなかったようだ。
圧倒的な力でマサキの戦意を奪ったシュウは、そのまま何処かへと姿を消した。だからマサキはシュウを探し求めた。エミュレイターでもウィザードでもない男、けれども双方の法則を使いこなしてみせる男。人智を超えた法則を有している存在に、ウィザードたるマサキが不穏なものを感じない筈がない。
けれども手がかりひとつ手に入れられることもないままに。春休みが過ぎ、ついに迎えた最終学年。マサキが高校三年生となって少し経ったある日。交通事故で長期の入院を余儀なくされたクラス担任の代理として、シュウは学園に赴任してきたのだ。
どういった手段を用いてみせたものか。ひと月も経たない内に臨採から常任に成り上がってみせた男は、次いで学年主任に就任してみせると、マサキやミオの予想を裏切って、真っ当にも真面目に教師業に勤しんでいるようだ。噂によると、彼が赴任してきてから化学の平均点は20点も上がったのだとか。殆どは彼の容姿を目当てとする女生徒たちが稼いだ点数らしいが、三割は彼自身の手腕であるらしい。
「進路指導室に行きましょう。試験の結果がそういったものであった以上、今後のあなたの進路について話し合う必要がある」
マサキはこくりと頷いて、先に立って進路指導室へと向かうシュウの後に続いて理科課の管理室を出た。
ひらめく白衣の裾に目を落としながら、無言で廊下を歩いてゆく。白河先生、さようなら! 恐らくはシュウに好意を抱いている女生徒たちであるのだろう。気を付けて帰りなさい。シュウからの言葉を得た彼女らはきゃあきゃあと黄色い声を上げながら、昇降口に続く階段を降りて行った。
廊下に響く足音。シュウとマサキが立てているふたつの足音は、時に重なり合い、時に離れながらも、進路指導室に吸い込まれていく。
「先ずは、今後のあなたの希望を聞くことにしましょう」
机を挟んでシュウの前に座ったマサキは、ようやく表情を緩めた彼の顔を真正面にして、落ち着きが取り戻されてゆくのを感じていた。
「あなたはどうしたいですか、マサキ。選択肢は五つあります。今から就職先を探すか、内部進学試験に挑むか、外部進学を目指して共通試験に挑むか、来年の公務員試験に再挑戦するか――若しくは、専任ウィザードとして生きてゆくか」
「出来れば来年にもう一度、公務員試験に挑戦したい」
マサキは震える声でシュウにそう告げた。
誰もがマサキの挑戦を無謀だと云った。成績は中の下。赤点もそれなりにある。それでもマサキは公務員になりたかった。
家賃三万円。トイレと風呂が共同の安アパートに住んでいるマサキは、食いっぱぐれのない職業を求めていた。終身雇用が保証されたも同然の公務員。何せ雇用主は国なのだ。これ以上に安定した職が何処にあるだろう。
ウィザード一本でやっていった方が高収入を得られるのはわかっている。しかしそれと引き換えに、命懸けで任務に挑まなければならなくなる。今のマサキはシュウの監視という任務を与えられている関係上、そこまで過酷な任務を与えられることはそうなかったが、本来、ウィザードというのは年齢に関係なく、能力に見合った任務を与えられるものだ。
明日をも知れない命。マサキはそのリスクから逃れたかった。
エミュレイターによって命を奪われた両親と同じ運命を辿りたくない。だからマサキはウィザード一本で生きていくよりも、本業を他に持ち、専任で任務に挑むウィザードたちのサポートに回りたいと考えたのだ。
「九月の学力テストの結果がそのまま試験に反映されたと考えると、かなり努力をしなければ来年の一次試験の突破も難しいものとなるでしょう。あなたはその努力を自分が出来ると考えているのですね」
「出来る出来ないじゃなく、やる、だろ」
実にあなたらしい。シュウはそう口にして、それに結果が付いてくれば文句はないのですが――と、憂いを覗かせながら言葉を続けた。
「わかっているとは思いますが、あなたは一般生徒とは身を置いている環境が違う。卒業後はウィザードとして任務に当たりながら、ひとりで勉強をしていかなければなりません。それが今年の夏休みの繰り返しになってしまうようでは困ります。協会にはその辺りのことをきちんと云い含めておくべきでしょう」
「そうは云うけどな、あいつはいつも俺に仕事を無理矢理押し付けてくるから」
あいつ? と問い返してきたシュウに、マサキは組織に属していない男に云ってわかるのかと思いながらも、説明しないことには来年の挑戦を認めてもらえなさそうな空気に渋々口を開いた。
「セニアだよ、セニア。協会トップのじゃじゃ馬お嬢様。何か知らねえけど、いつも俺に厄介事を押し付けてくるんだよ、あのお嬢様はさ」
成程。頷いたシュウが、それでしたら伝手がある。何故か悪魔的な笑みを浮かべて口にしたものだから、マサキとしては驚かずにいられなく。
「お前、セニアのこと知ってるのかよ」
「協会のトップに立っているとは知りませんでしたが、そういうことでしたら、話は早い。私の方から重々云い含めておきますよ。あなたの受験を優先させるように、とね」
底の知れない男はどれだけマサキを近くに置こうとも、そのプライバシーを覗かせるような真似はしなかった。それが話の流れとはいえ、いきなり人間関係の片鱗を窺わせるような発言が出てきたのだ。内心、好奇心を擽られたりもしたものだが、しかしそこは流石の化学教師。教師としての自覚はあるらしく、それよりも、と即座に話を本題に引き戻す。
「ウィザードとして任務に従事しなければならなかったからでしょうかね。あなたの基礎知識には穴が多い。学校で授業を受けられなかった部分が影響しているのでしょう。そこを先ず埋めないことには、来年も同じ結果になる可能性が高いと私は考えています。正直、赤点の減らないあなたのことです。来年の試験よりも目先の卒業を考えて欲しくもある」
「それは確かにそうなんだけどさ、自分でやるとなるとどうしても難しくて……」
「ですから私があなたに勉強を教えます」
は? とマサキは目を剥いた。
肉体的な関係に持ち込むのは早かった割に、教師と生徒の関係であるということを盾にして、マサキに個人的に勉強を教えるような真似をしてこなかったシュウが、どういった心境の変化か。先程に続いて再び驚かずにいられなくなったマサキが、お前が俺に勉強を? と尋ね返せば、そうですよ。と、シュウは涼し気な表情で、さも当然とばかりに云ってのけた。
「あなたは忘れているようですが、私はあなたのクラスの担任です。そうである以上、誰ひとり落ちこぼれることなく卒業させる義務がある。これまではあなたひとりを特別扱いする訳にはいかないと考えていたからこそ、個人的に勉強を教えるような真似はしてきませんでしたが、今後はその考えを改めます。クラスの中で卒業が最も危ぶまれるのはあなたです。みっちりしごいて差し上げますよ、マサキ」
云って、口の端を吊り上げてみせた男の悪魔的を通り越した凶悪な笑顔に、俺、何か早まったんじゃないか――と、マサキは思いながらも、卒業は果たしたい。先にマンションで待っているようにと告げたシュウの言葉に従って進路指導室を出たマサキは、一路シュウが住まうマンションへと。彼の帰りを待つべく向かって行った。
次回は個人授業編になります。
ご期待通りの内容になる予定ですので、もしよければそちらもお読みください。
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次回は個人授業編になります。
ご期待通りの内容になる予定ですので、もしよければそちらもお読みください。
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