忍者ブログ

あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

記憶の底(3)
何となくそんな気がしながら打っていたのですが、ここでまさかの「DANCE IN THE DARK」の続編になってしまいました。とはいえ、その話を思い出せなくとも&読んでいなくとも大丈夫です。

この話のふたりはどっちも病み系ですね。
もう滅茶苦茶重い。

そんな話ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
と、いうことで、本文へどうぞ!
<記憶の底>

 随分と前のことだ。
 詳しい日付を手帳に残してあるその日、シュウは新しく仲間となった彼らを連れて、遊撃隊ロンド・ベルの一員となった。
 自身を狭い世界に縛り付ける枷を取り払う為なら、過去の遺恨などどれほどのものか。シュウは自らの目的の為なら、果てしなく厚顔にもなれたものだ。ロンド・ベルの彼らもまた来たる決戦に向けて、数多くの戦力を必要としていた。だからこそ、シュウの意向は簡単に受け入れられ、その仲間とともに戦艦内に招かれたのだ。
 仲間としては頼りになる彼らは、けれども時として、身近に居ることを許されているという慢心からだろう。必要以上にシュウの内側に入り込もうとしてきたものだった。それが煩わしかった当時のシュウは、暇な時間ともなれば、なるべく彼らと顔を合わさずに済む場所を探しては右へ左へ――……。
 そして、その場所へと足を踏み入れてしまったのだ。
 少しでも人気のない場所へと足を進めている内に、辿り着いてしまった戦艦でのマサキの私室《キャビン》。それは好奇心でもあった。どんな私生活をこの狭い部屋で送っているのかという。だからこそシュウは、ひととき彼らの追跡から身を隠せればいいと、ロックのかかっていない室内に、きっとマサキは不在だろうと見当を付けた上で足を踏み入れて、
 ――非礼は詫びますよ、マサキ。
 ベッドの上に身体を投げ出して自慰に耽っているマサキは、声を殺す為だろう。自らのシャツを口に噛んで、開いた足の中央に手を這わせていた。
 しなやかな肢体を惜しげもなく晒して、己の欲望に忠実に自慰に耽る姿。それはとても官能的だった。
 薄く開いた口に、切なげに歪む眉……見てはならないマサキの表情を見てしまったシュウは、けれども気まずさやいたたまれなさよりも先に、どうしようもないほどに彼を喘がせたいと思ってしまっていた。
 マサキに執着しているシュウにとっては、無防備なマサキの姿はそれだけ蠱惑的なものであったのだ。
 ――少しの間、私をここに匿ってはくれませんか。
 室内への思いがけない闖入者に、慌てて衣服の乱れを直したマサキのあの不貞腐れた表情! そんな表情ですらシュウの劣情を煽ると知っていてやっているのか。堪えきれない欲望が、胸の内。鎌首をもたげてくるのをシュウは抑えきれそうにはなかった。
 ――途中だったのでしょう、マサキ。
 だからこそシュウは、その欲望に忠実なるがままにマサキを弄《もてあそ》んだ。
 指先や舌を肌に這わせ、口唇を貪り、青く滾《たぎ》った男性器を扱《しご》き……意外にも、ささやかなマサキの抵抗は直ぐに止んだ。あなたと私の秘密だ。そう云ったシュウの言葉ひとつで、彼は途惑いがちながらも愛撫に身を任せるようになった。
 時に思い出したように抵抗を試みることもあったけれども、それも一瞬のこと。体格差で押さえ込まれればそれまでとばかりに、次第にマサキは全てをシュウに委ねていくようになった。それがシュウには可愛らしく感じられて堪らない。
 可愛らしくて堪らないからこそ、シュウはそんなマサキの肢体を思うがままに嬲った。
 想像していたよりも薄い胸、想像していたよりも滑らかな腰のライン、想像していたよりも細い手首。そこかしこがまるでシュウの愛撫を待ち望んでいるようにも映る。そうシュウを妄信させるほどに、マサキはシュウの愛撫に対して素直に反応してみせた。
 指先で、舌で、どれだけマサキの身体を堪能しただろう? 
 深く口唇を合わせたその果てに、マサキの限界点はあったのだろう。シュウの手のひらに自らの精を放ったマサキは、暫くの間、快感の余韻に浸るかのようにシュウにしがみ付いたままでいた。
 ――必要になったら言いなさい。いくらでもしてあげますよ、マサキ。いくらでもね。
 そう囁きかけて、後にしたマサキの私室《キャビン》。思ったよりも物の少なかった部屋を思い返しながら、シュウもまた暫くの間、身を隠した非常階段でその余韻に浸ったものだ。
 けれども、そうは云っても、元来|自尊心《プライド》の高い気質のマサキのこと。ましてや元は敵同士。シュウと馴れ合うことは、マサキにとっては敗北に等しい行為でもあったのだろう。だからこそ、マサキが自らシュウに行為を強請《ねだ》ってくることなどないままに。時は過ぎ、堪えきれなくなったシュウは、再びマサキの私室《キャビン》を訪ねた。
 口では巫山戯るなだの嫌だの拒否してみせても、一度覚えてしまった蜜の味を忘れきれる由もない。何の用だと云いながらも、シュウを自室に招き入れたマサキは、まるで誘いかけるかのようにベッドに腰を下ろしてみせたものだ。
 ――そろそろ必要だと思って来たのですがね。
 ――巫山戯ろ。誰がてめえなんかと……。
 そう云った相手に与えられた快感を、マサキは覚えているのだ。その証拠に、声を荒げることをしない。口先ばかりで否定するだけのマサキにシュウがその肩に手を置いてみれば、ぴくりと身体を震わせたものの、その手を振り払おうともせず。ただ口唇を硬く結んで、気まずそうにシュウから視線を逸らしてみせただけ。
 ――それが返事でしょう、マサキ。ほら……
 仰がせた顔に顔を重ねて、シュウはマサキの口唇をゆっくりと時間をかけて味わった。
 されるがままでいたのは最初だけ。少しもすれば、マサキは自ら口付けを強請るように舌先を絡めてきたものだ。そんなマサキに、どうして自らの欲望を抑えきれたものだろう? シュウは時間をかけてマサキの身体を舐った。これが最後となっても後悔のないように、うなじから耳。耳から首。首から鎖骨。鎖骨から胸。胸から脇。脇から腰へと舌を這わせ、そして一糸纏わぬ姿となったマサキの足を開かせた。
 ――やだ、やだって。それは無理……。
 事ここに至ってはマサキの抵抗も激しくなったものだったが、今更止められる性《さが》でもない。シュウは力任せにマサキの抵抗を捻じ伏せると、己の男性自身を熱くうねるマサキの身体の中へと埋めていった。
 小さく声を洩らしたマサキの口元が、やがて喘ぎ声を吐き出すようになる。
 シュウが腰を進める度に、いつの間にかゆるやかさを増していった菊座が、柔軟にシュウの男性自身を受け止めるようになってゆく。その変化が例えようもなく愛おしい。シュウは長く、長く、マサキの中に留まり続けた。もう本当に無理だと、マサキが根を上げるまで。


.
PR

コメント