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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

Confession of love(中-1)
久しぶりにこの手の軽い話を書いているのですが、いやー楽しいですね!
甲児を出すと話が大きく明後日の方向に動いてくれるので有難いです。笑

子供の頃マジンガーZの超合金で遊んだ身としては、やっぱり兜甲児という男の子は特別な存在なものですから、ついつい贔屓し倒してしまいます。スパロボ30の甲児のグラの恰好良さなんかもう目が眩みましたよ!あの甲児を動かしたい!

そんな甲児に振り回されるシュウマサの巻です。では本文へどうぞ!
<Confession of love>

 始まりは可愛いものだった。7番が5番に秘密をひとつ打ち明け、5番からその内容を伝え聞いた4番が全員にそれを公表するといった程度の。ちなみに秘密の内容は「間違って履いた靴から水虫が移った」という他愛ないもので、内容にそれなりの期待をしていた連中は気落ちしていたが、過激なばかりがゲームでもない。このぐらいで丁度いい。そう思ったマサキはほっと息を吐いた。
 残念ながら、一番肝心な部分である「誰の靴から移った水虫なのか」については訊けなかったものの、それなりに座が盛り上がった三巡目。水虫ついでと王様が、4番と11番の靴下を交換させるという暴挙に出た辺りから雲行きが怪しくなってきた。続く王様が3番の頭を9番が踏めと命令、その次の王様が12番に6番の足の匂いを嗅ぐように命令したりとやりたい放題。最終的には足に行き着く命令はその後も続き、そこかしこで阿鼻叫喚の声が上がった。
 たかが水虫ネタをここまで広げるような連中が、このままこの程度で大人しくしている筈がない。まだ被害に合っていないマサキがそう思った十巡目。
「お前ら面白くないねえ。やっぱ王様ゲームつったらアレでしょ、アレ」
 ついに王様を取った甲児が、ひひひと笑いながら9番と13番と宣言した。
 げ、とマサキは声を上げた。握った割り箸には、紛れもない9の数字。同時に隣で冷めた視線で座を見守っていたシュウの口元から、嫌気を隠さない長い溜息が洩れる。まさか、とマサキがその手元を覗き込めば、甲児の歪《いびつ》な字で13の数字が書かれた割り箸がある。
「はいはい9番さんと13番さんや、諦めて挙手ぅ」
 腹立たしいこと他ない尻上がりの語尾。命令を宣言する前から、これだけ碌でもないことを考えているとわかる口調もそうはない。反射的に甲児の頭を引っ叩きそうになった自らの手を、どうにか押さえ込む。そして、屈辱を耐え忍びながら、マサキは割り箸を握った手を上げた。
 その隣で能面のような無表情でシュウが手を立てる。おおと座がどよめいた。
「こっりゃあ面白いことになりましたねえ!」手を叩きながらゲラゲラと甲児が笑う。
「お前は面白くても、こっちは面白くねえんだよ」
「おや、珍しく意見が合いましたね、マサキ」
 何を命令するつもりかは知らないが、女性がいようがお構いなしにキスだのハグだのを命令してみせる甲児のことだ。どうせ碌な命令にならないに違いない――。マサキはちらとシュウを覗き見た。気紛れに飲み会に参加したばかりか、不満を露わにしながらもゲームに参加しているシュウ。何を考えて彼がここまで艦の仲間に迎合してみせるのか、マサキにはわからない。
 彼は何か企んでいることがあるのではないだろうか。嫌な予感が胸を騒がせる。急き立てられるように、マサキは目の前に残されていた七杯目の酒を空けた。先ほどまで酔いで眠りかけていた理性は一気に覚めつつあった。
「お前と意見が合うなんて御免なんだがな」
「それに関しても同意見ですよ、マサキ」
「まあまあまあまあ」手にした割り箸を見せ付けるように振りながら、甲児が語り始める。「お前らはいっつもそう。寄ると触ると嫌味か皮肉。よかあない。ああ、よかあないねえ。いいかい、お二方。俺たちは同じ釜の飯を食いながら、世界の平和を目指して戦っている仲間な訳ですよ。それがそんなに険悪じゃ、上手く行く作戦も上手く行かなくなっちまう。戦いっつうのは独りで出来るもんじゃない。大勢の力を借りてするもんなんですよ。ここまではいいかい?」
 巫山戯てばかりの甲児ではあるが、彼とて世界の平和の為に立ち上がりし操縦者《パイロット》のひとりであるのだ。その胸の内には様々に矜持が詰まっている。その端緒が露わになったかのような演説。王様ゲームの場でさえなければ、素直に耳を傾けるのも吝《やぶさ》かではない。現に、それに対してシュウは珍しくも感心した様子をみせた。
「あなたに世の道理を説かれるとは思ってもいませんでしたよ、兜甲児。何を目論んでいるのかはわかりかねますが、今のところは真っ当な意見ですね。まあ、だからといって、マサキの態度が改まるとは思えませんが」
「はあ? お前、巫山戯るなよ。俺の態度がこうなのはお前の」
 とはいえ嫌味は健在だ。素直に話を終わらせる気のないシュウに釣られて、マサキが口を挟みかけた刹那。ここで言い争わせようものなら興醒めになるとでも思ったのか。それともただのタイミングの問題か。甲児はマサキの言葉を切るように、自分の言葉を被せてきた。
「さっすがお大尽、話がわかりますねえ。ってことは、お大尽ならおわかりになるでしょう。大所帯で戦うからには連携が大事。だからって付け焼刃で連携でございってやってみせたところで、敵《やっこ》さんだってわかってるんですよ。あいつらはちゃあんと弱いところを狙ってきやがる」
「これから命令する王様じゃなきゃ、素直に聞いてもいい話なんだがな」
「はいはいシャラップ。人の話は最後まで大人しく聞くもんですよ、安藤正樹さんや。いいかい、お二方。命を預ける相手との連携を上手く成功させるには、日頃の付き合い方も大事。お前らみたいに顔を合わせりゃいがみ合う、なんてのは愚の骨頂な訳でござい。気心知れりゃ知れただけ、連携ってのは上手く行くように出来てるんですよ。と、いうことで、王様である俺は命じますよ。お前ら二人には『愛してるゲーム』をやってもらいます」


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