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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

Confession of love(中-2)
全く関係ない話で申し訳ないんですけど、私お試しでpixivプレミアムをやってるんですよ。プレミアムに入ると簡易的にアクセス解析が出来るようになるんですけど、イラストの方に「pixiv touchの人気の作品」とかいう恐ろしい解析結果があって、いわゆるおすすめらしいんですけど……

それってどう考えても「VIPPER白河」じゃ……

そんなことを思いながら何気なく閲覧数を見たらもう直ぐ2000に行きそうなんですよ。いやいやいやいやあんな作品2000回も見られちゃ駄目でしょ! っつーかVIPPERとか今の若い子わからないでしょ! で、今現在あの作品の扱いに非常に困っているところなんです。

という、作品に全く関係ない話をして、本文へどうぞ!
<Confession of love>

「何だ、それは」
 口にしたマサキと同じような反応の操縦者が半分。きょとんとした表情で、残った半分の操縦者たちが湧き上がるのを意味もわからずに眺めている。「その名の通りのゲームなのでしょう」研究開発が人生の愉しみのような男が知っているとは思わなかったが、どうやらシュウも初めて耳にするゲームなようだ。但し、察しは付いたらしい。世界が立て続けに滅亡の危機に晒されたかのような表情になると、
「想像通りなら私としては御免被りたいところですが」
 甲児とマサキを交互に見遣って云う。
「まあまあお大尽。それにマサキ。大したゲームじゃございやせんって。ただ交代で『愛してる』と云うだけの簡単なゲームですぜ。それで少しでも親交が深まればいいって、俺の親心じゃございやせんか」
「それ、ゲームなのか? 勝ち負けがつくようには思えないんだが」
「それがつくんだねえ。相手を照れさせたり、笑わせたりしたら勝ち。しかもどんな云い方をしてもよければ、云った相手にもう一度と促してもいいときた。簡単だろ?」
 マサキはシュウを見上げた。余程、不快に感じているのか。そうでなくとも厳めしい顔付きがいっそう彫りを深くしている。口を堅く結んで、眉根を寄せた顔。何かを口にするのも馬鹿らしい、そんな様子にも映るシュウの表情を目の当たりにしたマサキは安堵した。酒席とはいえ、見世物にされるのを嫌だと感じているのは自分だけではないらしい。
「他の奴とならさておき、こいつとだけは絶対に嫌だ」
 シュウがこの態度なら遠慮なく云える。そう思ったマサキが拒否を口にすれば、「今日はあなたと意見が合う日ですね。私も絶対に嫌ですよ。見世物にされるのは好きではない」
 シュウの後押しがあれば、万が一にも甲児が意見を変える可能性も無きにしも非ず。どれだけ高説を垂れてみたところで、甲児はシュウには弱いのだ。マサキはこのまま二人で押し切ってしまえと、シュウの言葉に続いた。
「今日ほどお前が心強い味方に感じたことはねえな、シュウ。そもそも面白半分にゲームで口にしていいもんじゃねえだろ。大事な言葉なんだぞ、甲ちゃん。大事な言葉は大事な局面でこそ口にするから意味があるんじゃねえか」
「全くその通りですね。ゲームには限度というものがあるからこそ楽しめるのですよ、兜甲児」
「王様ゲームの最中だってのに、お前らいい度胸してんねえ」かっかっか、と笑い声を上げた甲児は割り箸を手放すことなく、まるで印籠のように突き出してくる。「でも残念ながら王様は俺なんだなあ」
「他のゲームにしろよ。それだったら聞いてやる」
「それならポッキーゲームにするか? 王様の命令に反するなんてこたああっちゃいけねえことだが、俺にも仏心はある。どちらか好きな方を選ぶんだあね。こちとらお前らの親睦の為に命令してやってんだ。これ以上は絶対にまからないからな」
 流石に転んでもただでは起きないお祭り男。思いがけない代案が飛び出したことに絶句するマサキとは裏腹に、外野は気楽なもの。酒の入った男どもの盛り上がり方は尋常ではない。野次が飛び交い拍手喝采が湧き起こる酒の席。これではやらずに済ませることは不可能だ。
「冗談じゃねえ、それだったら愛してるって云う方がマシ」
 マサキがそう口にした瞬間。
 それまでマサキの味方だったシュウが、思いがけず態度を変えた。
「私はポッキーゲームで構いませんがね。あなた相手にそんな言葉を吐くくらいなら、まだポッキーを咥えた方がいい」
「てめえが良くても俺が嫌なんだよ。何で男二人でポッキー咥えてチキンレースをしなきゃいけないんだ」
「その方が勝ち負けがはっきりしそうな気がしませんか」
「勝ち負けの問題じゃねえ。尊厳の問題だろ!」
「はいはい、そこまでそこまで」マサキの語気が荒くなってきたのを契機と、立ち上がった甲児が二人の間に割って入ってくる。
「お前らに任せておくと決まるもんも決まらねえ。まあねえ、お大尽には日頃の借りはございやすがねえ、残念ながら今回の王様は俺なんでねえ。その俺様が『愛してるゲーム』をやれと命令している訳でございまして……」
 揉み手をしながら下手に出る甲児に、少しの間。そうだそうだと野次が飛ぶ中、シュウは何事か考え込んでいる様子をみせた。沈黙が続く。自尊心の高い男が、果たして甲児に唯々諾々と従ったものか。マサキとしては気が気ではない。
 けれどもやがて、シュウはふふと小さく声を上げて微笑《わら》った。
「所詮はゲーム。意地になっても仕方ありませんしね。構いませんよ、兜甲児。王様の命令は絶対です。それにマサキはそちらの方が都合が良さそうです。だったら私もそれに乗りましょう」
 そう云い切ると、シュウはマサキに向き直った。そして端近にて二人を見守っている甲児に、どうすべきなのかを尋ねながら、マサキにも自分と向き合うように告げると、後は云われるがまま。じゃんけんで先攻後攻を決めるべく手を出してくる。
 どちらがマシかといったレベルの選択肢でしかなかったからこそ『愛しているゲーム』を選んだだけのマサキとしては、そんなシュウの積極的な態度が恐ろしく感じられて仕方がない。
 日頃の仲が仲なのだ。
 ここぞとばかりにマサキの意図の外側から、何かを仕掛けて来ようとしているのではないか。疑心暗鬼に陥ったマサキは気もそぞろにじゃんけんに挑んだ。勝った方が先攻と甲児が宣言し、あいこを繰り返すこと数回。どちらが有利なのかわからないまま、先攻を勝ち取ってしまったマサキは、途惑ってばかりもいられないと自らの頬を数度叩いて表情を引き締めた。


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