Q.私たちは何を見せられているんですか?
A.夫婦で旅行しているところなんじゃないですかね?
ということで11回目の更新を迎えた訳ですが、あれだけぎゃーぎゃー更新したいと騒いでいたプール回は次回に繰り越しになりました。もっとさくっと終わらせるつもり(私の目にはふたりがいちゃつているようにしか見えなくなってきた為)だったんですが、あれこれ調べていたら、悲しいかな。書き手の浅ましい根性が出てしまって。
しっかし末永く爆発しろですね。私、「こういうカップル(死語)いるよなー」と思いながら、ほんの洒落っ気のつもりで白河にトートバックを持たせたんですけど、思った以上に脳内映像が「ホントによくいるよこういうカップル!」になってしまって、その結果ちょっとテキスト画面を正視できなくなってしまって、それで更新が遅くなりました!すみません!(ガチ)
今回の白河はびっくりするほど優男ですね……。
ぱちぱち有難うございます。その他更新しなければならないものがあるのはわかっております。これが終わりましたらそちらにも取り掛かるつもりですので、暫くお待ちください。では、本文へどうぞ!
A.夫婦で旅行しているところなんじゃないですかね?
ということで11回目の更新を迎えた訳ですが、あれだけぎゃーぎゃー更新したいと騒いでいたプール回は次回に繰り越しになりました。もっとさくっと終わらせるつもり(私の目にはふたりがいちゃつているようにしか見えなくなってきた為)だったんですが、あれこれ調べていたら、悲しいかな。書き手の浅ましい根性が出てしまって。
しっかし末永く爆発しろですね。私、「こういうカップル(死語)いるよなー」と思いながら、ほんの洒落っ気のつもりで白河にトートバックを持たせたんですけど、思った以上に脳内映像が「ホントによくいるよこういうカップル!」になってしまって、その結果ちょっとテキスト画面を正視できなくなってしまって、それで更新が遅くなりました!すみません!(ガチ)
今回の白河はびっくりするほど優男ですね……。
ぱちぱち有難うございます。その他更新しなければならないものがあるのはわかっております。これが終わりましたらそちらにも取り掛かるつもりですので、暫くお待ちください。では、本文へどうぞ!
<Lotta Love>
トレッキングを終える頃には、時刻は11時を回っていた。マサキはシュウと共に駐車場に待たせていたタクシーに戻り、標高700メートルにある丘陵地帯から下りる道すがら、レストランに寄り昼食を済ませることにした。
「メニューが英語だな」
「観光客向けのレストランですからね」
観光客向けだけあって、バリらしさの感じられない料理も多い。ポークチョップだの、サーロインスティックだの、スパゲティだの……聞き覚えのある料理がずらりと並ぶメニューブック。わざわざ旅行に来てまで口にしたいとは思えない料理ばかりのページを捲る。思えばバリに足を踏み入れてから、マサキが口にしたバリらしい料理と云えば、朝に口にしたブブールのみ。自炊になる今晩のメニューも、恐らくは自分たちにとっての日常的な料理になることだろう。
食事が口に合わないことで悩まされる心配はないものの、一度ぐらいは本格的なバリ料理を口にしたくもある。そうマサキが口にすると、「この辺りの料理は?」とシュウが指を差してくる。メニューカテゴリにはmahi-mahiの文字。どうやらその辺りのメニューに使われている共通の食材のようだ。
「マヒマヒ?」
「日本ではシイラという名前で馴染み深い魚のようですよ。バリでは特産品なのだとか」
「へえ……なら、これにするか」
バリにまで来て頼むものではないような気もしたが、特産品となれば話は別だ。マサキはフィッシュ&チップスの文字を指でなぞる。食べ慣れた食事も魚が変われば、また違った味に感じられるかも知れない。そう口にすれば、
「私はフィッシュスープですかね。こう暑いと、食欲があまり」
「相変わらず食が細いな、お前」
「ここまでそんなに動かずに日々を過ごしてしまいましたからね。食べずに済ませてしまうことも多かったからでしょう。胃が小さくなっているようです」
「観光するんだろ。なるべく食べるようにしろよ。お前に倒れられたら、俺一人じゃ何処にも行けない」
やがてテーブルに届けられる料理。男二人にしては量が少なくも感じられたものだったが、強い日差しの下で動き回ったばかり。身体は食事よりも水分を欲している状態だった。
一緒に注文した飲み物を一気に喉に流し込む。それからマサキは食事に手を付けた。
油が物を云うフィッシュ&チップスの味は、マヒマヒの淡白な味わいもあってか。普段口にしているものと比べると、あっさりしているように感じられたものだった。それと比べれば、香辛料の入ったフィッシュスープの方が味は濃かったに違いない。
「健康には良さそうですね」
独特な香りに、独特な色合い。ひと口スープを口にしたシュウがそう口にした辺り、どうやらその口には合わない味だったようだ。
「残すんだったら俺に寄越せよ。どんな味か食べてみたい」
「このぐらいの量でしたら食べきれますよ」
ほら、と掬ったスープを口元に運ばれて、マサキは口を開けた。
差し込まれたスプーンから零れ落ちるスープが舌に乗る。拙くはないが美味くもない。名物に美味いものなしとは良く云ったものだが、マサキが頼んだフィッシュ&チップスは美味しく食べられたのだから、これはもう調理法と調味料の所為としか云いようがなく。
「ところで、今度は何処に向かうんだ」
「ウブド宮殿ですね。正式な名称はサレン・アグン宮殿と云うようですが」
一時間ほどでレストランを出て、再びの山下り。流石に今回は酔い止めの薬の効果もあり、マサキが車酔いをすることはなかった。
ジャティルイからは五十分ほど、レストランでの時間を含めれば約二時間。ようやくウブドの市街地に辿り着いたタクシーは、そこから今度は東に向かった。向かうはシュウが口にしていたウブド王宮。バリの王族の子孫が住まう宮殿は、立ち入れる場所が限られてはいるものの、交通アクセスがいい場所にあることや、写真映えする建築物があることなどから、どうやら観光客の出入りが多いスポットになっているようだ。
門前には観光客が人の流れを作り出している。彼らは吸い込まれるように門の中へと足を踏み入れて行った。その流れに従って、マサキもまたシュウと共に門を潜る。
「ガイドによれば、ここに住んでいるのはスカワティ王家一族なのだとか」
「王家の住処が観光スポット? ラングランじゃ考えられないな」
「観光産業が発達している国だからでしょうかね」
「バリの政治体制はどうなってるんだ。っていうか、そもそもバリは国だったっけか」
「バリが属するのはインドネシアですよ、マサキ。立憲君主制の国ではありますが、王族が政治に参加している地域もあるようです。18世紀に王朝が崩壊して9つの小国に分裂した結果、王家の血筋を引く家柄が複数出来てしまったからなのでしょうね。そうでなければ、政治に参加することなどそうそうないことでしょうし」
門や壁といったいたるところに異国情緒を感じられる彫刻が施されている広場では、観光客が写真撮影に忙しい。どうやら正面に聳《そび》え立っている割れ門が目的のようだ。造りに対して狭い門ではあったが、黄金に輝く細工で装飾されていることから、写真映えするスポットだと思われているのだろう。入れ代わり立ち代わり人が門の前に立っては、さながらモデルといった様子でポーズを取っている。
まるで日本の城の天守閣のように、精緻な彫刻が施された屋根が重なり合っている割れ門。「写真を撮っておきたいけどな……」けれども簡単には空きそうにない撮影ポジションにマサキがそう呟くと、貸してとシュウがその手元からスマートフォンを取り上げる。
その長躯を生かして、その場から隙を付いて写真を撮るつもりらしい。
人が入れ替わる瞬間を狙っては、高く掲げたスマートフォンのシャッターを切るを繰り返していたシュウが、ややあって、充分だと感じたのか。腕を下ろしてスマートフォンに保存された画像の数々を確認した彼は、使い慣れない機能でもあるからだろう。「上手く撮るのは難しいものですね」珍しくも自らの弱点を認めるような言葉を吐くと、これは? と何枚かの画像をマサキに見せてきた。
「お前、良く手元を見ないでこれだけ撮れるな」
「何枚も撮った中の奇跡の一枚なだけですよ」
「それでも凄いな。彫刻がはっきり見えるように収まってる。こういうのって誰が作るんだろうな」
ガイドだけで足りない情報さえも即座に得られるのは情報化社会の優れた点だ。マサキはその点、日常的な範囲でしか個人的《パーソナル》な機器を使うことはなかったが、知識を求める男にとってそうした作業は日常的でもあるのだろう。早速とばかりにスマートフォンを操作し出したシュウは、そう時間も経たない内に、目的の情報に辿り着いたようだ。
「ここの門に彫刻を施したのは、スカワティ王家お抱えの彫刻師であったレンパッドという画家らしいですね。意外ではありますが、彼の没年からしてこの門は比較的新しい時期に建てられたもののようですよ。後で美術館に寄ってみますか? どうやらこの街の美術館に彼の作品が飾られているようですが」
「へえ、雰囲気からしてもっと昔からあるものなのかと思った。美術館もいいな。地元の有名画家の作品を見るって聞くと、旅行をしてるって気になる」
「あなたはそういった意味で旅をする機会にはそう恵まれないですからね。場所が何処になるかわかりませんが、ウブドの街にあるようですし、タクシーの運転手に頼めば連れて行ってくれることでしょう。今日は美術館に寄って終わりにしましょうか。それとももう少し時間を潰して、バリ舞踏を見てから帰りますか」
「見たくはあるけどな、初日からあれこれ詰め込んで旅をするのもな。お前、まだ暫くはバリに居るつもりなんだろ? だったら踊りはまた別日でいいかな」
そろそろ同じところに留まっているのも他の客に迷惑だろうと、シュウに促されてマサキは割れ門の脇にある通用門を潜った。潜った先にはもう一回り小さい割れ門が建っている。
成程、こうして敷地を細かく分けることで、一般の人間が足を踏み入れられる範囲を絞っているのか。そう思いながら、今度はマサキは自らスマートフォンを掲げた。どうやら人気の撮影スポットは、先程の巨大な割れ門ぐらいなようだ。
「ってことは、この先はもしや」
「そのもしや、なのでしょうね」
先に次の間に足を踏み入れたシュウが、笑いながらマサキを手招く。顔を覗かせてみれば案の定、続いて姿を現した割れ門は、更にひと回り小さくなっていたものの、その扉が開いていた。
「この割れ門から先は立ち入り禁止のエリアなようですね」
「面白いな。扉の奥に石像が見える」
マサキは扉の奥を覗き込んだ。開かされた扉の向こう側から、コミカルな表情にも映る石像が、観光客を見守るように顔を覗かせている。
身体には高価そうな衣装。額には供物。西洋の石像のような精緻さはなかったけれども、親しみ深さの中にも高貴さが窺える姿。ここだけ割れ門を開いているのは、恐らくは神様であるこの石像に、観光客を会わせたいからなのかも知れない。
「そうですね。実にバリらしい表情をした石像です。衣装を着せられているということは、王家にとって大事な神様なのでしょうかね。随分とサービス精神が旺盛な方がお住まいのようです」
立ち入れるエリアが限られていることもあって、撮るべきものを全て撮っても一時間もかからずに済んだ観光。それでも、移動時間の長さもあって、サレン・アグン宮殿を出る頃には14時を回る時間になっていた。
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