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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

Lotta Love(3)
聞いてくださいよ!今日ね、SFC用のAVケーブル(中古)が届く予定だったんですよ! ね? わかります? これで日曜日はヒロ戦DAYだぜわはは! などと思っていた訳ですよ、私!

届かないんですけどー(滝のような涙)

更新が遅くなったのはそれとは関係ありません! 単純に調べるのが大変なだけです! そんな感じの三回目。合流までに八千字も使ってしまってすみません! ただのバカンスで三万字とか行きそうで、もうこんなん草生えるに決まってるじゃないですか何してんの私! ということで、本文へどうぞ!
<Lotta Love>

 よくよく考えてみれば、方向音痴のマサキが目印のない海上から、目的地であるバリ島に何の問題もなく辿り着ける筈もなかったのだが、「いいですか、マサキさん。とにかく北東へ真っ直ぐですよ。余計な操作をしなければ、絶対に島に辿り着けますからね」と、噛んで含めるようにチカに云われたのが幸いしたのか。地球を一周ほどしてしまったものの、どうにか目的地であるバリ島には辿り着けたようだ。
 ようだ、というのはレーダーマッピングの位置がバリ島にあったからだ。
 南緯約8度、東経約115度。赤道から少しばかり南下した位置にある島、バリ島。その南端にある浮島のように突き出た半島。観光客で賑わうビーチが遠く微かに見える海上にサイバスターを停める。この場所ならサイバスターを視認できる人間もそういまい。マサキはそのままサイバスターの管理を二匹の使い魔に任せて転送機能で島に降下した。
 観光業盛んなバリ島だけあって、ビーチには雑種多様な人種が存在していた。ボートにサーフィンといったアクティビティを楽しむ観光客もいれば、ただ散策を楽しむだけの観光客もいる。ビーチでパラソルを開いて、ゆったりとした時の流れに身を任せているだけの観光客も数多い。いずれにせよ、日本人を探すのはそう難しくはなさそうだ。
 チカの話では、日本語を話せる地元民もそれなりに存在しているらしいが、英語と比べると普及度は低いとのこと。さて、どうしたものか――スミニャック、とチカに教わったシュウが居るらしいエリアの名称を口の中で反芻して、とにかくここに居ても始まらないと、マサキはビーチを上がった。
 しかし暑い。
 乾季のバリ島は好天には恵まれているものの、気温はラングランの比ではない。時折、潮風が髪を浚うも、暑さを和らげるには至らないようだ。周囲を見渡せば半袖の観光客ばかり。マサキは重いジャケットを脱いで肩に掛け、取り敢えずは北へと向かうことにした。
 島の南端に出た以上、ここが何処であろうがスミニャックは北にある筈だ。そう見当を付けて、人の流れに沿うように歩くこと暫く。日本人と思しき若い男女二人組の観光客を発見したマサキは、彼らに現在位置とスミニャックへの行き方を尋ねることにした。
「スミニャック?」
「この間、お寿司食べにいったじゃない。宿泊施設の多いエリアよ」
 海外で同国の人間と出会うと懐かしさが勝るのか、親切にもスミニャックへの行き方を教えてくれた二人は、ついでと財布の中に残っていた日本円の換金を申し出てみたところ、それも快諾してくれた。
「気を付けてね!」
「いい旅を!」
 いい旅も何も人探しである。それでもマサキは可能な限りの笑顔を浮かべてみせた。
 近場でタクシーを探す。宿泊施設の多いエリアとなると、シュウを探すのも一筋縄では行かないだろうが、ここまで来ておきながらただ人探しで終わるのも味気ない。少しぐらいはバリの風を感じたくもあったマサキは、費用についてはチカが後々シュウに請求すると云っていたこともあり、その後に見付かったタクシーに気兼ねなく乗り込んだ。
 何を云っているかさっぱり聞き取れないタクシーの運転手に、スミニャックとだけ告げる。陽気な反応が返ってきたということは、きっと通じたのだろう。後は適当に運転手の言葉に頷きながら、マサキは走り出したタクシーの振動に身を任せる。
 そこから約一時間ほど。
 スミニャックのメインストリートらしき大通りでタクシーから降りたマサキは、心ともなくなった外貨をどう補充するか思案しながら、取り敢えずは探索と、当てもなく歩き始めた。
 取り立てて面白味もない洋品店《ブティック》の多い通り。せせこましく次から次へと雑多に店が立ち並んでいる。二人組の観光客はこの辺りを宿泊施設の多いエリアと云っていた。きっとそこに宿泊する観光客目当ての店でもあるのだろう。
 そうである以上は、観光客相手の外貨交換所が何処かにある筈だ。
 財布の中には、地上に出た際に手に入れた外貨もそれなりにある。それらを換金すればかなりの金額になるに違いない。マサキは再び人波に沿って歩き始めた。人気のない場所に迷い込まない為に身に付けた処世術を駆使しながら、マサキは周囲を散策した。
 取り澄ました外観の洋品店の隣に、昔ながらの軒先に商品が並ぶ洋品店があったりもする不均衡な通り。可愛らしいバッグや服を見かけては、プレシアに土産を買って帰るのもいいかもな、などとマサキが思いつつ歩くこと十分ほど。
 不意に耳に届く声。
 マサキ、と名前を呼ばれた気がする。
 まさかと思いながらマサキは声がしてきた方角を振り返る。そんな偶然があってたまるものか。そう思いながらも、確信めいた思い。運命はこれまでも度々気紛れに、マサキにこうした偶然の邂逅を授けてきたからこそ。
「……何でこんな簡単にてめえと会えるかな」
 まばらな人波の合間に、ぽっかりと浮かび上がって見える見間違えようのない容姿。雑多な異国の風景がこれほど不似合いな男もそうはいまい。自らマサキの名前を呼んでおきながら、それを微塵も感じさせない厳めしい顔付きで、ゆったりとした足取りでマサキに近付いてきたシュウ=シラカワは、「それは私の台詞なのですがね」面白くなさ気に言葉を吐いた。


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