五日ぶりの更新となりました。
毎日文章は書いてるのですが、それは「私が死んだら棺に入れてもらう為の本」作りの為になので、こちらに出せるものではないんですよね。てかA5で300Pとか狂気の沙汰だってことにようやく気付いたんですけど、死んだ後の時間は長いですからね。もっとシュウマサを棺に入れなければ!
私の執筆スピードは五時間で三千字ちょっとなので、毎日更新している間は本気で他に何もしてないんですよね笑 飯食って風呂入って寝るくらい? 執筆は推しの配信を見ながら聞きながらなので、多少は他の娯楽も吸収してますが、この二週間は本気でそれ以外の生活をしてなかった!!!
それもあって今回は久しぶりの大量テキストとなりました。
もしよければお読みください。では、本文へどうぞ!
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毎日文章は書いてるのですが、それは「私が死んだら棺に入れてもらう為の本」作りの為になので、こちらに出せるものではないんですよね。てかA5で300Pとか狂気の沙汰だってことにようやく気付いたんですけど、死んだ後の時間は長いですからね。もっとシュウマサを棺に入れなければ!
私の執筆スピードは五時間で三千字ちょっとなので、毎日更新している間は本気で他に何もしてないんですよね笑 飯食って風呂入って寝るくらい? 執筆は推しの配信を見ながら聞きながらなので、多少は他の娯楽も吸収してますが、この二週間は本気でそれ以外の生活をしてなかった!!!
それもあって今回は久しぶりの大量テキストとなりました。
もしよければお読みください。では、本文へどうぞ!
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<Lotta Love>
Good morning sir.と、フロントから声がかかる。
バリには様々な形態の宿泊施設があったが、一棟丸ごと借り上げるタイプのヴィラは、当然のことながら高級宿泊施設の部類に入る。だからだろう。非日常感を味わいたい宿泊客の為に、プライベートなプールやビーチを有しているところも多いようだったし、細かな用事をこなしてくれるバトラーを数多く置いているところも珍しくないようだった。
このヴィラにもプライベートビーチがあるらしく、どこかで時間を作って行きたいとマサキは思っているのだが、シュウとしてはそれよりも先に観光を進めたい様子だ。きっと彼のことだ。マサキが来るまでの間に、そういった場所の散策は済ませてしまったのだろう。マサキとしては物足りなくもあるが、このバカンスのスポンサーは彼である。あまり多くの我儘を云うのも――と、その希望については口に出せずにいる。
ホテルとは一線を画すサービスを提供するヴィラタイプの宿泊施設。安くはない宿泊費用を求めるだけあって、ここはフロントの対応も丁寧だ。清潔感に溢れる白を基調とした衣装に、目が覚めるような青い色のスカーフ。カウンターにふたり並ぶ女性スタッフが、にこやかな笑顔を浮かべながら、フロントに足を踏み入れたシュウとマサキを迎えてくれる。
「タクシーが来ていると思いますし、先に行っていていいですよ。私は今日の予定の話をしてから行きますから」
「わかった。つーても俺、英語を話す方は駄目なんだがな」
彼女らの許に向かったシュウから手を離し、先に外に出る。余程の乗客と思われているに違いない。今日は遅れての配車希望だったにも関わらず駆け付けてくれた顔馴染みのタクシー運転手に、軽く片手を挙げて挨拶を済ませてマサキは、彼と片言の英語でコミュニケーションを取りながらシュウを待った。
彼に今日の目的がデンパサルでのショッピングにあることを伝えると、任せておけと云わんばかりの笑顔を見せた。観光客相手のタクシー運転手をしているからこその自負であるのだろうか。今日は北、昨日は西と方々へ繰り出すシュウとマサキに、その土地ならではの豆知識を授け続けてくれている彼は、きっとマサキが思っているよりもプロフェッショナルであるのだろう。
彼曰く、市場《マーケット》はインドネシア語でパサールというらしい。
観光客向けの土産を扱っているところも多くあるパサールだが、治安がいいかと云われるとそうでもなさそうだ。スリや強盗が横行している訳ではなかったが、案内の押し売りをする地元民が多いらしい。声を掛けられても無視するようにとアドバイスを受けたマサキは、やっぱりな。と思いつつつも、わかったと運転手に頷いてみせた。
世界を股にかけた戦いに身を投じたことのあるマサキは、それまでの道のりも含めて、世界各地を転々としたものだったが、何処も日本のように治安がいいとはいかないことに少なからずカルチャーショックを受けたものだった。隙を見せれば金を要求してくる日銭稼ぎの地元民。親切を金で押し売りする彼らは、下手に相手をしようものなら、それだけで見込みがあると感じてしまうらしく、延々と標的《ターゲット》に纏わり付いては聞いてもいないことを話し続けてくる。そうなってからではもう遅い。金を寄越せ、いや頼んでないといった騒ぎを治められるのは警察だけだ。
スリや強盗に比べればきちんと知識を授けてくれるだけ、彼らのしていることには有益性があったが、だからといって合法かと訊かれれば決してそうではないところが厄介だ。彼らには無視が一番効く。それをマサキが学ぶにはそう時間はかからなかった。
「待たせましたね。行きましょう」
ようやく姿を現わしたシュウとともにタクシーに乗り込んだマサキは、彼が運転手と今日の行き先について話をするのを聞きながら、車窓に映るスミニャックの景色に目を遣った。
考えてみれば、初日以降、この街の風を直に感じたことがない。観光への出がけ、若しくは帰り際に少しばかり目にする街の景色は、若者の流行発信地と云われるだけあって、確かに小洒落た若者の姿が目立つものではあったが、だからといって地元民の姿が全くないといったものでもなさそうだ。観光客向けに多国籍なレストランが並ぶ通り、土産物屋が並ぶ通り、そしてバリの若者向けの店が並ぶ通り……活気溢れる通りの何処にも彼らの姿はある。
国土を観光地化するということはこういったことでもあるのだ。マサキは一種独特な空気に包まれているスミニャックの景色を注視した。マクドナルドもあればスターバックスもある。寿司屋もあればラーメン屋もある。エスニック料理の店もあればフランス料理のある。昨日のマサキはバリの地元住民の日常的な姿見たさに住宅街へと足を踏み入れることを熱望したものだったが、無国籍な通りを観光客と地元住民が行き交うこの景色もまた、バリの地元住民の日常生活の一部であるのだろう。観光客との融和。彼らの日常生活は、もしかすると観光客に削られているのかも知れない。
スラム化しているとも云われる裏通りに入ることなく大通りへと出たタクシーは、一路デンパサルへと向かった。タクシー運転手から勧められたのはデンパサルの街の中心部にあるパサール・クンバサリ。周辺に大きな市場が幾つかあるらしく、ここを中心にショッピングをするのが一番効率的なのだそうだ。
「そういう場所って人が多いんじゃないのかね」
「あなたはどちらかというと人が少ない場所を求める傾向がありますね、マサキ」
「探してるのはプレシアへの土産だしなあ。ゆっくり見れる場所の方がいいだろ」
「運転手の話では、観光客向けのパサールとしては穴場な方であるようですよ。向かいに地元民が利用するパサールがもうひとつあるからでしょうね。そちらに人が流れていくのもあって、あなたが想像しているほどの混雑はないのだとか。それにバイヤーも利用する店らしいので、お土産を選ぶのにはもってこいの場所かと」
へえ。とマサキは感嘆の声を上げた。目利きのバイヤーが買い付けに訪れる店であるのなら、品揃えにも期待出来そうだ。マサキたちが利用しているヴィラもそうだが、バリの建造物の内部にはそこかしこに洒落た小物が飾られている。ああいった雑貨を買ってやれば喜ぶだろうな。マサキが云えば、そうですね。シュウは温かな微笑みを浮かべてみせながら、
「でも彼女は、あなたが買ってくれたものなら何でも喜ぶのでしょうね」
プレシアと距離があるからこその彼女を買い被る台詞に、それは大きな誤解だ。マサキは反射的に反意を唱えずにいられなかった。
ミオと比べれば余程ではあるが、テュッティたちと比べればセンスに劣る。義兄の審美眼をそう評してみせるプレシアは、マサキが地方に赴いた際に購入してくる土産物には懐疑的であるようだ。食べ物でいいよ、お兄ちゃん。マサキが土産を尋ねた際に必ず彼女が口にする台詞は、彼女がマサキの土産を決して好ましく感じていないことが伝わってくる。
「でもバリから食べ物を持って帰るのはなあ。味が合うかわからねえし」
「わかりました、マサキ」シュウが片手を挙げた。「私が幾つか候補を選びますよ。あなたはその中から、自分があげたいものを選べばいい」
ネックレスにブレスレット、指輪に留まらず、ラペルピン、カフリンクス、カラーピンと、衣装の細かい箇所を飾ることに抵抗のないシュウは、自身の美的感覚には相応の自信を持っているようだ。今は不本意な立場に身を置いている彼ではあるが、そこは元王族。様々な美術品や装飾品に囲まれて育った彼は、その生育過程に於いて豊かな美的感覚を育てていったのだろう。彼の提案を素直に受け入れることにしたマサキは、でも、とシュウの肩に凭れかかった。
「眠くなりましたか」
「そうじゃねえよ」
彼と距離が近くなればなっただけ、増える疑問。生まれも育ちも異なれば、趣味も嗜好も異なる彼は、何故マサキ=アンドーという人間にこれほどまでに執着してみせるのだろう。その差を実感させられる度に、マサキは彼に表現出来ない口惜しさを感じ、そして彼の好意の向き先が自分であることに疑問を挟まずにいられなくなる。
マサキは自身を暴力的に求めてくるシュウの態度を、長いこと、彼の捻じれた感情表現の表れだと思っていたからこそ尚更に。
端的に云えばそれは悪意である。彼はマサキ=アンドーという自身の前に立ちはだかる脅威を排斥するのではなく、捻じ伏せることで制圧しようとした……よもや今を迎えてまで彼の端緒がそうした悪意にあったとは思わないが、そう感じさせるだけの精神性が当時のシュウにあったのも事実だ。敵と見做すや徹底的に叩き潰してみせる。味方であろうと容赦はしない。利用出来るものを最大限に利用する彼の遣り口に、マサキは幾度彼を苦々しく思ったことか。
マサキの中にある原始的なシュウのイメージは、非情にて冷酷な合理主義者であるのだ。
そういった彼が何ゆえに変わっていったのか、マサキには想像力が及ばない。けれども彼はふと気付くと、当たり前のようにマサキと長く言葉を交わすようになっていた。それだけではない。時折、子どもじみた言動をすることもあるぐらいに、マサキに気を許すようにもなっていた。
「お前、何で俺とこうして一緒にいるんだろうな」
ぽつり、と呟けば、彼はマサキの言葉の真意がよもやそういった根源的な場所にあるとは思わなかったのだろう。ひとりでは退屈だったからですよ。これまでさんざ聞かされた言葉を繰り返す彼に、そうじゃねえよ。マサキは笑った。
肝心なところでマサキの考えを汲み取れない男なのだ。
何をさせてもそつなくこなしてみせる彼の不器用さが現れる瞬間に、マサキは自分が一息付けたような気分になることがままあった。直情的で直感的。目の前の出来事に固執し易く、後先考えることが少ない。数えれば欠点の方が多いマサキは、シュウ=シラカワという人間に対して、いつしか隠しきれないまでのコンプレックスを抱いてしまっている。
それをかつてのマサキは単純な苦手意識だと思っていた。
どう努力を重ねても相容れない相手はいる。それが場面場面で顔を合わせる機会の多いシュウ=シラカワであっただけだ。マサキはそう思い込もうとしていた。けれども今は違う。マサキはシュウといる時間に心地良さを感じながらも、彼にコンプレックスを感じずにいられなくなってしまっている。それは決してシュウが鼻持ちならない人間であるからではなかった。むしろ逆だ。彼は出会った頃のそうした自身の性質を払拭して、豊かな人間性を備えてマサキの傍にいる。
「育ちも違えば、趣味嗜好も違う。何でだろうなって話だよ」
「あなたが私を退屈させないからですよ」
「それって俺が珍獣だからって云ってるように聞こえるぜ」
「相手のやることなすこと全てを面白いと感じられるのは好意があるからこそですよ、マサキ」そう云ったシュウは、不満げな表情を晒しているマサキの顔にちらと視線を落とすと言葉を続けた。「あなたは私の誇りを守ってくれた。あなたは私の記憶を呼び戻してくれた。あなた以上に尽くしてくれる人間は他にもいますが、あなた以上にシュウ=シラカワという人間を救ってくれた人間は他にいない。あなたは私の輝ける太陽なのですよ、マサキ」
そして、それでは不満ですか。とマサキの顔を覗き込んでくる。
「それじゃあ何をしてもお前は俺から離れられないって云ってるみたいだぜ」
「その通りですよ」シュウはクック……と、声を潜めて嗤った。「覚悟はしておいて欲しいものですね」
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