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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

Lotta Love(48)
やっとジャジャナンパサールパサールに辿り着きましたよ!!!
今日のkyoさんはお疲れなので、会話文が多い更新となりました。

もうこれバリガイドやん。笑

業務連絡です。
FC2の拍手コメですが、管理画面では改行なし(改行場所に半角スペースが挿入された状態)で表示されます。ただ私、メール通知をONにしているのですが、そちらは一応改行された状態(時々改行がおかしくなっている所がある)で届きます。
こういうのがあるからWEB拍手の方に戻したいんですが、相変わらずぶっ壊れたままなんですよね。拍手ボタン画像が表示出来ないんです。もう直す気ないんでしょうかね……
以上、業務連絡でした!

拍手、拍手コメ有難うございます!励みになります!
そろそろ拍手ネタも入れ替え時だなあと思うのですが、まだまだ書かねばならないものが沢山あるので、暫くはそちらには時間を割けない感じですかね……次は何をお題にしようかなあ。

と、いったところで本文へどうぞ!
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<Lotta Love>

 シュウの言葉にマサキは窓の外を見遣った。左手側に見える赤茶けた屋根。石が積み上がったように層を作っている建造物は、古びた集合住宅のようにも映る。その前の道に建つ巨大な門。周囲には大量にバイクが停められている。買い物客のものだろうか? タクシーから降りたマサキは、門の奥に続く道へとシュウとともに入って行った。
 青空の下、パサール・クンバサリの建物に沿って立つ市。見たところ、クンバサリを越えた先にある川の辺りまで続いているようだ。向こうに見えるのが、パサール・バドゥンですよ。川の向こう側を指差してシュウが云った。
 豪快に売られている食材に、切り分けられたフルーツ。サテと云うらしい。串焼きになった魚や肉が美味しそうな匂いを漂わせている。先にこちらを見ますか? シュウに尋ねられたマサキは、荷物が増えてからでは思うように動けなくなるだろうと、先に青空市場を見て回ることにした。
「観光客と見れば後を付いて回って商品を売り付ける地元民もいるようですから、離れないように」
「あー。アレな。まあ、海外のリゾート地じゃお約束だろ」
 一山幾らと籠に山盛りにされた果物、丸ごと一匹羽根を毟られて売られている鶏。それらを横目に先を往く。色も鮮やかなら大きさも立派な魚、豪快に投げ売られている様々な大きさの卵。良く知る卵よりもふた回りほど大きな卵が気になって、シュウに尋ねてみれば、値札に書かれた品名を読んだ彼曰く、アヒルの卵らしい。
「すげぇな。何から何まで豪快だ」
「バリは基本的に大家族ですからね」
「これだけ豪快な食材を買っても、捌ききれるってことか」
 合間々々に建つ食べ物屋台。コーラを飲んだとはいえ、デザートを口にした訳でもない。甘いものが食いたいな。フルーツを売っている屋台に食指が動いたマサキが、指を差せば、ジャジャナンパサールは? シュウが即座に尋ねてくる。
「このぐらいなら食い切れるだろ」
「まあ、ジャジャナンパサールは小さい菓子類ですしね。そういうことなら」
 豪快に切り分けられたパイナップル。マサキは屋台の前に立った。隣に立つシュウは、連日、タクシーの運転手と会話を重ねているからか。そろそろインドネシア語が理解出来てきたようだ。片言で会話を試み始めたシュウに、どうやら通じているようだ。店主が頷いては何言か言葉を返している。
 マサキは渡されたパイナップルにかぶりついた。甘い。一気に果汁が染み出てくる。両手で抱えなければ持てないぐらいに大きさがあるが、柔くて甘いからか、あっという間に量を減らしてゆく。何せこの陽気だ。冷えたデザートは心地良くマサキの胃を満たしてくれる。
「そんなにデザートが食べたかったのですか」
 店主との会話を終えたシュウが、バッグの中からタオルを差し出してくる。
 口の周りが果汁でべたついている。マサキは受け取ったタオルで口元を拭った。ついでに手の汁気も拭き取り、何を話してたんだ? その合間に尋ねれば、シュウは店主にクンバサリでの買い物の仕方を尋ねていたようだ。
「建物の中での買い物は値切るのが基本だとタクシーの運転手が云っていたので、それについて聞いてみたのですよ」
「値切るって、難易度高いな」
「ラングランも正価で商品が売られている国ですしね」
「買い物で値切る必要ないもんな」
 シュウが店主に聞いた話では、建物の中の店では英語が通じない店も多いのだそうだ。そういった場所が観光地化していることにマサキは少なからず衝撃を受けたが、シュウはスマートフォンの翻訳機能もあるからか、あまり気にはしていない様子だ。
「ってことは、インドネシア語で値切り交渉するのか。って云ってもな、相場が幾らかわからないことには……」
「観光客向けに丁度いい店があるのだそうですよ。商品に正札がきちんと付けられている店が。そこは正価で商品を扱っているそうですので、その値段を相場として値切り交渉をするのがいいと勧められましたよ」
「へえ。何て店なんだ?」
「HAWAI《ハワイ》という名の店ですね」
「ハワイ? バリの店なのにハワイ?」
 旅先では時折、冗談のような本当の出来事が起こるものだ。初日にマサキと通貨を交換してくれた日本人の観光客にしてもそうだったし、ナシチャンプルでの失敗談にしてもそうだった。どこか現実離れした空気を感じさせる体験談は、世の中がそれだけ広く出来ていることの現れでもある。とはいえ、流石にバリでハワイときては、幾らバリの観光事情に疎いマサキでも、シュウが巫山戯ているのではないかと思わずにいられない。
「お前、俺が何もわからないからって巫山戯てないよな?」
「異国の地まで来て、冗談であなたを煙に巻くような真似はしませんよ。雑貨屋HAWAIは実在する店です。クンバサリでも有名なバリ雑貨の店らしく、観光客も数多く訪れるのだとか」
「ハワイ、ハワイねえ……」何だか釈然としない思いが残る。「ラングランでバゴニアって名前の店を出すのと一緒なんだがな」
「もしかするとオーナーが好きなのかも知れませんよ」
「だったらハワイアン雑貨の店でもやれよ。若しくはハワイアンレストランとか」
「ちなみに」マサキの言葉に何か思い付いたようだ。シュウが笑いを堪えきれないといった様子で続ける。「HAWAIという名のレストランも中にあるそうです。オーナーは一緒なのだとか」
「どれだけハワイが好きなんだよ! それこそいっそハワイアンの店にしろよ!」
「不合理ですね」そうは口にするものの、嫌気が差している訳ではなさそうだ。
 笑いながらマサキからタオルを受け取ったシュウは、バリの人々の大らかな気質が気に入ったらしかった。テ・マニスの一件にしてもそうだが、彼らの為すことは厳密さからは程遠い。それを笑って許せるぐらいには、彼はこの土地に馴染むようになってきているのだろう。
「さあ、次こそジャジャナンパサールを食べることにしましょう。あなたの目的のひとつですからね」
 タオルをトートバッグに収め、マサキと肩を並べたシュウが市の先へと足を進め始めてゆく。平日の昼下がりにしては人が多い。観光客は勿論のことだが、地元民が圧倒的な辺り、パサール・クンバサリはバリの人々の生活に密着した市でもあるのだろう。
 インドネシア語、話せるようになったんだな。その道すがらマサキが尋ねてみれば、やはり予想した通り、タクシーの運転手に教わったらしかった。「観光に必要な簡単な言葉ばかりですがね」
「お前、そういうの覚えるの早いよな。英語ですらブロークンな俺とは大違いだ」
「インドネシア語は比較的法則が単純ですからね。英語に通じる部分もそれなりにありますし。比喩や隠喩は勿論のこと、ひとつの漢字に複数の読み方が必要となる日本語と比べれば、そこまで難しくはないような気がしますよ」
「その難しい言語を母国語にしてて、何で英語ひとつ覚えられないかっていう話だよ」
「英語は日本語の対極にある言語ですからね」
「そうなのか?」聞けば、シュウは深く頷く。
「構文の構造や単語の法則が日本語とは全く異なるでしょう。まあ、ドイツ語やラテン語に比べれば、まだ理解が簡単だという人もいるにはいますが」
「S+V+Oだっけな。何で目的語が動詞の後にくるんだよ。普通に考えたら動詞は目的語の後だろ」
「SOV構文の方が世界的には多いのですから、あなたのその疑問は尤もですね」
 ほら。と、シュウが人波の向こう側を指差した。「あなたが愉しみにしていたジャジャナンパサールですよ」
 マサキは人波をそっと抜けて、シュウが指差していた屋台に向かった。クッキーのような形をした焼き菓子、ドーナッツのような揚げ菓子、饅頭に似た蒸し菓子もあれば、羊羹のような練り菓子もある。様々な菓子類が所狭しと並べられている屋台は、物珍しさが勝るのだろう。それなりの観光客を集めていた。
「あまり私から離れないで」
 ひとりで先に屋台に突っ込んで行ったのが不安だったようだ。シュウの手が伸びてきたかと思うと、マサキの腕を捉える。一瞬でも目を離そうものなら、道に迷う。マサキの体質を彼は彼なりに案じているのだろう。
「こういうのだよ。こういうの。こういうのを土産にしたいんだがな」


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