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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

Night End(1)
ちょっとどのくらいの長さになるかわからないので、いつもの前後編ではなくナンバリングにしました。マサキの潜入捜査はシリーズに出来そうなほど、色々なネタを考えているのですが、こういうのって需要あるんですかね?
今回はその中でも真面目なものをセレクトしましたが、需要がありそうなら、色々てんこ盛りにして書き上げたいと思っております。

ところで全く関係ない話なんですが、あの、Pixivの百科辞典の作品の欄って、あれは編集されたものなのですか? それとも最新順とかなのでしょうか?
と、いうのもですね、シュウマサの項を見ると、小説の欄が私の作品でエライことになってて……いたたまれない気持ちになってしまって……私自身はああいう大百科系の編集をしたことがないものですから、これどうしたら……と。

といったところで本文へどうぞ!
<Night End>

 暗く長い一直線の通路を、男に連れられて歩いていた。
 両脇に鉄格子の嵌った金属製の扉が点々と並び、時折すすり泣く声や叫び声が響いてくる。不穏な声の数々にマサキは鉄格子の内側を覗き見たい衝動に駆られたものの、ようやく潜り込めた人身売買組織だ。迂闊に動いて組織の人間たちの不審を招いては、助けられるものも助けられなくなってしまう。
 ここに捕らえられている人々を全員無傷で助け出す為にも、今は我慢の時――マサキは滾《たぎ》る気持ちを抑えながら、黙って男の後ろを歩き続けた。
 ――彼らがどれだけ可哀相に見えたとしても同情は禁物だ。
 マサキを雇った男はそう釘を刺したものだった。
 情報局の情報収集部隊が、長い年月をかけて構築した裏社会へのルートを使っての潜入捜査。マサキがこの町を拠点としているらしい人身売買組織に潜り込むことになったのは、テュッティの知り合いの情報局員がこの組織の調査中に行方をくらましたからだった。生身の戦闘能力に乏しいテュッティは、それでも自分が行くと云ってきかなかったが、いざという時に身を守る術を持たない彼女が、潜入捜査に当たるのは危険にも限度がある。マサキは意地を張るテュッティを説き伏せて、自らが捜査に当たれるようにセニアに掛け合った。
 廃坑近くの寂れた町。今となっては住む者は数えるほどの老人だけだ。彼らは自分たちの町で行われている悪事に勘付いている様子ではあったが、黙って見過ごすことを選んだのだろう。町に足を踏み入れたマサキにちらちらと視線を投げかけてくることはあったものの、声をかけてくることはなかった。
 排他的な空気を感じる町のはずれにある巨大な洋館の地下室に、そうしてマサキは足を踏み入れた。
 マサキを雇った男は、目の前で披露した剣の技術の良し悪しを測れるぐらいには目が肥えていたようで、地下室の最奥に捕えている重要人物の監視を担当させるとの話だった。雇ったばかりの新入りに任せるにしては随分な大役だが、それだけ情報局の作り上げたルートが裏社会での信頼を稼いでいるということでもあるのだろう。
 マサキは充分過ぎるほどに気を引き締めて、案内役の男の後ろを付いて歩いた。程なくして「ここだ」通路の突き当りで、男が足を止めた。目の前には格子さえもない鉄製の扉。見た目からして頑丈な造りの扉は、他の扉とは少し距離が開いた場所にあった。
「この扉の前で監視すればいいのか? これだけ頑丈な扉なら、逃げ出せるとは思えないが」
「以前、鍵を閉め忘れた馬鹿がいてな。それから監視を厳重にしている。通路の端と端で見張っておけば、全ての扉を見渡せるからな」
「わかった。なら俺は、この扉の前に立っていればいいんだな」
「そういうことだ。特にこの中にいる商品は高価なものだ。絶対に逃げ出さないように監視しておけ」
 そう云って、男は地下室の入り口の方向へと去って行く。
 男の背中を見送るようにマサキは扉の前に立ち、ずらりと扉の並んだ通路を見渡した。ここに来るまでに数えたところによると、左右ともに扉の数は10ずつ。それにマサキが陣取っているこの最奥の扉を合わせると、全部で21の部屋が地下にはあるようだ。
 その全てに”商品“がいるのかどうかはわからない。恐らくは、頃合いを見て商品への食事の配給がある筈だ――。マサキは通路の端でこちらを向いた案内役の男に軽く会釈をして、直立不動の体勢を取った。直ぐにでも行動を起こしたい気持ちを抑えながら。


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