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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

RISKY GAME(3)
少し文字数は少ないですが、三回目です。
ラブラブさせたいんですけど、私の話って何故かそっちには簡単に流れてくれないんですよね。
(というか、そもそもラブラブがどういったものであるのかがわかっていない可能性が)
もうこうなったら、ラブラブするまで話を引き延ばそうかと思っている昨今。物凄く話が長くなってしまったら申し訳ございません。SSを書くという話はどこに行ったんだ。笑

話は大幅に逸れますが、先日ようやくスパロボ30を購入したんですよ。お布施も兼ねて。
今日からプレイする予定なんですけど、プレイレポって要ります?

といったところで、いつもぱちぱち有難うございます! 励みになります!
では本文へどうぞ!
<RISKY GAME>

 実態の明らかになっていない破壊神信仰の規模がどれほどであるのかは、情報局でも把握が出来ていないようだ。活動範囲の広さや神殿の数からして、相当数の信者を抱えているのは間違いない。長い歴史を誇る信仰である。代々信仰を受け継いでいる信者も多いことだろう。
 その中には思わぬ才能を持っている人間もいるということだ。彼らは要所に配置され、教団の利益の為に活動をしているのだろう。マサキたちの命を狙ってくる暗殺者しかり、この船のオーナーしかり。そういった教団の利益に寄与する働きが出来る末端信者は、マサキたちが想像しているよりも多いのだろう。
 切っても切っても切れぬトカゲの尻尾は、彼ら才覚のある末端信者の働きによって支えられているのだ。それではどれだけ手を尽くしても、邪神教団の攻略が進まない筈である。
「だから彼の同席が確実であるVIPルームに行きたいってことなのね」
「彼と会えると公になっている場所はそこしかないようですしね」
「と、いうことは……お前、まさか」思い至ってしまった考えに、そうでなくとも渋い表情であったマサキの顔は更に渋くなった。「負ける為にサフィーネをここに潜り込ませたっていうのか」
 不正行為《イカサマ》とは、有利にゲームを進める為に行われるものである。それを逆手に取った戦略。シュウがどれだけの資金を用意してこの船に乗り込んだのかマサキにはわからなかったが、ただ負けるだけのことにすら保険をかけて挑むとはこの男らしい。
「VIPルームに招かれる客の条件は、資金力があり、且つ、勝負ごとに熱くなり易い性格であること。それを証明する為には、負け続けても投資を止めない姿を見せるのが一番でしょう」
「普通にやっても負けるだろ。商売として成立してるんだぞ。それなのに」
「ギャンブルとは確率ですよ、マサキ」シュウは嗤った。「カジノの還元率は十割を切ります。それでも勝ち越す客が出る。何故だと思いますか」
「運だろ、運。引きの強さって云うしな」
「戦略性じゃないの?」
 自ら手を作るポーカーゲームに興じただけあって、テュッティはマサキとは考えが異なるようだ。
 確かにカードは駆け引きを要求されるゲームだ。ブラックジャックなどはその典型だろう。相手の手を予想しながら自分の手を作り上げ、勝負に賭けるか降りるかを決める。互いの性格の読み合いでもあるカードゲーム。そこに確率の入り込む余地はないように思える。
「まさか、確率は確率ですよ。それ以上でも以下でもない。とはいえ、確率の発生には偏りがある。それが運と呼ばれるものです。十分の一の確率が、必ず十回に一回の成功を保証するものであれば、誰だってギャンブルで勝てるでしょう。しかし実際は違う。一度も成功しなければ、立て続けに成功することもある……確率の収束には膨大な試行回数が必要なのです」
「またお前は。そうやって俺にわからないような説明をしやがって」
「ギャンブルは確率論の基礎ですよ。このぐらいは理解していただかなければ」
 この男はどれだけの年月が過ぎようとも、その回りくどい言い回しを改める気はないようだ。しかもそれでいいとさえ思っている節がある。でなければどうして、それ以上の説明をする必要がないとばかりに言葉を切ったものか! マサキは溜息を吐いた。
 云っていることはわかるが、納得は行かない――。確率だけで説明出来るのであれば、賭け事に駆け引きは必要ないだろう。カードゲームには強者と弱者が存在する。テュッティが指摘してみせたように、それが戦略性でなければ何であるだろう? 
 けれどもテュッティには、シュウが云わんとしていることの意味が通じたようだ。確率は確率でしかないというシュウの答えからは、戦略性の有無は見極められないというのに。それとも難しいことを考えまいとしているのか。彼女は食い下がることなく言葉を継いだ。
「つまり、あなたは間違って勝たない為に、サフィーネをここに送り込んだってことよね」
「その通りですよ。流石は聡明な水の魔装機神の操者、テュッティ=ノールバック」
「私たちがすべきことは何なのかしら」
「賭場で協力し合って共倒れになってしまっては意味がない。あなたたちにそういった意味での協力は頼めないでしょう。とはいえ、いざという時の保険は多いに越したことはありません。どうにかVIPルームに潜り込んでください。そこでもし私の身に何かあったら、この豪華客船の制圧を頼みましたよ」
「無茶を云いやがる」マサキは頭《かぶり》を振った。
 流石にこの協力願いにはマサキのみならずテュッティも思うところがあるようだ。無理もない。嫌疑が確定しない内から客船の制圧などしようものなら、セニアが議会の突き上げを食らうのは必至。それだけで済めばまだいい。魔装機の維持費に頭を悩ませている議会としては、魔装機にかける予算を減らしたくもあるのだ。
 教団に繋がる証拠が出ればまだしも、出なかった日には。
 彼らに人型戦闘機たる魔装機の撤廃という恰好の口実を与えない為にも、マサキたちは慎重に行動をしなければならないのだ。
「大山鳴動して鼠一匹だったらどうするつもり? こちらはあなたと違って、何の後ろ盾も無く動いている訳ではないのよ。あなたにとっては万が一の可能性かも知れないけれども、この豪華客船が教団と繋がりがなかったら? 私たちの立場は危ういものよ。また議会が煩く云い出すでしょう」
「そのぐらい私の権限でどうとでもしてみせますよ」シュウは立ち上がった。
 不遜な男にどれだけの力があるのか不明だが、云ったからにはやってのける男でもある。マサキは渋面のままテュッティを見た。テュッティの困惑した表情がマサキに向けられる。規律を重んじるテュッティにこういった決断をさせるのは無理だ。マサキは覚悟を決めた。
 最後の決断は自分が下すべきだ。ラングランの旗印たる風の魔装機神を駆る自分が。
 シュウ=シラカワ。またの名を、クリストフ=グラン=マクソード。元王族だった彼の人脈はラングランの中枢部にまで食い込んでいる。その豊富な人脈を彼が思うがままに動かせるのであれば、過剰防衛も大目に見て貰えるやも知れない。
「わかった。但し、その前にやれることはやるぜ。船の制圧は最後の手段だ。いきなり切り札を使っちまったら勝てる勝負も勝てなくなる」
「だから確率だと云ったのですがね」扉の前に立ったシュウは、そのままふたりを振り返ることなく、「教団相手の戦術としては甘過ぎる気もしますが、まあ、いいでしょう。頼みましたよ、二人とも」
 云うと、颯爽とした足取りで部屋を出て行った。


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