ということで、このお話はお終いです。
最近、昔の作品を振り返ることが多かったからですかね。自分のシュウマサの基本に立ち返りました!
では、本文へどうぞ!
最近、昔の作品を振り返ることが多かったからですかね。自分のシュウマサの基本に立ち返りました!
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<So what?>
「別に、いいぜ。お前らにとっちゃ大事なものの話なんだろ。それより、俺、勝手に食事まで済ませちまったけど、よかったか? もし、腹が減ってるっていうなら、食べ終わるまで待つけど。ウエンディひとりじゃこの荷物を運べないだろ」
「そんなに待たせる訳には行かないわ。目的は果たしたのだし、もう帰りましょう。ありがとう、マサキ。あなたのお陰で本当に助かったわ」
どうやら、ふたりの古書談義はひと段落したようだ。
なら、とマサキは財布を取り出した。「先に会計を済ませて来るから、ちょっと待っててくれ」両手が荷物で塞がってしまってからでは、支払いもままならない。マサキは自らのテーブルに置かれた伝票を取り上げて、立ち上がった。
「待ちなさい、マサキ」
その手からシュウが伝票を取り上げる。
「元はと云えば、私たちの所為。あなたの会計ぐらい私が持ちますよ」
正直、マサキは少しばかりシュウの感情を疑っていたのだ。ここまでマサキに口を挟ませない勢いで、ウエンディと語り続けたシュウ。それがわざとでないとどうして云えただろう、そう、彼は怒りに任せて、そのぐらいのことはしてみせる。けれども、怒っていないのか、と尋ねたい気持ちはあれど、ウエンディの目の前だ。迂闊な口を利く訳にもいかない。
「このぐらいの会計、大したことじゃねえよ。俺だって付き合うって云って来てるんだぜ」
「お人好しにも限度がある」シュウは微かに口元を綻ばせてみせた。「こういう時は大人しく奢られるものですよ、マサキ」
喫茶店を出たシュウは、マサキとウエンディとは逆の道を往く。
喫茶店を出たシュウは、マサキとウエンディとは逆の道を往く。
店仕舞いを終えた店も多い市の跡を辿るように抜けて、住宅街へ。街の片隅にて借り受けているアパートメントに古書の山を運び込む頃には、ふたりが連れ立って歩いていたことを不快に感じていた気持ちは、嘘のように晴れていた。
わかっていたのだ。マサキが荷物持ちを進んでやろうと思ったのではないことぐらい。何せ彼は女性に甘い。見るに見かねて荷物持ちを申し出たか、頼み込まれて仕方なしに引き受けたか……それでもふたりの姿を市で見付けた瞬間、シュウは冷静さを欠きそうになった。
自らに好意を持つ相手と、二人きりで出歩くような真似をシュウはしない。相手に期待を持たせるだけになることぐらい、厄介事が起こる前にわかって然るべき。そう思っているからこそ、シュウはマサキの脇の甘さを腹立たしく感じるのだ。
人の気持ちはどうにもならないとはいえ、期待を持たせないことぐらいは出来るだろう。それとなく口を挟んできたことだったからこそ、シュウは尚更にマサキのそういったお人好しな一面が、腹立たしく感じられて仕方がなくなるのだ。
だからこそ、どこまでも蚊帳の外に置いてやろうと思った。
ウエンディと必要以上に話し込んでみせたのも、だからだった。けれどもあのお人好しの風の魔装機神の操者は、そんなシュウのささやかな意地悪にも気付かないどころか、寛容にも門外漢な話題が続くことを趣味んなのだからと受け入れてみせた。これで自分の浅ましい振る舞いを反省しなければ、自分はどうかしている……冷静さを取り戻したシュウは、せめてもの詫びとマサキが飲み食いした分の会計を持ったのだ。
――次に彼と会ったら、いつもより多めに甘やかすことにしよう……
そんなことを考えながら、積み上げた本の側にロッキングチェアーを置き、シュウは今日の収穫にひとり。邪魔者の入らない部屋の中、それらに目を通し始めた。
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