と、いうことで、バレンタインネタです。
先ずは昨年のアンケートの結果から、話を始めたいと思います。
折角、皆様にご協力いただいたので、きちんと書かねば!と思い、かなりの文章量を使いました。読むのに難儀するとは思いますが、お付き合いいただけますと幸いです。
果たして、マサキは無事、シュウと旅行に行けるのか?
というか、シュウがその約束を覚えてるのか?
では、本文へどうぞ。
先ずは昨年のアンケートの結果から、話を始めたいと思います。
折角、皆様にご協力いただいたので、きちんと書かねば!と思い、かなりの文章量を使いました。読むのに難儀するとは思いますが、お付き合いいただけますと幸いです。
果たして、マサキは無事、シュウと旅行に行けるのか?
というか、シュウがその約束を覚えてるのか?
では、本文へどうぞ。
<すれ違いのSt.Valentine.>
それは汗と涙の物語だった。
シュウへのプレゼントと、一年あれば何とかなると決心して始めたミサンガ作り。マサキは任務の合間の空いた時間でミオの元に通い、彼女から直接指導を受けて、ひたすらその技術を習得すべく練習を続けた。
最初の一か月はまるで話にならなかった。
云われた通りに編んでも編んでも糸が絡んで玉になってしまう。焦るマサキに、「大丈夫よ。最初は皆そういうものだから」と、ミオはおおらかに云ってくれたものだった。「ましてやマサキだしね。三か月経ってからが勝負よ」そして、根気よくマサキに付き合い続けてくれた。
二か月目になると、何となくそれっぽい形が作れるようになってきた。けれどもきっちりと編み上げられたミオの作ったミサンガと比べると、隙間が広く開いてしまっていてどうにも不格好だ。編み目も膨らんでいたり、緩んでしまっていたりと、歪な形にしかならない。マサキの心は早くも挫けそうになったものだ。
ミオに叱咤激励されつつ迎えた三か月目。ようやく基本の二種類の編み方だけならどうにかこなせるようになった。芯となる糸に対して、同じ方向に二回糸を巻く。たったそれだけのことだったけれども、編み目を綺麗に揃えられるようになったマサキは、自分でしたことながら盛大に感心した。
以前、ミオに語って聞かせた部活のマネージャーから貰ったミサンガ。斜めに三色のボーダーが入るそれを、ひとりでも編めるようになったのが四か月目。既に基本の二種の編み方を覚えた後だからだろう。左端の糸を右端まで、一種類の編み方を使って編むのを繰り返すだけの三色ボーダーは、不器用を自認している筈のマサキですら簡単だと思えるようになっていた。
五か月目。ミオが以前見せてくれたノルディック柄の栞の編み図を見本に、残りの二つの編み方を覚えることになった。これが思った以上に難しい。これまでの二種類の編み方は、どちらも芯となる糸に対して二回同じ方向に巻く編み方だったが、今回のはそれぞれ逆方向に編む。たったこれだけのことの筈なのに、この四種類の編み方が混ざると、記号を見ていてもどこがどの編み方だったかわからなくなる。しかも、後から教わったこの二種類の編み方は、糸にきちんと力を入れないと編み目が開いてしまうのだ。
「ここまで来れたんだから、大丈夫よ。やり方、そんなに変わらないでしょ? 記号を見て編み方を覚えるんじゃなくて、先ずはそれぞれの編み方を身体に覚え込ませるの。きちんと編み方を覚えてから記号を見るとね、一発でどの編み方をどの記号が表しているか、わかるようになるから」
そう云われて、ひたすら残りの二種類の編み方を身体に覚え込ませて挑んだ六か月目。もう一度、編み図に挑んでみたマサキは驚いた。どの記号がどの編み方なのか、本当にわかるようになっていたからだ。「これならきっと編めるわよ」そうミオに勧められて、マサキはもう一度ノルディック柄のミサンガに挑戦することにした。
あちこち目が開いてしまっている部分もあったものの、ノルディック柄のミサンガを編み終えるだけでなく、端糸の処理まで終えることが出来た七か月目。「ところでどういうパターンのミサンガにするつもりなの?」と、ミオに尋ねられたマサキは、彼女が教えてくれたミサンガのパターンを扱っている手芸系の投稿サイトを見てみることにした。
栞にする以上、幅の広いパターンがいい。しかし、幅の広いパターンとなると、使える糸の色が増えるからか。華やかだけれども複雑な模様ばかりだ。そこで、幾つか候補を上げて、自分に編めるだろうかとミオに見せてみると、「やることは一緒だから、そんなに悩まなくても大丈夫よ。だってマサキ、もうこういうのを編むのに必要なことは覚えたのよ」
たった、これだけで良かったのか。時間をかければ不器用な自分でもやれるようになるのだ、とマサキが自信を深めた八か月目。マサキは候補を四つに絞り込み、ひとつに付き一か月ずつかけて編み上げることに決めた。最初の頃は奇特な物を見るような目で見ていたシロとクロも、この頃になると腕が上達したからだろう。自分の部屋でだったり、サイバスターの操縦席の中でだったりと、空いた時間を見付けてはちまちまとミサンガを編むマサキに感心するようになった。
「って、云うか。お前らちゃんと、口止めされたこと覚えてるだろうな」
「覚えてるのね。あたしたちだけの秘密ニャのよ」
「ここまで出来るようにニャるとは思ってニャかったんだニャ」
「だよな。実は俺が一番驚いてる」
雪の結晶が編みこまれた栞に、スートが編みこまれた栞。幾何学模様にネイティブ模様と、四種類のミサンガが揃った十二か月目。バレンタインも残り半月に迫って、マサキはようやく編むと決めた全てのミサンガを編み終えた。
それぞれ一か月ずつかけて慎重に編み進めただけあって、もう編み目の開きが目立つこともない。自分で編み上げたそれらの栞を並べてみたマサキは、ひたすらな充足感に浸った。
翌日、早速ミオにラッピングを施して貰ったマサキは、それを彼女に預け、昨年同様にチョコレート作りの為にキッチンを借りる約束をしたものだ。最早、マサキの気持ちはバレンタイン一色。何をしていてもその日のことばかりが頭に浮かんでくる。
しかし、神はとても気紛れな生命体なのだ。
彼らは他人の幸福が許せないに違いない。だってそうではないか! 地上に溢れる神話を読み解けば、その答えは自然と導き出されたものだろう。好色な神々のなんと多いことか! 彼らは頻繁に爛れた関係を構築し、それに対する嫉妬から罰を受けたり、或いは自分が与える側となったりと忙しい。
そんな神々が、人間の幸福など許す筈がない。
かくてマサキはバレンタインの前日という大事な日に、ラングラン州より離れたナブロ州で人質を取って廃坑に立て籠もっている賊の討伐を、セニアにより命じられてしまったのだ。
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