今年のバレンタインネタはタイトルでわかる通り、マサキの受難です。
結構、ぎりぎりの時間に更新をしているので、前書きであれこれ書く暇がありません。前に云ったバレンタインネタのリクエストは、この話が書き終わるまで受け付けていますので、お題箱の方に投げて頂けると幸いです。
と、いうことで本文へどうぞ!
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<すれ違いのSt.Valentine.>
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「マサキさんが来るのは聞いていましたけど、何故ミオさんまで?」
ミオを引き連れて姿を現したマサキに、州立軍を率いて、賊の説得に当たっていたザッシュは首を傾げていた。
無理もない。ミオはミオで別の任務を割り当てられていたのだ。それをマサキはミオが一緒でなければ絶対にこの任務は受けないと言い張った。時間を無駄に使いたくないらしいセニアは、十分ほどマサキと云い合ったところで折れ、「そこまで人員が必要だとは思えないのだけど、まあいいわ」と、ミオがマサキに同行することを了承してくれた。
「どうせだったら、リューネさんを連れて来てくれればよかったのに」
「お前、本当にそればっかだな」
毎度々々、リューネリューネと口を開けば彼女のことばかり。マサキが呆れるのも無理からぬこと。きっとこの後には、のろけなのか愚痴なのか相談なのかわからないリューネの話が続くのだ。平時ならそういった話に付き合うのもやぶさかではないマサキだが、今日ばかりはそれどろことではない。
今年のバレンタインがかかった大事な日。
絶対に今日中に任務を完遂してラングランに戻らねば。そう思ったマサキが、状況を尋ねようと口を開きかけると、
「それとも、お二人って実は……ってことだったりします?」
「本当にそういうことにしか頭が行かないな、お前!」
「だって、マサキさん。セニア様の話では、マサキさんをひとりで来させるって話だったんですよ。それなのに」
どこをどう見たら、マサキとミオがそういった関係に見えたものか。そうマサキは云いはしたものの、確かに無理を云って連れて来たミオだ。同じ国出身の魔装機神の操者という共通点もある。しかも今年のマサキは彼女の家に通い詰めときたものだ。
「ねえよ。ないない。こんなちんちくりんと、そんなことになんて絶対になるもんか」
いざ否定する材料を探そうにも、誤解されるような点しか思い浮かばない現状。仕方なしにそういった点に触れないようにマサキが否定してみせれば、その言葉の選び方が気に食わなかったようだ。「ちょっと、マサキ! ちんちくりんってどういうことよ!」背後でミオがいきり立つ。
「どれだけあたしがマサキを助けてあげたと思ってるの!」
「それは感謝してるけどな! お前がちんちくりんなのは事実だろ!」
「その言葉を撤回しなさいよ! じゃないと手伝わないわよ!」
それは困る。まだ今年のチョコレートを作り終えていないマサキは、う、と言葉を詰まらせた。
「地上の人たちって、翻訳機能が正常に働いているのに、偶に僕らがわからない単語を吐くんですよね。ちんちくりんって何です?」
練金学の英知の結晶たる翻訳機能は、ラ・ギアス全土で正常に機能してはいたものの、それは標準語に限った話なようだ。どうやら慣用表現や方言などの翻訳は苦手らしく、発音通りの単語を聞き手に届けてしまう。だからか、ザッシュが理解出来ないといった表情で云った。
天からの助け、とはいえ、嘘を吐くのはマサキの性に合わない。「見た通りじゃねえかよ。ちんまい身体をしやがって。小学生みたいじゃねえか」説明すれば、それでも意味が良くわからないようだ。ザッシュは不思議そうな表情で、「小さいことを云うんですか?」
「そういうことを揶揄して云う言葉よ。だから怒ってるんじゃないの」
「小さい身体って可愛いく見えると思うんですけどね」
やはり、意味が良く伝わっていないようだ。
それでもマサキとミオがそういった関係でないということだけは理解したらしい。ザッシュはほっと安心した様子で、
「まあ、いいです。おふたりがそういった関係でないなら、僕は特に何も云うことはありません。最近では道行くカップルが全部憎らしく感じられてですね、その口にドゥードゥー鳥の丸焼きを突っ込みたくなるんですよ」
そしてふふふ……と、口元だけを歪めて笑ってみせた。剣呑な気配。何故、ドゥードゥー鳥なのかはわからないが、とにかくカップルの邪魔をしたいという執念だけは猛烈に感じられる。
一体、ザッシュに何があったというのか。リューネ絡みであることは間違いない。とはいえ、気にはなるものの、そんなことを聞いている暇は今のマサキたちにはなく。
「面倒臭いことになりそうだ」マサキはミオを振り返った。
「もうなってるってば」
「マサキさんとミオさんが来てくれた以上、ここはもうさっくりと片付けられると思うんですよね。そうしたらですね、ちょっと僕の話を聞いて欲しいんですが」
「今は無理だぞ。明日、明後日……五日後ぐらいなら、聞いてやる」
五日も!? と、ミオが声を上げた。「どれだけ今年のバレンタインにかけてるのよ、マサキ。爛れるにも限度があるじゃないのよ」
「煩えな。旅行に行く予定があるんだよ。だから、その……この後、その準備とかも色々しないといけなくて、俺としてはさっさとここの始末を付けて帰りたいところなんだが、ザッシュ」
「へえー……ご旅行、ですか」その言葉で全てを察したようだ。ザッシュは不気味にもにたりと笑って、「どなたとかは存じませんが、それはとても愉しみなご予定なんでしょうねえ」
世の中のカップル全てに嫉妬を向ける男は恐ろしい。とはいえ、彼の当て推量はある意味で当たっていたりするのであるから、マサキとしてはいたたまれない気持ちもある。
何よりリューネだ。
マサキへの好意を露わにしている少女は、少しでもマサキがザッシュの恋の援護射撃になるようなことをしようものなら、自分のことが邪魔なのかだの何だのと煩く騒ぎ立てる。自分の為に地上に戻ることを諦めてしまった彼女に対しての申し訳なさもあったし、仲間としての関係が壊れてしまうのが怖く感じられるのもある。けれどもそれ以上に、そうした際のリューネの相手をするのが面倒臭く感じられて仕方がないマサキは、だからこそ彼女との仲について現状維持を選んでしまっていた。
そうしたマサキのどっちつかずな態度を、ザッシュが責めることはなかったけれども、こうして事あるごとにリューネとの仲の進展についてわざわざ報告しようとしてくるということは、彼は彼でマサキに対して思うところがあるのだろう。
そんなマサキの心を見透かしているのか、いないのか。ザッシュはむんずとマサキの両肩を掴むと、有無を云わせない勢いで云った。
「大丈夫ですよ、直ぐ終わる話ですから。お昼ご飯でも食べながら、ちょっとだけ。僕が奢りますから」
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