びっくりするほど進んでない!
もう12日だというのに!
私が書くとザッシュは性格が破綻することが多いので、今回は真面目な彼の姿も書いておこうと思ったのですが、やっぱり性格破綻してますよね。ミオは何をさせてもミオなんですが。笑
と、いうことで本文へどうぞ!
もう12日だというのに!
私が書くとザッシュは性格が破綻することが多いので、今回は真面目な彼の姿も書いておこうと思ったのですが、やっぱり性格破綻してますよね。ミオは何をさせてもミオなんですが。笑
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<すれ違いのSt.Valentine.>
「マサキ様、こちらへ!」
入れ変わるように、軍部の兵士たちが出入口を封鎖する。その中にいたひとりの兵士に招かれるがまま。マサキたちは人質を連れて、出入り口から三十メートルほど離れた場所に、いつの間にか建てられている大型の仮設テントへと向かった。そこで人質の人数の確認を済ます。彼らの証言が正しければ、人質はこれで全てらしい。
「後は軍に任せても大丈夫だろ」
念の為にザッシュに確認を取ってみると、ザッシュもマサキと同じ考えのようだ。それならば、躊躇う必要もない。マサキは傍らの兵士に云った。「人質の人数の確認が取れた。中にいる賊たちにはそれなりのダメージを与えてあるが、油断せずにその確保に当たるように出入口の連中に伝えてくれ」
「了解しました!」姿勢を正して敬礼を済ませ、兵士は出入口へと駆けて行く。
程なくして、兵士からマサキの伝言を受け取ったのだろう。出入口を封鎖していた軍の一団は、廃坑の中へと。賊の確保に向かって行った。
「あちらは軍に任せるとして、マサキさん。怪我人が数名いますが、どうします」
「何で怪我をしたんだ?」
「ロープで縛られる時に、腕や足を擦ったようですね。幸いなことに、衛生兵で足りる怪我ではありますが、念の為、処置終了後に近くの病院に搬送する予定です」
「そこまで手筈が整っているのなら、俺たちが付き合う必要もなさそうだな。よし、魔装機が出る気配もないし、俺たちは撤収するか。ここから先は、長居をしても却って軍の後処理の邪魔になるだけだしな」
マサキは少し離れたところで、衛生兵に付き添って、治療を受けている人質たちから話を聞いているミオを振り返った。
「おい、ミオ。帰るぞ!」
「もうちょっと待って。この人たちの治療が終わったら行くから」
「門外漢が首を突っ込むことじゃないだろ。衛生兵に任せておけ」
「報告書に必要な証言が全部聞けてないのよ! それともマサキ、報告書書く?」
マサキは言葉を詰まらせる。
面倒臭いからと、いつもセニアに直に報告をして済ませているものの、本来、世界の危機に直接関係しない人質救出といった任務の完了報告には報告書が必要だった。あまりにも報告書を書かないマサキに、セニアは諦めてしまってるようだが、他の魔装機操者たち――わけても女性陣は、そういった任務の報告書を真面目に上げているようだ。
その理由は単純だ。マサキたちのような操者たちの報告書をセニアが作成しているのを見てしまった彼女たちは、セニアにかかっている負担の多さにいたたまれなくなってしまったのだ。情報局を統括し、マサキたちを庇護し、時には軍部や旧元老院の石頭たちとの対立も厭わない。そんな彼女に細々とした書類の作成までさせるのは酷だと彼女らは考えたようだ。そう聞けば、マサキも少しは良心が痛んだものだが、書けないものは書けないのだから仕方がない。
それを知っているからだろう。ミオは報告書の作成は自分で行うつもりでいるようだ。
「ザッシュに任せろよ。お前、この後にやることがあるの忘れてないだろうな」
「覚えてるけど、中途半端で放り出すのは嫌なのよ」
「まあまあ、ミオさん。軍絡みの任務ですしね、僕が書いてもいいですよ。でも――」
ザッシュは、そこでマサキの肩に手を置いた。その手にやたらと力が込められているように、マサキが感じるのは気の所為ではないだろう。逃がさないとばかりに肩を押さえ込むザッシュの手。そういえば、と当初の話を思い出したマサキが振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべたザッシュの顔がある。
「マサキさん、忘れてないですよね? 僕との約束」
「今日でなくともいいだろ……お前、数日も待てない話なのかよ」
「幸せな人には僕の気持ちはわからないと、そう仰るんですね。あーあ、嫌だなあ。いつの間にかマサキさんにまで先を越されてしまうなんて。本当に、興味ないって振りをしてやることやってたんですね。何だか、マサキさんが遠くなった気がしますよ、僕は」
この絡み具合! これで酔っていないというのだから、ザッシュの神経は相当に太い。
「どっちが諦めるって云ったら、マサキの方だよねえ」
どうやら聞くべき話を聞き終えたようだ。ミオはザッシュに怯みっぱなしのマサキが面白く感じられたらしい。この急場に至って、マサキを裏切ろうとしているかの如き言葉を吐く。
とはいえ、元来が自分の愉しみの為に生きているような少女である。ここまで健気にマサキの味方をし続けてくれたことの方が奇跡でもあったのだろう。彼女はマサキの側に立つと、まるでチェシャ猫のように、にたりと笑った。
「お前、こんな時ぐらい俺の味方をしろよ!」
「恋愛強者は黙っててください。ねえ、ミオさん」
ザッシュの手を振り払おうにも、有無を云わせない謎の勢いがある。けれども、黙ってふたりにいいようにされるのも癪に障る。「お前らな……」マサキが言い返そうとした次の瞬間、間髪入れず。マサキの返事は聞かないとばかりにミオが言い放った。
「その通りよね、ザッシュ。そもそもマサキは付き合いが悪いのよ。マサキに限ったことじゃなく、恋愛強者は皆それ。仲間や友達よりも恋人を優先するのよ。そのくせ恋人と喧嘩したら、泣きついてきたり。そりゃあ、ちょっとぐらいはねえ。意地悪だってしたくもなるわよねえ。その結果がどっちに転んでも、あたしにとっては楽しいことになりそうだし」過去に嫌な思いをしたことがあるらしい。ミオはずらずらと言葉を繋げると、「だったらここで行かずして、どこで行くのよね。ねえ、ザッシュ?」
「わあ、流石ミオさんは話がわかりますねえ!」
「でっしょー?」云うなりむんずとマサキの首根っこを掴む。「もう諦めなさいな、マサキ」
「その代わり、一時間で終わらせますよ。約束しますよ。それに近くの町にいいレストランがあるんですよ。地元民のみならず観光客にも人気らしくてですね、連日盛況なんだとか。人気メニューはTボーンステーキとパスタ類らしいですよ。ほら、だからマサキさんもそんな顔をせず。僕の奢りなんですから、もっと笑って、笑って……」
ザッシュは知りようのない情報だったにせよ、マサキにとってはシュウとの約束を果たせるか果たせないかの瀬戸際なのだ。そんな状況下で笑える筈がない。かといって、最大の味方であるミオが裏切ってしまっている以上、マサキだけが焦っても事態は進展しないのだ。
マサキは首根っこをミオに捕まれたまま、仕方なしにザッシュに付き合うが為に、彼の後ろを歩き始めた。
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