@kyoさん20周年おめでとう記念祭
今回のリクエスト内容は「ゼオルート×マサキで『一夜の過ち』的な話」となっております。
前置き長過ぎましたね、すみません。もっとさっくり一夜の過ちにしようと思えば出来たと思うのですが、でもそこは字書きのプライド。きちんと話の体を整えてお送りしたかったのです。それにゼオルートをちゃんとした狡い男にしたかったんですよー。
と、いうことで本文へどうぞ! あ、ちなみにエロはまだです!笑
今回のリクエスト内容は「ゼオルート×マサキで『一夜の過ち』的な話」となっております。
前置き長過ぎましたね、すみません。もっとさっくり一夜の過ちにしようと思えば出来たと思うのですが、でもそこは字書きのプライド。きちんと話の体を整えてお送りしたかったのです。それにゼオルートをちゃんとした狡い男にしたかったんですよー。
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<愛しい君へ(5)>
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剣聖の称号を持ち、人格者と称えられても尚、国家への従属を誓う。
マサキはやるせなくなった。ならば16体の正魔装機とは何の為に存在しているのだろうか。”世界の存亡に関わる危機には最優先で立ち向かえ。”魔装機操者を縛る枷はたったそれだけである筈なのに。
いつかはゼオルートとも道を分かつ時が来るのかも知れない。
ふと思い浮かんだ考えに、まさか、とマサキはそれを打ち消した。そして何事もなかったかのように話の続きを口にする。
「そこまで大仰に物は考えられねえけど、あんたの云いたいことはわかった。確かに、酒や女に溺れて情報を流出させちまったら意味がねえもんな。でも、教えられたからって簡単に身に付くもんかね。ヤンロンの女性の扱い方が変わったようには俺は見えないんだけどな」
マサキは思ったものだ。魔装機操者随一の堅物に、女性をスマートに扱わせるのには無理があるのではないか? 何せ相手はその道のプロ。付け焼刃な対応をしてみせたところで、直ぐに本心や真意を見抜かれてしまうに違いない。
「彼には嘘を吐くな、と云いましたよ」
「嘘? あいつ嘘を吐くのか」
「そうではありませんよ、マサキ。彼はああいった性格ですからね。思ってもいないことを云わせると、逆に相手に気取られてしまう。だから、相手に対して思っていることだけを素直に云うように、とアドバイスしたんです。綺麗だと感じているのなら綺麗だと。可愛いと感じているのなら可愛いと。ポジティブなこともネガティブなこともね」
成程。マサキはグラスに手を伸ばした。確かに、それならあの堅物でも出来そうなことだ。
思ったことを素直に口にするときのヤンロンの表情は、日頃の硬くも面白みのない表情とは異なり、格段に豊かになる。良くも悪くも素直な男なのだ。その表情の変遷からヤンロンの本心や真意を見抜くのは、それなりの付き合いを誇る魔装機操者たちでも難しい。
「でも、それで油断させることが出来るのかねえ」
「出来ますよ。彼は鋼の意思を持っていますからね。一度こう決めたら絶対に譲らない……根底に流れているものが変わらないからと云って、相手に感情を持たないなんてことは誰にも出来ないんですよ、マサキ。相手を信用していなくとも、相手の好い面を感じてしまうことはある。それを素直に言葉にしてみせればいいと、ヤンロンにはそう云ったんです」
「ひとりの人間の全てを一度には嫌いにはなれないってことか」
そうですよ。ゼオルートはソファにしなだれかかるようにしてワインを傾けている。
つまみと称した山ほどの食事に手を付ける気はあまりないようだ。僅かに料理に口を付けては立て続けに杯を重ね、また僅かに料理に口を付ける。マサキとは真逆の酒の嗜み方。その顔は既に相当赤くなっていたけれども、自分の酒量を知れとマサキに云っただけあって、口ぶりはしっかりとしたもの。
そう、彼はこれだけ杯を重ねておきながら、未だに正気を保てているのだ。
ゼオルートは三本目のボトルに手をかけた。ワインオープナーでその口を開く。そして何杯目か数えることも出来なくなったワインをグラスに注ぐ。
「但し、言葉に溺れてはならない。綺麗だと云ったからといって、相手を好きになる必要はどこにもないんです。むしろ、好きになってしまっては不味い相手です。人間の脳とは不思議なもので、相手に対してポジティブな言葉を重ねていると、ネガティブな面に目を向けなくなっていってしまうものなんですよ。それでは逆効果でしょう。だからヤンロンにはネガティブなことも口にするように、と云ったんです」
それに、とゼオルートはグラスを揺らした。グラスを満たしているワインが輪を描きながら揺れた。
「相手は訓練を受けているプロですよ。言葉尻を捉えて、その気にさせるなんて造作ないこと」
飲み過ぎだ――と口を挟む機会は幾らでもあったのに、マサキはそれを口に出来ないまま。
「つまり、ネガティブな言葉で気持ちを振り戻すのと、相手の目くらましを同時にするってことか」
「そういうことです」
あっという間に空になったグラスがテーブルの上に置かれる。どうやらこれ以上、ゼオルートは話を続ける気はないようだ。マサキはひと段落ついたらしい話に、無理に会話を重ねるでもなく、黙々と料理に箸を付けた。
ゼオルートが席を立つ。目の前の料理の大半がマサキによって平らげられているのが気になったらしい。彼はキッチンに向かうと明日の朝食とプレシアが置いて行った料理を手に戻ってくる。
「よく食べますね。私なんかは、お酒が進むと食事のことは忘れてしまうものですが」
「残したらあんたの娘が悲しむだろ」
「男ふたりですよ。それを見越して多めに作って出たんですよ。あの子はそういう子です」
狭く開いたスペースに押し込むように料理を並べ、空いた皿をテーブルの端に重ねたゼオルートは今度はマサキの隣へと。その腰を落ち着けて、グラスを手に取る。
「またあんたは直ぐそうやって人の近くに寄ってきやがって……」
「ワインが進んでないからですよ、マサキ。私ばかりが酔っても楽しくないでしょう」
「何だろな、あんた。今日は絡む酒なのか?」
仕方なしにマサキは注がれたワインを飲み干した。しかしそれだけで許すつもりはゼオルートにはないようだ。立て続けに注がれるワイン。マサキは、もう一杯、もう一杯と促されるがまま杯を重ねた。
人間の理性など脆いものだ。
あっという間に酔いが回ったマサキは、ゼオルートの膝の上。頭を置いて横になっていた。パーソナルスペースが広いマサキにとってはあまり有難くない状況であったが仕方がない。身体を起こしているのも困難なのだ。
ひとりで身体を伸ばせるスペースがこのソファにはもうない。ゼオルートに勧められるがまま膝に頭を置いたマサキが、彼には素直に感じられて堪らない様子だ。マサキの頭を撫でながら、「こういった状況を上手く回避するのも、魔装機操者の務めなんですがねえ」
けれども、先ほどの話の流れもあるからだろう。マサキを指導し、監督する立場も意識しているに違いない。そうもゼオルートは云ってのけたものだ。
一体、誰が飲ませた酒やら! 呆れるやら悔しいやらで、マサキは上手い返しが思い浮かばない。ただ、「そんな契約をサイバスターとした覚えはねえぞ」そうとだけ云うと、ゼオルートの膝に顔を埋めて。回りに回った世界に呻く。
「そろそろお開きですかね。とはいえ、寝るにはまだ早い時刻ですし……どうします、マサキ。酔いが覚めるまで、ベッドで横になってますか」
うん、とマサキは頷いた。とはいえ身体は自力で動かせたものではない。
長く稽古を続けた後の大量の酒。酩酊感は相当なもの。それでも、それも稽古の効果なのだろう。昂った神経は安らかな眠りをマサキに齎そうとはしてくれないようだ。
目は冴えているのに、身体がだるくてどうしようもない……。
ゼオルートはマサキの頭を膝から下ろすと、ソファから立ち上がった。重みの減ったソファにマサキは身体を伸ばそうと、這って前に進みかけて。
「ちゃんと運びますよ、マサキ。ここで寝てしまったら風邪を引いてしまいますよ」
天井を仰がされた身体。背中と膝の裏にゼオルートの腕が潜り込んでくる。
さぞ酔いが回っていることだろうに。小柄とはいえマサキの身体を抱えてベッドまで運ぼうというつもりなのか……――冗談じゃない。マサキはいやいやと首を振った。
「……肩を貸してくれれば充分だ」
「酔っている人間の言葉ほど、当てにならないものはないですからねえ」
ほら、と身体が抱え上げられる。さして肉が付いているようにも見えない身体のどこにそんな力があったものか。ゼオルートはマサキの身体を軽々と抱え上げると、その部屋へと。マサキを運んで行った。
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