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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

愛しい君へ(7)
@kyoさん20周年おめでとう記念祭

今回のリクエスト内容は「ゼオルート×マサキで『一夜の過ち』的な話」となっております。

とてつもなく酷い話を書いている気がするんですけど、引き返せないのは私もゼオルートも同じ。ここまでやっちゃったら前に進むしかないですよ、もう。
と、いうことでようやくエロに辿り着きました。
もう既に文字数で「神のまにまに」を超えてしまっているこの作品。残り3シーンほどとなりましたので、ラストスパート頑張ります。そして、いつも拍手を有難うございます。励みになります。
では本文へどうぞ!
<愛しい君へ(7)>

「私から彼女を奪わないで欲しいと望むことの何がいけないんでしょうね、マサキ」
「いけなくはないだろうよ」マサキは重く伸しかかってくるゼオルートの身体を、重しが付いているかのようにままならない腕をどうにか伸ばすと抱き締めた。「あんたが望まないことを無理にする必要なんてどこにもないだろ。それに、プレシアだってあんたが無理して新しい奥さんを迎えるなんて嫌に決まってる」
 何がどう災いするかはわからないものだ。その瞬間、ゼオルートはマサキの肩口に伏せていた顔を上げると、切なげげな表情でマサキを見下ろして、暫くの後に。
 ――ゆっくりと、再び口唇を重ねてきた。
 マサキはどうすればいいかわからないままだった。ゼオルートの背中に回した手を解いて再び藻掻《もが》こうにも、最早自分の身体にそれだけの体力が残されていないのは、ゼオルートとてわかっていることだろう。

 ――ああもう、好きにしやがれ。

 差し入れられたゼオルートの舌が何度もマサキの舌を絡め取った。相手が自分の養父であるにも関わらず、その生温い舌の感触が、何故かマサキには快く感じられてしまう。不自然だ、こんなことは。それはわかっている。わかっていてもマサキには抵抗が出来ない。
 自ら舌を動かしはしないけれども、口を開いて何故と問うこともしない。そんなマサキの態度を肯定と受け止めたのだろう。ゼオルートは長い口付けを終えると、マサキの耳に口唇を寄せ、その耳介を食《は》んだ。
「な……、何だよ、今度は……っ」流石にマサキは声を上げた。
「似ているんですよ、マサキ。あなたは……」
「似てるって、誰に」
 ゼオルートの熱い吐息が耳にかかる。その微かな空気の動きに、何故かマサキはもどかしさを感じてしまった。焦れったさに腰回りが疼くの感じ取ったマサキは焦る。
 知らない感覚が身体を襲っている。それが快感だということにマサキは気付いてしまった。
 怖い。
 そう思った。相手は自分の養父である。しかも男同士だ。これまで自分が異性愛者《ヘテロセクシュアル》であると思っていたマサキにとっては、自分の身体が起こした反応は天地が裏返るほどの衝撃だった。
 下半身が熱を帯びている。緩く鎌首をもたげつつある自分の男性器。マサキは腿を閉じた。ゼオルートの愛撫に反応してしまったことを、彼にだけは悟られたくない。その一心で。
 ゼオルートはそんなマサキの様子に気付いたのかも知れなかった。更に端近く耳に口唇を寄せてくると、熱っぽさを増す吐息を押さえることもこともせず、マサキの疑問への答えを吐いた。
「私の、妻にね」
 そして、丁寧とも取れる舌使いで、耳から首筋へと。何度も往復してはマサキの肌を舐め上げてゆく。時に耳孔に舌を差し入れ、時に耳の付け根を吸い、そしてしつこいぐらいの首筋への愛撫。「や……だ。やめ、やめろって……」マサキは弱々しく抗議の言葉を吐くも、今更その程度でゼオルートが動きを止める筈もない。
 身体が疼く。どうしようもなく。
 それはマサキの男としての自尊心《プライド》だったのだ。欲望に飲み込まれそうになる心を押さえつけて、マサキは背中に回したままだった手でゼオルートの服を掴んで虚空に向けて引いた。それでゼオルートの身体を引き剥がせるとは思ってはいなかったものの、何も抵抗せずに彼の思惑に翻弄されるなんて癪に障るどころではない。
 女の代わりにされるのは嫌だった。
 せめてマサキ自身を欲しての行動であったのなら、応えられないにしても救われるのに。
「俺は、あんたの奥さんじゃない……」
 精一杯の力で衣服を引きながら、絞り出すように声を吐いた。「わかってますよ」首筋から鎖骨へと口唇を移動させつつあったゼオルートは、面を上げてマサキの顔を凝視すると、その言葉を裏切るように愛おしそうにマサキの頬を撫で、
「独り身が堪える時があるんですよ。あなたも男なんですからわかるでしょう、マサキ。彼女が欲しくて堪らなくなる。なのに彼女はもうこの世にはいない。他の誰も代わりになれないのはわかっているんです。わかっていても、私は彼女が欲しい」
「だからって、こんなのは間違ってる!」
「そんなことは承知の上ですよ。私はちゃんと警告しましたよ、マサキ。自分の酒量を見極めるように、とね。あなたが慎んでくれさえすれば、私は私の疚しい気持ちに蓋をするつもりだった……」
 そしてゼオルートは眼鏡を外した。
 獰猛な瞳が、マサキの様子を窺っている。
 捕食される動物の気持ちというのはこういうものなのだ。マサキは絶望的な気持ちを隠しきれずにいた。顔の筋肉が強張っているのがわかる。けれども、ままならない身体はマサキをこの窮地から逃してはくれないのだ。
 思考が停止する。たかだかキスぐらい、と思わなければよかったと後悔しても時に既に遅し。次の言葉を吐けずにいるマサキの衣服にゼオルートの手がかかり、それはもどかしそうに肌を露わにさせていった。


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