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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

愛しい君へ(8)
@kyoさん20周年おめでとう記念祭

今回のリクエスト内容は「ゼオルート×マサキで『一夜の過ち』的な話」となっております。

残り1、2回というところまで到達しましたこのシリーズ。結局いつものパターンかよ、と思ったりもしなくもないのですが、こうでもしないと余りにもマサキが痛々しいので……と、いったところで本文へどうぞ!

<愛しい君へ(8)>

 ――何だ、これは……。

 喉元を吸いながら、ゼオルートがマサキの肌に指を滑らせてくる。既に衣服は大きく捲り上げられ、マサキの身体は大部分の肌を晒していた。
 その柔い突起を探り当てられるのは時間の問題だった。
 抵抗を諦めたつもりではなかったけれども、身動きままならない身体。口先ばかりの抵抗などなんの意味も為《な》さないのだと、ゼオルートの強固な意志を目の当たりにしてしまったマサキはわかっていたからこそ、次の行動《アクション》に迷いがあった。
 そんな折に乳首に触れた指先。
 そうっと撫でまわされた瞬間、マサキは先ほどまでのものとは比べ物にならない強烈な疼きを感じてしまった。
 つん、と触れられている部分から染み出してくる快感に、焦ったマサキは口唇をきつく閉ざした。だのに口の端から洩れ出る声。まるで自慰行為に耽っている際に、極限まで追い詰めた身体の切なさに、声を上げずにいられなくなるような……。
「やだ、やだ、やめろよ、おっさん……それ、やだ……」
 そうでなくとも肌を吸われて熱を持っていた男性器が、更に熱を帯びて硬さを増す。そのもどかしさに腰が震えて仕方がない。どうにかなってしまいまそうな感覚。そこから一歩先に踏み出した世界が、マサキは怖かった。
 他人に自分の性感帯を触れられるというのは、こんなにも強い快感を引き起こすものなのだ。引き返せなくなる……思ったところで自分ではどうにも出来ない。どう足掻いても口の端から洩れ出てしまう声。必死に堪えても、熱い息はマサキの口唇を濡らすのを止めなかった。
「こういう時の″嫌″は″いい″なんですよ、マサキ」ゼオルートは一度顔を上げて、頬を上気させているマサキを凝視《みつ》めながら、それと、と続けた。「こういう時は名前を呼ぶものですよ。きちんとゼオルートと呼んでください、マサキ」
 そして彼は、今度はマサキの胸へと顔を伏せていくのだ。マサキの苦悩など知らずに。
 吐息が触れるのですら耐え難く感じるほどに、刺激に過敏になっている。柔く天を仰いでいた乳首は、まるで次の愛撫を待ち構えているように映る。「あなたは感じ易い性質《たち》なようですね、マサキ」
 かあっ、とマサキの頬が強く熱を放った。けれども抗議の声を上げる間もなく。ゼオルートの濡れた舌は無情にもマサキの乳首を弄《もてあそ》び始めた。あ、あっ……、控えようにも口に留めておけない声が、猥雑に宙を舞う。
 ――こんな感覚は知らない。
 堪えようにも堰を切って溢れ出てくる欲望。相手は養父なのにも関わらず、愛撫の続きを求めてしまう。何と呼べばいいのかわからない感情が胸の内で暴虐に荒れ狂っている。
 そんなマサキの反応を確かめるようにゼオルートの舌は蠢いた。すくい上げては絡み付き、突いては舐《ねぶ》る。口唇で挟み込んでは繰り返される舌先の愛撫に、徐々にマサキの理性は失われていった。
 切なげな喘ぎ声が吐息とともに、何度もマサキの口から放たれては空に消えてゆく。
 マサキは襲い来る快感に、所構わずゼオルートの背中に爪を立てた。服を掻いては爪を立て、爪を立てては服を掻く。その背中の痛みをゼオルートがどう感じ取ったのかはわからない。やがて、ゼオルートはは不意に顔を上げた。そして快感の余韻に目を細めて荒く息を吐いているマサキの頬に手を重ねると、
「その表情ですよ、マサキ。私が見たかったのは」残酷な台詞を吐きながら、激しくマサキの口唇を求めてくる。
 抵抗しなければならないと頭では理解しているのに、相も変わらず身体は云うことを聞かないままだ。けれどもそれは酔いの所為だけではなかった。そう、マサキはいつしかゼオルートの口唇をすんなりと受け入れるまでに、その身体の緊張感を解いてしまっていたのだ。
 ゼオルートに好きにさせていただけの先ほどまでの口付けとは異なり、今度のマサキは自ら舌を動かした。彼の舌の動きを思い出して、それを真似る。絡めて、すくい上げて、舐り、吸う。それは肉感的な世界だった。伏せた瞼の暗がりの中で、相手の温もりだけが全てとなる。
 ただ本能に突き動かされるがまま、欲望を貪るだけの世界。そこにマサキは居た。何も考えずに溺れてしまえば、これ程に心地のよい世界はない。
 マサキは能動的にゼオルートの舌を貪《むさぼ》った。
 口付けの下で触れることを止めない指先が、尚もマサキの乳首を弄んでいる。マサキは背中をしならせ、ゼオルートの指先に胸板を擦り付けるようにして――……。
 そのマサキの従順な豹変ぶりが、在りし日の夜を思い出させるのだろう。ゼオルートは何度も何度も激しくマサキの舌を攫っては深く。求められるがままに、口付けを与え続けた。
 するりとゼオルートの膝がマサキの足を割った。力を入れて閉じていた筈の腿は、繰り返される愛撫と口付けに、その力を弱めてしまっていたのだろう。すんなりと開いてしまった足にマサキは動揺を隠せない。
 言葉などなんの意味もないものなのだ。
 咎める言葉すら吐き出せないままに、腰を留めているボタンが解かれ、ファスナーを下ろされ、緩くマサキの下半身を覆っているジーンズが脱がされてゆく。膝に絡んだ布地にはお構いなし。ゼオルートはそのまま下着をも引き下ろすと、どうにもままならない欲望を抱えてしまっているマサキの男性器に、躊躇うことなく指を絡めてきた。
「や、だ……触んな、触るな、って……」
 緩く男性器を揉まれたマサキは、当然のように襲い来る快感と、一抹の嫌悪感に首を振った。
 相手は男で、しかも養父だ。決してしてはならないことをしているのに、高まってゆく快感。微かな期待と同量の不安がマサキの胸の中に在る。だからマサキは曖昧に態度を濁してしまった。これは自分の意思で行われていることではない。そう逃げ道を作ってしまった。
 そしてだからこそ、口先だけでの抵抗を止めることは出来なかった。
「口を開けば抵抗ばかり。さっきまで素直にキスを強請っていたのが嘘のようですよ、マサキ。もう少し素直に可愛げのある台詞を吐きませんか?」
「やだ、それ、嫌だって……、あ、や……っ」
 他人の手に男性器を触れられるのは初めてだった。女性経験のないマサキが快楽に堕ちるのに、きっとそうは時間はかからない。マサキは抵抗を続けながらも、行為に意識を攫われてゆく自分を止めらずにいた。
 ある程度自分で思い通りに出来る自慰での快感と違って、必ずしも思い通りの反応にはならない愛撫。知っている快感と知らない快感が交互にマサキを襲ってくる。同じ場所を触るのでも自分と他人ではこうも感じ方が変わるのだ……溜まりに溜まったもどかしさが、出口を求めて身体の中で渦巻いている。
 そこかしこが疼いて堪らない。
 空気が震えた。それがゼオルートの発した嗤い声によるものだと気付くまで、少しばかりの時間が必要だった。
「何が、可笑しいんだよ……」
「嫌だ嫌だという割には、もうこんなに腰を振って」
「――――ッ」
 口付けてはマサキの顔を眺めて、手を動かしてはその反応を確かめる。長く愛撫を繰り返していたゼオルートは、素直に反応してみせるどころか、自ら求めるような真似を繰り返すマサキの身体が面白くて堪らないようだ。そう言葉を吐くとこう続けた。
「そういう時にはね、マサキ。して欲しいことを口にするんですよ、正直にね」


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