@kyoさん20周年おめでとう記念祭
リクエスト内容は「シュウマサ前提のフィルロード×マサキ」となっております。
あっという間に駆け抜けました最終回です。
神やそれに準ずる存在というのは、性格が捻くれていると私は勝手に思っているんですけどどうなんでしょうね?と、いうことでこの話はここまでとなります。
最後までお付き合い有難うございました。
明日か明後日かには次のリクエストの消化を始めたいと思います。もしよろしかったらそちらもお付き合いいただけますと幸いです。では本文へどうぞ!
リクエスト内容は「シュウマサ前提のフィルロード×マサキ」となっております。
あっという間に駆け抜けました最終回です。
神やそれに準ずる存在というのは、性格が捻くれていると私は勝手に思っているんですけどどうなんでしょうね?と、いうことでこの話はここまでとなります。
最後までお付き合い有難うございました。
明日か明後日かには次のリクエストの消化を始めたいと思います。もしよろしかったらそちらもお付き合いいただけますと幸いです。では本文へどうぞ!
<神のまにまに(了)>
<了>
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「物憂げだね、マサキ。やはり君は、私よりもクリストフの方がいいようだ」
精霊界と人間世界の時間の流れは異なる。その現実をフェイルロードは忘却してはいなかったようだ。マサキを求めるのを一度で済ませると、彼はほど良い疲労感と倦怠感に身を投げ出しているその身体に、服を着せてやりながら云った。
「そうじゃねえよ、殿下。ただ、昔のことを急に思い出しちまったもんだから……」
「どうだろうね」フェイルロードは笑った。「マサキ、ここからは世界の全てが良く見える。君が今、どんな生活を送っているかもね……君は優しい子だ。私を傷付けまいと嘘を吐く。どうやって君がシュウクリストフと過ごしているか、私が知らないとでも思うかい」
名残惜しそうにフェイルロードはマサキを膝の上から下ろし、自らの乱れた着衣を整えると立ち上がった。「さあ、戻ろうか。そろそろサイフィスも痺れを切らしているに違いない」
「殿下、その……じゃあ、殿下は何で俺に……」
「同じ土俵に立てなかった嫉妬だとでも思ってくれればいい。私にだって欲はあるんだよ、マサキ。命を縮めるほどに身体を追い詰めてしまっても、生き延びたいと思ってしまったぐらいに」
そうして迷いなく先を行くフェイルロードの背中に、追いつくべく立ち上がったマサキは足を踏み出した……一歩、二歩、三歩と歩いたところでフェイルロードがマサキを振り返る。
「何があったか気付かない男でもあるまい。彼が君にどう対処するか見物だね」
そして可笑しくて堪らなないといった様子で、高らかに声を上げて笑った。
なんてことだ! マサキはフェイルロードがこの身体に幾つもの痕を残した理由に思い至った。
フェイルロードはただ、シュウに一矢を報いたかったのだ。
顔を合わせた時に暗い欲望を抱えていたフェイルロードの瞳。それは最早、憑き物が落ちたかのように、清々しいまでの穏やかさで慈しみをもってマサキを見詰めるだけとなったのに。
そのフェイルロードの優しさに甘えて、マサキは油断してしまったのだ。
――嗚呼、彼は紛れもなくあの傍迷惑な男の従兄弟であるのだ。
フェイルロードは仄かな明かりだけが光源となるこの薄暗い世界で、全ての欲望と切り離されて、マサキたちの生きている世界を眺めながらただ眺めて暮らしている。
それが精霊界に召し上げられた魂の宿命。贖罪の手段でもある。
彼はだからこそ未練を消化したいと望み――、その願いにサイフィスは応じた。
だとしたら、サイフィスは個人の矮小な欲望を叶える為だけに、精霊界の摂理を破ってみせたことになる……何を考えているのだろう、あの気紛れな風の精霊は……そんなことを思いながらぽつりぽつりとフェイルロードと会話を交わしつつ、マサキは来た時と同じようにその背中の後ろを付いて歩いた。
菌糸類の胞子が周囲を淡く照らし出している。そそり立つ鉱物の柱に、生い茂る植物。足元には歩みを阻むように石や砂利が転がっている。その楽には歩かせてもらえぬ道なき道をふたりで戻ること暫く。原始的な世界に不釣り合いな巨大なシルエットが、マサキの視界の奥、徐々にその姿を露わにする。
風が吹いた。吹き荒ぶ風が。
それはマサキの身体を鮮烈に攫《さら》ったかと思うと、一瞬にしてサイバスターの機内へと送り込んでみせた。
「マサキ、戻ったのね!」
「随分長く待ったんだニャ!」
マサキの姿を認めるなり、騒々しく騒ぎ立てる二匹の使い魔。彼らの云うことを纏めるに、どうやらマサキが戻る数秒前に、サイバスターは突然にそのシステムを回復させたようだ。「だろうな」マサキは頷く。でなければ、どうしてサイフィスは風を巻き起こしてみせたものか。
マサキはサイバスターの操縦席に身を収めた。そして長い行為の果てに、節々が不自然に軋むようになった身体をほぐしながら、「むしろ俺よりシュウの方が気が合うんじゃないか、あいつ」
「誰がニャんだ?」
「サイフィスだよ」
「そういえば誰と会ったの、マサキ」
「殿下とだよ」
自分を守護する精霊のなんと気紛れで傍迷惑なことか。わざわざ自らの力を用いてまでマサキの人間関係に介入してくる。その在り方はまるで、そうまるで、あの厄介な男のようだ。
マサキはフェイルロードと何を話したのか聞きたがるシロとクロの言葉を無視して、サイバスターの起動システムを走らせた。ウォン……動力炉が唸り始める。そして立て続けにコマンドを入力し、各部の機能に異常がないかを確認する。
――人の生の営みというものは面白いものね、マサキ……
マサキの脳に穏やかな声が響いてきたのは、その瞬間。「サイフィス様!」どうやら二匹の使い魔にもその声は届いているようだ。日頃、幾らマサキが注意しても簡単には大人しくならない二匹の使い魔は、ちょん、と即座に姿勢を正してみせると、やいのやいのと騒いでいた口を閉ざす。
「何がしたかったんだよ、あんた。俺の人間関係にまで足を踏み入れてきやがって」
「最初に私を頼ったのはあなたの方だったでしょう、マサキ」
「だからってな――……」マサキは頭を掻いた。
かつての話だ。戦意を失ってサイバスターの操縦が出来なくなったマサキは、シュウに導かれるがまま。精霊界でフェイルロードと会った。そしてフェイルロードと話をすることで、戦意を取り戻すきっかけを得たのだ。
無論、シュウとて人の身。己の力だけではマサキを精霊界に送りこめはしない。それは神官であるイブンの仕事だ。けれども例えイブンとて、精霊たちの許可なしに人間を精霊界に送り込むことは出来ないのだ。
「人の心は脆いものよ。些細な切欠《きっかけ》で、陰にも陽にも染まる」
「責めるなって云いたいのか」
「好きになさいな」
ふふ……と、サイフィスの笑い声がマサキの耳元で響く。姿を容易く見せようとしない彼女は、マサキにその気配を気取られるのは許せるらしい。温かな気配がマサキに寄り添うように立っている。
「但し、あなたにかけられた呪《まじな》い。それは解いて貰いなさい。今の彼ならそのぐらいの解呪は容易い筈。いくら教団の力を削ぎ続けているからといっても、破壊神信仰の法則を用いた呪《まじな》いなど、いつまでも身体に残しておいていいものではないでしょう」
「なんだって? じゃあ、もしかして、シュウは――」
あの頃のシュウは、自らの意思ではどうにもならなくなるまでにヴォルクルスに支配されていた……破壊神サーヴァ=ヴォルクルス。そうである以上、それがあの荒ぶる邪神の成したことでないとどうして云えただろう?
そもそも、何故シュウは強烈にマサキを支配するその呪《まじな》いを利用しなかった?
自ら施した呪《まじな》いなのだ。利用出来るものは何だって利用してみせるシュウならば、絶対にどこかでマサキの動きを封じる為に咒文を口にしていたことだろう。それとマサキの記憶だ。いつの間にか消えてしまっていた膨大な量の記憶。それをしたのは誰だ?
シュウでなければ、誰がマサキにここまでの仕掛けを施せたものか!
けれどもマサキはその疑惑の全てを口にすることは出来なかった。それは、そんなことは承知しているとばかりに、サイフィスがマサキの言葉を遮ったからだ。
「私は人の心までは見透かせないのよ、マサキ。当時の彼の意識が、どこまであの忌まわしい先史時代の魂に侵されていたのか……今となっては永遠の謎。けれども、マサキ。いずれにせよ、今のあなたにその呪《まじな》いは必要の無いものでしょう。それともあなた、そういったものの力を借りないと……」
そこで彼女は再び、ふふ……と笑った。その笑い声に共鳴するように、マサキの周りの空気が震える。
――これ以上は止めておくわ……あなたの名誉の為にもね……
その言葉を残してサイフィスの気配が消える。
同時に動き出すサイバスターの転送機能。計器類はひとりでに明滅を始め、コントロールパネルが沈み込む……勝手にしやがれ。マサキは操縦席に身体を投げ出した。
ついに精霊界から地底世界へと還る時が来たのだ。
モニターに映し出される世界が歪み始める。マサキの身体に重力の負荷がかかる。そして、次の瞬間。猛々しい唸り声を上げて次元の狭間を超えると、サイバスターはラングランの大地に雄々しく姿を現した。
<了>
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