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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

秘密(了)
これで取り敢えずundergroundも完結です。
ここまでお付き合い有難うございました。

いやー難産でした。

暫くはのんびりお絵描きをしながら過ごしたいと思います。
ではでは、本文へどうぞ!
<秘密>

「ちゃんと深呼吸をしろ。そうでないと、挿入《はい》るものも入らなくなるぞ」
 指を抜き差ししながら、マサキの耳に、うなじに、肩口にと次々と口唇を這わせてくるファングに、ゆっくりとではあったものの、マサキの身体から力が抜けてゆく。
 はあ、あ。日常生活での衣擦れをあるものとして遣り過ごしてしまうマサキの肌。けれども、それに等しい力加減で刺激を与えてくるファングの口付けには、何故か敏感に反応する。あ、あ。うわずった声で喘ぎながら、マサキはファングが仕掛けてくる愛撫を一身に受けた。
「お前は感じ易い性質なようだな、マサキ。こんなに濡らして」
 ほんのりと赤く染まった肌。全身が火照って仕方がない。流石に経験があると口にしただけあって、ファングはこうした場で相手の緊張をどう解きほぐせばいいかをわかっているようだ。股間に滑り込んできたファングの手が捉えたマサキの男性器は、内側に溜め込んだはちきれんばかりの欲望で濡れそぼっていた。
「……どうせやるんだったら上に乗れよ。お前の顔を見ながらしたい」
 明け透けな言葉に頬がかあっと熱くなった。いい加減に出したい。そうマサキは思うものの、全身を舐られる程度の緩い快感で達するのは難しそうだ。
 もっと強い刺激が欲しい……それさえもファングの計算の内なのやも知れない。少しもしない内に男性器から離された彼の手に、マサキは焦れた。焦れて、折れた。何事にも初めてはある。ファングの言葉を受け入れたマサキは、だからこそ彼にせめてと顔を見ながらの性行為《セックス》を願い出た。
 それはこうした経験自体が初めてなマサキからすれば、かなりの勇気が要る発言だった。
 ゆるゆると抽迭《ちゅうてつ》を繰り返している指が、収斂《しゅうれん》しているマサキの蕾から引き抜かれた。可愛いことを云ってくれる。微かに弾むファングの声。好き勝手にマサキを弄んでいる割には、穏やかで柔らかい。マサキに手を出してきた真意は知れないものの、彼が可愛いと繰り返すその言葉に嘘はないようだ。
「そう思うなら、もう少し優しくしろ」
「そうは云ってもな。充分に可愛がってやっているつもりだ」
「だったらお前の顔を見せろよ」
 けれどもファングは、マサキのそのささやかな望み叶えるつもりはないのか。するりと双丘に手を這わせてくると、暫く。きっとマサキの未熟な蕾の様子を窺っていたのだろう。やがて、その引き締まった形を確かめるように撫で回してくると、マサキの顔を見ずにことを済ませようとしている理由を口にした。
「初めは後背位《バック》の方が楽だぞ、マサキ。生物の生殖器はそれに適した形に出来ているからな」
「俺が使うのは、生殖器じゃねえ……」
「位置の問題もある。女性器よりも後ろにある分、後背位の方が抜け難くもあるようだ。慣れるまではこっちの方がいいと思うが」
「慣れるまで繰り返すつもりかよ。人の弱味に付け込むような真似をしやがって。今度稽古をする時は覚えておけよ」
 それにファングは声を上げて笑った。お前のそういうところが可愛くて仕方がない。そして自らの昂った男性器をマサキの蕾に押し当ててきながら、耳元でこう囁きかけてきた。云っただろう、可愛い弟弟子だと。
「……どういう意味だよ」
「お前の為なら、俺はどんなことでもしてみせるという意味だ」
 それだけ口にすると、不器用な兄弟子はそれ以上の無駄口を叩くことなく、マサキの中に自らの欲望の塊を押し込んできた。
 指でほぐされたにせよ、太さの異なる肉の塊。無理だ。即座に力の入るマサキ身体を押さえ込むようにして、少し、また少しとファングは自らの男性器を蕾の奥へと挿《い》れ込んでくる。ちゃんと呼吸をしろ。いつの間にか息を詰めていたマサキにかけられる言葉。無理だって。マサキが声を上げた瞬間。身体の力が緩んだのだろう。それはずるりとマサキの蕾の中に挿入《はい》り込んできた。
 は、あ……引き攣った声が喉の奥から放たれる。ぞくぞくと背中を走る怖気《おぞけ》。腹の中にすっぽりと収まっている硬い肉の塊。他ならぬファングの男性器を、マサキは引き込んだ先から出したくて出したくて堪らなくなった。
「安心しろ。そんなに長くはかからん」
 何がだ、とは口にしなかった。
 うう、と呻くしかないマサキの腰を引き寄せたファングが身体を起こす。そうして、床の上で膝の上にマサキを乗せて胡坐をかいた彼は、マサキに背中を反らすように告げてきた。何をするつもりなのか。わからないながらも、性に未熟なマサキは従うしかない。途惑いながらも背中を反らす。
 腹の中に収めている男性器の、恐らくは先端が、マサキの男性器の裏側に押し当たった。ぐいと開かされる足。深くファングの男性器を咥え込んでいる自らの開ききった蕾が、マサキの視界の隅に映り込む。や、だ。声を上げたマサキに構わず、ファングは小刻みに腰を動かし始めた。その都度、マサキの蕾を擦り上げる彼の男性器。腹の底に当たる亀頭の先端に、得も云われぬ快感が込み上げてくる。
「あ、あ、動くな。やめ、やめろって、ファング」
「その割には抵抗らしい抵抗をする気配はないようだが」
 耳に吹きかかる息。笑い声を上げながらも、腰を休める気のないファングに、マサキはやだと自分でも信じられないぐらいに甘い声を発した。やだ、イク。マサキはそう気付かずに腰を振った。あ、そこ、そこに当てるな。男性器の裏側を叩くファングの男性器に声を上げるも、その凶器を抜くべく藻搔くでもない。むしろ積極的に腰を振ってみせるマサキの様子に、彼はそれがマサキなりの同意の意思の表れだと受け止めたようだ。
「お前の『やだ』は『いい』なようだな、マサキ。ほら、もっと腰を振れ。気持ちいいのだろう。性行為《セックス》は楽しんだ者勝ちだ。今日はたっぷりお前にその楽しみ方を教えてやる」
「本当、に、次の稽古を、覚えておけよ……」
 跳ねる呼吸の下で無理に吐いた強がりの言葉の何と頼りないことか! そもそもそういったマサキの捻くれた物云いさえも、ファングにかかっては愛くるしく映っているのだ。はっは、と笑うファングに弄ばれるようにして、程なく。お前の身体は正直だな。彼の男性器で突き上げられ続けているマサキは、乳首を捉えた彼の両の手に、増々自身の身体が追い詰められてゆくのを感じずにいられなかった。
「やめ……それ、やだ、って……出る。本当に、出る……」
「こういう時には素直にいいと云うんだ」
「やだ、イク。イクって」
 どうしようもない快感が断続的に襲ってくる。それが次第に間隔を短くしているのを、マサキは自身の身体で思い知った。剣技の腕も、魔装機の操縦の腕も、自分の方が上なのに。初めての経験というだけでいいように扱われている自分。口惜しくて仕方がないのに、快感は絶え間ない。
 ――ああっ、ファング、ファング。
 繰り返し、繰り返し。終わることなくリズムを刻むファングの腰が、マサキの体内にその肉の塊を叩き込む度に、マサキは狂ったように何度も彼の名前を呼んだ。連続して身体を貫き始める快感。腰から脳まで突き抜けるような刺激がマサキの身体を襲っている。
 高い波。いっそう強い刺激がマサキの男性器の中で弾け飛んだ。
 イク、イク、イク……。そうして訳がわからないほどの興奮の中、マサキは初めての経験となる性行為での射精を迎えていた――……。

「お前の底なしの体力には敵わんな」
 芝の上にごろりと転がったファングが息を荒らげている。云ったことは守るんだよ。マサキはへばりきったファングの隣に腰を落とした。そして数日前の夜の出来事を思い返しながら、好き勝手しやがって。そう言葉を吐いた。
「根に持つ性質だったとはな」
「当たり前だ」マサキは憮然と云い放った。
 結局、無理を押してマサキを抱いた彼は、そこから二日と経たぬ内に、近衛騎士団の詰め所で意識を失って倒れてしまった。医者の所見では過労が祟ってのことらしいが、とどめを刺したのがマサキとの性行為にあったのは間違いない。
「もう少しゆっくり休んでろって話じゃねえか、それをお前は起き上がってきたかと思えば、稽古を付けろだ? また倒れても知らねえぞ」
 そのマサキの頬にファングの節ばった指が伸びてくる。押し当てられる彼の手のひらの温み。ざらついた肌の感触が、マサキには変わらず快いものとして感じられた。
「それだけお前が可愛く映ったということだ」
「……馬鹿じゃねえの」
 信義に厚く、篤実な人柄。ファングを知る人間は彼をそう評したものだったし、マサキもその意見には頷くところではあったが、謹厳実直に見える彼はその半面、臆面もなくこうした台詞を吐ける人間でもあるのだ。
「出来のいい弟弟子が俺には誇らしい存在だと云っているつもりなのだがな」
「嘘を吐けよ。それでどうして可愛いなんて話にな」
 のそりと身体を起こしたファングの口唇が、マサキの口唇を覆った。滑った感触。忘れない内にと寝込んでいるファングに贈ったリップクリームを、彼はきちんと塗っているらしい。口の端の荒れた感触が和らいできているのを感じ取ったマサキは、柔らかく自身の口唇を吸ってくるファングに応えて、舌をその隙間に差し込んだ。
 そうして、飽きることなく。気が済むまで思うがまま、マサキはファングの口唇を貪った。
「……責任、取れよな」
「そういうところが可愛いと云ってるんだ」
「……簡単に他の奴に乗り換えやがったら許さねえ」
「お前は案外執念深いタイプだな」
 先に射精を迎えたマサキを、ファングはそれだけでは許してはくれなかった。一度、男性器を抜き取った彼は、マサキを抱え上げてベッドへと連れ込むと、気が済むまで。何度も何度もマサキを犯してくれたものだ。
 ――これを酒の席での過ちにされるのは我慢ならない。
 既にファングに対する自らの感情を自覚しているマサキは、だからこそ我儘にも占有欲を露わにしてみせた。それを嫌がる風でもないファングは、マサキと関係を続けることを、良しと感じているようである。
 ――とはいえ……。
 好きといった言葉を彼が口にすることはなかったものの、これだけ可愛いと繰り返されれば、幾ら鈍感なマサキでもファングが自分に好意を抱いているらしいことぐらいは察しが付く。その口から明瞭《はっき》りと自分の感情を告げる言葉が聞きたい。マサキとの性行為に手慣れた様子で挑んでみせたファングは、その割には自らの感情を伝えるのには不器用なままであるようだ。
 ファング。マサキの言葉に声を上げて笑っているファングの名を呼んだマサキは、自らを見下ろしてくるファングの顔を見上げつつ、その肩に頭を預けていった。
 ――お前の可愛いは、好きってことだよな。
 無論、とファングが目を細めて笑う。笑うと存外可愛い男の、子どもっぽい笑顔。ならいいや。マサキはファングの背中に腕を回すと、草むらの中へと。先程交わした口付けの続けをすべく、彼の身体を引き込んでいった。

<了>


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