ま さ か の 。
長くシュウマサをやっていたので、そろそろ食傷気味になった自分の気分を盛り上げようと思ったのでした。ファングには申し訳ないですが、こういう別カプものを書いていると、「やぱシュウマサだな!」と思いを新たにする訳ですよ。積み重ねてきた年月の違いですね。
次回でこの長かったシリーズも完結です。とはいえ、昨年「ヤンマサを書きたい!」と云ってしまったので、いずれこっそりと追加をすることでしょう。その時にはまた宜しくお願いいたします。
と、いうことで本文へどうぞ。
長くシュウマサをやっていたので、そろそろ食傷気味になった自分の気分を盛り上げようと思ったのでした。ファングには申し訳ないですが、こういう別カプものを書いていると、「やぱシュウマサだな!」と思いを新たにする訳ですよ。積み重ねてきた年月の違いですね。
次回でこの長かったシリーズも完結です。とはいえ、昨年「ヤンマサを書きたい!」と云ってしまったので、いずれこっそりと追加をすることでしょう。その時にはまた宜しくお願いいたします。
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<秘密>
――この間から、ずっとこうだ。
最初はプラーナの補給をしようと思ってのことだった。同性、しかも兄弟子たるファング相手に――と、躊躇う気持ちもなくはなかったが、目の前で無防備に身体を投げ出して眠っているファングを眺めている内に、マサキはこれなら出来そうだと思ってしまった。
魔が差したとしか云いようのないマサキからの口付け。ファングは予想よりも寛大だった。禁欲的《ストイック》な彼のこと。苛烈に怒り出すかと思いきや、咄嗟にマサキの身体を引き剥がすだけに留めたのだから、出会った頃のどこかよそよそしい態度に比べれば、随分とマサキに気を許してくれるようになったものである。
それはマサキがファングの同輩、同じ師に師事した同門の徒だからでもあるのだろう。その関係がなければ、マサキはファングと親しい関係を構築出来たかどうか。何せ、対外的には頭のお堅い近衛騎士団の一員だ。判で押したような対応を繰り返す彼らは、それがラングラン国家の最重要人物の護衛官に必要な資質であるとはいえ、かなり柔軟性に欠けた精神性を有しているようにマサキの目には映ったものだ。
少し踏み込んだ付き合いをすれば、その信義に厚く篤実な人柄の良さに気付けたものだが、人を第一印象で判断し易い傾向のあるマサキのこと。そうしたファングの人となりを知る前に、彼を厄介な難物にカテゴライズしてしまっていたことだろう。
――だから、俺は少し嬉しいんだ。
厚い氷が時間をかけて溶けてゆくように、打ち解け合うに至ったマサキとファング。決して他人を寄せ付けない男ではなかったが、ひとりで全てを抱え込む傾向のあるファングは、先ず以て他人に頼ることがなかった。ましてや兄弟子という立場がある。お互いの搭乗機に厳然とした力の差が存在していようとも、ファングが守らなければならない自尊心《プライド》に拘りを見せているのは明らかだった。
彼が戦闘中にマサキに語りかけてくることがあるとすれば、それは自機の救援要請ではなく、現在の陣形に対する助言《アドバイス》である。そのくらいファング=ザン=ビシアスという男は、誇り高き人間であるのだ。
その男が自分の前で無防備な寝様を晒している。
普段の魔装機操者同士での飲み会では決して見られないファングの醜態。彼は酔い過ぎないように自分をコントロールしているのか、静かに杯を重ね、毎度々々きちんと自らの足で立って帰宅の途に就いてみせたものだ。それがどうだ! 彼はマサキの前ではくたびれきった様子で身体を横たえることも厭わないようになった! それはファングがマサキの実力や人間性を認めたからでもある。これでマサキが嬉しくない筈がない。
――でも、これは何だ?
マサキはファングの身体の上に圧し掛かった。瞳にかかるまでに伸びた前髪をそうっと掻き上げる。酒臭い息。本当に馬鹿みたいに飲みやがる。そんなことを呟きながら、マサキは三度目となる口付けをファングの口唇へと落としていった。柔らかい。温かみのある口唇を貪りながら、マサキは自身がファングに対して抱いている感情について考えていた。
ただ気を許してもらえるようになったことが嬉しく感じられるだけであるのならば、こうした接触を求める必要はない筈だ。そう、マサキはファングとの口付けを快いものとして捉えてしまっていた。
莫大なプラーナを有し、それを惜しみなく使うマサキは、共鳴《ポゼッション》を起こし易い性質もあり、その枯渇による前後不覚状態に陥ることが多々ある。決して口付けを経験していない訳ではないのだ。むしろ人数だけだったらそれなりの数に上る。けれども、そのどれともマサキは繰り返し口付けを交わしたいとは思わなかった。
プラーナの補給はそれ以上でもそれ以下でもない。他人をそういった意味で好きになることのないマサキは、男性性に問題があるのではないかと思うぐらい肉欲に対して淡白だ。健全な青少年であれば興味が向く筈の牲知識に対しても、全くといっていいほど関心がない。だからマサキは、自身のファングに対する感情がどういった性質のものであるのかわからずにいたのだ。
――こういうことなのかもな。
繰り返し、繰り返し、ファングの抵抗がないのをいいことに、マサキはその口唇を貪り続けた。罅割れた口の端。リップクリームを買ってやらなきゃ。そんなことを考えながら、口唇を舐め、もうちょっと口唇を開けよ。そんなことを考えながら口唇の合間に舌を滑り込ませる。
どうやら、二度目の口付けを抵抗せずに済ませた男は、酷い酔いも手伝ってか。マサキからの三度目の口付けにも抵抗する気はないようで、されるがまま。代り映えのしない表情で、マサキの口付けを受けている。きっと、したいようにさせておこうと考えてでもいるのだろう。ファングからのリアクションのない状態に、それでも飽くことなく、マサキはその見目よりも柔い口唇に口付け続けた。
次第に熱を持つ下半身。マサキは明らかに欲情していた。だからこそ、キスを止められないのだと思いながらも、逸る心。やりたい。けれども相手は兄弟子たるファング。迂闊に手を出せる相手でもなし。ましてや、男相手にどう行為を進めればいいものか。そもそもの性知識に乏しいマサキに、そういった知識までもが備わっている筈もない。いっそ、トイレでひとりで済ませるか。失礼にもそういった考えまでもが脳裏を過ぎるようになった矢先に。
――なっ……。
不意にファングの手が背中に回されたかと思うと、体勢が入れ替えられる。
床の上に組み敷かれた身体。すっかり目を覚ました感のあるファングの端正な顔が、マサキを見下ろしている。まるでこれから戦いに挑むような覚悟に満ちた眼差し。ファング? 先程まで度を超えた酒量にバテていた男とは思えぬファングの表情に、マサキがその真意を尋ねようとした刹那、彼は無言のまま、マサキの耳朶を食んできた。
同時に服の上に置かれる手。節ばった無骨な指先が、マサキの服を脱がせにかかる。ちょっと待て。マサキは声を上げた。酔いが顔に出難い男のすることだ。もしかするとそれはマサキを相手にしての行動ではないのやも知れない。初めてファングに口付けた時のことがマサキの脳裏に蘇る。彼は寝惚けた様子で、誰か別の相手を思い浮かべていたのだろう。情熱的にマサキの口付けに応えてきたものだった。
それと同じことが今のファングには起こっているのではないか? マサキはファングの手首を掴んだ。今まさにマサキのシャツをその首から抜こうとしていた彼は、けれどもそれで動きを止めるような様子もなく。マサキの手を力任せに振りほどくと、その身体からシャツを引き抜いた。
「お前、わかってんのかよ。相手が俺だって」
「わかってるさ、|マ《・》サ《・》キ《・》」
確かにマサキの名前を呼んでみせた男は、そうして深くマサキの口唇を奪うと、露わになった肌に手を這わせてくる。女とやるような訳にはいかねえだろ。そうマサキは高を括るも、ファングの指が乳首に触れてきた瞬間、それまで経験したことのない快感が生じるのを感じずにいられなかった。
ん、ん。塞がれた口唇の内側から洩れ出る声。ツンと走る刺激が、もどかしくも気持ちいい。マサキは首を振った。そうして剥がれた口唇に声を上げた。待て、待てって。
「どうしたんだよ、ファング。お前、そういう人間じゃないだろ」
「どういう人間だと思っていたんだ」
「こんな簡単に誰かと寝るような人間じゃないだろ」
「悪いが、マサキ」ファングはにやりと口の端を吊り上げて笑ってみせた。「俺も人間だ」
笑うと存外子供っぽい表情になるファング。不器用さが際立つ近衛騎士団員の姿はそこにはない。多少荒くはあったものの、手慣れた様子でマサキの服を脱がせた男は、マサキが初めて目にする雄の表情をしていた。
そのままマサキの乳首へと口唇を寄せてゆくファングに、マサキはその頭を掴んで抵抗した。だから、待てって。いつしかマサキの股間を撫で始めている手。このままでは下を脱がされるのも時間の問題だ。
「謹厳実直な近衛騎士団員サマは何処に行ったんだよ!」
「据え膳を目の前に差し出してきたのはお前の方だろう、マサキ。先程までのお前の表情は見物だったぞ。あんなにうっとりとした表情、プラーナの補給を受けているお前ですら見せたことはなかっただろう?」
そうして股間を撫でる手に力を加えてみせながら、ファングはこう続けたのだ。
「可愛い弟弟子の願いは叶えてやらないとな」
「そうは云っても、俺もお前も男だって」
「その男相手に発情したのはお前が先だろうに。安心しろ、マサキ。経験がない訳じゃない。少なくとも、お前がリードするよりは上手くやってやれる」
云うなり乳首を舐り始めたファングが、マサキのジーンズのファスナーを下ろし始める。この、猫被り……! マサキは口惜しさに口唇の端を噛んだ。剣技の腕の競い合いでは負け知らずだった自分が、いざベッドをともにするとなった瞬間にはいいように扱われてしまっている。その事実が口惜しくてどうしようもない。
しかもファングの本意は知れないときたものだ。
それだのに反応してしまう身体。いつしかジーンズの奥、下着の中に差し込まれた無骨な手は、マサキの男性器を直接刺激するようになっていた。あ、あ。痺れるような快感。乳首と男性器を同時に責められたマサキは、自身が初めて経験する『他人から与えられる快感』に、抵抗する気力を奪われてしまいつつあった。
「案外、可愛い声で鳴くな。お前は」
だらしなく開いた口を再び引き絞る気力も奮わないまま、マサキは何度も細く高い声を上げた。あ、あ、ファング。自然とマサキの口を衝いて出る彼の名前。その響きは、ファングの中に眠っていた雄の部分を呼び覚ましたようだ。脱がすぞ。と短く告げるなり、シャツを脱がせたのと同じ勢いで、マサキのジーンズを身体から引き抜きにかかる。
や、馬鹿。やめろ、って。止まる気配のないファングに、マサキは迫り来る現実を思って身体を硬くした。どれだけファングが手慣れているにせよ、マサキ自身にその手の経験はない。しかも、この状況だ。どうあっても抱かれるのはマサキの側。
――そんなの無理に決まってる。
だのにファングはマサキの衣服や下着を剥ぎ取ると、床にその身体を伏せさせて、腰を掲げさせてくるではないか。無理だって。マサキは焦って体制を入れ替えようと藻掻くも、腰を抱え込んだファングの手は、マサキの動きを自由なものとはしてくれない。力を抜け。そろそろと閉ざされた蕾の周りをなぞり始めるファングの指。それが何を意味しているかは明白だった。
「無理、無理だって。お前にそういう経験があっても、俺には」
「何事も初めてがあるのは当たり前だろう、マサキ。ほら、息を吸って吐け。剣技の稽古を忘れたか? 身体に余計な力が入ることが良くない結果を生み出すのは、剣技にせよ、魔装機の操縦にせよ一緒だ」
そして揶揄うように耳元で笑いながら、ベッドの上でもな。そう付け加えたファングに、床の上じゃねえかよ。マサキは場違いにも、いつものように、つい揚げ足を取るように言葉を返してしまう。
「その調子だ。構える必要などない。むしろ構えた方が痛むぞ」
ゆるりと入り込んでくる指に、マサキは首を振った。ファングと口付けを交わしている内に気分が盛り上がってしまったのは事実であったし、やりたいと思ったのも事実であったものの、今日直ぐにこういった関係になるとまでは思ってもいなかった。だのに、躊躇うことなくマサキの蕾の奥に刺激を加えてくるファング。知っていたようで知らなかったファングの新たな一面は、豪胆なマサキをして激しく動揺させている。
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