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今回で二章が終わりになります。マサキは起きました。笑
※あとで加筆修正をするかも知れません。
今回で二章が終わりになります。マサキは起きました。笑
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<wandering destiny>
食事を終えたシュウは少し仮眠を取り、マサキが起きる頃合いを見計らって彼の部屋に向かった。マサキ。と、声をかけながらドアをノックすれば、深く眠ってしまったことに腹を立てていたらしい。起こせよ。と、不機嫌さらさらな表情を晒しながら姿を現す。
「起こしましたよ」
「何だよ。じゃあ俺が起きなかったのか」
疲労の色が拭えないマサキではあったが、気力は充分なようだ。シュウを部屋に招き入れると、早速、資料を見せるよう要求してきた。
「もう少し休まれては如何です」
「落ち着かねえんだよ」
シュウとしてはもう少しマサキに休んで欲しくもあるが、彼としては両親の敵討ちだ。多少の無理は見て見ぬ振りをしてやるべきなのかも知れないと思いながら、|小型携帯端末《ハンドブック》に資料を呼び出しマサキに渡す。目が痛くなるな。細々とした文字が並ぶ画面にマサキがうんざりしたような声を上げた。
「必要なら私からレクチャーしますが」
「いや、いい。お前を信用しない訳じゃねえが、一度は自分で読まねえとな」
マサキが資料を読み込んでいる間、シュウは対面で読書をして時間を潰した。かかった時間は二時間半ほど。気付けば窓の外に広がる空はすっかり夜の闇に覆われてしまっている。
地上の眩さ故か。星のあまりない空を見上げたシュウは、今日はこれ以上の行動を取るのは無理であるだろうと判断し、夕食を取るべく、マサキと連れ立って階下のレストランに向かうことにした。
「てか、お前大丈夫なのかよ。このまま地上に残っちまって」
「大丈夫ではないですね」
「大丈夫じゃないのかよ」
ドアをカードキーでロックし、エレベーターホールに向かう。そろそろ観光に出ていた宿泊客が戻ってきているようだ。賑わいを見せているエレベーターホールから一階に下りる。
「私はどうとでもなりますが、テュッティたちがね。私もあなたも戻らないとなると、謹慎期間がより長くなってしまうでしょう」
「謹慎だって?」
一階のエレベーターホールからロビーに出て、ロビーに入り口が面しているレストランに入る。ビジネスマンより観光客が多いホテルであるのだろう。そこそこの賑わいをみせているレストランには、くだけた服装の客が多い。
――How many?
――We are a party of two.
ウエイターに二人組であること告げ、カードキーを提示する。案内を受けて、奥まった位置にあるテーブルに着いたシュウは、オーダーを決めるまでの時間を使って、シュウが自分をラ・ギアスに連れ帰りにきたこと以上の事情を知らないマサキにより詳しい事情を説明することにした。
マサキが帰還しなかったことをラングラン議会が重く見ていること……それによって、魔装機神が議会預かりになっていること……加えて、テュッティたちが謹慎状態であること……全ての事情を聞き終えたマサキは、苦々しい表情で「面倒臭いことになってやがる」と吐き捨てた。
大きな戦いがひとつ終わるごとに議会が紛糾していることを、マサキ自身理解しているのだ。
救国の英雄であるマサキたち地上人を歓迎する傾向の強いラングランではあるが、総ての国民が歓迎しているかというとそういったことはない。何せ、戦乱続きである。ラ・ギアス各地で噴出する諸問題は、魔装機という新たな力が生まれたことで発生していると見る向きもある。彼らからすれば、それらの問題に首を突っ込みがちなアンティラス隊は、ラングランの安定した運営に寄与していないと思われている。
大国の在り方として、絶対的な正義を物理的な力として揮うのが正しいのか。
彼らの問いはラングラン議会を二つに分けた。魔装機容認派と魔装機否定派だ。
「とはいえ、今あなたが戻ってしまっては、彼らと同様に謹慎処分になる可能性が高い」
「人間ってのは平和が長く続くと、戦争の苦しみを忘れちまう生き物だからな。だからって、戦闘中毒者《バトルジャンキー》になるつもりはねえが……」
「ラ・ギアスに一度戻りますか? 今から急いで日本に戻れば、ゲートの開放に間に合いますよ」
「いいや」シュウの問いかけに、マサキは毅然とした態度を崩さなかった。「この問題が解決するまでは帰らねえ」
「そう云うと思っていましたよ」
「まあ、正直、アハマド辺りがいりゃあって思う気持ちはあるがな……」
中東出身の仲間の名を挙げたマサキに、確かに。と、シュウは頷かずにいられなかった。
戦いの最中にコーランの祈りの文句を諳んじてみせることもある好戦的なアラブ人は、情報収集能力にも長けているようだ。ましてや出身地を舞台にした事件である。|中東極右派《マウシム》の拠点を突き止めるぐらい、彼にとっては容易い作業であるだろう。
「ところで、マサキ」
シュウはマサキの手元に視線を落とした。
料理が決まったのか、それとも話に熱中していたからであるのかは定かではなかったが、マサキが手にしているメニューブックは、コース料理のページが開かれたままになっている。シュウはマサキに料理をどうするか確認した。「ああ、悪ぃ」急ぎ料理を決めたマサキにウエイターを呼ぶ。
――May I take your order?
世界有数のリゾート地であるドバイは、公用語《イングリッシュ》が当たり前に通じる国だ。ウエイターも慣れたもので、外国人相手にわざわざアラビア語で注文を尋ねてきたりはしない。とはいえ、日本語以外の言語がブロークンなマサキからすれば、過ごし難い土地であるのは違いない。
シュウはオードブル・スープ・メイン・デザートからなるコース料理を二品、肉と魚で注文した。
勿論、魚はシュウの分、肉はマサキの分の料理である。
――Thank you for waiting.
程なくして、テーブルに食前酒が届けられる。三日もドバイ警察で足止めを食らってしまった以上、ゆっくりしていられるのも今日までだ。グラスを取り上げたシュウは、先ずは乾杯とマサキに向けてグラスを傾けた。
「何に乾杯するんだよ」
「ドバイ警察からの解放ですよ」
「あんまり嬉しくない理由だな」
日本がテロの標的になったことで感情的になったりもしたマサキだったが、時間が経ったからか。それとも纏まった睡眠が取れたことで疲労が癒されたからか。大分落ち着いたようで、シュウの皮肉めいたジョークに口元を緩ませてみせると、グラスを合わせてくる。
そうでなければ。シュウは食前酒を口の中に流し込んだ。
シュウはマサキの折れることのないしなやかな精神が好きなのだ。
どれだけ落ち込もうとも、どれだけ挫けようとも、逞しく立ち直ってみせるマサキ。彼は壁に突き当たっても、必ずそれを乗り越えてきた。始まりから彼はそうだ。その泥臭いまでの執念で、夢物語に等しい理想を叶えんとし続けている。
そういった彼が悲哀に暮れる図など、どうして想像出来たたものか。彼はラ・ギアス随一の英雄であるというのに!
「少し、酔った」
「今日は沢山寝るといいでしょう。明日から忙しくなるのですから」
「そのことなんだが」酒が回っているからだろう。気だるそうにマサキが言葉を継ぐ。「お前どうやって奴らを解体する気でいる――」
瞬間、ロビーの方から車の排気音とともに、ガラスが突き破られたような音が響いてきた。
「何だ!?」
即座に席を立とうとするマサキに、嫌な予感を覚えたシュウは立ち上がった。テーブルの上の料理が引っ繰り返るのも構わず、マサキに手を伸ばす。
「止めるな、シュウ!」
「そういう問題ではありません!」
因縁を隠すことなく、正面から中東極右派《マウシム》を嗅ぎ回ったマサキ。おまけにドバイ空港でのテロを防いでしまっているときている。これで何も起こらなければ、テロリストの名折れではないか!
「マサキ、伏せますよ!」
にわかに騒々しくなったレストラン内で、シュウは今にもロビーに飛び出していきそうなマサキの身体を引っ掴んだ。続けて、その身体を両腕に抱え込んで床に伏せる。刹那、レストランの入り口に閃光が走った。と、同時に、耳をつんざく爆発音が轟く。
「……なっ……」
マサキの顔から瞬時に色が失われる。
華やかだったホテルのロビーは、阿鼻叫喚の地獄へと姿を変えていた。
崩れた壁の向こう側に、炎上する一台の車。燃え盛る炎の向こう側に黒く煤けた人型が幾つも映っている。何者かが車に爆破物を積んでロビーに突っ込んだのだ。状況を理解したシュウはマサキの身体を強く抱き締めた。そして高速呪文《スピードスペル》を唱えて、自らの身体の周囲に魔法の壁を作り上げた。
悲鳴に、絶叫。
ドンッ、ドンッと、音を立てながら車体が跳ね上がり、その都度噴き上がる火炎がロビーの天井を焼いている。なんと恐ろしい光景だ。シュウは口惜しさに口唇を噛みしめた。少し考えればわかることを予測出来なかった――それこそが報復措置であるというのに。けれども今理性を手放す訳にはいかない。シュウはマサキを抱えて床に伏せ続けた。
「……離せ、シュウッ!」
「いいえ、マサキ! 離しませんよ!」
車のエンジンに引火しようものなら、更なる爆発が起こってしまう。迂闊に動くことの出来ないシュウは、力任せにシュウの腕を解こうとするマサキを全力で押さえ込んだ。生きたまま焼かれている人間がいることが耐え難いのだろう。いやだいやだと腕の中でマサキが藻掻いている。
「無理なのですよ、マサキ。落ち着いて」
それからどれくらいの時間が経過したのかはわからない。大分落ち着きを取り戻したマサキが、異変を察知して顔を上げる。
焼け焦げた臭いが辺りに充満している。そこかしこの壁や床が煙で煤けている中、シュウはマサキに倣って耳を澄ました。そして、ようやくホテルの外側から聞こえてきた警察と消防、救急のサイレンに、喉に溜めていた息を一気に吐き出した。
焼け焦げた臭いが辺りに充満している。そこかしこの壁や床が煙で煤けている中、シュウはマサキに倣って耳を澄ました。そして、ようやくホテルの外側から聞こえてきた警察と消防、救急のサイレンに、喉に溜めていた息を一気に吐き出した。
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