何だかこんな調子でいいのか悩ましい話になりつつありますが、まあいざとなったらパラレルで逃げればいいしな!ということで、私は変わらずに我が道を往こうと思います!!!!!笑
<wandering destiny>
マサキが戻らなかったことで連帯責任となったらしい。セニア曰く、テュッティたち三人の魔装機神操者は現在謹慎状態にあるのだそうだ。
判断を下したのはラングラン議会だった。
マサキは最早、召喚されて数日の地上人ではない。風の魔装機神サイバスターの操者として、ラ・ギアス世界の機密にある程度通じている重要人物である。正式な手続きを踏んだ上で地上世界に戻るのであればまだしも、建前とはいえ任務の最中である。如何にサイバスターを持ち込んでいなかったとはいえ、勝手に行方を眩ますのは契約違反に等しい――と、いうことであるようだ。
魔装機神操者として使命を受けた彼らは、書類上での正式な契約をラングランとしていない。彼らが契約を交わしたのは、機体に宿った守護精霊たちとであったし、そういった意味で、ラングラン議会が軍法的な処分を彼らに与えるのは決して正しい判断とはいえなかったが、魔装機神操者であるが故に、迷い込んだだけの地上人たちと比べれば破格の厚遇を得ている彼らである。彼らに自身が超法規的な存在であるという自覚を促す為にも、それは必要な処分であったのやも知れなかった。
とはいえ、実態的には対外的なポーズの意味合いが強いようだ。それぞれの自宅にて謹慎生活を送ることとなった彼らには、特に監視役の兵士が付けられるでもなかったようだし、食料や日用品の買い出しといった細々とした用事に限られてはいたが、申請をしさえすれば外出も可能なっていると聞いた。しかも、朝と夜にある定期通信にきちんと応じれば――という条件付きではあったが、外出の範囲自体に制限はないのだそうだ。セニアは詳しくは語らなかったが、恐らく、一部の根強い反魔装機派の突き上げがあったのだろう。現在に於いても一定数の議席を確保する彼らに、ラングラン議会は云うに及ばず、情報局の女傑セニアも手を焼かされ続けているようだ。
彼らがそういった状態にある以上、マサキの捜索を頼める人間には限りがあった。捜索を短期で済ませる為には、有力な情報を入手出来るだけの太いコネクションを地上に持っている人間の方が望ましい。戦闘要員としては有能な揃いのアンティラス隊ではあったが、情報収集部隊要員として使える人材はそういない。
――アハマドに頼もうかとも思ったのだけどね。地上でのアドバンテージという面で考えたら、あなたに勝るコネクションを持ってる人間って、他にはリューネぐらいしかいないでしょ。そりゃ、頼めば喜んで行ってくれるとは思うけど、いかんせん能力値がね……戦闘特化の人間に情報収集を頼んでも、世の中上手く派回らないでしょうし。
結果、シュウに白羽の矢が立ったという訳だ。
――云っておくけど、これはラングランからの正式な依頼よ。だから、あなたが少しでも不安を感じるのであれば断ってくれて構わない。あたしと議会の思惑が異なることはあなたにもわかるでしょう。尤も、個人的にあなたがマサキを探すというのであれば、それは止めないけど。でも、危険な立場に立たされることは覚悟しておいて。
現状、マサキが行方知れずであるという情報を知っているのは、ラングラン上層部とアンティラス隊のメンバーに限られているのだそうだ。とはいえ、国家的な英雄であるマサキは表舞台に顔を出すことも多い。彼を信奉するラングラン国民が不審を抱かない為にも、長期に渡る不在は避けたいというのが、ラングラン議会とセニアの共通認識だ。
だからこそ、彼らはシュウに正式に依頼をすることにしたのだ。
だが、シュウは現状を決して楽観視してはいなかった。
王宮時代の遺恨がある。地上と地底世界の|混血《ミックス》であるシュウに、危険な役回りを押し付けてきた元老議会。確かに、共和制となったラングラン以降、過去の遺物となった元老議会ではあったが、彼らが今でも議会に影響力を残しているのをシュウはセニアを通じて知っていたし、そうである以上、ラングラン議会がシュウを都合の良い駒として使わないといった保証はどこにもなかった。
マサキの捜索が上手くいかなければ、シュウ=シラカワという存在を彼らは悪質に利用するだろう。そう、依頼を受けようが受けまいが関係なく。その悪意からシュウが我が身を守る為には、地上に出ない選択をするしかない。
セニアがシュウに忠告めいた台詞を吐いたのは、だからだ。
悲劇の大公子が王室に返り咲くことなどあってはならない。彼らがそう考えているのは明白であった。そう、戦いを重ねたことで高まりつつあるシュウの名声を、旧元老議会は恐れている――のだ。
――そういうことなら、その依頼、受けましょう。
そうシュウが告げた瞬間の、セニアの驚いた表情! 鳩が豆鉄砲を食らったというのは、まさしくあの表情を指すのであろう。紫紺の瞳を大きく見開いて、口をあんぐりと開けたセニアは、シュウが依頼を受けて地上に赴くという選択をするとは微塵も思っていなかったようだ。
――但し、私は踊らされるだけの人形になるつもりはありませんよ。彼らがそういった目算でいるのであれば、その発動条件を厳しくすればいいだけ。私は堂々と神殿のゲートを通って地上に上がることにしましょう。何でしたら期限を決めてくださっても構いませんよ。この身一つで地上に上がったとなれば、彼らもそうは私を利用出来ないでしょう。
シュウが恬然と云い放った言葉に覚悟を感じ取ったのだろう。そうでなくちゃ面白くないわね。そう云って、典雅に微笑んだセニアは、手早くゲート解放の手続きを済ませると、神殿の準備が整うまで自由に時間を過ごすようにとシュウに告げた。
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