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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

【R18】向こうみずな瞳
謀略の夜のその後。モブ視点です。



向こうみずな瞳

 自室《キャビン》に忘れ物を取りに来た男は、艦の下層にある生活フロアに下りてきたばかりだった。
 その道のりの最中、偶々通りかかった別の部屋《キャビン》のドアが薄く開いているのに気付いた男は足を止めた。あっ、あっ。と、細く高い声が響いてくる。いつなんどき戦闘か始まるかもわからない生活で盛んなことだ。そう思いながらも、好奇心の導きのままに室内を窺う。
 直後、自らの目に飛び込んできた光景に男は息を呑む。
 ――アッ、もう、もう達《い》きたい……って、いうか、お、前……い、い加減、達《い》けよ……ッ……
 煌々と明かりが灯る室内《キャビン》内のベッドの上に揺れる影がふたつ。膝に乗せられた身体を二つに折られた青年の細腰に、背後から隆々とした男性器《ペニス》が突き立てられている。肛門性交《アナルセックス》に慣れがあるのだろう。菊座《アナル》を犯されている青年の口唇からはせわしなく切なげな声が洩れ出ていた。
 とんでもない現場を目撃してしまった。
 その青年に男は見覚えがあった。いや、見覚えどころか良く見知っていた。艦の乗組員《クルー》である男が支えなければならない操縦者《パイロット》。前線に率先して立つ彼の愛機を男は幾度も整備をしてきた。
 マサキ=アンドー。
 ロンドベルのエースパイロットにして、魔装機神サイバスターの操者でもある彼は、まだ年若いながらも達観した物の見方で仲間から一目置かれる存在だ。ユーモラス一面を見せることもあるが、根は真面目で責任感が強い。そうした性格もあってだろう。艦の女性陣の人気は高く、良く揶揄われているのを見かけたものだった。ただ、マサキ自身は恋愛事に興味をみせることはなかったが……。
 その彼が痴態を晒している。
 男は喉に溜まった唾を飲み込んだ。精悍な眼差しが印象的なベビーフェイスが、性行為《セックス》の快感に溶けている。薄く開いた厚ぼったい口唇がセクシャルだ。忙しなく上下する胸板が押し出す吐息。いつもと比べると数段高い喘ぎ声が、誘いかけるような甘ったるさを含んでいるのは、青年が同性との性行為《セックス》に陶酔を覚えているからに違いない。
 ――ああっ……そこ、そこ、いい……っ……
 引き締まった体躯は、平均的な男性よりひと回りは細い。特に腰だ。男が片腕で抱え込めそうなサイズは、醜い欲望の餌食にするには華奢過ぎる。だのに、この艶《つや》やかさ。小ぶりな双丘を開いて男性器《ペニス》を受け入れているマサキの姿は、思わず目を奪われるほどの猥雑さに満ちている。
 マサキを抱え込んでいる男性にも、男は覚えがあった。
 切れ長の双眸に、筋の通った鼻梁。形の良い薄い口唇がマサキの耳朶を食んでいる。男性の名はシュウ=シラカワ。優れた操縦者にして傑出した科学者でもあるシュウは、戦艦の整備員たちを知識でバックアップしてくれる得難い人材だ。
 それがあのマサキを抱いている。
 艦の女性陣に揶揄われては顔を赤くすることも珍しくないマサキは、思春期を戦いに費やしたからか。それともそれが本来の姿であるのか。特に深い付き合いのない男には理解《わか》らなかったが、異性に対しては初心で奥手でもあるようだ。DC総帥の娘リューネ=ゾルタークに露骨なまでのアプローチを受けようともなびく気配がない。そのくせ、男同士のあからさまなY談にはしれっと参加していたりするのだから、興味がないという訳でもなさそうだ。
 だのに。
 ――もっと。シュウ、もっと、奥……
 よがりねだるマサキに、背後のシュウがうっすら嗤う。なら、もっと脚を開かないと。マサキの耳元でじっとりと言葉を吐いた彼が、膝を抱え込んでいる手を開く。日頃の潔癖な態度を大きく裏切る淫靡さ。そうでなくともあられなかった菊座《アナル》が、よりあられもない姿を晒した。かと思うと、熟れた果実を思わせる窪みに、深々とシュウの男性器《ペニス》が嵌まり込んでいった――……。
 ――あっ、アッ。シュウ、イク。も、イク。
 奥を貫かれるのが好きなのだろうか。小刻みに抽送を繰り返す男性器《ペニス》に、マサキの口から感極まった声が洩れた。切なげに歪んだ眉の下で潤んだ瞳が揺れている。その視線の先には恐らく何も映ってはいないのだろう。陶然とした表情を、ドアに向けて憚ることなく晒しているマサキに、男はただただ見入った。
「いいですよ、マサキ。好きに達しなさい。私が達するまで、幾らでも」
 かつては敵同士であった筈のふたりに何があったのか、男には理解《わか》らない。理解《わか》らないが、ふたりの様子から察するに昨日今日始まった仲ではなさそうだ。
 なら、それはいつだ?
 そもそも、本来の活躍の場が地底世界にあるふたりでもある。もしかするとその世界で、ふたりの関係を変えるエポックメイキングな出来事があったのかも知れない。そう思うも、一本気な青年と利己的な男性の組み合わせである。一足飛びに肉体関係を結ぶには、お互いの自尊心《プライド》が邪魔をするだろうに。
 ――イク。本当にイっちまう。シュウ、お前も。早く。イク。イク……ッ!
 絶頂《オーガズム》が近くなったことを訴えていたマサキが、次の瞬間、身体を縮めた。あ、く。ああっ。歓喜に満ちた鳴き声が彼の喉から迸る。直後、シュウの腰が高々と上がった。かと思うと、マサキの男性器から飛沫が飛び散った。
 ――あっ、あ、ああ……
 ぬとりと抜き取られた男性器《ペニス》の奥で、収縮しながら穴を開いているマサキの菊座《アナル》。その奥からだらりと精液が流れ出てくる。とかく濫《いかが》りがわしい。はあ、ああ。快感の余韻に打ち震えるマサキの背後で、その瞬間、にたり――とシュウの口が裂けた。
 と、視線が男に向く。
 そこでようやく男は正気に返った。弾かれたようにドアから離れると、一目散に自室へと。部屋に駆け込むと、身を投げ出すようにしてベッドに横になる。
 あんな顔をするのだ、あの青年は。
 胸の高鳴りは焦りではなく、明確な情欲だった。頬を上気させて喘ぎ乱れるマサキの姿に、深々とシュウの男性器を咥え込んでいた菊座《アナル》。忘れ難い記憶に、男は自らの股間に手を伸ばした。けれどもいざ自慰に及ぼうとしてみると、シュウの嗤い顔が浮かんできて上手く及べない。
 ――そういう、ことか。
 男は覚った。
 細く開いていたドアは、常日頃から冷静沈着に振舞う科学者の作為であったのだ……。男は天井を見上げながら、口惜しさ滲む溜息を吐いた。




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