やりたいことを全部やりました。笑
<安藤正樹の飼育日記>
(三)
しんしんと静けさが降り積もる夜だった。
しんしんと静けさが降り積もる夜だった。
二日に渡ってシュウの手で射精に導かれたマサキは、三日目ともなるとシュウの誘いを待ちきれなくなったようだ。この先に何が待ち受けているのかわからない年齢でもないだろうに、夜になるなり寝室に突撃してくると、根際のシュウに向かって「今日の検査は」と自ら切り出してきた。
「特には何も」
シュウは敢えて素っ気なく振舞った。
検査の名目でするには行き過ぎた行為を、マサキがどう考えているのかは不明だが、嫌がってはいないらしいということだけは明瞭りとしていた。ならば、彼からきちんと求めさせたいではないか。シュウの思惑はそこにあった。
何せ、寝室にまでわざわざ足を運んでいるくらいである。その気があるのは間違いない。問題は、どこまでの行為をマサキが求めているかであるが、尻尾を菊座に押し込まれても抵抗らしい抵抗をしなかったぐらいだ。シュウが押せば性行為に持ち込むのは容易いに違いない。
けれどもそれでは面白くない。
マサキは他人に対する執着心が薄いのだ。
腐れ縁と呼ばれはするものの、互いの家を訪ねる仲でもない。戦場で肩を並べることはあれど、仲間として行動をともにすることもない。今回のマサキはやむにやまれぬ事情でシュウの許を訪ねているが、これが自分の力で解決出来る問題であればこうはなっていなかっただろう。優れた戦闘能力に広い交際範囲を誇るマサキは、大抵のことはシュウを頼らずとも解決出来てしまうのだ。だからこそ、元に戻ったのちのマサキが、シュウの家を訪ねることがなくなってしまうのは想像がつく。
だからこそ、シュウはマサキから自分を求めさせたかった。身体に忘れ得ぬ楔を打ち付けたのが、シュウであると思い知って欲しい……シュウの企みを覚れないマサキは、そういった扱いを受けるとは思っていなかったのだろう。冷ややかなシュウの態度に怯んだ様子を見せたが、欲が勝ったようだ。「なら、お返しをさせろよ」とベッドに乗り上がってきた。
「お返し?」
「俺ばかり気持ちよくなってる気がする」
「事実ですね」
「だから、その、何かないか。お前がして欲しいこと……」
伏し目にかかる睫毛が揺れている。口籠ったマサキは、シュウの答えをある程度予測していたに違いなかった。
普段の彼からは想像もつかないしおらしさ。居心地悪そうにシュウの答えを待っているマサキに、なら、望み通りにしてやろうではないか。シュウの心に悪魔的な考えが浮かぶ。
「なら、マサキ」
シュウはマサキの頬に手を伸ばした。そして指先で口唇に触れながら、口でして――と、猫耳の方に囁きかけた。
ぴくんとマサキの肩が震える。
幾度も猫耳に愛撫を繰り返されたことで、些細な刺激でも欲情するようになっているのだろう。わかった。と頷いたマサキが、シュウの脚を跨いでくる。「いいのですか、マサキ。本当に」念を押せばこくりと頷く。
この一線を超えてしまえば、先に待つ行為はひとつだけだ。それを理解しているのか、いないのか。シュウには判別が付かなかったが、ここまで自分を求めるところまでマサキがきているのだ。今更止まろうとも思えない。なら――と、シュウはマサキの手を取った。
「脚をこちらに向けなさい」
マサキに顔を跨がせたシュウは、先に自らの男性器を下着の中から引き出した。そして股間に顔を向けているマサキに口に含むよう促す――と、ごくりとマサキの喉が鳴った。
決心は付けてきたものの、いざとなると躊躇いが出るようだ。直ぐには口に含めない様子のマサキに、「無理にとは云いませんよ」シュウは話しかけながら、彼の下半身から下着を取り去った。そして双丘を開く。露わとなった菊座が赤く染まっている。まるで熟れた果実のようだ。シュウはゆっくりと口唇を寄せた。口付けに等しい柔らかさでひだを吸う。
「ひゃっ……」
声を上げたマサキだったが、それで踏ん切りがついたようだ。直後、シュウの男性器を口に含んでみせたかと思うと、知識だけはあったらしく、顔を上下に動かし始める。
陰茎に絡みつく舌が気持ちいい。
シュウは立て続けにマサキのアナルを吸った。その都度腰を震わせるマサキに愛おしさが増す。今夜は決して寝かせるものか。密やかな決意を胸に、舌を這わせる。時に音を立てながら舐め回してやると、我慢が効かなくなったようだ。シュウの男性器から口を離したマサキが、にゃあ、にゃあと鳴き声を上げ始めた。
「駄目ですよ、マサキ。お返しをしてくれるのでしょう」
「にゃっ!?」
シュウは目の前で揺れている尻尾を掴んだ。そして、その先端を口に含んだ。
菊座に収められるだろう範囲に舌を這わせ、全体に丁寧に唾液を絡ませてゆく。にゃああ……ああ……切なげなマサキの鳴き声が寝室内に響き渡る。口から尻尾を吐き出したシュウは、その先端を菊座の中へと押し入れた。
「昨日、教えて差し上げたでしょう。きちんとやってごらんなさい、マサキ」
「にゃ、ふにゃあ……」
人らしい言葉が消失したマサキの声に、シュウはクックと声を殺して嗤った。出来れば彼自身の喘ぎ声を聞きたくもあったが、これだけ素直な反応を見せてくれているのだ。今はこれで満足することにしよう。ひとつの山場を越えたシュウは新たな目的を定めた。猫化の解けたマサキと同様の関係を構築してみせる……目の前で尻尾を抽送するマサキの姿に例えようもない愉悦を感じながら暫く。シュウは再び、マサキに自分の男性器を口に含むよう促した。
「にゃ……ん、んん……」
嫌ではないようだ。促されて直ぐに口に含んでみせたマサキに、シュウもまたマサキの男性器を口に含む。ん、んんんッ……くぐもった喘ぎ声が定期的に上がる。快感に意識を奪われてしまうのだろう。顔を動かせずにいるマサキに、シュウは腰を振って自身の男性器に刺激を送り込むことにした。
「ん、んんっ、ん……」
亀頭の先を突き、じっとりと陰茎全体に舌を這わせてゆく。続けてシュウはしっかりと実が詰まった感のある陰嚢を吸った。はぁ……っ。感極まった溜息がマサキの口から洩れる。それを腰を動かすことで封じながら、シュウはマサキに愛撫を続けた。
年齢的に発達が済んでいる筈のマサキだったが、その男性器は未熟であるようだ。シュウの舌技に面白いように反応する。それが尻尾の動きにも表れるのがまた面白い。自ら菊座を尻尾で嬲りながら、男性器でシュウの舌技を受ける。そのシチュエーションはあっという間にマサキを絶頂へと導いていったようだ。不意にびくんと腰が跳ねたかと思うと、シュウの口内に精液を放ってくる。
次の瞬間、マサキの顔がシュウの股間から剥がれた。
余韻に限りがないといった様子で腰を跳ねさせているマサキを、シュウは自らの身体の上から下ろした。ベッドに横たえてやると、シーツの中でぜいぜいと息を荒くしている。とはいえ、これで終わりにする気など毛頭ない。シュウはマサキの身体を返してベッドに伏せさせた。そうしてまだ先端を残している尻尾を菊座から引き抜くと、臀部に手を添えて双丘を割った。
収斂する菊座が、微かに口を開いている。
シュウは自らの男性器を、マサキの菊座に当てがった。びくんとマサキの身体が大きく震える。同時に、彼の視線がシュウに向けられる。待てと云いたいのだろう。快感で濡れそぼった瞳が何かを訴えたげにシュウを見詰めている。
「待ちませんよ、マサキ。私も男ですからね」
云うなり、マサキの後孔に男性器を挿入する。あ、あ、ああッ……背なをしならせたマサキが、細く、長く、挿入の深度に合わせて色を変える声を放った。四方から壁が押し迫ってくるような圧迫感。まだ使い込まれていないマサキの菊座が容赦なくシュウの男性器を締めあげてくる。
その苦しささえも心地よい。
シュウはゆっくりと腰を動かし始めた。あっ、あっ。使い込まれていなくとも感じるようだ。切なげな喘ぎ声を放つマサキに、我慢も限界だ。シュウはマサキの腰を抱え込んで身体を起こさせると、膝に乗せた。背後から膝裏に腕を挿し入れる。そうして脚を大きく開かせると、容赦なく自身の男性器を抽送させていった。
(結)
これまでとは比べ物にならないほどの快感であったようだ。
これまでとは比べ物にならないほどの快感であったようだ。
絶頂を迎えると同時に気を失ったマサキをベッドに寝かせ、ブランケットを掛けてやったシュウはカーテンを開いた。中天に座す月が照らし出す庭には手入れのされていない木々が立っている。その隙間に佇む人影。シュウに比類する魔力の主はシュウの姿を認めると、窓の前へと進み出てきた。
「余程の高名な魔術師とお見受けします。よろしければ名をお聞かせ願えませんか」
「あなたであれば察しは付いているのではありませんか、シュウ……いえ、クリストフ=マクソード」
ウエーブを描く髪を掻き上げて口にした女性に、シュウは心当たりがあった。
緋色のフード付きのマントは最高位の魔術師に与えられる魔法具だ。そう、世界でも片手に数えられる程度にしか存在していない魔術の女王。肩にかかるソバージュの下から覗く意思の強そうな瞳は、一度目にしたら忘れられないほどの印象を人々に残すことだろう。
「北の魔女ザリーナ……ですね」
「御名答」
「その魔女たるあなたが何故マサキに術を?」
「面白そうだったからよ、それだけ」そう答えた彼女が寝室を覗き込む。「思わぬ副産物もあったようけれども」
「嫌気が差しましたか」
「まさか!」
あははと明るい嗤い声を上げた彼女は、シュウとマサキの行為に否定的な感情を有してはいないようだ。「変化の術も役に立つことがあるものだわ」そう口にすると、指を鳴らす。途端にシュウの背後目がけて流れ込む魔力。どうやら術を解除しに来たようだ。シュウが寝室を振り返ると、マサキの頭から猫耳が消失している。
「これは残念」
「あなたに任せていたら一生術を解かないでしょう。だから、これは私から救国の英雄に対する贈り物」
ザリーナが言葉を吐き終えると同時に、突風が吹き荒ぶ。舞い上がる土埃にシュウは目を細めた。どういった思惑かは不明だが、マサキを猫化させた張本人は気紛れにも彼の変化を解いただけで用事を終わりにしてしまったようだ。姿の消えた魔術師に空を見上げる――と、月に映る影。箒に乗った魔術師が、北の大地に向かって去ってゆくところだった。
――わかったかしら? 欲しいものは自分の力ので手に入れるのね。
天より降ってきた声にシュウは苦笑を禁じ得なかった。
――わかったかしら? 欲しいものは自分の力ので手に入れるのね。
天より降ってきた声にシュウは苦笑を禁じ得なかった。
捻くれ者と名高い北の魔女は、シュウとマサキの仲が猫化によって縮まったのが気に入らなかったに違いない――寝室に戻ったシュウはカーテンを閉じると部屋の明かりを消した。明日の朝のマサキがどういった反応を見せるのかが楽しみでもあり、不安でもある。
――それでも、前に進むしかないのだ。
名残惜しさを感じながらベッドの中、マサキの身体を抱き寄せたシュウは、その温もりを味わいながらゆっくりと目を閉じていった。
――それでも、前に進むしかないのだ。
名残惜しさを感じながらベッドの中、マサキの身体を抱き寄せたシュウは、その温もりを味わいながらゆっくりと目を閉じていった。
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