私、気付いてしまったんですけど、SRW30周年で魔装を書いて、魔装30周年でSRWを書いていますね。何やっとんじゃいwwwwwww
望む結末に着地するか不安になってきました。とにかく今回は頑張りました。
私の苦悩のあとを見よ!www
望む結末に着地するか不安になってきました。とにかく今回は頑張りました。
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(五)
安穏と眠れる夜ではなかった。
安穏と眠れる夜ではなかった。
それは決してアムロとの会話が原因ではなかった。僅か数時間の睡眠で警報《アラート》に叩き起こされたマサキは、整備途中のサイバスターを駆って戦場に出た。
当然ながら本調子とはいかない戦いだったが、それは他の操縦者《パイロット》たちも同様であった。敵機の撃破には成功したものの、幾つかの機体は大破。大半の機体は修理と整備に追われる有様だ。流石にこの状況で進軍もない。ブライトがコロニーに補給を求めたのは当然の判断だったと云える。
「くっそ眠ぃ……」
マサキは艦を降りてコロニーに降り立った。
長い宙航生活で重力の少なさに慣れた身体にとって、コロニー内部の重力の重さは堪えるものだったが、久しぶりに地に足を付けて立てるとあっては、艦内に留まる理由もない。リフレッシュだ。とはしゃぐ甲児に続くようにして街に繰り出したマサキは、木々が吐き出す澄み渡る空気を胸いっぱい吸いながら、賑やかな往来を闊歩した。
新緑の匂いが鼻腔を擽る。気持ちがいい。マサキはひとつ大きく伸びをした。
考えることはなかった。
シュウの件については期限を決めていたし、クワトロの件にしては検討以前の問題だ。クワトロの野望が何かはマサキにはわからなかったし、アムロもそれについては語らなかったが、クワトロがマサキとサイバスターの力を欲しているとアムロは読んでいるようだ。さりとて、クワトロに助力を求められたところで、彼はこの世界の人間だ。対して、マサキは地上世界で生まれ育ったとはいえ、現在の故郷は地底世界ラ・ギアスにある。生活圏が異なる以上、クワトロの求めに応じられる筈もなし。マサキは自身が守るべき世界が何処であるかを正しく理解していた。
そもそもマサキがロンド=ベルに身を置いていることが、イレギュラーな事態なのだ。
不審な動きを繰り返しているシュウを追って再び地上に出たマサキは、そこで彼に今回地上に出た理由を教えられた。グランゾンのブラックボックスに秘められた真実。悍ましい作戦を実行した地球外生命体《ゼゼーナン》をシュウは決して許すつもりがなさそうだった。いつもと変わりない彼の口調の中に静かな怒りを読み取ったマサキは、だからこそ自身もまたロンド=ベルに与して戦うことを決めた。
自らの故郷を、関係ない人間に踏み荒らされて気分のいい人間はいない。
これが地上人同士の争いであれば、幾度となく繰り返されてきた歴史だ。マサキはある仕方のないことと割り切って、ロンド=ベルの仲間たちにあとを託すことが出来ただろう。だが、今、地上で起きている戦争は違う。この惑星《ほし》の覇者から地上人を引き摺り下ろし、成り変わろうとする侵略戦争だ。
ラ・ギアスに召喚されてからまだ数年のマサキにとって、地底世界ラ・ギアスの実態は霧のように掴み難いものだ。地上世界と異なる常識に、倫理、そして科学体系。その中で、最も掴めないのが地上と地底世界の関係だ。ラ・ギアス側からは認識されている地上世界は、けれどもラ・ギアスを認識してはいない。マサキだってそうだ。学校の授業で、地球の内側にはマグマやプレート、そして気の遠くなる歳月をかけて醸成された資源が眠っているとしか習っていない。そこにどうして地底世界が存在する余地があっただろう? ラ・ギアスの存在を支える地球空洞説などは天動説とともに滅んでしまっているというのに。
不可思議なのはその動きだ。
ラ・ギアスは地上世界の動向を意識しているようであるが、自分たちの存在を地上世界に知られたくはないらしい。確かに資源の豊富なラ・ギアスの存在が地上世界に認識されれば、今回の戦いの構図と同じことが起きないとも云い難い。地球には資源獲得や活動地域の拡大を目論む為政者も多い。地上世界から侵略戦争が仕掛けられない保障はなかった。
だから、なのだ。
マサキは地上世界への過度な干渉を控えるようにと通達してきたセニアの顔を思い浮かべた。今回のマサキの『暴走』が知れれば、彼女が顔を苦くするのは間違いない。如何に先のラングランでの内乱での恩があるにせよ、無理ばかり通していれば通る道理も通らなくなる。議会が煩いのよ。とは、セニアの台詞だ。
そうである以上、線引きはすべきだ。
マサキはだから、今回の戦いのように、地上世界が未知なる脅威に晒された場合を除いて、地上世界に不干渉を貫くことに決めた。そこにクワトロの思惑が入り込む余地などない。彼の野望は彼自身の能力で為すべきなのだ。マサキはそういった意味で、自分がドライな人種になりつつあることを感じ取っていた。
のんびりと散策を続ける。
人混みに紛れていると、戦いに明け暮れる日々がリアリティを薄くしてゆく。足元で喧しく騒ぐ二匹の使い魔がいなければ、ここが戦場宙域であることを忘れてしまいそうだ。
「あんまり騒ぐなよ、お前ら。周りの人間が見てるだろ」
コロニーに対する経験の少ない彼らにとっては物珍しさが勝るのだろう。シロとクロが目に付くものに片っ端から声を上げるのを制しながら、マサキはゆっくりと時間を過ごせそうな場所を探した。喫茶店もあればレストランもある。脚を休めるついでに食事にしてもいい。そんなことを考えながら、店を物色する。
「おや、マサキ。君も食事かね」
正面にクワトロが立ちはだかったのは、その矢先だった。
どうやらマサキ同様にひとりで街を散策していたようだ。トレードマークの赤い衣装にサングラス。どこか柔らかい表情に感じるのは、彼もまた戦争に疲れを感じていたからなのだろう。リラックスした表情でマサキに近付いてきたクワトロは、「よければ一緒にお茶でもどうかね。そこにいい店がある」と、テラス席のある小洒落た喫茶店を親指で指し示しながら誘いかけてきた。
「あんたの奢りなら、いいぜ」マサキは笑って答えた。
「なら、行こうか」
マサキに奢るのはやぶさかではないらしい。薄く笑みを浮かべたクワトロが、先に立って喫茶店に入ってゆく。
マサキはシロとクロに外で待つように告げてから、クワトロを追って喫茶店に入った。
秋の空を思わせる水色の壁に、ホワイトクリーム色の床。ピンク色のテーブルとソファが並ぶポップな作りの店内に面食らうも、クワトロはお構いなしなようだ。真っ直ぐに奥の席を目指すと、「ここでいいか」とソファに腰を落としながら尋ねてくる。
「ここでいいも何も、あんたもう座ってるじゃねえかよ」
「違いない」
マサキはクワトロの対面に座ってメニューブックを広げた。ハンバーガーにフライドポテト、クラブハウスサンドイッチ……ボリュームのあるアメリカンなメニューに、「何か食うかな」腹が空いているのを自覚したマサキが云えば、「好きにすればいい」との返事。
クワトロの言葉に甘えてハンバーガーとクラブハウスサンドイッチにコーラを注文する。
クワトロがコーヒーで済ませる中、食事まで済ませてしまうのは気が引けたが、どうせただの世間話では終わりはしまい。だったら食ってやる。マサキはクワトロのサングラスの奥にある鷹のように鋭い瞳を見据えた。打算的な一面を有するクワトロ。彼が明確な目的もなしに他人を誘うとは思えない。
何より、アムロのあの忠告だ。
誘いを蹴るのは容易かったが、逃げ回ったところで話は進展しない。だったら早い内の決着を目指した方がいいだろう。自身の方向性を決めきっているマサキは、だからこそ、敢えてクワトロの誘いに乗った。彼の野望がどういったものであれ、自分とサイバスターは力を貸さない。そのたった一言を伝える為に。
「あんたは、この戦争が終わったら何をするんだ」
先に届いたコーラーを飲みながら、マサキはクワトロに尋ねた。
水を向けてやれば、本題に入り易いだろう。そう考えてのことだったが、クワトロはどう受け止めたのか。コーヒーを飲む口元には苦笑が浮かんでいる。
「そう聞いてくるということは、君の中ではこの戦争はもう終わっているのだね」
「倒すべき敵は決まってるしな」
「その後ろに、更なる敵がいないとも限らない」
「そいつらも全部ぶっ潰せばいいだけだろ。今回の戦争の構図は単純だ。異星からの侵略者VS地球人ってな。そこに迷ったり悩んだりする理由なんてないさ」
喉の渇きに任せてコーラを飲み切ったマサキは、フライドポテトを届けにきたウエイトレスにコーラをもう一杯注文した。
「若さだな」
戦争の構図を単純化する思考の短絡さに対してか、それとも、コーラを立て続けに飲める胃の強さに対してか。どちらに対してなのかは不明だが、クワトロには感じ入るところがあったようだ。しみじみと呟いた彼に、「何だよ。あんただって、そんな歳食ってる訳じゃねえだろ」マサキは眉を顰めた。
「独り身が堪える年齢ではあるがね」
「そういうもんかね。あんたはそういうの、構わなさそうに見えるが」
「人並みの生活に憧れない人間もそうはいまい。君にもいずれわかる時がくる」
マサキは唸った。唸って宙を睨んだ。
十年後、いや、二十年後の自分は何をしているのだろう。考えなかったことはなかったが、明確なビジョンが浮かんでこない。自分が誰かとの間に子を為し、家庭を築く。当たり前の人生が、何だか酷く遠いものに思えてならなかった。けれどもわかっていることがひとつだけある。
そこにはサイバスターがあり、シロとクロがいる。
マサキの人生が続く限り、それは変わらない。だからマサキはこう口にするより他なかった。
「そういうもんかねえ。俺は取り敢えず、今を生きるのに精一杯だぜ。やらなきゃならないことがあり過ぎて、人並みの人生がどうとか考える暇もねえや……」
「リューネ=ゾルダークはどうなのかね。君に随分と入れあげているようだが」
「入れあげてる? 誰が? リューネが? 俺に?」
思いがけず飛び出てきた仲間の名前にマサキが驚けば、クワトロはマサキの反応が意外だったようだ。眉を顰めると、理解が及ばないといった表情を浮かべている。
「あまり女性を舐めない方がいい。痛い目に合うのは君なのだから」
「そうは云われても、あいつに限ってはそんなことはないと思うんだがな」
マサキにとってのリューネは『おかしな女』だった。自身の手足となる機体を持つ彼女を制約するものは何もない。だからだろう。彼女は、何処に向かおうと、何処で生きようと自由――そう、考えて動き回っているように感じられた。
父親の意志を放り投げ、ラ・ギアスで生きると宣言したのがその証。だから、マサキにはわからないのだ。精神的にも経済的にも自立を果たしているリューネが、誰かに依存することなどあるのだろうか? マサキにしてもそうだ。地底世界でのびのびと生きているマサキにとって、精神的な支柱は仲間である。それ以上の存在を今は求めようとは思わない。リューネの逞しさにシンパシーを感じることはあったが、それだけだ。彼女にしても、そういった意味でマサキに共感しているだけなのだろう。そう思っている。
「これは重症だ……」
何やら渋面を作っているクワトロに、マサキは首を傾げつつ再度尋ねた。
「っていうか、あんた。俺の質問に全く答えねえな。戦争が終わったら何するって聞いただろ」
「私も君と同じさ。まだ道半ばなのでね。やるべきことをやるだけさ」
「嫁さん探しでもしろよ」マサキは塩気の強いフライドポテトを口の中に押し込んだ。「人並みの生活に憧れてるんならよ」
「それが一番難しい気がするのだがね……」
何とも気弱なことを云う。
「何だかなあ……」
気が抜けたマサキは、テーブルの脇に立ったウエイトレスからハンバーガーが乗った皿を受け取った。
気合を入れて話に臨んでいるのに、今のところ、それを裏切る話題しか出てきていない。恋愛話がしたくてマサキを誘った訳ではないだろうに、俗人的な話題ばかり。まだるっこしい展開が好きではないマサキは、ハンバーガーに齧りつきながら今後の展開を考えた。このまま話を終わらせてしまうのだけは避けたいが、下手に切り込めば、勘のいいクワトロは情報の出所がアムロであると気付くだろう。
マサキに出来るのは、黙々とハンバーガーを齧ることだけだ。
「私はシュウとは違うからね。彼のように人並みの感情に絶望するほど、人生に倦んでもいなければ飽きてもいない」
「あいつが――何だって?」
不意に目が開いた。
とろけるチーズと肉感の強いパテに舌を唸らせていたマサキの耳に突然飛び込んできた言葉は、クワトロとの会話に退屈していたマサキの目を覚ますのに充分な効果を発揮した。愛でない感情――恐らくは憎しみで自分を抱いた男。凡そ人間らしい感情とは無縁なシュウが、クワトロと恋愛に関わる会話をしているところは想像し難い。
「はは、その顔だ」
クワトロがマサキの反応に笑う。
云われてコーラーの入ったグラスに自らの顔を映し出してみれば、自分でも剣呑だと感じる表情が浮かんでいる。即座に思い返された屈辱的な夜の記憶……怒りを秘めながら平常心を保つのは難しい。自らの修練の足りなさに、マサキは頭を掻きながらクワトロに向き直った。
「喧嘩の理由は何だね」
「あんた、結構ゴシップ好きなんだな。そんなこと聞かれるとは思ってもなかったぜ」
「君が他人に手を上げるのは珍しいからな。気にならないと云えば嘘になる」
「そうか? 俺だって黙っていられない時はあるさ。守らなきゃならないものもあるしな……」
誰かに云ってしまえれば、楽なのだ。答えを彼らの傲慢なアドバイスに定めることが出来る。
けれども、云えはしない。マサキは口唇の端を噛み締めた。
適当な嘘をでっちあげられるほど根が醜悪に出来ていないマサキは、この場をどう遣り過ごすかよりも、瞬発的な怒りに内心を占有されていた。それもこれも、あいつの訳のわからない行動の所為だ。口をそっと開いて、痛みの残る口唇をコーラに浸す。
愛でないのであれば、憎いと明瞭《はっき》りと告げられた方が気が楽になる。だのにシュウはそれをしない。マサキには理解が不能な理屈をつけて、己の本心を曝け出すことから逃げ回る……マサキの怒りが解けないのは、シュウが卑怯な立ち回りを続けているからだ。
「なら、悪いのは彼の方であるのだろう。君の尊厳を踏み躙った」
「見てきたように云いやがる」
「私は何も知らんよ」
二杯目のコーヒーを味わい始めたクワトロを正面にハンバーガーを食べ進める。けれども、マサキの頭の中はシュウのことばかりだった。クワトロが口にした、シュウが人並みの感情に絶望しているとは何だ? 文脈からして恋愛感情のことを指すのだろうが、それがマサキに対するドラスティックな行動に繋がったのだろうか。
マサキは澄ました表情でいるクワトロの顔を窺った。
聞いてしまいたい。けれども、シュウに対して関心があると思われるのは耐え難い。マサキは好奇心と自尊心の板挟みになりながらハンバーガーを食べ尽くした。そうして、残ったポテトをコーラで流し込み、もう一杯。今度はオレンジジュースを注文する。
「ところで、あんたの用件は何だったんだ? まさか俺と恋愛話をしたいって訳じゃないだろ」
「偶には日常を満喫したかった――では、不満かね」
「俺とする会話じゃねえな」
「確かに」クックと声を殺して笑ったクワトロが、卓上にコーヒーカップを置く。「余計な世話を焼くより、自分の欲望に素直になった方がいいのだろう」
「何だよ、それ」
「シュウのことさ」
シュウのことで思い含むことがあるのだろうか。訝しく感ずるも、核心に触れない巫山戯た物云いは、彼がそれなりの見当を付けていることを表している。
マサキは迷った。
尋ねさえすれば、クワトロは自身の予想も含めて、マサキにシュウの情報を教えてくれることだろう。とはいえ、その一歩をマサキは踏み出せなかった。何より、プライドの高さが人一倍な男に関わることだ。自分の与り知らぬところで自分の情報が出回っている状況など、シュウには耐え難く感じられるに違いない。ましてや、そこにマサキも絡んでいると知ったら――。
あの程度では済まされない。マサキはシュウの傲慢な振る舞いと、それに少なからず感じてしまった自分に怖れを抱いていた。
「よくわかんねえけど、あいつがあんたに内心を打ち明けたってことは、あんたを少なからず信用してるってことだろ。だったら余計なお節介とやらは止めておいた方がいいんじゃねえか」
だからマサキはクワトロを窘めた。自分の身を守る為に。
「君の点数を稼ぎたい気持ちもあったのでね」
けれども、クワトロはそんなマサキの心配はどこ吹く風。しらと云ってのけると、肘をテーブルに置き、微かに身を乗り出してきながら、
「だが、そんな小細工は止めだ。率直に云おう、マサキ。私に力を貸してくれないか」
暗く瞳を覆うサングラスの奥から、真剣な眼差しが覗いている。ついにきた。マサキは一気に引き締まった空気に、緊張感を漲らせた。
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