GWで終わらせたかった。
やぱ物語というのは難しいですね。辻褄合わせをしながら書き進めているからか、一向に終わりが見えません。もう少しで終わるといいながら、あと20000字くらいは余裕で必要な有様。五月はスケジュールが厳しいので、野望としては今月で終わらせたいのですが難しいかも知れません。
今回はついに彼の登場です。
やぱ物語というのは難しいですね。辻褄合わせをしながら書き進めているからか、一向に終わりが見えません。もう少しで終わるといいながら、あと20000字くらいは余裕で必要な有様。五月はスケジュールが厳しいので、野望としては今月で終わらせたいのですが難しいかも知れません。
今回はついに彼の登場です。
<wandering destiny>
アスラハが銃器類をメインに取り扱っている企業だからだろう。取引先の五割は中東に本社や本拠地を構える企業や団体だった。その中でもイエメンがずば抜けているのは、個人の銃所持に許可の必要がない国だからなようだ――丸一日かけてデータを精査したシュウは、九社の不審なデータを前に思考を重ねていた。
イエメンに三社、UAEに二社、イスラエル、ヨルダン、イラク、クェートに一社。
日本には劣るものの、サウジアラビアも銃所持に対して規制の厳しい国だ。正当な理由なくして所持の許可は下りない。そういった国で直接的な買い付けを行うのはリスクの高い行為である。と、なると――隣接する国を経由して、密輸でサウジアラビアに持ち込まれている可能性が高い。そう読んだシュウは、陸路、空路、海路の貨物データの洗い出しにかかった。直近三年分のデータをクラッキングで入手し、該当する企業や団体からの貨物や不審なデータがないか、アスラハの取引先データと突き合わせてゆく。
それと並行してダークウェブの監視も行った。
兵器開発コミュニティに指導者ハザムとアスラハの情報を流したメンバーの話によれば、元は化学コミュニティに流れた情報であったらしい。何でも同時多発テロで使用された爆発物の爆薬の化合物が話題になった際に書き込まれたのだとか。そうである以上、この局所的で、けれども広大なダークウェブの何処かには、中東極右派《マウシム》の情報を握っている人間がいるということだ。いずれまた、何某かの情報が流出する可能性は大いにあった。
一筋縄ではいかない情報収集に、マサキは気が引けたようだ。俺にも何かさせろと煩かったし、シュウとしても指導者ハザムの出身地であるヒジャーズでの調査は欠かせないと思っていたが、迂闊にマサキを動かしてUAEの二の舞になってしまっては、流石にシュウも犠牲者に合わせる顔がない。ここが耐え時だと云い聞かせて、我慢を重ねてもらうことにした。
その代わり――という訳ではないが、ストレス解消に外出する機会を増やした。リヤドはサウジアラビアの首都だけあって、観光スポットや娯楽施設も充実している。そろそろ痛みが目立ち始めた服の替えを買いにショッピングモールに向かい、気分転換に乗馬体験や城塞観光を行いと、そこそこリヤド生活を満喫した三日目。ようやく不審な貨物データに行き当たった。
UAEの該当する企業が海路でヒジャーズの港湾都市ジッダに貨物を送っている。
シュウはジッダの港湾記録や送り先企業の入荷記録といった資料を揃えて貨物データと突き合わせた。名目は精密機器であるが、送り先の組立工場にはその三割しか入荷されていない。シュウは消えた七割の貨物の行方を調べるべく、工場の登記記録などを当たった。その過程で入手した工場の経営者の経歴と、ダークウェブで入手した指導者ハザムのプロフィールを比較する。どうやら彼らはキング・ファハド石油鉱物大学の同期であったようだ。
「そんな安直な話があるか?」
マサキは大いに途惑っていた。無理もない。シュウとて同じ気持ちであるのだ。
入手したデータの全てが指導者ハザムの出身地ヒジャーズを指し示している。これだけ綺麗に点と線が繋がるデータはそうない。それだけにシュウは狐に抓まれた気分だった。これが罠でない保証がどこにあったものか――警戒心が警鐘を鳴らしている。もしかするとどこかで重要なデータを見落としているのかも知れない。シュウは再度AIにデータの突き合わせを命じた。自身が組み上げたアシスタントAIに重大な欠陥があるのではないか。そうまで考えてプログラミングの見直しもした。だが、結果は同じだった。
そうである以上、この調査結果は真として扱わなければならない。
シュウは貨物の送り先であった組立工場の帳簿データを精査した。帳面上は計算が合っている。ということは、どこかに裏帳簿が存在している筈だ。
「ヒジャーズに調査に赴く必要がありそうですね」
リヤド生活五日目の昼。日課のプールから戻ってきたマサキにシュウは切り出した。
「しかしだな……」
途端にマサキが渋面になる。
「相手は同時多発テロを成功させるような組織だぞ。こんな短期間で調査が進むような相手だとはとても思えねえ」
心に残った最大の傷が、敵を大きく見せているのだろう。両親を喪っているマサキとしては、中東極右派《マウシム》がこの程度の調査で襤褸が出るような組織だとは思いたくないようだ。厳しい表情でソファに陣取ると、髪を掻き毟りながら悩まし気に呻いている。
「私がやりますよ」
「はあ? そういう話なら俺が出るぞ。いい加減、働かせろ」
「それなりに危ない橋を渡ることになりますからね。魔法が使える私の方が適しているでしょう。それに――」
シュウは上着のポケットに手を差し入れた。そして、影の中に潜ませていたチカを掴み取った。「わあ! やーっとあたくしの出番ですね!」それで自らの出番を察したようだ。シュウが取り出すより先にポケットから飛び出してきたチカが、けたたましくがなり立てながら周囲を飛び回る。
「待ってましたよ、ご主人様! そして、お久しぶりですマサキさん! いーやいやいや、こういう状況ですからね。絶対にあたくしの出番が来るんじゃないかと思っていましたよ! さっすがは優秀なご主人様! 有能な使い魔の使いどころを心得ていらっしゃる! ええ、ええ、あたくしに万事お任せください! ちゃーんと目当ての裏帳簿の在り処を探し出してみせますからね!」
「……お前、いたのかよ」
瞬間、マサキが鳩が豆鉄砲を食らったような表情になる。
それもその筈だ。シュウが中東入りしてからそろそろ半月。その間、一度も姿を見せなかった使い魔チカ。いると思っていなかっただけに驚きが勝ったのだろう。シュウの肩にふわりととまったチカを、呆然とマサキが眺めている。
「ご主人様あるところにあたくし在り。逆に聞きますけど、どうしていないと思ったんです?」
「そりゃ、俺はシロとクロを置いてきてるしな」
「それはセニアさんの心遣いですからねえ」羽根で嘴《くちばし》を覆ってくけけと笑ったチカが続ける。「それが逆にマサキさんをスタンドプレーに走らせちゃった訳ですけど、元々は羽休めじゃないですか。それに対して、ご主人様とあたくしはマサキさんの捜索の為に地上に派遣されている訳で」
「それもそうだな。俺があいつらをこっちに持ち込めなかったからと云って、お前までこっちに来れない道理もねえや」
納得行ったようだ。どこか気の抜けた表情で上半身をソファの背凭れに深く預けたマサキが、高い天井を見上げながら言葉を継ぐ。
「なら、危ない橋を渡るっていっても最小限で済みそうだな」
「そういうことです」シュウは視線をチカにずらした。「長く休んでいたのですから、気力は充分でしょう、チカ。ここからジッダまでは空路で二時間ほどです。早速、行きますよ」
シュウはチカを肩に乗せたまま、必要な荷物を纏める為にソファから立ち上がった。
長くマサキを待たせてしまっている。そろそろ胸を張ってマサキに伝えられる成果を出さなければ。その焦りがシュウの行動を早めていた。だが、マサキとしては残されることが不服なようだ。リビングの裏側にあるウォークインクローゼットに向かおうとすると声がかかる。
「おい、俺は」
「のんびりリヤド生活を満喫するのですね。なあに、私とチカで調査に当たれば直ぐですよ」
努めて柔らかく声を放つも、納得が行っていない表情だ。場合によっては今後の活動拠点がヒジャーズになるからだろう。マサキとしてはシュウとともにヒジャーズ入りしたい気持ちが強そうである。
「元々は俺の因縁だぞ。お前にばかり頼ってる訳にもいかねえだろ。何かはさせろよ」
「そうは云いますが、あとは指導者ハザムの実家調査ぐらいしか」
「それでいい」ソファから跳ね上がったマサキが、シュウを追いこしてウォークインクローゼットに向かう。「やれることをやらねえと、平穏に飲み込まれちまう」
やるべきことが見付かったことに安堵したような態度。やる気が漲るマサキにシュウは目を瞠った。
彼は不安なのだ。
マサキの背中を追ってウォークインクローゼットに入ったシュウは、安定しているように思えたマサキの精神状態が、未だに緊張状態にあることを覚った。そして、彼に対する気遣いに欠けていた自分を恥じた。ラングラン議会の依頼を受けているシュウにとっては、これまでの行動は全て目先の問題を解決する為のものに過ぎなかったが、過去の傷を引き摺っているマサキにとっては、両親の仇が討てるかの瀬戸際であるのだ……。
そうである以上、シュウはマサキの補助に回らなければならなかった。
今のままではシュウが主で、マサキが従になってしまう。情報収集に専心し過ぎるがあまり、マサキの気持ちに寄り添うことを忘れていたことに気付いたシュウは、いつの間にか視野狭窄に陥っていた自分を内心で戒め、改めてマサキの気持ちを慮った。地上に残した心残りの清算の為に、ラングランへの帰還を拒否したマサキ。反射的に身体が動いてしまったにせよ、魔装機神操者としての使命を背負っている彼からすれば、命令違反は生半可な覚悟で出来ることではない。
「いつもホテルを出る時は慌ただしいな」
「本当に。ですが、あまり調査に時間がかかってしまうとこちらの動きを悟られかねません。このぐらい臨機応変でいた方が、相手に対しての攪乱になるでしょう」
部屋に散らかった荷物をそれぞれのバッグに収めつつ、忘れ物がないかをチェックする。小物は買い足せばいいが、精密機器やカード類はそうはいかない。念入りに部屋のチェックを行ったシュウは、先に荷物を纏め上げたマサキに続いて、五日間世話になったアパートメントホテルを出た。
そしてタクシーを拾って、空港へと向かった。
少し調べたところによると、ジッダは乾燥した熱波が襲ってくるリヤドと比べて湿度がかなり高い地域であるようだ。これは早めに調査を済ませる必要がある。体調に影響が強そうな気候にそうマサキに伝えれば、「これまで経験してきた戦いに比べれば、どんな気候も軽いもんだろ」と、頼もしい返事が返ってきた。
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