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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

さかさまの月
お題「自分でえちちな方面を育てたマサキ見て嬉しそうまたは満足そうなシュウ見たいです!!」

今更な話のですが、健全な作品を直接Wordpressの方に落としている関係で、今後こちらに掲載するのはサイトに移す前のR作品と連載物に限られます。健全な作品の新作を読みたい方はWordpressの方を確認してください。

と、いったところで本文へどうぞ!お題有難うございました!



<さかさまの月>

 そういった気分であったようだ。
 天上に煌めく月が、朗々と自然豊かな大地を照らし出している。窓の外には影濃く映る木々。シュウの使い魔であるチカはとうに梁の上の寝床に潜り、すぴすぴと穏やかな寝息を立てている。
 そろそろ寝室に向かおう。夜の帳が深く下りた窓からの景色に、シュウは長く向き合っていた書を閉じた。ソファから立ち上がり、リビングのカーテンを閉める。瞬間、まるでシュウが動くのを待ちかねていたのかのように玄関から扉を叩く音がした。
 音を殺して玄関に向かったシュウは、身構えながら扉に付いている覗き窓を開いた。
 深緑の髪で覆われた頭が、落ち着かない様子で小刻みに揺れている。マサキだ。シュウは内鍵に手を掛けた。と、覗き窓が開いたことに気付いたらしい。マサキが面を上げる。不貞腐れているようにも映る表情。大きなふたつの瞳がシュウを睨み付けてくる。
 知己の人間であったのは幸いだが、夜更けのラングランを駆けてここまでやってくるからには、それなりの用件であるに違いない。覗き窓を閉じたシュウは、チカを起こさぬようにとそうっと扉を開けた。
「どうしました。もう夜も大分更けているというのに」
 玄関に上がり込んだマサキの腕がシュウの首に絡む。次の瞬間、シュウの口唇が塞がれる。口内に忍んでくる熱い舌。何かに突き動かされるようにシュウの口唇を貪ってくるマサキが吐く息は荒い。
 シュウはそろりとマサキの頬を撫でた。
 びくりと震えた身体が腕を残してシュウから離れる。仄かに上気した頬。物欲しげにシュウを見上げてくる潤んだ瞳が、雄弁にその胸の内を物語っている。
「何をしにきたのかと思えば」
 シュウはマサキの頭を引き寄せた。耳に息を吹きかけると、マサキがびくびくと腰を震わせる。したいの? 夜更けの静寂に溶けてゆく己の言葉に、シュウはひっそりと笑みを重ねた。
 まだ羞恥心が残っているのか。物云わぬマサキがこくりと頷く。
 なら、とシュウは道を開けてやりながら言葉を継いだ。
「自分で寝室に入るのですね、マサキ」
 言葉で強請ることには羞恥を感じるようだが、行動で示すのには抵抗がないようだ。玄関を抜けたマサキが真っ直ぐに寝室へと向かってゆく。そうして、ふらつくようにして寝室に姿を消したマサキに、シュウは獰猛な己の本性が目を覚ますのを感じ取った。
 わざわざ王都から離れたこの地まで足を運んでいるぐらいだ。恐らく、マサキの性欲は限界を迎えていることだろう。
 性欲が亢進すればしただけ、マサキの身体は感度を増す。それは肌を包む衣装の感触でさえ身体に障るまでに……時間をかけてマサキを篭絡したシュウは、無垢な身体が自分好みに染め上げられきっているのを知っていた。
 今のマサキは、まさしく飛んで火に入る夏の虫。ならば、何をさせても抵抗すまい。シュウは玄関とリビングの電気を消して、寝室に足を踏み入れた。
 月明りに照らされたベッドルームの中に伸びる影。暗がりに爛々と輝く両の目がシュウを向く。
 気が高ぶっている証だ。
 受け身な快楽の虜となったマサキはシュウの教えに従順だ。まるで日頃の鬱憤を晴らすかのように、シュウの腕の中で狂い咲く。魔装機神サイバスターの操者として立ち回る彼は、自らの尊厳を踏み躙られることを極端に嫌ったものだが、シュウとの性行為に及ぶ彼は、そうした自らの芯となるポリシーを捨て去ってしまったかのようだ。
 それはマサキがシュウに全幅の信頼を寄せているからでもあるのだ。
 秘密主義なシュウは、マサキとの秘め事を決して口外しはしなかった。それが功を奏したのだろう。彼の躾にもっと時間がかかると見込んでいたシュウの目算とは裏腹に、マサキは加速度的にシュウとの性行為にのめり込んでいった。そう、自らに与えられる辱めに無自覚になるほどに。
 だからシュウは、マサキに無体を強いる己に後ろめたさを感じずにきた。
「先ずは脱ぎなさい。話はそれからですよ、マサキ」
 気だるげにベッドの端に腰を下ろしているマサキにシュウが命じれば、ぱさりと乾いた音を立てて床に衣装が落ちた。
 一枚、また一枚と衣装を脱ぎ捨てていったマサキが、一糸纏わぬ姿で立ち上がる。惜しげもなく晒された裸体に、シュウは視線を絡み付かせた。それが彼の情欲を煽ったのだろう。そのままシュウに近付いてこようとするマサキに、ベッドに上がりなさい。シュウは更に命じた。
 ぎしりとベッドが軋む。
 シュウはベッド脇のサイドチェストの引き出しを開いた。懐中時計、ペン、メモ……雑然と小物が押し込まれている中から、細やかな意匠が施された透明な小瓶を取り出す。淡く薄紅色に染まった液体。半分ほど中身を減らしている小瓶をマサキに渡して、自分で準備を済ませるようにとシュウはマサキに告げた。
 何度か使われているからだろう。マサキはシュウの意を即座に汲み取ったようだ。僅かに怯む様子を見せる。
 好事家の間に出回っている媚薬入りのローション。以前、高級売春宿を潰した際に入手した品は、一説に拠ると。魔術師たちが長い時間をかけて精製したものであるらしい。その効果は覿面で、そうでなくとも敏感なマサキの身体を更に過敏にした。
 その記憶を思い出したようだ。手にした小瓶に無言で視線を注いでいるマサキに、「したくないの?」シュウは優しく囁きかけた。そこで決意を固めたようだ。口に溜まった唾を飲み込む仕草を見せたマサキが、小瓶の栓を開ける。
 とろりと彼の手のひらに広がってゆくローション。それを両の手に馴染ませて、先ずは乳首へと。ローションを丹念に塗り込んでゆく指使いの淫らさに、シュウは底のない愉悦に浸った。
 はあ……と、熱い吐息がマサキの口元から洩れ出る。
 彼の抑え込んでいた欲望が徐々に露わとなってゆく過程を目にするだに、シュウの精神は高ぶった。かつて、|気《プラーナ》の補給にさえ動揺していた初心な少年だったマサキ。それが今やどうだ。シュウの前では性的欲求を隠さぬようになった彼は、命じられるがままに奉仕の限りを尽くしている。
 その実感。これに勝る悦びがこの世に果てして存在し得るだろうか。いや、ない。シュウは月の光を受けてきらりと輝く、彼のぷくりと膨れ上がった乳首に視線を注ぎながら、先々に訪れるだろう悦楽の時間を脳裏に思い浮かべてほくそ笑んだ。
 今宵の彼も、激しく乱れてくれることだろう。
 欲を覚えた青年の秘められし嗜好。彼をそう躾けたのはシュウだったけれども、だからこそ彼の行動の端々に、自らが与えた影響のほどを見て取ったシュウは興奮せずにいられないのだ。そうして、だからこそ、彼を完全に自らの制御下に置くその瞬間が待ち遠しくて堪らない――……。
 ――あ、ふ。ん、んんん……
 乳首を離れたマサキの指が、続けて股間の奥へと沈んでゆく。ぬるりと後孔を割った指。第一関節が埋まる程度の浅い位置でゆるゆると蠢いている。
 薄く開いた口唇に、歪む眉。はあ、ああ……堪えきれないといった様子で喘ぎ声を吐き出したマサキに、シュウの中にある嗜虐性が鎌首をもたげた。堕としたい。シュウは目尻の際に落ちる影を色濃くした。
 世界に名だたる戦士である彼を、自分への欲で雁字搦めにしたい。
 それは紛れもない征服欲だ。シュウが決して手に届くことのない栄華と栄光を掴み取った青年への嫉妬と云い換えてもいい。
「それで満足ですか、マサキ」彼の潤んだ瞳の中に映り込んでいる自らの顔を覗き込みながらシュウは云った。「もっと奥がいいのでしょう。ほら、ちゃんと指を埋めなさい」
 ベッドに放り出された小瓶を拾い上げて、ローションを垂らしてやる。瞬間、何か云いたげにマサキの口が開くが、やはり言葉で性行為を強請るのは苦手と見える。諦めたように顔を伏せて、ローションを押し込むように指を深く埋めたマサキに、シュウは声を立てて嗤わずにいられなかった。
 この世にひとつしかないシュウの愛玩具。進んでその座に自らを堕とすマサキが、シュウを付け上がらせる。
 ――あっ、はぁ、ああ、ん、んあ、ああっ……
 だからシュウは乱れよがるマサキの姿を冷徹に見詰め続けた。
 五分も経つ頃になると、そろそろ媚薬が効いてきたようだ。びくびくと身体を奮わせながら、一心不乱に蜜壺と化した後孔を掻き混ぜていたマサキが、もう、やだ。と、ようやく言葉らしい言葉を発した。
「何が『いや』なの」
「このままじゃ、イク……」
 だのに指を止めようとは思わないらしい。いや、止めてしまうことで、シュウからの褒美が受け取れなくなることを恐れているのか。はあはあと息を荒らげながら自慰を続けるマサキに、シュウはそろそろ頃合いかと、マサキの手首を掴んでその手を後孔から引き抜いた。
 刹那、マサキの顔が安堵に彩られる。
 けれどもシュウは、そこで優しくなれるほど、マサキ=アンドーという青年に従属していなかった。
 それは愛を信じきれずにいたシュウが守るべき最後の砦だった。愛という情念の坩堝に溺れたくない。理性を重んじるシュウは、感情という得体の知れないものを恐れていた。マサキに対する好意がそれ以外でないことを認めながらも、シュウがその感情に素直になれずにいるのはだからだ。
「その前にすることがあるでしょう、マサキ。口を開けなさい」
 マサキの顎を掴んで自分の方を向かせたシュウは、望む褒美がまだである現実に途惑うマサキに自らの男性器を咥えさせた。
「私の都合も構わず押し掛けてきたのですから、それ相応の躾は受けてもらわないと」
 そうして旋毛を見せている頭に手を置いて、続きを促す。ん、んん……くぐもった声を上げながら、マサキがシュウの男性器を飲み込んでゆく。ややあって、躊躇いを捨てたようだ。ゆっくりと顔を前後に動かし始めたマサキに、シュウは努めて静かに語りかけた。
「ねえ、マサキ。顔を上げて。あなたが私に奉仕する姿をしっかりと見せて」
 潤み切った瞳がシュウを見上げてくる。この顔だ。シュウは恍惚を覚えた。
 全てをシュウに差し出したこの顔。自尊心を投げうって、自らの欲するものにしがみ付いているこの顔。シュウはその頭を撫でてやりながら、物云わずマサキの様子を窺った。世界で、たったひとりだけが掴むことを許されたマサキ=アンドーの本性。これを掌中に収める為に、シュウはどれだけの我欲を抑え込んできたことか!
 シュウはマサキの口腔内から男性器を抜き取った。好きになさい。ベッドに仰臥し、次のマサキの行動を待つ。
 どこまでも自分だけを求めさせたい。
 シュウのその望みは、飢えているマサキを前にしなければ叶えられないものであるのだ――喉を鳴らしたマサキが、シュウの男性器を跨ぐ。そして、猛々しく天を仰ぐ肉の塊を自らの後孔へ収めてゆく。
 何にも代えがたい悦楽。私はここまでマサキを飼い慣らしたのだ。腰を振りながら、シュウの手を取って乳首へと導いてゆくマサキに応じてやりながら、シュウは視界の隅に映り込んでいる今宵の月の眩さに目を細めた。





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