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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

臨界点【加筆あり】
お題「色々あってなかなか会えなかったシュウさんとマサキ。久しぶりに会えたら、シュウさんの体の匂いだけで、軽くドライで達ってしまうマサキ」です!

挑戦し甲斐のあるお題でした!有難うございます!




<臨界点>

 自慰をする暇もないほどに忙しかった四か月だった。
 馬鹿なテロリストがダムを決壊させたのだ。
 既に活動規模を小さくして久しい彼らだったが、資金源を失ってはいないようだ。忘れた頃に活動を再開する彼らに、マサキたちはこれまで何度も手間を掛けさせられてきた。今回もそうだ。廃坑に戦闘用魔装機が出入りしているとの密告に、マサキたちが急ぎ現場に確認しに向かってみれば、どうやらアジトと化していたようだ。五体のバフォームが姿を現わした。
 大戦時にシュテドニアス軍が捨てていった魔装機は、国内に数多く残っている。その中の何機かを手に入れたのだろう。守護属性の相性が悪いマサキとサイバスターにとっては手強い相手だが、四体が揃い踏みした魔装機神の敵ではない。直ぐに劣勢に追い込まれた彼らは、最後にせめて一泡吹かせたいと考えたようだ。背後にあったダムの取水ゲートに飛び込んで行ったかと思うと、マサキたちが止める間もなく自爆してしまった。
 溢れ出た水は瞬く間に川を決壊させた。幸いなことに近場に町や村はなく、最悪の事態は逃れられたが、かなり離れた下流にある町が膝下まで浸水する被害に見舞われてしまった。その後始末にかかった期間が四か月。土木用魔装機とともに町の立て直しに奔走したマサキは、それが終わると同時に、王都に戻る仲間と別行動を取った。
 目的はひとつ。半年もの間、会えずにいた男と会うこと。
 テロリストの討伐戦に至る前の二か月間というもの、尋ねても尋ねても不在だった男。シュウ=シラカワ。マサキに負けず多忙な男は、自宅を長く空けることが珍しくなかった。きっと偶々その期間に尋ねてしまったのだろう。そうは思ってみても、マサキの心は落ち着かなかった。
 さりとて、わざわざ約束をしてまで会うような仲でもない。マサキは悩んだ。シュウ=シラカワという男の本心を知らぬまま、彼と肉体関係を結んでしまったマサキは、自分がアクションを起こすことで彼との関係が決定的に変わるのを怖れていた。たった一本、連絡を入れればいいだけのこと。わかっていながら、その一歩を踏み出すことが出来ずにいたのは、だからでもあった。
 その結果が半年である。
 こうなるとさしものマサキも気が気でない。もし、この四か月の間に、シュウが自分を尋ねていたら? いや、それよりも自分に飽きてしまっていたら? 夜泣きする身体を慰める暇もなかった四か月。飢えに飢えたマサキの身体はとうに限界を迎えていた。|性行為《セックス》がしたい。町を離れたマサキは、無心でサイバスターを操縦してシュウの自宅に向かった。
 彼が自宅の鍵を隠している場所はわかっている。玄関マットの下。グレーの薄いマットを捲って見れば、鍵が消失している。まさか。マサキの鼓動が跳ね上がった。
 理由はわからないが、在宅中は鍵を掛けない主義なのだそうだ。マサキはそろりとドアノブに手を掛けた。カチャリと確かな手応えで開いたドアに眩暈を起こしそうになる。
 シュウ。その名を呼びながら家に足を踏み入れる。
 けれども、その姿はリビングにはない。おかしい。自宅での居場所はリビングのソファの上と決まっている男だ。しんと静まり返った家屋に、まさかな――と思いながら、マサキはベッドルームに向かう。
 シュウ。もう一度、その名を呼びながらドアを開く。
 瞬間、彼が日常身に付けている香水の匂いが、風に乗ってむわっと押し寄せてきた。
 マサキは我知らず喘いだ。シュウの指の、口唇の、そして男性器の感触がまざまざと身体に蘇ってくる――……この匂いに包まれて自分は幾度、絶頂を迎えただろう。彼との|性行為《セックス》の記憶に限りはなく、後から後からマサキの脳裏に無限に湧いて出てくる。と、唐突にマサキの腰がびくんと跳ねた。微弱な電流を流されたかのような快感。全身をざわつかせる刺激に、ああ。と、マサキは声を上げた。
 軽いオーガズムを感じたのだ。
 四か月の禁欲生活は、マサキの想像以上に、マサキの身体を刺激に弱くしてしまったようだ……。
 マサキはうすらぼんやりと世界を捉えるしかなくなった瞳でベッドを見た。大の大人がふたり寝転んでもお釣りが出る広さ。その左端でシュウが窓側に身体を向けて横になっている。
 きっとシャワーも浴びずにベッドに入ったのだ。甘ったるい匂いを放ちながら眠りに就いているシュウに、ふらふらと、マサキは花に蝶が吸い寄せられるように近付いていった。
 そのままベッドに倒れ込み、その背中に顔を埋める。
 びくん。また腰が跳ねた。
 はあ……ああ……マサキは全身を震わせた。臨界点を迎えた欲望が、マサキの身体を必要以上に過敏にしてしまっている。匂いを嗅いだだけでも、そして、その温もりに触れただけでも、全身が快感を覚えてしまってどうしようもない。
 ――今、こいつと|性行為《セックス》したら、俺は気絶するんじゃないだろうか……
 ふと頭に浮かんできた恐ろしい考えに、マサキが底なしの恐怖感を感じたその瞬間。今まさに目を覚ましたようだ。まだ眠気が残る表情で振り返ったシュウが、どこから出ているかと思うほどの力でマサキの身体を引き寄せてきた。
 びくんっ。と、身体が跳ねた。
 まただ、また。押し寄せてくる快感にマサキは藻掻いた。ただ抱き締められているだけなのに、快感中枢を直接触れられているような感覚がある。あ、やだ。やだ、シュウ……! どうにかして彼の抱擁から逃れようとするも、彼の腕は全く解ける気配がない。
「――――ッ!」
 股間から脳天に突き抜ける快感に、マサキは声を詰まらせて足を突っ張らせた。
 男性器に溜まっていた熱が一瞬にして弾け散る。どろりと吐き出された精。それはマサキの下着を濡らし、萎れた男性器にべたりと貼り付いた。
 ――あ、ああ……
 シュウと触れ合っているマサキの肌は細かく寄せるさざ波のように震えているた。そこでさしもの鉄仮面たるシュウもマサキの様子がおかしいことに気付いたようだ。揶揄い混じりの声で、|達《い》ったの? と、マサキの耳元近くで囁き掛けてくる。
 また、びくん。と、腰が跳ねる。
 声を聞いたら聞いたでこの有様だ。マサキは息を荒らげながら、縋るものを求めてシュウの背中に腕を回した。立て続けにオーガズムを感じておきながら――しかも二度目に至っては射精をしてしまっているのにも関わらず、後孔の奥が急き立てるような疼きを訴えている。
「……もう堪えきれないといった様子ですね、マサキ。何が欲しいの?」
 びくん。と、更に腰が跳ねる。
 達したばかりの男性器が再び熱を持った。腰回りを覆っているジーンズの固い布地が窮屈に感じられて仕方がない。
「教えて、ほら……」
 言葉で嬲ってきながら舌を耳孔に差し入れてくるシュウに、マサキは上手く言葉が紡げずにいた。たったこれだけの刺激でも、身体が歓喜に震えてしまう。口唇がわななく。それでも嗜虐的な嗜好のあるシュウのことだ。求めるものを口にしない限り、マサキを満足させようとはしないだろう。
 マサキは言葉も切れ切れに訴えた。お前の……×××が、欲しい……自分でも驚く程に濡れた声が、シーツを伝ってベッドに吸い込まれてゆく。
「そんなに卑猥な言葉を躊躇わずに吐き出すほど欲しかったのなら、もっと早く会いにくればよかったものを」
 クックとシュウが嗤った。底意地の悪さを感じさせる声は、彼が直ぐにはマサキの欲を叶える気がないことを表している。来たけど、会えなかったんだ――とは云えなかった。立て続けに襲い掛かってくる快感に力の抜けきった腹が、マサキから言葉を奪ってしまっている。
「あなたに会えない日々に、私がどれだけの寂しさを感じていたかなど、あなたにはわかりもしないでしょう」
 言葉とは裏腹に楽し気な声。続けて力任せに身体を起こされたマサキは、彼の膝の上で返された身体にある種の絶望を感じずにいられなかった。
「半年分、たっぷりと可愛がってあげないとね。ねえ、マサキ」
 たくし上げられたシャツを口に含まされる。マサキは必至になって生地を噛んだ。口から溢れ始めている唾液がじわりと布地に染み出す。
「あなたも直ぐに目的が叶ってしまうのでは、楽しくないでしょう?」
 腰を撫でてするりと這い上がってきたシュウの手が、ゆっくりと胸を撫で回し始める。ぴくぴくと波打つように震える肌。たったこれだけの愛撫だというのに、もう幾度も交わり合った後のようなけだるさがある。
「沢山、楽しみましょう。お互い、満足しきるまで――……」
 胸回りを撫でていたシュウが指を立てて、マサキの乳首を抓んでくる。んん……ッ。マサキは顎を上げて、後ろ頭をシュウの肩に置いた。何が何だかわからない快感が、一瞬にしてマサキの理性を飲み込んだ。

 ※ ※ ※

 朝の白けた光が、カーテンの隙間から差し込んでいる。
 マサキは瞼の裏側を照らし出す光に目を開いた。ゆっくりと身体を起こす。瞬間、腹の中に溜まっていた精液が流れ出た。臀部の谷間を濡らす感触に、けれども感覚が麻痺してしまったマサキは特に焦るでもなく。ぼんやりとした頭を叩き起こすように首を振った。
 ベッドの隣にはまだ眠りに就いたままのシュウの姿がある。
 この部屋に入ってからの記憶は途切れ途切れにしか残っていない。マサキは盛大に欠けているシュウとの|性行為《セックス》の記憶の欠片を脳から拾い上げた。随分と長い間、彼の前戯に晒されていたような気がする。
 ――やだ、もうやだ……早く、|挿入《いれ》ろって……シュウ……
 泣いて、縋って、それでも与えられることのない彼の男性器に、涙を流しながらマサキは何度もその精を吐き出した。
 気が狂いそうだった。
 どれだけオーガズムに至っても、消えることのない腹の中の疼き。彼の肉が欲しい。欲しい。欲しい。それだけしか考えられなくなったマサキを、シュウは様々な手練手管で弄んだ。乳首を舐り、内腿を食み、臀部を吸う。徹底的に後孔に触れるのを避けるシュウに、マサキはどれだけの絶望感を味わったことか。
 ――いい、加減にしろよ……この外道……ッ……
 懇願するのを通り越して悪態をつき始めたマサキを、彼はまるで美術品を眺めるように愛でた。
 ――ああ、イク。また、またイク……
 その眼差しに捉えられながら幾度マサキはオーガズムに至っただろう? 嗜虐的な彼の嗜好がここまで憎らしく感じたことなどこれまでない。そのくらいにマサキは、ままならない自分の感情と身体を持て余してしまっていた。
 待ち望んだその瞬間が訪れた時のことは良く覚えていない。
 喘ぎ疲れた喉は掠れた音を立てるだけになっていた。涙に濡れた視界は、もうシュウの姿を上手く捉えてはくれなかった。不意にベッドに身体を沈められたかと思うと、脚を大きく開かされた。
 黒々と闇に浮かぶ彼の巨大な影。
 それが自分に重なってきたと思った瞬間、意識が飛ぶくらいに激しい快感に浚われた。
 後はもうシュウの為すがままだ。抜き取られることのない彼の男性器が、常にマサキの腹の底を叩き続ける。半年もの間、溜まりに溜まった精液はとうに尽きてしまっていた。透明な液を吐き出すだけとなったマサキの高ぶった男性器は、それでもシュウに与えられる快楽に歓喜の咆哮を上げるのを止めなかった。
 マサキはシュウの寝顔を見下ろした。
 つい半日前までマサキを支配していた焦燥感はもうない。身体に溜まっていた膿が全て出尽くしたようにすっきりとした心と身体。我ながら現金だと声を殺して笑ったマサキは、まだ、いいか。そう小さく呟くと、ベッドに身体を埋めて、深い眠りに落ちているシュウの身体に擦り寄っていった。






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