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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

好きって云って(後)
気付いたらタイトルを回収していない!?
それもこれも最近エロを書けなくなっている自分の所為です、すみません。

ほのぼの甘々をやろうとしたら爛れた上に真面目な話になってしまいました。
もうちょっと甘々が書けるよう精進します。


<好きって云って>

 シュウの膝の上で足を開かされたマサキは、とうに火照り切った身体が更に熱くなってゆくのを感じていた。
「こんなに物欲しそうにして」
 硬く反った男性器の下で、緊縮を繰り返している後孔にシュウの指が触れる。彼に対して感じている劣情をこういった形で彼に暴かれるのは、マサキを酷く気恥ずかしい気分にさせた。早く。そう思うも、それを明け透けに口にするのは憚られる。
「だったら私を起こしてくれても良かったものを。ねえ、マサキ」
「だってお前、深く寝てたじゃねえかよ……俺も、眠かったし……」
「責めているのではありませんよ。それがあったからこそ、あなたは今ここにいてくれているのでしょう。それが嬉しくない筈がない。ただもう少し、あなたを可愛がってあげられたらと思ったのですよ。昨日から今日まで」
 マサキの後孔の感触を暫く確かめていたシュウの指が、おもむろにゆるりとその奥に入り込んでくる。マサキは喉奥に溜まっていた息を吐き出した。彼が時間をかけて施してくれた愛撫の分、欲しくて欲しくて堪らない。だのに、まだマサキの口は彼を求める言葉を素直には吐き出せないのだ。
「何回、私を思って自分でしたの、マサキ」
 呆気なく埋まった指にそう言葉を吐きかけられる。三回。マサキはシュウの首元に顔を埋めながら答えた。もっと――と、そろそろ乱れ始めている呼吸の合間に彼が語りかけてくる。
「もっと、求めてくれてもいいのですよ」
 緩く蠢く彼の指が、マサキの後孔の中で膨らみを増している箇所に触れた。自分の指では簡単に届く位置にない|そ《・》|れ《・》に、快感が一気に脳まで突き抜けてくる。あああっ。マサキは声を上げて背をしならせた。自分ではこうはいかないからとはとても云えそうにない。
 ――あっ、ああっ。あっ……
 心地良い快感に身を預けきりながら、マサキはシュウの指技に声を上げ続けた。このままでは指だけで達《い》かされてしまう。マサキはぼんやりと意識を心の底に這わせた。どうにかして射精を先に延ばさなければ。
 自分ばかりがいい思いをしている気がする。それが申し訳なく感じられてしまう程度には、マサキはシュウのことが好きだったからこそ。
 ――はあっ、ああっ、シュウ。も、少しゆっくり……
 こんな風に自分が泣き喘ぐ日が来るとは思ってもいなかった。マサキはシュウの愛撫を受けながら、過去へと記憶を遡らせていった。そしてあまり変わっていない彼との性行為の記憶に笑ってしまいそうになった。
 始まりからそうだった。シュウはマサキの身体を知り尽くしているかのように、それが当たり前とマサキに快楽を与えてきた。否、彼の愛撫はそれだけマサキの身体の広範囲に及んでいた。口を付けられなかったのは髪と爪ぐらい。下手な鉄砲も数打ちゃ当たるではないが、それでシュウはマサキが感じるスポットを心得たようだった。
 だからマサキは彼との性行為に不満を感じたことがないままだった。挿入に至るまではそれなりに時間がかかったが、その頃には後孔を弄られるだけでも射精に至れるようになっていた。多少は苦しくも感じたが、それも回数をこなしてゆくうちに慣れた。
 今ではマサキは自ら腰を振るようにもなった。
 それもこれも、シュウがマサキに快楽を貪ることは後ろめたいことではないと教え込んだからだ。より深く相手を識《し》り、その上で一体感を得る為の通過儀礼《イニシエーション》。シュウの云っていることの一割もマサキは理解が出来ていない自覚があったが、身体を重ねた分だけ、彼への気持ちが深まってゆくのは自覚出来た。
 とはいえ、マサキの雄としての本能を捻じ曲げてしまっていることに、シュウ自身は物思うことがあるようだった。時に自嘲めいた言葉を吐いては、マサキとの性行為を忌避しようとする。そういった時、マサキはどう彼に言葉をかければいいのかわからなくなったものだった。
 マサキは自身が雄としての本能を捨てていることに対して、何かを強く思ったことがないのだ。
 ないものをあるものとして扱うシュウに、マサキはかける言葉を持たなかった。ただこうは考えもした。もし立場が逆だったとしたら、自分はシュウのような根気と努力で性行為に挑み続けることは出来なかっただろう。せっかちなマサキは直ぐに結果を求めがちだ。彼のように時間をかけて最良の結果を導き出すような根気は持っていない。そういった意味で、この形がベストであったのだ――……。
「何を考えているの、マサキ?」
 揶揄するように言葉を吐きかけてきたシュウに、「別に……」とマサキは答えるしかなかった。他人の心の機微に敏感な男だけはある。マサキが物を考えていたのもお見通しという訳だ。
 そぞろ気が逸れていただけに、マサキとしては冷水を浴びせかけられたような気になったが、シュウとしてはそこまで気にしての言葉ではなかったようだ。挿《い》れてもいい? マサキの頬に吐息を吐きかけてきながら囁いてきた彼に、何か気の利いたことを口に出来たらと思いつつも、云うべき言葉が思い浮かばない。
 マサキはこくりと頷いた。
 双丘を掴み取ったシュウの手の中央で、ひだを緩くしながら口を開いている後孔。そこに彼の男性器が押し当てられる。直後、ずるりと挿入《はい》り込んでくる男性器。ああ、ああっ。マサキはこれでやっと楽になれると全身で歓びを露わにした。

 ※ ※ ※

 ソファで一度、バスで一度、そして寝室で三度と、一日の大半を性行為に費やしたマサキは憂いなく目を覚ました朝に、すぐさま帰途に就くことを決意した。
「流石に帰る。三日目だしな」
「なら、私が喜んでいたと伝えてください。美味しいチョコレートだったとね」
 すっかり片付いたチョコレートに、満足しきったシュウの顔。最早、マサキにとって心残りは何もない。次はホワイトデイかな。別れ際にマサキがそう云うと、「出来ればその間に、一度は会いたいものですがね」すっかりマサキを可愛がり尽くした感のあるシュウは、貪欲にもそう云ってのけた。
 けれども嫌気は感じない。
 許されているという実感。彼のこうした言葉があるからこそ、愛情表現の下手なマサキは、気が引けることなくここに足を運び続けることが出来ているのだ。
「らぶらぶニャのはいいけど、声はかけて欲しいニャのよ」
「いつもおいらたちが気を利かせることにニャるんだニャ」
 帰途の最中、二匹の使い魔はそう愚痴を吐きまくっていたが、そもそもサイバスターで待っていろと命じておいたものを、心配だからと押し掛けてきたのは二匹の使い魔の方である。その上で吐いていい台詞でもない。マサキは柳に風と全てを受け流した。
「全然、聞いてニャいのよ!」
「うがあああ! マサキ、シュウと付き合うようにニャってから恥がニャくニャってるんだニャ!」
 何とでも云うがいい。マサキは幸福に満ち溢れている胸の内に、寛大な気分でいた。
 そもそも、人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んでしまえと昔の人間は云ったではないか。故に自分は悪くない。むしろシュウとの大事な時間に割り込んできたこの二匹こそ悪い。
 マサキはとうに開き直っていた。それだけシュウ=シラカワという男はマサキ=アンドーという人間を貪欲にさせる存在なのだ。
「ところでセニア様の所には寄るのかニャ?」
「勿論だ。あの野郎にはひと言云ってやらなきゃ気が済まねえ」
 マサキは正面に展開している巨大モニターに目をやった。中天に座す太陽。澄み渡るような青空が天高く続いている。
 まるで今の心を表しているかのような空の有り様。マサキはうっすらと口元に笑みを浮かべた。ニャんだかマサキ、シュウに笑い方が似てきたニャのよ。クロの言葉に誇らしさを感じながら、マサキは王都の方角へと舵を切った。





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