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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

安藤正樹の開発日記(四)
徹底掉尾エロ。エロしかありません。



<安藤正樹の開発日記>

(四)

 そろそろ二ヶ月が経とうとしていた。
 最早、通い慣れた感のあるシュウの家。ベッドルームにある大きなベッドは、彼がひとりで眠るのにはかなり幅がある代物だった。マサキはまだここに泊まったことはなかったが、仮に二人で並んで寝たとしても余裕が残るのは間違いない。
 その、ベッドの上。マサキは虚脱感と倦怠感に見舞われながら身体を休めていた。
 波打つシーツが先程までの愛撫の激しさを物語っているようだった。
 三回を区切りとするシュウのことだ。恐らくは、そろそろ何かを仕掛けてくるのではないかと――そしてそれはいよいよの|挿入《インサート》であるのではないかと身構えていたマサキの期待を裏切って、彼はマサキの全身をくまなく舐ると、後はいつものように。じっくりと時間を掛けて後孔を嬲って、マサキを絶頂へと導いた。
 彼の中で『訓練』の終わりは、マサキが射精を迎えた瞬間と決まっているらしかった。
 今日もきっとそう。窓際で一人掛けのソファに座っているシュウの姿を視界の端に収めながら、マサキはぼんやりとこの後の時間をどう過ごそうか考えていた。
 少し前に絶頂《オーガズム》を迎えたばかりのマサキの思考は、まるで脳に穴が開いてしまったかのように散発的だった。終わったばかりの行為にまるで意識が向かわない。恐らく、自我と理性を手放してしまった後だからだ。振り返ろうにも途切れ途切れな記憶。強烈な快感に攫われた感覚は身体に残っていたが、やけに現実感に乏しく感じられた。
 マサキは寝返りを打った。
 泥の中に浸かっているようなままならなさ。荒ぶった呼吸が止んで暫くの時間が経過したが、まだ身体を起こす気にはなれない。ただベッドに身体を横たえているだけだというのに、全身に疲労が降り積もっているようだ――と、マサキが癒えぬ疲れと格闘していると、どうやらシュウがソファを離れたようだ。
 ねえ、マサキ。と、ベッドの上に乗り上がってきた彼が、マサキの髪を撫でながら声を掛けてくる。
 行為が終わると必ず食事に誘ってくる彼に応えたことは数度しかなかったが、だからこそ続く言葉が予想出来たマサキは「今日はいい」と、首を横に振った。
 外に出る気力も奮わない。とにかく早く家に帰って休みたかった。
「そうではありませんよ」
 クックと声を潜ませて嗤ったシュウが、やんわりとマサキの口唇に口唇を重ねてくる。
 柔らかい温もり。マサキの口唇を啄んでは離れ、また重ねられる。
 マサキは顔を傾けて彼からの口付けを受けた。その身体をシュウがベッドの上に起こさせる。何をさせるつもりなのだろうか? 訝しく思ったマサキは、「違うなら、何だよ」シュウにそう尋ねた。
 つ……と、顔を間近にしているシュウの手が、無言でマサキの口唇に触れてくる。
 口付けの余韻に浸るような、名残惜しさを伝えているような指の動き。マサキはシュウの答えを待った。いつもとは異なる事後の時間に、もしかしたら彼はまだ自分を躾け足りないのかも知れない。そんな考えが脳裏を過ぎる。
「ここでして欲しいことがあるのですよ」
 |頭《こうべ》を下げたシュウの口唇がマサキの耳に下りてくる。あなたの口で私を飲み込んで、マサキ。直後、シュウにそう囁きかけられたマサキは、彼に取られた自らの手が導かれた先でその真意を覚った。
「…………ッ!」顔がかあっと熱くなる。
 手のひらに感じる熱。自分の男性器を触るのとはまた訳が違う。布越しでも|明瞭《はっき》りと感じ取れる硬さは、彼の男性器が今尚欲望を消化しきれずにいることを如実に伝えてきていた。
「でも、どうやって」
「飴を舐めるように舐めてくれればいいのですよ。ちゃんと教えます」
 スラックスのファスナーを下ろしたシュウが、その奥へとマサキの手を導いてゆく。張った皮の感触が生々しい。これを口に含む――マサキは手のひらに当たる彼の欲望の高まりを、どう処理すればいいのか思い悩んだ。
「けど……」
「少しずつですよ、マサキ」
 顔を上げさせられて耳朶を舐られる。じくり、と湧き上がったきた快感に、彼の辛抱強さを悟る。
 確かに彼はマサキに『訓練』を施すだけで、自身の欲を後回しにしている感があった。いつも射精をするのはマサキの方。それで終わり。シュウが自らの性欲をどう処理しているのか、マサキは少なからず気にはしていたが、特に彼からのアプローチがないのをいいことに、現実を直視するのを避けてしまっていた。
 ひとつ知れば、それだけ彼との|性行為《セックス》に近付く。
 マサキの後孔はとうに彼の指をすんなりと受け入れるようになってはいたけれども、だからといって男性器を受け入れるのに苦痛を感じずに済むとは限らない。まだ消えやらぬ怖れ。マサキはいずれ来るその日を現実のものとして認めながらも、覚悟を決め切れずにいた。
 だからといって、自分ばかりがいい思いをしているこの状況を続けていい筈がない。
 恋は一方通行だが、愛は双方向の関係だ。ギブアンドテイクに倣うのであれば、マサキは大分、シュウに借りを作ってしまっている状態でもある――……。
「……わかった」
 マサキは手のひらに当たっている肉の塊を掴み取った。
 頭に置かれた彼の手が、マサキに屈むように促してくる。その手に誘われるがまま、シュウの股間に顔を伏せたマサキは、飴を舐めるようにと云った彼の言葉そのままに、熱い昂ぶりへと舌を這わせていった。
「もう少し、ゆっくり舐めて。マサキ」
「こんなおっきいの、上手く舐められるかよ……」
 気恥ずかしさで目がまともに開かない。マサキは目を細めながら、目の前にあるシュウの男性器に舌を絡めていった。
 よくよく考えてみれば、さんざ自身の男性器を舐められた後。近頃はすっかり後孔で|達《い》かされるのが当たり前となっていたが、最初の頃は舌で|達《い》かされたことも多かった。
 それと同じことをすればいい。
 マサキは記憶を掘り起こしながらシュウの陰茎に舌を這わせた。時に舐め上げ、時にちろちろと舌を這わせ、そして時に口唇で吸う。確かにこれは飴を舐めるのに似ている。そんなことをマサキが考え始めた矢先だった。咥えて、マサキ。頭上からそうシュウの声が降ってきた。
 瞬間、生じる迷い。嫌? どこか寂し気なシュウの声に、はっとなってマサキは顔を上げた。薄く笑みを湛えたシュウの顔は、声の響きとは裏腹に余裕を感じさせている。
「ねえ、マサキ。後生ですから、口を開いて」
 甘えるような彼の言葉に、どうすればいいのかわからない。
 けれども、快感に溺れてばかりの自分。後ろめたさや、シュウに対する申し訳なさが背中を押してくる。
 ええい、ままよ。マサキは口を開いた。
 反り返った昂ぶりをゆっくりと口の中に収めてゆく。そんなに深く飲み込まなくともいいですよ。喉元近くまで彼の男性器を飲み込んだマサキは、シュウの言葉を聞いて尚、それをどう自分の口で扱えばいいかわからずに。
「歯に気を付けて。ゆっくり顔を動かすのですよ」
 頭に置かれたシュウの手が、マサキに顔を前後に動かすよう促してくる。
 躊躇いはあったが、他に遣り方を知っている訳でもない。マサキはシュウの手に支えられながら、顔をゆっくりと動かした。
 ――ん、んん……
 口唇に擦れる彼の肉。思ったよりも滑らかな感触を伝えてくる。マサキは出来るだけ歯を立てないように努めながら、ある時は深く、またある時は浅くと、口の中に彼の男性器を頬張った。
 身体に纏わり付く空気が、やけに澱んでいる。
「いいですよ、マサキ。ああ、出そうですよ。ねえ……」
 息を弾ませながらそうシュウが言葉を吐いた直後、頭を強く押え付けられた。
 喉奥近くまで潜り込んできた亀頭が、ぶるりと震える。マサキは咄嗟に目を閉じた。噴き出た精液が口腔内を濡らす。
「力を抜いて、マサキ。そんなに固く口唇を閉ざされては抜けませんよ」
 ややあって抜き取られた男性器に、マサキは口の中に残っている精液を飲み込んだ。そう無理をせずとも。と、シュウは云うが、そもそもどうすればいいかわからないマサキに、最後だけとはいえ無理を強いたのは彼である。
「興奮しましたか」
 ただ彼の男性器を口に収めていただけだというのに、いつの間にか熱を帯びていた男性器。身体を起こしたマサキの股間に目を遣ったシュウが、身体を抱き寄せてきながら尋ねてくる。
 マサキはシュウの肩に頭を乗せて、こくこくと頷いた。
「なら、達《い》かせてあげますよ、マサキ。ほら、ここに座って――」
 いつもならばとうに身支度を済ませて帰途に就いている時刻だったが、このまま帰るのも耐え難い。
 マサキはシュウの膝の上に乗って、彼の胸に背中を預けた。脚を開いて。囁くように声を掛けてくるシュウに従って、大きく脚を開く。
 そろりと忍んでくる彼の手。伸びた指がゆうるりとマサキの蕾を割る。
 はあ、ああっ。ぞくぞくと背なを駆けあがる快感に、マサキは理性の皮を剥いだ。抜き差しされては口唇をわななかせ、掻き混ぜられては声を上げ、そして擦られては足を突っ張らせ……日付が変わるまで、何度も、何度も。
 溜まっていた精液を全て抜き取られたような感覚。幾度も絶頂を迎えさせられたマサキは、その日初めてシュウの家に泊まり、だだっ広いベッドで彼とふたり。身を寄せ合うようにして眠った。





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