旧拍手ネタです。
まだ気持ちが通じ合う前のヒリついた時代のシュウマサ。
まだ気持ちが通じ合う前のヒリついた時代のシュウマサ。
<情熱の赤い律動《リズム》>
朝も早くから模擬戦の誘いと姿を現したヤンロンに引き摺られるようにして豊かな自然溢れるラングランの平原に出たマサキは、彼が駆るグランヴェールに対峙するようにサイバスターで陣を張り、グラフドローンが入り乱れる中、二時間ほどで模擬戦を終えた。
「それで何故私のところに来たのです、あなたは」
「身体が起きちまったんだよ」
まだ起き抜けの目覚めていない身体を徐々に温めながら行った模擬戦。グランヴェールの猛攻を凌ぎながらグラフドローン相手に気力を稼ぎ、ようやく本調子、といったところでそれが終わってしまったものだから、マサキとしては消化不良な感が否めない。
「身体が起きたのなら彼に最後まで付き合えば良かったでしょうに」
「あいつのトレーニングに付き合ってたら日が暮れちまうだろ」
「目覚めの運動には丁度良かっただろう」などと居丈高に云ってのけたヤンロンは、機体のウォーミングアップの次は肉体の鍛錬だと云って聞かなかったが、こうしたスケジュールで行われる彼のトレーニングに最後まで付き合おうものならどうなったものか。マサキは一度付き合ってしまったことがあるからこそ、その結果をよく知ってしまっている。
何せ、肉体の鍛錬の次は精神の鍛錬ときたものだ。精神力を削り取られる。その上、長い。魔装機戦や筋トレはさておき、滝に打たれたり、座禅を組んだり、論語の研究をしたりなどで一日が終わってしまうのは、精神耐久値の低いマサキとしては遠慮したいところだった。
「それで剣の相手を私に努めろというのでしたら、まだ話がわかるのですけれどもね……」
クック……とシュウが嗤う。
滑らかだけれども節ばった手が、彼の股間に顔を埋めて、その男性自身に舌を這わせているマサキの髪を撫でた。「昔からあなたはそう。高ぶった気を鎮める方法をこれ以外に知らない」
「てめえが教え込んだことだろ」
そうですね、と呟いたシュウの顔をマサキはその昂ぶりを口に含んで見上げた。自分が支配したものを愛でるような愉悦に満ちた表情。いついかなる時でも余裕ある態度を崩そうとしない男は、こういった行為の最中でもその態度を崩しはしない。
その態度なのだ。マサキに虚勢を張らせてしまうのは。
気恥ずかしさを押し殺して行為に及んでいる自分の気持ちなど知りもしない……思えば最初からそうだった。みっともなくとも泣き喚いてみせればよかったものを、マサキはシュウの思う壷になりたくないと堪えてしまった。堪えて、この不自然な行為を受け入れてしまった。
一度でも受け入れてしまえば、後は雪崩を打ったよう。シュウと知り合いさえしなければ一生知ることのなかった快感を彼はマサキに教え込んだ。時に奉仕を尽くし、時に奉仕を強いながら、時間を掛けてゆっくりと。それは決して愛情などといった甘い感情の発露ではない。シュウはただマサキが根を上げるのを待っているだけなのだ。そう思っていたマサキは、だからこそ従属を選んだ。
どこかでは飽きて諦める日が来る。
そんな風に軽く考えていたあの頃から、どれだけの年月が経っただろう。飽きて手放されることのないまま、いつしかマサキは自らシュウを求めるまでに彼との行為に慣れてしまっている。
今日だってそうだ。模擬戦で高ぶった身体と心。思い浮かんだのはこの男の顔だった。
ただ本能の赴くままに快楽を貪りたい。そして満ち足りた倦怠感に身を委ねたい。強い欲求を押さえきれなくなったマサキは迷うことなくここまで足を運び、朝の日課を終えてソファで本を片手にくつろいでいたシュウに物言わず口付けて、そのまま彼の足の間に顔を沈めた。
そうして今に至る。
熱を帯びるシュウの男性自身がその硬さを増してゆくのを、マサキは自身の口唇で感じ取っていた。舌に、口唇に触れる肉厚の塊。これが欲しい。自らの求めに従って顔を動かすマサキに、シュウは何を想うのだろう。暫く黙ってマサキのなすがままに身を委ねていた彼は、不意に口を開いた。
「ところであなたはこのままでいいのですか、マサキ。来てからずっとこうですが」
口の塞がっているマサキが直ぐに答えられないとわかっていながら言葉を紡ぐ。「あなたの口で受け止めてもらうのも私は好きですけれども」冗談じゃない。マサキはゆるりとその昂ぶりを吐き出し、頭を起こしながらシュウの笑わない瞳を睨み付けた。
「いいワケないだろ……」
「だったらどうしたいの。口が嫌なら、どこ?」
試すように言葉を吐かれて、期待される言葉を返す。その淫語混じりの返答にシュウの口元がいっそう大きく歪んだかと思うと、腿に置かれているマサキの手を取り上げるなり強く引いた。導かれるがままシュウの膝の上に乗り上がったマサキの腰に絡むシュウの手。それがマサキの下着ごとボトムズを脱がせてゆく。
高ぶった気を鎮めるのに、前戯を求めないのはいつものことだ。ここに来るまでの道中で、どれだけの焦れったさやもどかしさを味わったことか。マサキは露わになった双丘の奥へと、シュウの男性自身を導いた。シュウもこういった状態のマサキの求めるところは理解しているようで、無理に愛撫を仕掛けてきたりはしない。
「思い描いたように躾けられてくださって」
きっとシュウが見たいと望んでいたのは、マサキが恐れおののく姿ではなく、その支配を受け入れる姿だったのだ――……ほぐされずとも従順にシュウの男性自身を受け入れるようになった自らの身体に、マサキはだからといって今更逃れ切れる支配でもないのだと、彼の昂ぶりを菊座の奥の広がった蕾の中に深く収めながら思った。
緩く蕾を擦る昂ぶりに、肛虐の快感を知る。
マサキは自身を抉っているシュウの男性自身を、より深く身体の奥に収めるべく腰を振った。もっと、もっと……シュウの腿に双丘を擦りつける度に、身体の芯を貫く快感が走る。マサキは自分のものとは思えない甘ったるい声を放ちながら、ひたすらその快楽を貪った。
いつからだっただろう。こんな風に高ぶった気持ちをシュウとの性行為にぶつけるようになったのは。
悲劇を繰り返さない為にこの男を追い続けた日々は遠くに去ってしまっていたけれども、あの頃のマサキはシュウに叩きのめされれば叩きのめされた分だけ、怒りだけでは語り切れない感情に支配されたものだった。
自分の存在をこの男に認めさせたい。それは紛れもない執着心だった。倒さなければならない敵に対して余計な感情を抱いてしまっては、その目的の達成に問題が生じる。それを理解していなかったかつてのマサキは、だからこそこの男の死に泣いた。拗れてしまった自分の感情をどう処理すればいいかわからずに。
穏やかな関係を構築しているかのように見える今で以ても尚、マサキは自分の感情を処理しきれないでいる。
口元に浮かべてみせる柔和な笑みとは裏腹に、決して笑わない瞳。シュウ=シラカワという男が気を許してしまってはならない相手であるのは明らかだった。なのにマサキは欲望の捌け口としてこの男を利用することを選んでしまった。それも肌に馴染んでいる相手だからという理由だけで。
「なあ、シュウ……お前、俺のこういうところをどう感じているんだ」
長くも短い行為の果てにその精を思う存分吐き出したマサキは、ようやく訪れた満ち足りた倦怠感に自らの後始末をしながら、先に読書の続きを始めているシュウに訊ねた。
恐らく、その本心など聞けはしないのだ。
わかっているのに訊かずにいられない。そんなマサキの蟠る感情を理解しているのかいないのか、目の前の男は僅かに手元の本から顔を上げてみせると、「とても情熱的だと感じていますよ、マサキ」口元だけを歪ませてそう云ってのけた。
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