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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

Lotta Love(36)
これで三日目は終了です。次回からは最終日編となります。
ここまでお付き合い有難うございました。残り僅か、宜しくお願いいたします。

では、本文へどうぞ!
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<Lotta Love>

 天骨から額へ。額からこめかみ、頬と触れてくる口唇が、やがて押し倒したマサキの身体の上、喉仏へと吸い付いてくる。鎖骨から腋窩《えきか》、腋窩《えきか》から脇腹。腿に膝、脛と辿って、脚の指を飲み込む。マサキは全身をわななかせて彼の愛撫を受けた。
 愉しみは後回しにする性質であるようだ。長く続いた全身への愛撫、その後にようやく乳首にシュウの口唇が触れる。
 煽られきった身体はマサキ自身も信じられないほどに感度良く反応した。舌先で転がされるだけでも、脳天を貫くような快感が走る。シュウ。シュウ。マサキは狂ったようにシュウの名前を呼んだ。呼んで、彼の柔い髪に指を埋めた。何かを伝えたいのに言葉が上手く形にならない。それは決して彼の執拗な愛撫の所為だけではなかった。
「イク……やだ、イク……って、そんなにされたら、イク……」
「達《い》って、マサキ。ほら、いいのでしょう。ねえ、あなたの一番可愛い顔を私に見せて」
「可愛いって、云うな……」
 額を合わせるようにしてマサキの顔を覗き込んでくるシュウにマサキはごちた。
 マサキ自身は可愛いと云われることに抵抗がある。操者の女性陣にしてもそうだったし、リューネやウェンディ、セニアなど、彼女らはマサキの鈍感さを可愛いと評してみせることがある。決してシュウがそういった意味で云っていないのはわかっていたけれども、かといって額面通りに受け取るのも抵抗がある。自分は女の代わりではない。それはマサキのささやかな意地の表れでもあった。
「だったら何と云えばいいの? 扇情的と云えばいい? それとも」
 そこで言葉を切ったシュウが、耳朶を食んだ。いやらしいと云えばいい? 低く囁きかけてくる声に、マサキの腰が震える。
 長く愛撫に晒され続けた身体はとうに我慢も限界を迎えていた。熱を帯びて硬くなった男性器は断続的に汁を吐き出し続けていたし、熟れた蕾は彼の男性器を欲しがって収斂を繰り返している。いいから、挿《い》れろって……堪えきれずにシュウを求める言葉を吐いたマサキに、彼はクックと嗤い声を上げながら、
「まだですよ、マサキ。ちゃんとここで達《い》けたら挿《い》れてあげる」
 云って、両の手で乳首を摩ってくる。
 や、だ。マサキは泣き喘いだ。さざ波のように押し寄せてくる快感が、時々猛烈な大波となって全身を浚う。その都度、つま先でシーツを掻いてシュウの愛撫から逃れようともがくも、彼は容易にマサキの身体を手放してはくれない。はあ、ああッ。マサキは顎を仰け反らせた。そう遠くない未来に果てる予感がする。
「やだ。もう、本当にイク、イクって、シュウ」
 シーツを掴んでいた手を伸ばしてシュウの肩を掴むも、どう力を込めて引き剥がそうとしてもびくともしない。滲む視界の向こう側で、彼が口元を歪ませているのが辛うじて見て取れる。輪郭ばかりが浮かび上がる世界で、マサキは続けて泣き喘いだ。はあっ、ああっ、無理。もう、無理だって。熱の集中した男性器がぶるぶると震えている。
「ほら、達《い》って。マサキ。それとも挿《い》れられたくない?」
 このまま挿入に至ることなく喘がされ続けるのも耐え難い。マサキは突っ張らせていた足の力を抜いた。そしてシュウの愛撫を受け入れる決心をした。あっ、ああっ、あっ。じりじりと込み上げてくる快感が、点となって一箇所に集中する。
「そこ、そこもっと、擦って。擦って、シュウ」
 乱高下《らんこうげ》する快感。その高まりが間隔を短くしてゆく。くる。マサキはシュウの肩を掴んでいる手を突っ張った。刹那、乳首から男性器まで貫くような快感が襲いかかってくる。アアッ! マサキは腰を高く跳ねさせた。飛沫を上げながら飛び散った精液が、腹に降り注ぐ。
「あ、あ……はあ、はあ……」
 忙しなく口を吐いて出る呼吸が、静まり返るよりも先に、シュウの手がマサキの頬を包み込んだ。そして吐息の全てを飲み込むように口唇を合わせてくる。んん。感情の赴くがままに繰り返される口付けは、普段の穏やかさからは想像も付かぬほどに荒々しい。
「や、め。シュウ。息、出来な……」
 云った先から塞がれる口唇。マサキは必死になって鼻で息を吸った。
 射精を終えたからこその倦怠感。挿入に至らずして絶頂を迎えてしまったことに物足りなさを感じてはいても、男の性だ。口付けに応えるのでさえ億劫に感じられて仕方がない。それをシュウ自身もまた、男として思い当たる節があるからだろう。マサキの反応が鈍いことに不満をみせることもなく、歯に、内頬に、口蓋にと、触れては舐め取るように舌を動き回らせてゆく。
 ややあってマサキの舌を攫いにかかるシュウの舌。その頃ともなれば、マサキの身体を支配していた倦怠感も大分和らいだものだ。マサキはたどたどしく舌を動かした。興奮状態も落ち着いたのだろう。シュウもまたゆったりとマサキの舌を味わっているようだ。
 やがて、僅かな余韻を残して、口唇が剥がれる。
 手首を取られたマサキはシュウに導かれるがまま、彼の腿の上に腰を乗せた。掴み取るように双丘にあてがわれた手が谷間を開かせる。収斂を繰り返していた蕾に当たる風。じくり、とマサキの腹の底が疼いた。
 股の間を潜って顔を覗かせた彼の男性器が、蕾へと押し当てられる。マサキは彼の腿に腰を押し付けた。ずるりとその頭が蕾を割って押し入ってくる。腰を強く抱え込んでくる彼の腕。その動きに合わせて、熱い肉の塊がマサキの菊座を満たしていく。
 程なくして、まるでパズルのピースが噛み合うが如く、彼の男性器がマサキの菊座に嵌まり込んだ。腹の底で弾ける快感。湧き立った血液が一気にマサキの男性器に流れ込む。んんっ。マサキは口唇を深く結んで声を上げた。
「もうこんなに硬くして。そんなに欲しかったの、マサキ?」
 下腹部に当たる熱の塊にマサキの気分の高まりを感じ取ったようだ。耳元に濡れた声を浴びせかけてくるシュウに、そうだよ。マサキは小さく頷いた。だから早く動けよ。
 始まりは苦痛を伴う行為でしかなかった挿入に、変化を感じ取ったのはいつだっただろう? 緩やかに腰を動かし始めたシュウにしがみ付きながら、浅く身を焦がす快楽の中で、マサキはぼんやりとかつての自分とシュウとの性行為に思考を彷徨わせた。二度、三度と繰り返されるに従って、挿入《はい》り難さは軽減されていきはしたものの、乳首や男性器を嬲られるように快楽を得られるでもない。慣れれば感度も増すかと自分で弄りもしたあの頃。マサキは快楽を求めるというより、苦痛から逃れる方法を探していたように思う。
 それがある時を境に一変した。
 彼に与えられる快楽を貪らずにいられなくなるまでに、挿入に快感を感じるようになったマサキは、夜泣きする身体にシュウを求めて自発的に自慰に耽るようにもなった。きっとそれは、マサキの感情の変化とも密接に関係していたのだろう。彼に対する気持ちが移り変わるにつれ、彼との性行為に積極性をみせるようになったマサキを、シュウもまた積極的に悦ばせようとするようになった。
 それまでの彼は、苦痛を訴えるマサキをどう扱えばいいのか試行錯誤を繰り返しているようでもあった。嬲るというよりはいたぶるといった方が適切にも感じられた性行為。玩具で責め立てられることもままあったあの頃と比べれば、今のふたりの性行為はよりオーソドックスな性戯を愉しむものだ。
 今日のシュウはゆっくりと時間をかけて、マサキの興奮度合いを高めてゆくつもりであるようだ。
 緩やかに抽迭を繰り返す男性器が、マサキの菊座を満遍なく刺激してゆく。じくりじくりと陰嚢の裏側から滲み出てくる快感。次第により逞しく隆起してゆくマサキの男性器を、合わせた身体で感じ取っているのだろう。彼の口元には穏やかな笑みが湛えられ続けている。
 時に口付けを交わしながら、繋がり合った身体を揺らし合う。さあさあとプールに流れ込む水の音。穏やかに満つる刻《とき》をマサキは静かに息を吐き出しながら、極限まで味わった。けれどもそれもそう長くは続かない。やがて快感が連続的に襲いかかってくるようになると、溜まった精に対するもどかしさも手伝って、マサキはじれったさを爆発させずにいられなくなった。
「は、やく。シュウ。もっと早く、動いて」
 切れ切れに言葉を吐き出しながら、自らもまた腰を振る。駄目ですよ。シュウはマサキの腰の動きを抱え込んだ手で塞き止めてきた。やだ。マサキは首を振った。もう限界だって。熱に浮かされきった身体を解放したい。そして気だるいまでの充足感に満たされたい。だから、早く。マサキはそう訴えるも――、
「あなたを出来るだけ長く感じていたいのですよ、マサキ」
 シュウの刻むリズムは変わることがない。あ、駄目だって、シュウ。マサキは彼の首に絡ませていた腕に力を込めた。このままじゃ、イク。またイクって。彼の絶頂を待つことなく、自分ばかりが射精を繰り返すのがマサキは正直好きではない。ただただ自分ばかりが愉しんでいるように感じられるのは勿論のこと、彼の掌の上で転がされているような気がするのが堪らなく嫌なのだ。
「いいですよ、ほら。達《い》って。ねえ、マサキ。私にあなた一番好きな顔を見せて」
 ゆっくりとマサキの腹の底をその肉の塊で叩いてくるシュウに、我慢も限界だ。ふわりと身体が宙に浮く感覚。加速度的に快感がその強さを増してゆく。イク、イク。壊れたレコードのように同じ言葉を繰り返し口にしながら、マサキはシュウに強くしがみ付いた。
「あ、あああ……ッ!」
 身体に走る電撃。雷に貫かれたかのような衝撃が走る。浮いた身体にかかる重力。空から滑落してゆくような感触に身を委ねながら、マサキは再び陰嚢に溜まった精液を吐き出していった。
 口唇がわななく。直後に感じる腹部の滑《ぬめ》り。マサキの放った精液はシュウの腹もまた濡らしたようだ。その瞬間、ああ。溜息にも似た喘ぎ声がシュウの口元から洩れ出る。マサキ。ああ、マサキ。彼はマサキの名を呼び続けながら、先程までとは打って変わった勢いで腰を動かし始めた。


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